サイクロンセパレータ

サイクロンセパレータとは

サイクロンセパレータとは、流体中に混ざり合った粒子を分離する装置です。

流体中に存在する微粒子の密度と流体自体の密度との差を利用し、それぞれに生じる遠心力の差から流体中の微粒子を分離します。固形物や砂などが混ざった液を移送するポンプは、シール部分に固体が入らない細工をしなければならず高価です。

検知装置などが必要となる場合もあります。それらの課題は、サイクロンセパレータを利用することで解決できます。

サイクロンセパレータの使用用途

サイクロンセパレータは、産業においてさまざまな箇所で使用されます。以下はサイクロンセパレータ使用の一例です。

  • 排ガスから生じた汚染物質の除去
  • 研磨後の廃液に混ざった研磨粉の回収
  • 微粒子の分級・分離
  • 工場排水・排水処理槽などからの化合物除去
  • 食品・薬品・化学工業の製造プロセスに生成された結晶・原材料の回収
  • 超音波洗浄液・高圧洗浄機の循環洗浄液からの異物除去
  • ブラストやウォータージェットの砥粒回収
  • サンプリング液からの固形物除去

正確な粒子分離の前処理として、産業界で広く使用されています。

サイクロンセパレータの原理

サイクロンセパレータは、一般的には円錐形状です。微粒子ごみが混ざり合った液をポンプ吐出口からサイクロンセパレータへ流し込み、螺旋流を発生させます。

流体中の微粒子密度と流体自体の密度に差があるため、螺旋流による遠心力にも違いが生じます。この違いを利用したのがサイクロンセパレータです。油水分・固形物はハウジング内壁に叩きつけられ、そのまま内壁に沿って落下します。

清浄になった液はサイクロンセパレータの上方から吐出します。固形物は下方へ落下し、ポンプの吸込側へ送られ循環されます。

このように、サイクロンセパレータは微粒が混ざり合った液に利用されるのが一般的です。ただし、微粒子ごみを多く含まない液の場合でも、微粒子が混入しないように安全対策として使用される場合があります。

サイクロンセパレータのその他情報

1. サイクロンセパレータの長所と短所

サイクロンセパレータは、液体または気体の流体中異物を分離する装置であり、それ自体は動力を持ちません。そのため、すでに循環する系内に設置可能であり、低コストな点がサイクロンセパレータの長所です。また、本体は構造物のためメンテナンスフリーであることも長所として挙げられます。

ただし、流体の流れに乗ってしまうため微細粒子は分離できません。圧力損失が大きく、流体スピード維持のために大きなエネルギーが必要な点は短所と言えます。

2. サイクロンセパレータの設計

分離する固体の密度や必要とされる分離率に応じて、サイクロンセパレータを設計します。分離機の中では、比較的大流量の場合にサイクロンセパレータを用います。

また、サイクロンセパレータの能力は吐出装置であるポンプ能力やブロア能力の影響を大きく受けます。メンテナンスの手間が少ないダスト集塵設備として幅広く採用されますが、重要なのはブロア圧力です。

風量風速が半減してしまうと集塵能力は大幅に低下してしまうため、サイクロンセパレータの設計はブロアやポンプの圧力が律速です。

3. バグフィルタとサイクロンセパレータ

粉体製品の製造工程では、製品の分級や回収でサイクロンセパレータを複数段で使用することがあります。更に後段にバグフィルタを組み合わせる場合もあります。

また、焼却炉でもどちらか単独の設備では規制値を守れない場合は、組み合わせて設計されることもあります。これはサイクロンセパレータの欠点の一つである、微細粒子が集塵できないことを補うための処置です。

ただし、バグフィルタの欠点として定期的なろ布洗浄または取替が必要な点が挙げられます。そこでサイクロンセパレータと組み合わせることにより、バグフィルタへの負担を軽減してろ布の交換間隔を延長できます。交換作業費を削減し、交換ろ布の廃棄費用などのランニングコストを抑えることが可能です。

また、ろ布交換の際はバグフィルタへのガス流通を停止しなければなりません。したがって、ろ布交換間隔が延長することで連続運転期間を延長できるため生産性の向上も見込まれます。

参考文献
https://www.nikuni.co.jp/equip/coolant/vdf.html
https://www.rccm.co.jp/development/fluid/lapple_dpmdiscrete_phase_model.html
https://www.monotaro.com/s/pages/readingseries/pumpjissen_0214/
https://www.fukuhara-net.co.jp/product_af_cyclone.html
https://www.rccm.co.jp/development/fluid/lapple_dpmdiscrete_phase_model.html
https://www.kochi-tech.ac.jp/english/admission/img/5fff9db770d7adc90c75d3c3f6a0952a_2.pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kakoronbunshu1953/17/9/17_9_357/_pdf

ピペットチップ

ピペットチップとは

図1. ピペットチップのイメージ図

ピペットチップとは、マイクロピペットに取り付けて使用する、プラスチック製で円錐状の管です。

化学や生物分野をはじめとする研究・開発や品質管理の現場などで、μLからmLオーダーで溶液を量り取る際に用いられます。なお、ピペットの吸引・吐出によって溶液を量り取るこの動作をピペッティングと言います。

ピペット本体のサイズ毎に異なったサイズのものが存在し、またサイズによって色が異なる場合があります。コンタミネーションを防ぐため、専用のラックに入れて保管しておき、一度使用したものは廃棄します。

ピペットチップの使用用途

ピペットチップはマイクロピペットに取り付け、化学・生物に関連する分野全般において使用されます。

具体的な使用用途は、生化学分野の研究室における実験や、医薬品メーカーでの品質管理、臨床検査での検体採取などです。マイクロピペットは、μLから数mLの微量の液体を取り扱う際に使用されます。

ボタンを押すだけで迅速に定量の液体の採取が可能ですが、ガラス体積計と比較すると容量が変化しやすいため、操作上注意が必要です。

ピペットチップの原理

図2. ピペットチップの使用方法

ピペットチップは、ピペットチップの専用ラックに充填し、マイクロピペットの先端を直接差し込んで装着します。

マイクロピペットのプッシュボタンを1段目までゆっくり押し離すことにより液の吸引を行い、吐出の際は2段目まで押し込むことによって全吐出を行います。使用後のピペットチップの廃棄方法はイジェクターボタンを押すだけです。ピペットチップを手で触る必要がないため、試料の汚染や作業者への薬品の付着を防ぐことができます。

