酸化銀電池

酸化銀電池とは

酸化銀電池のイメージ

図1. 酸化銀電池のイメージ

酸化銀電池とは、乾電池の一種で酸化銀亜鉛を電極に用いた電池です。

SR電池、銀電池、銀亜鉛電池とも呼ばれます。単位体積あたりのエネルギー密度が高いため、電気容量がアルカリ電池より大きい傾向があります。小型でも大容量の電池を作れる点を活かして、ボタン電池をはじめとする小型電池・薄型電池に使われることが多いです。

酸化銀電池の使用用途

酸化銀電池は、一般的なボタン電池や乾電池として使用されている電池です。放電のときの作動電圧が最後まで一定であること、単位体積当たりの電気容量が高いことが大きな特徴であり、医療機器や精密機器の電源などに用いられます。具体的には、時計、補聴器、カメラ、電子体温計などです。

わずかな時間のずれも許されないクォーツ時計や電子機器である各種測定機器、電卓や医療機器は、高精度な電圧の制御が求められます。このため、作動電圧の安定性に優れている酸化銀電池が適しており、広く使用されています。

酸化銀電池の原理

酸化銀電池の構造

図2. 酸化銀電池の構造

酸化銀電池は、電極の正極として酸化銀(I)、負極として亜鉛を採用しています。電解液は水酸化カリウムまたは水酸化ナトリウムです。電池内における電極および電解液間での下記の化学反応によって、電気を発生させることが可能です。

  • 正極における反応: Ag2O + H2O + 2e → 2Ag + 2OH
  • 負極における反応: Zn + 2OH → ZnO + H2O + 2e
  • 系全体における反応: Ag2O + Zn → 2Ag + ZnO

負極側では、イオン化傾向の高い亜鉛 (Zn) が水酸化物イオン (OH) と反応することで電子 (e) が放出されます。一方、正極側では酸化銀 (Ag2O) が水 (H2O) と反応し、銀 (Ag) に還元されます。

亜鉛が電解液と反応して水素を発生することを防ぐため、以前は多くの電池で亜鉛の表面を水銀で覆う処理が行われていました。現在では、腐食抑制剤や水素を吸着する物質の使用により、水銀0使用の製品が販売されています。

酸化銀電池の種類

酸化銀電池の積層電池のイメージ (1)

図3. 酸化銀電池の積層電池のイメージ

酸化源電池は、小型のボタン電池の他、複数のセルを一つのパッケージに収めた高電圧の積層電池などの種類が製品化されています。電解液の種類などによって最適な使用電流があり、外形が同じでも使用目的が異なる複数種類の製品が存在するため注意が必要です。

アルカリ水溶液として水酸化カリウム水溶液が使われているタイプはWタイプ、水酸化ナトリウム水溶液を用いたタイプはSWタイプにそれぞれ分類されます。WタイプとSWタイプの電池では、適している用途が異なります。Wタイプは比較的高い負荷がかかるデジタル時計または多機能時計に向いており、SWタイプは低負荷のアナログ時計向きです。 

また、メーカーや製品にもよりますが、環境問題への対策として有害物質である水銀や鉛を含まないように設計されたタイプが現在では主流です。酸化銀電池は比較的液漏れしやすいと言われていますが、製品の中には液もれ防止設計がなされているものもあります。

酸化銀電池のその他情報

1. 酸化銀電池の長所

酸化銀電池は、機械的強度が高い上に自己放電が低く長期保管が可能な電池です。また、放電時の電圧特性に優れ、放電の末期まで電圧降下が極めて少ない特徴があります。

小型電池の製造が容易であるため、製品としても小型のボタン電池や複数のセルを1つのパッケージに収めた高電圧の乾電池などが製品化されています。動作温度が−40から+50度と広いことも特徴です。重量エネルギー密度は、鉛蓄電池の約3〜4倍、アルカリボタン電池の約2倍と高くなっています

2. 酸化銀電池の短所

酸化銀電池は銀を使用しているため、比較的高価であることが短所です。また、充電可能回数が少ない (100回以下) こと、充電時間が長く急速充電が不可能であるという欠点もあります。

参考文献
https://www.maxell.jp/consumer/button-voltage_05.html

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です