エンボスフィルム

エンボスフィルムとは

エンボスフィルムとは、フィルムに加熱・加圧を行い、表面に凹凸加工を施したフィルムの総称です。

凹凸加工のことをエンボス加工と呼ぶため、このような名前が付けられています。このようなエンボス加工は、質感や滑り性、剥離性の向上を目的に行われます。

また、エンボス加工には、ダイヤ柄や絹目、麻目など様々な模様を施すことが可能で、それぞれ特性が異なります。ポリエチレンやシリコン、ポリウレタンなど多種多様な素材のエンボスフィルムが存在します。

エンボスフィルムの使用用途

エンボスフィルムは、包装用途や半導体搬送用途、セパレータ、滑り性付与用途に利用されています。使用する素材によって使用用途は異なり、ポリエチレンの場合は紙おむつのバックシートやポケットティッシュの包装材、液体容器、ラミネート材などに使用されます。

他の例としてエラストマーフィルムは、防水スーツや経皮吸収剤基材、衣料材、創傷被覆材、滑り止めテープなどに使われます。このように用途は幅広いため、適切な素材やエンボス加工方法を選択する必要があります。

エンボスフィルムの原理

エンボスフィルムは、その表面に模様や凹凸を付けるために使用される特殊なフィルムです。エンボスフィルムの原理は、熱と圧力を組み合わせてフィルムを変形させて、模様や凹凸を形成することにあります。

凹凸や模様によって、視覚的な効果や触感を付与することが可能です。応用としては、包装材料、装飾用途、視覚効果のあるプリントなど幅広い分野で使用されます。エンボスフィルムは非常に柔軟なデザイン性を持っており、個別の要件や目的に応じて異なる模様や凹凸を付与することが可能です。

エンボスフィルムの種類

1. ドットエンボスフィルム

ドットエンボスフィルムは、小さなドット状の凹凸がフィルムに形成されたタイプのエンボスフィルムです。視覚的なテクスチャーや滑り止め効果を付加するために使用されます。

特に滑りやすい表面を持つ製品や装置のグリップ、ステップ面、床材などに広く利用されます。

2. 金属エンボスフィルム

金属エンボスフィルムは、金属の質感や光沢を再現したフィルムです。高級感や洗練されたデザインを求める包装材料や広告素材、プロモーションアイテムなどで使用されます。

金属エンボスフィルムは、銀、金、銅などの金属調の外観を持ち、製品やブランドのイメージを高める役割を果たします。

3. 透明エンボスフィルム

透明エンボスフィルムは、透明なフィルムにエンボス効果を付与したタイプのフィルムです。透明感や立体感を演出するために使用され、パッケージデザイン、ディスプレイ、ラベルなどで広く活用されます。

透明エンボスフィルムは、特定の領域にエンボス効果を与えることで、視覚的な強調やデザインのアクセントを作り出します。

4. シート型エンボスフィルム

シート型エンボスフィルムは、フィルム全体に均一なエンボス効果が施されたフィルムです。均一なデザインの表面を持ち、一貫した外観を提供するために使用されます。

シート型エンボスフィルムは、カード、パネル、装飾品、コンテナなど、広範な応用範囲で利用されます。

5. カスタムエンボスフィルム

カスタムエンボスフィルムは、特定のデザインや模様を個別に作成するために製造されるフィルムです。これにより、ブランドのロゴや特定の図案、顧客の要求に合わせたデザインが可能になります。

カスタムエンボスフィルムは、広告宣伝材料、特別なイベントやプロジェクト、オリジナルの製品開発などに使用され、独自の個性やブランドイメージを表現する手段となります。

参考文献
https://www.okr-ind.co.jp/products/470/
http://www.sekita-syoukai.co.jp/seihin/film/sheet.html
http://www.osk.co.jp/product/film/film02.html

エアタンク

エアタンクとはエアタンク

エアタンクとは、圧縮空気を蓄えておくための圧力容器です。

アキュムレータと呼ばれる場合もあります。主にエアコンプレッサの下流側 (二次側) に接続することで、コンプレッサから供給される圧縮空気の圧力変動を平準化したり、瞬間的に大量の圧縮空気を使用する場合の急激な減圧を防止したりする役割があります。

エアタンクによって得られる効果は、エアコンプレッサの保護・寿命延伸です。エアタンクが送気の緩衝となるため、エアコンプレッサが頻回に稼働・停止を行う必要がなくなります。

加えて、停電などの非常時にコンプレッサが運転を停止しても、エアタンクが接続されていれば一定量の圧縮空気が供給されるため、空気圧駆動する設備が瞬時に出力を失い事故が起きるといったリスクを軽減することも可能です。

エアタンクの使用用途

エアタンクは 各種機械設備における空気圧ラインに使用されています。使用される主な目的は、圧縮空気を大量に使用するときの圧力の平準化と、エアコンプレッサの保護です。また、コンプレッサの吐出空気量よりも空圧機器の空気消費量が多い条件がある場合には、エアタンクが必須となります。