ピペットチップの種類

図3. 様々なピペットチップ

主に用いられているピペットチップの容量は、10μL、200μL、1000μLです。それ以外にも、250μL、30μLなどがあり、大きなものでは5mLや10mLのピペットチップがあります。

ピペットチップには複数のサイズがあるため、量り取りたい液量に応じて、適切なサイズのマイクロピペットと、ピペットチップとを選択することが大切です。具体的には、マイクロピペットが量り取ることのできる最大量が、量り取りたい液量に近いものを選択しなくてはなりません。液量の誤差を小さくするために重要です。

ピペットチップのその他情報

ピペットチップを使用する際の注意点

ピペットチップによる正確な計量のためには、下記の点に注意する必要があります。

1. プレリンス
ピペットチップはその素材ゆえに、内壁へ溶液成分が吸着される場合があります。量り取りたい液体を予め2回以上吸引・全吐出し、共洗い (プレリンス) してから使用することが有効であるとされています。

2. チップの浸入角度
チップの浸入角度は、液面に対してできる限り90度に近づける必要があります。垂直な状態から20度以内を維持することが適切です。ピペットを持つ角度が水平に近い場合、液体が過剰量吸引される恐れがあります。

3. チップの浸入深度
チップを深く浸しすぎると、チップ内の気体が圧縮され、液体の吸引量が多くなりすぎることが知られています。微量容量のピペットの場合は1~2mm、通常容量のピペットの場合は最大で3~6mmの深さでチップを浸すことが適切です。

4. 正しいピペッティング動作
まずは、液を吸い上げるときは、指をボタンから急に離さずに、ゆっくり上げるように注意することが必要です。液の粘性の差によ る吸引速度の差を小さくする目的と、急激に吸い込まれた液がピペッターの機械部分に入ってピペットが壊れるのを防ぐ目的があります。また、吐出の際は、最後に残った液滴まで完全に吐出し、チップの先端に付着しないようにします。特に、チップの先端を容器の壁面に沿わせて吐出することが推奨されます。

また、有機溶媒などの表面張力が低い液体を量り取る場合は、外壁部に液体が付着したまま残る可能性があることに注意が必要です。先端がニードル状になったマイクロニードルを使用するほうが適切な場合もあります。

参考文献

https://www.monotaro.com/s/c-68512/
http://www.jsac.or.jp/bunseki/pdf/bunseki2008/200801nyuumon.PDF
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jamt/67/1/67_17-80/_pdf/-char/ja
https://www.mt.com/jp/ja/home/products/pipettes/pipette/pipetting-techniques.html

コーナーキューブ

コーナーキューブとは

コーナーキューブ

コーナーキューブ (英: Corner cubes) とは、入射した光を再帰反射させ、入射方向へ戻す機能を持つ装置です。

反射した像は反転しています。入射角0°の場合のみ再帰反射性を持つミラーとは異なり、コーナーキューブの再帰反射性は入射角が大きい場合でも有効です。この特長を活かして、光軸調整の困難な作業や作業時間を短縮したい場合などに頻繁に利用されます。

コーナーキューブの反射面は3面あります。一般的に光の全反射現象が得られる許容最大入射角は、理論上5.7°までです。

コーナーキューブの使用用途

レーザを使った測長機のリフレクター (反射鏡) として使用されています。月と地球の距離を測定するために開発され、アポロ宇宙船が月に着陸した際に月面に設置されました。

身の周りにも同じ性質を利用したものが多く存在します。自転車の後部に付いている赤い反射板や、道路上・道路脇に設置されている反射板 (オレンジあるいは無色) にも、非常に小さなリフレクターが多数集積されています。最近ではより小型になったシール型も販売されており、多種多様な場所でコーナーキューブを利用可能です。

また、車両や道路に取り付けられたコーナーキューブには、プラスチック製が多く、高い精度のコーナーキューブは測量に利用可能です。ガラス製のキューブが多く、レーザー光を当てて戻る時間から長さを測定できます。

コーナーキューブの原理

コーナーキューブの3つの面は、互いに直交する関係で設置されます。その3つの面をそれぞれxy面・yz面・zx面とします。例えばxy面で光が反射されるとき、光の進行方向を示す3次元ベクトル成分のうちz成分のみ符号が反転し、x成分・y成分は変化しません。同様にyz面のときはx成分が、zx面のときはy成分の符号が反転します。

この性質により3つの面で順次反射され、入射する方向ベクトルが [a, b, c] の光線は、反転すると [-a, -b, -c] です。つまり、来た方向へ光を返します。入射した光が反転する順番の組み合わせは全部で6通りあり、光線が入射する位置によって決まり、結果的に反射する順番に関係なく全成分の符号が反転します。

コーナーキューブの種類

レーダーから放射されたマイクロ波を、レーダーアンテナの方向へ反射する装置をレーダーコーナーリフレクター (英: Radar corner reflectors) と呼びます。導電性メタルシートやスクリーン3枚を90°で貼り合わせて、前方から入射する電波を平行に反射させます。ただし入射した波長よりも、反射面が大きくなければ機能しません。

コーナーキューブの原理を応用して、リバーサルミラー (英: Reversal mirror) が作られています。リバーサルミラーとは、直角に組み合わせた鏡2枚のことです。一般的な鏡では左右が逆転して見えますが、リバーサルミラーでは左右を保ったままです。

コーナーキューブの構造

コーナーキューブには、ホロー型とプリズム型の2種類あります。両方とも3つ面での反射を利用する基本的な構造は同じです。

観測局と人工衛星の相対速度によって生じる「光行差」によって、正確な直交度を持つリフレクタよりも直交度を少しずらした方が有効です。実際に使用されている人工衛星のリフレクタの多くは、直行度を意図的にずらしています。

コーナーキューブリフレクタ (英: Corner Cube Reflector) 、キューブコーナー (英: Cube corners) 、コーナーリフレクター (英: Corner reflector) はコーナーキューブの別称です。反射原理によっては、コーナーキューブプリズム (英: Corner Cube Prism) やコーナーキューブミラー (英: Corner Cube Mirror) とも呼ばれます。

