固定抵抗器とは
固定抵抗器とは、抵抗値が固定されており、可変できない電気抵抗器のことです。
抵抗器は、電流値をコントロールするための回路素子を指します。仮に回路抵抗が0Ωであれば、回路はショート状態となり、大電流が流れてしまいます。それを防止するために、抵抗器を挟んで適切な電流に制御します。
ちなみに、抵抗器には抵抗値を自由に変えることができる可変抵抗器、抵抗値の調整を行うことができる半固定抵抗器がありますが、これら抵抗値を変化させられる抵抗器に対し、抵抗値が変更できないものが固定抵抗器です。
固定抵抗器の使用用途
固定抵抗器は、あらゆる電子回路に使われる基本的な回路素子で、様々な用途があります。具体的な使用用途は、以下の通りです。
- 電子回路の中で電流の制限
- 電圧の分圧
- 電流値の検出
- デジタル信号の電圧を設定するプルアップ抵抗やプルダウン抵抗
- コンデンサやオペアンプと組み合わせたアクティブフィルター回路
- 雷サージなどの突入電流発生時の回路保護
固定抵抗器の原理
抵抗器に電流が通過する際、電子は抵抗体の原子と衝突を繰り返します。衝突するたびに電子の移動速度は低下し、一定時間内に通過する電子の数は減少することになります。単位時間当たりに電子が通過する数が電流値なので、抵抗体との衝突が抵抗の本質と言えます。
また、電子と原子が衝突する際に、電子が持つエネルギーの一部が熱に変換されますが、これがジュール熱です。固定抵抗器を流れる電流、印加電圧、抵抗値の間には、「オームの法則:電圧=電流×抵抗」が成り立ちます。これを基に回路設計時には、印加電圧、電流値から適切な抵抗値の固定抵抗器を選定します。
また、固定抵抗器に電流が流れると、抵抗器の両端には電位差が発生して、電流値×電位差で算出される電力がジュール熱として消費されます。この消費電力が過大だと、抵抗器が焼き切れる恐れがあるため注意が必要です。
固定抵抗器のスペックには、「連続的に消費出来る電力の最大値」である定格電力が規定されています。固定抵抗器では一般的に定格電力の50%以下で使いますが、それを踏まえて部品選定をする必要があります。
固定抵抗器の種類
固定抵抗器は、構造上次の3種類に分類できます。
1. リード付きタイプ
リード付きタイプは固定抵抗器両端の電極にリード線が接続されたもので、リード線をプリント基板の穴に通して半田付けすることを前提としたものです。抵抗体の材質によって、さらに以下の種類に分類できます。
炭素皮膜抵抗器
磁器などの表面に抵抗体として炭素を固着させた抵抗器で、カーボン抵抗器とも呼ばれます。磁器の表面には螺旋状の溝があり、この溝の幅や長さを変えて抵抗値を設定します。
安価であることから、一般的な回路で広く採用されていますが、抵抗値の誤差が大きく、通常品では公称抵抗値に対し5%ほどの精度です。また、ノイズの発生に対しても金属系の抵抗体より劣ります。
金属皮膜抵抗器
磁器の表面に金属の抵抗体を形成した抵抗器で、抵抗体のペーストを焼成した厚膜型と、抵抗体を蒸着させた薄膜型とがあります。抵抗値の誤差が小さいことが特徴で、厚膜型は誤差1%程度、薄膜型は更に高精度で0.05%を謳うものも存在します。
正確な抵抗値が求められる計測機器やオーディオ製品などで採用されています。
酸化金属皮膜抵抗器
磁器の表面に、酸化錫等の酸化金属を抵抗体として形成した抵抗器です。耐熱性に優れ、比較的大きな電力にも対応することが可能なため、主に電源など中電力系の回路に用いられます。
メタルグレーズ皮膜抵抗器
金属、酸化金属、ガラスを混合したものを抵抗体とした抵抗器で、厚膜構造で特性が安定しており、環境変化に対しても強いものです。また、耐蝕性にも優れています。尚、この抵抗体はリード付きタイプだけでなく、チップ抵抗器などでも使用されています。
2. 面実装タイプ
リード線が付属していない面実装タイプは表面実装を前提としたものです。基板の表面に部品を実装するこの方法は基板のスペースを縮小できるため、当初小型化を求める電子機器に積極的に採用されていましたが、今では面実装タイプの部品が主流になっています。
なお、構造面から面実装タイプの抵抗器は、角形チップ抵抗器と円筒形チップ抵抗器の2種類に分類できます。
角形チップ
抵抗器は抵抗体にメタルグレーズを採用したものです。
円筒形チップ
元々はリード付きの抵抗器のリード線を外したものでしたが、現在は抵抗体が炭素皮膜もしくは金属皮膜であるものです。
面実装タイプの抵抗器としては円筒型が先に普及しましたが、はんだ付け工程での使い勝手の良さから、現在は角形チップ抵抗器が多く使われています。
3. 巻き線抵抗器
抵抗体である金属線を螺旋状に巻いたものを巻線抵抗器と言います。均一な金属線を一定の長さで巻く構造ゆえ、抵抗値を高精度に設定できる上、大きな電力容量を持たせることが可能です。また、抵抗体を適切に選択することで、温度変化による抵抗値の変化を抑えられる等の特徴を持ちます。
但し、巻線を巻く構造のため交流電流に対してはコイルのインダクタンス特性を示し、周波数が高いほどインピーダンスが大きく、その結果電流が小さくなるよう作用します。この特性は高周波領域で悪影響を及ぼすため、それを防ぐ無誘導巻きを採用する場合があります。
メタルクラッド抵抗器
MetalをCladした抵抗器を示します。巻線抵抗に金属製の外装を取り付けたものです。大電力回路に使用することを想定しているため、発熱対策として放熱板や放熱フィンが設けられたものもあります。
ホーロー抵抗器
磁器などの芯に抵抗体となる金属線を巻き、それを保護するためにホーロー製の外装を取り付けたものです。熱に強い構造であることから、抵抗器の発熱が避けられない用途で採用されます。
ちなみに、ホーローとは鉄やアルミニウム、ステンレスといった金属材料の表面にガラス質の釉薬を高温で焼き付けたものです。
セメント抵抗器
巻線抵抗器を磁器のケースに収め、更にそれをセメントで覆った抵抗器です。酸化被膜抵抗などでも同様の構造を採用することがあります。セメントで強固に保護されていますので、熱や振動に対しても非常に強固です。大電力回路向けに使用されます。
参考文献
https://industrial.panasonic.com/jp/ss/technical/b1
https://www.rohm.co.jp/electronics-basics/resistors/