管ヒューズとは
管ヒューズとは、電気機器の安全装置であるヒューズの1種です。
中空の円筒の内部にヒューズエレメントと呼ばれる金属可溶体が通っており、電気機器の破損防止する働きがあります。製品の見た目が管の形状をしているので、管型ヒューズまたは管ヒューズと呼ばれています。
管ヒューズの機能は、経年劣化や漏電等が発生した場合に設計者の想定を超える異常な大電流が流れてしまうと、接続されている電気機器が破損してしまいます。それを防ぐために、管内のヒューズエレメントが発熱し、溶けて回路を遮断することによって、異常電流から電気機器を守る働きがあります。
ヒューズには管ヒューズの他に挿入型ヒューズ、表面実装型ヒューズ、つめ付きヒューズなど形状はさまざまです。いずれも、一度ヒューズエレメントが溶断してしまった場合は、新しいヒューズに交換しなくてはなりません。
管ヒューズの使用用途
管ヒューズは、ヒューズの中でも古くから存在するタイプのヒューズで、異常電流に対する安全装置として、家電、通信などの民生電気機器・電子回路に使用されています。また、自動車分野では、マイコン制御部品や電気自動車が増えたため、安全装置としてヒューズの需要が高まっています。
現在、自動車用のヒューズとして最も使用されているのは簡単に抜き差しが可能なブレードヒューズですが、管ヒューズもコンプレッサー、DCDCコンプレッサー等の補機回路の保護用として使用されています。
管ヒューズの原理
管ヒューズの原理として、材質や異常電流が流れた場合の動作について詳しく解説します。ヒューズエレメントに使用されている材質は、以下のとおりです。
- 鉛
- スズ
- ビスマス
- カドミウム
- 銀
- 銅
溶断する温度特性によって配合を変更することで融点を70〜100℃程度の間にコントロール可能で、ヒューズが対応可能な定格電流の幅を広げています。管ヒューズが使用できる定格電流値は製品によって異なりますが、0.1Aの小電力のものから30A以上の大電流まで幅広く対応しています。
管ヒューズが安全に遮断できる遮断電流も決まっているため、対応可能な電流値を大きく超えてしまった場合は管ヒューズの破損に繋がります。管ヒューズが破損すると、最悪の場合はガラス管のガラスが飛び散ったりしてしまい、怪我や別の回路が異物付着による短絡等の二次被害が発生するため注意が必要です。
異常電流が流れた際の動作として、通常状態ではヒューズエレメント全体が均等に発熱しており電流を遮断することなく回路に伝えています。異常電流が発生した場合は、ヒューズエレメントの中央部分から発熱し、設定された温度特性に従って溶断し回路を遮断します。異常電流が流れてからヒューズエレメントが溶断するまでの間は回路が導通した状態となってしまうため、どの程度の時間でヒューズエレメントが溶断するかも管ヒューズを選定する際に重要なポイントです。
管ヒューズの種類
管ヒューズは、使用用途や材質によって次のように分類されます。
1. 普通溶断型
溶断特性が普通タイプのヒューズです。家電など一般的な民生電気機器に使用されます。
2. 速動溶断型
ヒューズエレメントが迅速に溶断するタイプのヒューズです。エレメントの径が部分的に細いものや、スパイラル状に巻き付けた構造をしています。主に電子回路の半導体保護用に使用されます。
3. タイムラグ溶断型
ヒューズエレメントが溶断するのに時間がかかるタイプのヒューズです。熱容量が大きい金属をエレメントに使い、一時的な過電流では発熱・溶断しにくい性質を持っています。
モーターなど、電源投入時に大電流が流れる製品に使用されます。管ヒューズの材質による種類には、ガラス管ヒューズとセラミック管ヒューズがあります。
4. ガラス管ヒューズ
ガラス管ヒューズは最も一般的な管ヒューズです。管が透明のガラス製で、内部のヒューズエレメントが目視できるため、溶断などの状態が外からわかります。
5. セラミック管ヒューズ
セラミック管ヒューズは、ガラス管よりも遮断容量が高いという特徴があります。ガラス管・セラミック管ともに、溶断する際に発生するアーク放電を抑える消弧剤が管内に封入されたタイプもあります。
管ヒューズの選び方
管ヒューズの目的は、異常電流が流れたときに回路を遮断して機器を保護することですが、通常動作時には溶断することなく電流を通さなくてはなりません。そのため、管ヒューズの定格電流を確認し、通常動作時の定常電流が定格電流よりも低くなるよう、管ヒューズを選定する必要があります。
参考文献
https://www.jeita.or.jp/japanese/exhibit/2014/1117/pdf/fuse.pdf
https://www.kdh.or.jp/safe/document/knowledge/distribution_board04.html
https://fa-ubon.jp/tech/005_200907_vol8_fuse_techno.html
https://www.socfuse.com/wordpress/wp-content/uploads/J_fuse_selection_process_201811.pdf