参考文献
https://www.global-optosigma.com/jp/Catalogs/pno/?from=page&pnoname=CCB&ccode=W3126&dcode=
https://geo.science.hit-u.ac.jp/research/minilec-ccr/
https://www.chuo.co.jp/contents/hp0098/list.php?CNo=98&ProCon=3285

ビュレット

ビュレットとは

ビュレット

ビュレットとは、コックで操作しながら液体を少量ずつ滴下することで、滴下した液体の体積をはかることができるガラス器具です。

目盛りが刻まれた細い筒状のガラス管下部に取り外し可能なコックが付いており、そのコックを回すことで分量を調整しながらガラス管の中へ入れた液体を滴下し、ビュレットの前後の目盛りの変化量を読み取って使用します。

ピペットも同様に滴下した液体の体積を測ることができる道具ですが、ビュレットは垂直に立てて使用できるため、目盛りをより精密に読み取ることが出来ますし、コックで細かく液量を調整することができます。さらに、コックを用いて正確に滴下量を制御する事ができるため、中和滴定のような正確な液量測定が必要とされる実験に適しています。

ビュレットの模式図

図1. ビュレットの模式図

ビュレットの使用用途

ビュレットは、主に中和滴定などに用いられます。 中和滴定とは容量分析の一種であり、濃度が分かっている標準溶液と、濃度が不明であるが標準溶液の濃度に比例して反応する溶液を用いて、濃度不明の溶液の濃度を求めます。

中和反応の判断、所謂終点は滴下後の混合液の呈色変化によって決まります。コックの操作にはある程度の熟練が必要ですが、オートビュレットという自動操作が可能なものもあり、食品や医薬品、化学メーカーの品質管理に使用されています。

ビュレットの特徴

ビュレットには、白色と褐色のものが存在します。これは他のガラス器具と同様、光によって反応を起こす物質があるため、標準溶液に溶解した物質の種類によって選択する必要があります。例えば、硝酸銀は感光性を有するため遮光下で使用する必要があり、これを滴定液として用いる場合は褐色のビュレットを用いる必要があります。

また、前述のとおり、ビュレットはコック操作に慣れることが大切です。ビュレットから液体を滴下するスピードが早いと、終点より多めに標準溶液を入れてしまう恐れがあるため、適当なスピードで滴下できるようにコック操作を行うことが重要です。 なお、コック部分にグリスを塗ってメンテナンスをする必要があり、メンテナンスが不十分だと液体が漏れる等の注意点があります。

さらに、先端が欠けてしまうと正確な体積を測ることができないため、丁重に取り扱わなくてはなりません。先端に傷が付くだけでも1滴あたりの体積が変化することが実験により知られています。その他にも、ビュレット内の残液の体積によって残着量が変化することも分かっているため、必ず目盛りの一番上である0点から使用するのが望ましいです。

ビュレットはガラス器具であるため、加熱・冷却を繰り返すと変形し、その測定量の正確性が損なわれます。そのため、洗浄後の加熱乾燥は避け、室温で乾燥する必要があります。同様の理由から、ビュレット内に入れる滴定液についても、一般的には室温程度の一定温度の液体を用います。なお、滴定液の温度については、ビュレットの膨張と変形の原因となるだけではなく、滴定液の体積が温度依存的である事にも注意が必要です。このような理由からも、正確な液量測定のためは、滴定液は一定温度のものを用いる必要があります。

ビュレットのその他情報

1. ビュレットを共洗いする理由

共洗いとは、量りたい溶液(中に入れる溶液)を用いて、ビュレットやホールピペットなどの側容器具(液体の体積を量る器具)を洗うことです。

側容器具は、器具の変形による体積の変化を避けるために、通常、乾燥機などによる加熱乾燥を行いません。水道水で洗った後、蒸留水で洗浄し、使用直前に量りたい溶液を用いて洗います。

共洗いをするのは、器具の内面が水で濡れていると、試料溶液の濃度が低下するからです。一方、試料となる溶液自体で濡れている場合は、溶液を入れても濃度は変化しません。

ビュレットは、滴定の際、濃度が不明な溶液を入れるので、ビュレット内で溶液の濃度が変わってしまうと、正確な濃度を求めることができなくなります。

また、一度使った器具をもう一度使用するときに共洗いをすると、乾燥させることなく、続けて使うことができます。

まず、1/5程度の溶液を入れ、ビュレットを横にして回しながら、内壁を洗います。次に、コック(活栓)を回して溶液を先端から出し、コックより下の部分の内壁を洗って、残りの液を上部から捨てます。この操作を、数回繰り返します。 

2. ビュレットの使い方

ビュレットをビュレット台に垂直に固定して、活栓が閉まっていることを確認します。

漏斗を使って、ガラス管の上部から溶液を注ぎこみます。この時、漏斗の上部から溶液が溢れないように、空気を逃すための隙間を漏斗とビュレットの上部の間に開けておきます。また、溶液が目に入る危険があるため、目より下の位置で注ぎます。溶液を注ぎ終えたら、漏斗を取り外します。

下にビーカーなどを置いて活栓を開き、溶液を勢いよく流して、活栓より下の部分の空気を完全に追い出します。活栓より上の部分に気泡がある場合には、これも取り除きます。

空気を追い出した後、目盛を読み、記録します。この時、視線とビュレットが垂直になるようにして、”メニスカス“の底(下端)を読みます。メニスカスとは、細い管に入れた液体の表面が、表面張力によって曲面になることを指し、液体が管壁を濡らす場合はへこみます。また、目盛は、最小目盛の1/10まで、目測で読みます。

ビュレットの目盛りの読み方

図2. ビュレットの目盛りの読み方

活栓を回して、滴下を始めます。片手でビュレットを持ち、活栓が抜けないようにビュレット本体の方にひきつけながら操作します。

滴定を終えたら、目盛を読み、滴下量を出します。

キャリアテープ

キャリアテープとは

キャリアテープ

キャリアテープとは、電子部品・半導体の半導体部品・マイクロチップの運送や保管のために使用されるテープです。

主に使われている材質はポリスチレン樹脂など樹脂を使ったものと紙を使ったものがあります。

マイクロチップなどの極小サイズの部品を扱う場合、キャリアテープに1個1個半導体を包装し、組立工場へ輸送してから、部品組立機械にセットして運ぶことができます。キャリアテープは、携帯端末やパソコンの普及により、極小チップサイズの部品を包装するために急速に需要が伸びています。

キャリアテープの使用用途

キャリアテープは携帯端末やPCの普及によって急速に需要が伸びている極小チップサイズの部品を包装するために使用されています。包装する部品のサイズや用途によって、紙製品やエンボス製品を使い分けます。

極小チップサイズの部品として集積回路 (英: integrated circuit, IC) 、チップ抵抗器、コンデンサ (キャパシタ) 、コイル,トランス、スイッチ、コネクタ、リレー、水晶振動子、LED、トランジスタ、ダイオードなどが挙げられます。

キャリアテープの原理

キャリアテープは、部品に合わせてポケットの形状を変更することで、微細な部品を包装することができます。

真空ロータリー成形により、開口Rを小さくし、しっかりした垂直壁を保持したシャープなポケット成形が可能です。さらに、挿入した部品がポケット内で転がらないようにするために、高い精度で成形されます。

リブ付キャリアテープは、ポケット内にリブを用意して、部品の動きを抑制し、リードの突き破りを防止します。また、デバイス吸着を防止するため、ポケット底部に段差を付けてデバイスを浮かせます。

透明導電キャリアテープは視認性、導電性、耐熱性に優れています。ノンカーボンであるため低発塵でクリーンな製品です。

近年では環境への配慮から、リサイクル可能なキャリアテープやバイオマスプラスチックを使用したキャリアテープなど、環境に優しい製品も開発されています。

キャリアテープは、部品を包装する際にリール状に巻かれている場合があります。これをキャリアテープリールと呼びます。

キャリアテープリールは、自動化された部品組立機械であるマウンターに供給するために使用されます。リールに巻かれたキャリアテープは、高速で部品を供給することができるため、自動化された組立ラインでは必要不可欠な部品です。

キャリアテープの選び方

キャリアテープは部品のサイズや用途によって、紙製品かエンボス製品を使用するかを使い分ける必要があります。以下では、より具体的な選び方について解説します。

1. ポケットの深さ

キャリアテープに使用されるポケットの深さは、部品の高さに合わせて選ぶ必要があります。部品がポケットよりも高く突き出してしまうと、輸送中に破損する恐れがあります。逆に、ポケットが深すぎると、部品が揺れ動いてしまうため、搬送中に破損する恐れがあります。適切な深さを選ぶことが、部品の安全な輸送につながります。

2. ポケットの形状

部品の形状に合わせて、ポケットの形状を選ぶことが重要です。部品がポケット内でしっかりと保持されるようにすることで、輸送中の振動や衝撃から部品を守ることができます。また、ポケットの形状によっては、部品の取り出しやマウンターへのセットがしやすくなるため、組立作業の効率化につながります。

3. 導電性

一部のキャリアテープは、導電性が求められる場合があります。これはキャリアテープが帯電するとほこりや塵を引き寄せます。半導体部品などはほこり、塵が性能低下につながります。またキャリアテープに静電気がたまり絶縁破壊を起こすとIC機器に異常な電流が流れて部品を故障させます。このような、塵や静電気の影響の大きい部品を入れる場合は、導電性のあるキャリアテープを選ぶ必要があります。

4. 発塵量

一部のキャリアテープは、発塵量が少ないことが求められます。例えば、半導体部品やマイクロチップなど、精密な部品には、発塵がないことが必須です。発塵があると、部品の機能に悪影響を及ぼします。そのため、ノンカーボンである透明導電キャリアテープなどが使用されます。

参考文献
http://www.shingoshu.co.jp/products

バイオリアクタ

バイオリアクタとは

バイオリアクタの概要

図1. バイオリアクタの概要

バイオリアクタとは、酵素や細胞、微生物などによって起こされる生体内の化学反応機構を利用し、有用物質の生産や分析を行うシステムやその反応容器のことです。

生体内反応を利用する機構は、化学反応に比べると速度が遅いというデメリットがあります。しかし、副産物が少ない、触媒活性が低下しないなどの点で優れている手法です。

また、高温・ 高圧等の条件下に置かずとも進行するため、耐圧・耐熱の設備を準備する必要がなく、コスト面でも優れています。なお、広義の意味では、細胞を培養する装置などをバイオリアクタと呼んでいる場合があります。

バイオリアクタの使用用途

1. 産業

バイオリアクタは、食品、農業、畜産業、水産業、化学工業 (化成品) などの幅広い産業で利用されています。医療、診断サービス、分析などの分野でも活用されている他、資源エネルギーやバイオエレクトロニクスなどの分野にも用途のある装置です。

例えば、食品製造において、大豆や米、果汁に麹菌や酵母を反応させて味噌や醤油、日本酒やワインなどを製造する手法もバイオリアクタの1つと言えます。工業的な代表例には、 酵素の固定化 (反復利用が可能な状態とすること) によって、アミノ酸や糖類などを大量生産することがあります。

また、研究や医療の分野では、細胞培養により機能物質を細胞内に産生させ薬効物質として取り出す利用方法もあります。

2. 物理化学

バイオリアクタは、物理化学的な物質の検出・定量にも用いられている手法です。オートアナライザーは、固定化酵素を用いて化学反応を光学的に追跡し、多くの試料を連続的に分析することができます。

バイオセンサーは、反応を電気的に追跡する方法です。具体的な例として、酵素センサー、微生物センサー、半導体バイオセンサーなどがあります。

バイオリアクタの原理

バイオリアクタは、温度・pH・圧力などを制御・管理した反応容器内で、固定化された酵素などの反応素子に原料となる反応物質を反応させるという仕組みです。合成・分解・変換・除去を経て、目的物となる生成物質が得られます。

1. 反応素子

主な反応素子は、精製された酵素のほか、細胞や微生物が用いられます。酵素は生体における触媒であり、古典的に最もよく用いられる反応素子です。

広義では、植物細胞、肝細胞や血液細胞などの動物細胞、ミトコンドリアや色素体などの細胞内小器官、 ホルモン受容体や抗体等によって起こる反応も利用されています。

2. 反応素子の固定化

反応素子の固定化は、不溶性の担体に結合させる担体結合法が主流です。その他、反応素子同士を架橋させる架橋法、包括剤を利用した包括法などの方法があります。

反応素子が固定化されることで、反応素子と生成物質とを分離しやすくなります。また、反応素子は固定化させずに浮遊させて用いる方法もあります。

バイオリアクタの種類

研究用途のバイオリアクタのイメージ

図2. 研究用途のバイオリアクタのイメージ (左: 細胞培養用、右: マイクロバイオリアクタ)

バイオリアクタには様々な種類があります。酵素を用いて目的物質を得る古典的典型例のものから、細胞や微生物を培養して目的物質の産生を図るものなど、用途に合わせて形状は多種多様です。バイオ医薬品製造用の細胞培養及び菌体培養設備などが、バイオリアクタと呼ばれている場合もあります。

原料が液状である液体用バイオリアクターが最も一般的です。これに対して製麹、酵素工業などでは、原料が固体であるために固体用バイオリアクターが用いられます。また、植物細胞や藻類、光合成細菌など光合成を行う反応素子を用いる場合は、光の供給を 工夫した光合成用バイオリアクターが開発され、使用されています。

産業用途のバイオリアクタが比較的大型である一方、分析用途のバイオリアクタは比較的小型です。特に、マイクロバイオリアクターは反応生成物を回収せずに検出することが目的であり、数 mLからμLの液体を分析するものが開発されています。

バイオリアクタのその他情報

1. 反応場の状態

バイオリアクタは、液体状態もしくは固体状態のどちらで反応を行うかによって通気・撹拌混合・反応温度制御の方法が大きく異なります。 例えば、反応素子が好気性生物の場合は通気が必要なため、容器内で攪拌させる通気撹拌方式や、容器内のドラフトチューブから気泡を上昇させるエアリフト方式などを用います。

光合成生物の場合は、液体に溶解させた有機物や窒素・リン等の無機塩類、ビタミン等の生理活性物質や、光を供給させることが必要です。また、分析に利用するマイクロバイオリアクタの場合は、数μlオーダーの容器を用いることもあり、測定誤差を出さないようにより高度に温度や液量を制御できるようにしなければいけません。

2. バイオリアクタによる光学活性体の合成

バイオリアクタは、光学活性体の合成にもよく利用される手法です。光学活性体の合成に生体触媒を使用するメリットとしては、以下のような特徴が挙げられます。

  • 常温、常圧、中性付近のpHという、扱いやすい環境において優れた触媒作用を示すものが多い
  • 特定の化合物の特定の部位にのみ選択的な反応を起こすため、一般的に副生成物は少なく、収率が高い

3. バイオリアクタの再生医療への応用

幹細胞培養用のバイオリアクタのイメージ

図3. 幹細胞培養用のバイオリアクタのイメージ

iPS細胞などの多能性幹細胞を再生医療の分野で利用するためには、10億~100億個程度の細胞が安定的に供給される必要があります。バイオリアクタを用いた3次元浮遊培養システムは、再生医療に大量の細胞を供給する方法として注目されている手法です。

細胞にとって低ストレスで均一な撹拌を維持し、培養効率を高めるため、水車型攪拌翼などの撹拌機構が開発されています。

参考文献
http://www.sc.fukuoka-u.ac.jp/~bc1/Biochem/bioreact.htm
https://www.inpit.go.jp/blob/katsuyo/pdf/chart/fkagaku23.pdf
https://www.sbj.or.jp/wp-content/uploads/file/sbj/9209/9209_tokushu_4.pdf

バイオフィルタ

バイオフィルタとは

バイオフィルタとは、排水処理などの水処理や臭気処理に使用されるフィルタです。

水処理や臭気処理などに使用されますが、用途によって構造や原理が異なります。

バイオフィルタの使用用途

バイオフィルタは、水処理や臭気処理などに使用されます。

1. 水処理用バイオフィルタ

バイオフィルタは、水処理に使用されています。生活排水や工業排水、農畜産業の排水処理が主な用途です。

そのため、排水ろ過施設に設置されています。また、水生生物の水槽への使用も多く見られます。魚の養殖場や家庭用水槽のフィルタとしても好適です。

2. 臭気処理用バイオフィルタ

バイオフィルタは、臭気処理にも使用されています。例えば養豚場などの家畜による臭気の除去などに利用されています。

バイオフィルタの原理

バイオフィルタは、その用途に応じて構造や原理が異なります。

1. 濁水処理用バイオフィルタ

建設工事などにより生じる濁水を処理する濁水用バイオフィルタは、天然のヤシ繊維などを用いた濁水濾過フィルタです。植生基盤となる上、設置後、自然分解するのが特徴です。バイオフィルタは、微生物を含む濾過層に排水や臭気が送り込まれることによって、浄化されます。

2. 排水処理用バイオフィルタ

排水処理施設に使用されるバイオフィルタは、フィルタを構成する充填材の表面や充填材同士のすき間に微生物を薄い膜状として保持した構造です。これで排水をろ過して処理をおこない、この方式は生物膜式活性汚泥法と呼ばれます。

生活排水や工場排水などの処理に一般的に利用される活性汚泥法と比較すると、装置単位体積あたりのBOD除去速度が大きいのが特徴です。そのため、装置を小さくでき、温度の変動にも耐性があるので、維持管理しやすいなどのメリットがあります。

3. 水生生物用バイオフィルタ

水生生物用バイオフィルタは、魚の養殖場などに多く使用されています。このようなバイオフィルタは、ガラスなどを使用した多孔質の焼成物を用いたフィルタです。多

孔質のフィルタ素材は微生物の付着基材として優れており、硝化作用をもつ硝酸還元細菌、脱窒細菌などが増殖して、アンモニアを酸化して水質を保持します。

4. 臭気処理用バイオフィルタ

臭気処理用バイオフィルタとしては、ヤシガラハスクやウッドチップに有機物を加えたフィルタなどがあります。このフィルタに散水しながら臭気を含む空気を通し、臭気を脱臭する仕組みです。

また、臭気処理用バイオフィルタとしては、土壌脱臭法を利用したものもあります。フィルタとして機能する土壌部分は、粒子が大きい砕石層と砂層、微生物を含む土壌層で構成されています。

臭気を含んだ気体を送風機によって土壌層下部へ送り込み、砕石層から砂層、土壌層をゆっくり通過させて、微生物により臭気物質を無臭物質に分解する仕組みです。土壌が乾燥しそうな場合は、スプリンクラーを用いて土壌へ散水し、微生物を死滅させないようにして使用します。

5. アクアリウム用バイオフィルタ

バイオフィルタとして私たちの生活で最も身近なものとしては、アクアリウム用の底面フィルタが挙げられます。この底面フィルタは、生物濾過に重点を置いたフィルタです。底面フィルタを使用する際には、生物濾過機能をいかに働かせるかが重要なポイントとなります。

生物濾過機能を働かせるための注意点は、以下の3つです。

  1. バクテリアが定着できる濾材であること
  2. 酸素の供給が十分される環境であること
  3. 水流がしっかりあること

アクアリウム用バイオフィルタの設置には、まず底面フィルタにエアチューブを接続して水槽の底に設置します。その上から砂利などの底床材を敷き詰めて完成です。

エアポンプなどを使って底面フィルタ上の底砂に水を通し、底砂にバクテリアを定着させることで、底砂を濾材として使用します。

バイオフィルタのその他情報

底面フィルタの注意点

底面フィルタの注意点としては、以下の点が挙げられます。

1. 使用できる底床材に限りがある
細かい砂や粒は底面フィルタ内に落ちてしまい、水の循環を阻害してしまいます。また、栄養が多く含まれているような底床材も栄養が水槽内に拡散してしまうため、不向きです。

2. 水草水槽との相性が悪い
底面フィルタでは、糞などのゴミも底床に溜まることになりますが、底床の汚れはろ過機能の効率に影響を与えるため、定期的な掃除が必要です。根を張るタイプの水草を使用する場合、フィルタの水流を阻害するだけでなく、底床の掃除が困難となってしまい、不向きです。

参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jswe/16/4/16_4_270/_pdf/-char/ja
https://www.kobelco-eco.co.jp/product/pdf/industrial_water_treatment/bcf.pdf
http://qube-aquarium.com/undergravel-filter/

バイアル

バイアルとは

バイアル

バイアルとは、ガラスまたはプラスチック製の透明容器で、注射針を刺して中の液体を吸い出せるように蓋にゴム製の部分を持つ瓶のことです。

注射剤や高速液体クロマトグラフィーで分析試料などを入れる容器として使用されており、日本薬局法では密封容器に分類されます。開口部はゴム栓により蓋をされますが、ネジ口のバイアルも存在しています。

バイアルの使用用途

1. 注射剤の保管容器

注射剤を入れるための容器として使用する場合は、無菌状態で薬剤を充填した後に開口部へゴム栓を打栓し、アルミニウムキャップ等でゴム栓と開口部を巻締めます。なお、ゴム栓は複数回の刺針が可能なため、薬液を複数回採取することができます。

しかし、汚染した注射針で薬液を採取する等の操作が原因で感染事故も起こりうるので、無菌状態で操作を行う必要があります。

2. 化学・分析試験用サンプルの保管容器

高速液体クロマトグラフィーで、オートサンプラへ分析試料を入れるためにバイアルが使用されます。ガラスバイアル中の成分が溶出するおそれがある場合は、合成樹脂製バイアルを用います。

その他、塩基性物質がバイアルの内壁に付着する可能性もあるため、その場合も同様に合成樹脂製バイアルを用います。

バイアルの特徴

バイアルは、ホウ珪酸ガラスを原料としています。ホウ珪酸ガラスは、二酸化ケイ素と無水ホウ酸から作られます。熱膨張率が小さく、硬く、耐水性が高い点が特徴です。

また、ソーダガラスや鉛ガラスに比べて、耐熱性・耐冷性があり、化学薬品に対する耐腐食性にも優れています。 その他、酸素等のガスが透過せずに酸化を防げる点も特徴の1つです。

バイアルは、金型を用いずにホウ珪酸ガラスを火で加工して作られます。ソーダ石灰ガラスよりも低温で製造可能なため、アルカリ成分の溶出が比較的少なくなります。近年では、耐薬品性向上のためにバイアルからの溶出物が減る低アルカリ処理バイアルや、薬剤の吸着量を減らせる低吸着バイアルのニーズが増えました。

また、合成樹脂製のバイアルも存在し、ガラス製に比べて割れにくく軽い他に、無機物の溶解がありません。一方で、酸素の透過性はガラス製に比べて劣るのが欠点です。

バイアルのその他情報

1. バイアルの表面処理

バイアルは、脱アルカリ処理やコーティング等のガラス内表面の性質を改質させる表面処理を行っています。脱アルカリ処理とは、ガラス転移点付近の温度まで上昇させた状態で、ガラス表面と硫黄化合物を反応させることによって、表面層のアルカリ成分を中和させたり選択的に抽出除去する操作です。

この操作によって、シリカ成分を多く含む表面が露出し、アルカリ成分の溶出を減少させることができます。コーティングには,シリカやシリコーン樹脂、フッ素樹脂などを用いて行う方法があります。

これらの処理を行うことにより、薬液をガラス内表面へ直接接触させることを避けられるため、ガラス成分が溶出し難くなる等の効果が得られます。

シリカ加工
ガラス内表面にシリカを高温で溶融させて、内表面へシリカの薄膜を形成させる方法です。

シリコーン加工
ジメチルポリシロキサン溶液へ浸漬・焼付け処理を行い、ガラス表面へシリコーン樹脂の薄膜を形成させる方法です。

フッ素樹脂加工
カップリング剤によりフッ素樹脂を塗布・焼付け処理を行って、ガラス内表面へフッ素樹脂の薄膜を形成させる方法です。 

2. バイアルとアンプルの違い

バイアルが開口部をゴム栓により蓋をするのに対して、アンプルは薬液を充填した後、容器の先端を熱で溶閉して保管します。薬液を使用する際には、容器の頭部をカットして、開口部から注射針を差し込んで薬液を吸い出します。

アンプルのカットの際は、容器の種類に応じて対応が異なります。カット位置にポイントマークやラインの入った容器では、そのまま手でアンプル頭部を折って開封しますが、マークやラインがないアンプルの場合には、アンプルカッターややすりでアンプル頸部に傷をつけたあとにアンプル頭部を折るのが一般的です。

比較的量の少ない注射剤では、アンプルを使用する場合が多いです。アンプルはバイアルと同様に、ホウ珪酸ガラスが原料であるため、ガラス成分が溶け出すことはほとんどありません。また、酸素等のガス透過性もないため、バイアルと比較してより安価に密閉性の高い容器にできることがメリットです。

3. ゴム栓付きバイアルの取扱い方

ゴム栓付きバイアルを使用する際の注意事項として、コアリングがあります。コアリングとは、注射針を刺すときに針によってゴム栓が削れ、この削れたゴム片 (コア) が薬液内に混入する現象のことです。コアリングの発生は、ゴム栓の形状や材質、注射針の径や形状、穿刺方法などに影響を受けます。

例えば、プラスチック製の鈍針と18Gの金属針では、プラスチック製の鈍針の方がコアリングの発生率が高いことが報告されています。また、針を刺す際のスピードが速いほど、コアリングの発生率が高くなる報告もあります。

コアリングを防止するためには、以下のような方法が有効です。ゴム栓付きバイアルを取り扱う際は、これらの方法を熟知したうえで、コアリングの発生に細心の注意を払う必要があります。

刺す場所
ゴム栓の指定位置 (刻印部) に穿刺します。刻印部がない場合にはゴム栓の中央部分とし、注射針を複数回刺す場合には同じ場所を避けます。

針の種類
針はなるべく細いもので、刃面の長さが短いものを選択します。

刺し方
ゆっくりと垂直に刺します。途中で針を回転させないよう注意が必要です。

参考文献
http://www.iwataglass.com/products/vial/
https://www.toseiyoki.co.jp/material/glass/324
https://www.fpa.or.jp/
https://www.an.shimadzu.co.jp/hplc/support/lib/lctalk/100/100intro.htm
https://answers.ten-navi.com/dictionary/cat04/3362/
https://answers.ten-navi.com/dictionary/cat04/3356/
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjdsa/46/1/46_52/_pdf/-char/ja

スタンドパウチ

スタンドパウチとはスタンドパウチ

スタンドパウチとは、自立が可能であり、底部にひだが付いている袋のことです。

日本には1960年代にフランスより技術が導入され、1980年代より徐々に広まりました。特徴として、商品の陳列性に優れ、魅力的なディスプレイを可能にする点が挙げられます。

また、充填する内容物やその使用方法に応じて、ノッチ開封やチャック・口栓の取り付けを選択が可能です。これにより、食品やトイレタリー製品など、多様な用途での使用が見られます。近年、環境への意識が高まる中、詰め替え用の製品としても採用されています。

スタンドパウチの原理

スタンドパウチの基本的な原理は、底部に特定の形状の折り目 (ひだ) を設けることで、袋が自立するようにすることです。この折り目が広がることで底面が広がり、安定した自立が可能になります。

また、この折り目はパウチが製造される際に形成され、使用時に容易に広がって袋を開くことができます。

スタンドパウチの使用用途

スタンドパウチは現在、調味料、味噌、清涼飲料水、スープ、レトルト食品、ドレッシングなど、多岐にわたる用途で使用されています。

最初に市場に登場したスタンドパウチは、水産加工品や農産加工品を缶やビンではなく、より便利に包装する目的で開発されました。技術の進化により、防湿性、透明性、真空包装の適性、耐低温性、耐衝撃性、耐磨耗性、ガスバリア性、遮光性、耐油性など、多様な特性を持たせることが可能です。

使用される範囲も広がり、口栓付きのパウチはゼリー飲料や詰め替え用の食用油にも適用されるようになりました。

スタンドパウチの特徴

スタンドパウチは製造方法によって、胴部と底部から構成される2ピースタイプと一体型の1ピースタイプの2種類に分類できます。使用される材質には、二軸延伸ポリエステルフィルム、セロファン、アルミフィルム等があります。

内容物を保護する上でバリア材の選択が重要であり、技術の進化とともにPVDCコートフィルムやアルミ箔からEVOH樹脂へと変わっています。1970年代には、レトルト対応のラミネートフィルムを開発するために高性能ウレタン接着剤が利用されるようになり、スタンドパウチの適用範囲が拡大しています。

1982年の食品衛生法の改正以降、ポリエステルやナイロンが飲料用パウチに広く用いられるようになり、包装材料とのフレーバーマッチングに注目が集まっています。低pHや高糖度に対応する技術、ボイル殺菌法とEVOHを含むラミネートフィルムを組み合わせることで、デザート用パウチが市場に出ています。

近年では、シングルサイト系ポリエチレンの採用により、ピンホールや破裂のリスクを軽減しており、O-PETやO-NYにシリカアルミナを蒸着した透明蒸着フィルムが使用されています。

スタンドパウチの選び方

スタンドパウチを選ぶ際に考慮すべきポイントは、用途、内容物の特性、包装の目的、そして消費者の利便性です。

  1. 内容物に適した材質の選択
    液体製品の場合は防漏性とバリア性が高い材質、乾燥食品には湿気を避けるための高い防湿性を持つ材質、そして粉末製品では静電気が帯びにくく、粉末が付着しにくい内面を持つ材質が適しています。
  2. 開封と再封の機能
    消費者が容易に開けられ、開封後も内容物の鮮度を保つことができるチャック付きのパウチは、開封後の保存が必要な製品に適しています。また、簡単に手で開けられるようにするためのノッチ付きのパウチもあります。
  3. バリア性能の考慮
    内容物が酸化や湿気に敏感であれば、それらを遮断できる高バリア性能を持つパウチを選ぶ必要があります。また、光に敏感な製品の場合は、光から保護できる遮光性能を持つ材質のパウチが求められます。

参考文献
http://www.spstj.jp/publication/archive/vol21/Vol21_No3_1.pdf
https://www.fujiimpulse.co.jp/docs/clmn/pbk081_083/pbk083.html

シャーレ

シャーレとは

シャーレ

別名ペトリ皿とも呼ばれます。口径がわずかに異なる2枚の平皿様形状であり、それを組み合わせて使用します。組み合わせることで適度な密閉性を保持したまま、空気が入る状態となります。 ドイツの細菌学者ペトリが微生物培養のために用いたことが命名の由来です。

原料としてはガラスやプラスチックが使われており、一般的なサイズとしては直径約10cm、高さ1cm~2cmのものが多いです。加熱滅菌が必要な操作に用いる際は、板ガラス製のものを使います。プラスチック製のものは使い捨てであり、γ線によって滅菌されたものが販売されています。

シャーレの使用用途

微生物や動植物の組織培養のほか、検体を入れる等の用途で使用します。研究施設や食品、化粧品、医薬品等の検査現場で見かけることが多いです。

微生物を培養するときは、寒天培地と呼ばれる培地成分と寒天が溶解した液体をシャーレに流し入れて、室温で放置する事で寒天培地をシャーレ内で固化させ、その表面に検体となる微生物を塗布します。 検体を入れた寒天培地を、一定の温度でコントロールされている恒温器という機械の中に入れて微生物を培養します。

細胞培養の場合は、温度・湿度・pH等の培養環境を生体と同様にコントロールするために、細胞へ栄養補給するため調整された培養液を使用し、インキュベーターという恒温恒湿器の中で培養します。

シャーレを用いた細胞培養の特徴

培養される細胞の足場となる基材には、以下の特性が必要とされています。

1. 基材の表面が細胞培養に適していること
2. 細胞毒性がないこと
3. 滅菌が可能であり、滅菌状態が保たれていること
4. 培養条件において基材が変質しないこと
5. 顕微鏡での観察が可能であること

この条件に当てはまるのが、ポリスチレン樹脂製のシャーレであり、これはガラス製のシャーレよりも安価に供給されている点でメリットがあります。ポリスチレン樹脂は、その特性上表面が疎水性であるため、細胞との親和性が悪いという特徴があります。

そのため、シャーレ表面を酸化し 親水化させる処理を施して、細胞接着性を向上させたシャーレを用います。表面処理の種類としては、プラズマ処理、コロナ放電処理、酸化剤処理、親水物質コーティング処理等が挙げられます。

また、細胞培養には適度な通気性も必要となります。シャーレを用いた細胞培養の場合は、径がわずかに異なる2枚の皿を重ね合わせて使用するため、外気を完全に遮断すること無く培養が可能です。また、上皿の自重で蓋がされるため、コンタミネーションも防止しながらの培養が可能となります。

シャーレを用いた微生物培養の特徴

以下のような手順で行います。

①シャーレ内の固化した寒天培地に検体を塗布する。
②コンラージ棒で検体を寒天培地上に均一に分散させる。
③シャーレの上皿を半開放し、余計な水分を蒸散させる。
④シャーレの上皿を閉じで2枚を合わせ、上下を逆さまにして培養器内で培養する。

重要な点は④の『シャーレを逆さまにして培養する』であり、この操作により培地水分の過剰な蒸散を防ぎながら、大気中に浮遊する雑菌の混入を避ける事が可能です。

このような培養方法は、『固化している』という寒天培地の性質を上手く利用したものであるといえます。

また、寒天培地を用いた微生物の培養においては、適切な条件下において、生育した微生物が単一コロニーを与えるという特徴があります。そのため、土壌などの自然試料から天然の微生物を単離する目的でも良く用いられます。

シャーレとペトリ皿の違い

シャーレとペトリ皿は同じものですが、シャーレがドイツ語で「平らで円形または楕円形で上部が開いている容器」を指す「schale」に由来するのに対し、ペトリ皿は英語の「petri dish」に由来しています。上述の通り、「petri」はドイツの細菌学者であるリヒャルト・ユリウス・ペトリに由来しており、ドイツ語では「Petrischale」、つまり「ペトリ皿」です。

シャーレの素材

ガラス製、プラスチック製のほか、ステンレス製やPTFE(ポリテトラフルオロエチレン;テフロン)製、アルマイト製のシャーレもあります。また、深さがある腰高シャーレやアルミホイルシャーレなどもあります。

ガラスシャーレの特徴

ガラス製のシャーレの場合、材質については「板ガラス製」や「並ガラス製」等と表記される事が一般的です。「透明板ガラス」「ソーダ石灰ガラス」とも言われ、一般的にその最高使用温度は380℃、常用使用温度は100℃です。

ガラス製のシャーレは、バーナーなどのような直火で加熱すると急な熱膨張により割れる危険性があります。そのため、火炎滅菌する際には、蒸発皿や金網の上において間接的に加熱する必要があります。一般的には、急加熱・急冷却をしなければ、約300℃までは加熱が可能です。

ガラスシャーレは加熱滅菌(オートクレーブ、乾熱滅菌)が可能なので、ろ紙やガーゼなどの滅菌の際の容器として使うこともあります。この場合は、滅菌する器具をシャーレ内に入れてシャーレごとオートクレーブ処理や乾熱滅菌処理を行います。耐熱ガラス製シャーレであれば、より安全に加熱滅菌することが可能です。

価格は、並ガラス製、直径約10cmのもので1個500円程度です。

ガラスシャーレの滅菌方法

ガラス製シャーレは、雑菌の混入を避けるために使用前に実験者が滅菌処理をする必要があります。

その方法としては、以下の2種類が一般的です。

1. オートクレーブ滅菌

高圧条件下で水蒸気により滅菌する方法であり、圧力釜のような専用の装置(オートクレーブ装置)を用いて行います。
処理条件としては、2気圧、120度、20分などが一般的です。

2. 乾熱滅菌

熱による滅菌操作であり、専用の乾熱滅菌装置を用いて行います。処理条件としては160~170℃、2時間などが一般的です。

プラスチックシャーレの特徴

プラスチック製のシャーレの材質には、ポリプロピレン(PP)やポリエチレン(PE)などの合成樹脂が用いられています。

プラスチックシャーレには、底に目盛付きのグリッドが入っているものなど、培養細胞の位置確認がしやすい製品もあります。
ガラス製シャーレと比較して、透明度、耐熱性、物理・科学特性では劣りますが、破損しにくい点では優れています。また、直径90mmのもので1枚30円弱と価格が安いので、使用頻度が高く、使い捨てをする場合に適しています。

多くは、10枚×50包や20枚×25包(500枚)などで販売されています。

プラスチックシャーレの滅菌方法

プラスチックシャーレは、その性質の問題から加熱滅菌ができません。また、微生物や細胞培養に用いられる市販のプラスチックシャーレは、γ線滅菌などの方法によりあらかじめ滅菌処理されている事が普通です。そのため、実験者は使用前に加熱滅菌する必要はありません。

一般的には、70%エタノールなどで表面殺菌したのちクリーンベンチ内に持ち込み、UV滅菌処理をしてから使用します。