安全の確保を目的として、空気量が不足しない場合でもエアタンクが使用される場合あります。空気で動作するエアシリンダは圧縮空気が供給されなくなると出力を失うため、停電時などに予期せぬ動作をする可能性が高いからです。これにより、作業員が危険に晒される場合には、エアタンクを設置し、コンプレッサが停止しても一定時間圧縮空気がシリンダに供給されるようにします。

その結果、シリンダが急に出力を失わずに済むため、その間に対処ができる状況を生み出せるようになります。また、エアタンクはトラックなどの大型車両にも使用される場合が多いです。トラックのブレーキやサスペンション、トランスミッションには圧縮空気が使用されており、これらの装置を駆動させるための圧縮空気がエアタンクに貯蔵されています。

エアタンクの原理

エアタンクに圧縮空気を保持し、圧力を一定以上に維持しながら使用することで、使用する空気圧の安定とエアコンプレッサの保護を実現します。エアタンクが役割を果たすには十分な容量が必要です。

エアタンクには上流側および下流側の接続口の他に、圧力計安全弁圧力スイッチが付帯しており、容器が耐えられる圧力以上の内圧となった場合には、安全のために外部に空気を排出して減圧します。

また、エアコンプレッサは設置環境の空気を取り入れて圧縮するため、多少なりとも配管とエアタンクに空気中の水分が凝結していきます。この水分はタンク腐食の原因となるため、除去しなければなりません。そこで、エアタンクはこれを排出するドレンバルブも備えています。

現在では、多くの装置に自動で排出できる装置 (ドレントラップ) が備えられています。ドレンにはコンプレッサ由来の油や、環境由来の成分が含まれる可能性があるため、事業所からそのまま下水に流すことができません。そのため、ドレン浄化装置を接続する場合があります。

エアタンクの選び方

エアタンクを選ぶ際は、まず最初に容量の決定が必要です。必要容量は、計算もしくは使用するコンプレッサの出力から経験的に割り出すことができます。

計算で割り出す場合は、空圧機器の空気消費量と必要圧力、間歇的に使用する場合は使用時間を元にし、コンプレッサが空気を補填する能力も勘案し、必要容量を設定します。一方で、経験的に割り出す場合は、コンプレッサが空気使用量に対して適正に選定されるという前提に基づき、大出力のコンプレッサはより大きいタンクを必要とすると考えて設定します。

ただし、類似の使い方の事例に基づいていることが必要です。1台のコンプレッサに対して同時に使用するエアシリンダやエアーガンなどの圧縮空気を消費する空圧機器が多いほど、必要なエアタンクの容量も大きくなります。選定に不安がある場合、自身で行うよりも、経験豊富な業者と相談する方がおすすめです。

エアタンクのその他情報

エアタンクの管理

エアタンクは内部に高圧空気を保持し、圧力による危険があるため、適切な管理が重要です。特に、強度 (何かがぶつかったことによる損傷などがないこと) 、安全弁や圧力スイッチの正常作動が安全を確保する上で重要なポイントになります。

法令面では、空気圧、内容積、寸法にもよりますが、労働安全衛生法の第二種圧力容器に該当する場合があります。この場合、事業所等で定期自主検査などを行うことが必要となります。

参考文献
http://www.konishi-as.co.jp/topix/yomimono/tank.html
https://job-con.jp/special/driver/guide/info104#article_h3-0

エアコンプレッサー

エアコンプレッサーとは

エアコンプレッサ

エアコンプレッサーとは、圧縮された空気を作り出し、それをエアーツールに動力として供給するための装置です。

似た言葉でエアーコンディショナーがありますが、異なるものなので区別が必要です。エアコンディショナーは、室内の温度や湿度を調整する空調設備で、通称エアコンと呼ばれています。

エアコンプレッサーは、圧縮された空気を大気に開放すると元に戻ろうをする力が働き、この力が様々な機器の動力となります。駆動される機器としては、グラインダーインパクトレンチスプレーガンなどあります。

エアコンプレッサーの使用用途

エアコンプレッサーの用途は、主に空気で駆動するエアーツールなどに使われれています。空圧の特徴は、電動に比べて、小型・ハイパワー、電源が不要、防爆エリアでの使用が可能、構造が簡単でメンテナンスがしやすいことなどが挙げられます。

自動車及び自転車等のタイヤの空気入れ、インパクトレンチや塗装用のスプレーガンなどに使用されています。その他、エアコンのフィルター掃除、土木工事用削岩機、地盤改良機械なども用途の1つです。

エアコンプレッサーの原理

エアコンプレッサーは圧縮された空気を作り出し、それをエアーツールに動力として供給するための装置です。容積式圧縮機とターボ式圧縮機によって、動作原理が異なります。

1. 容積式圧縮機

容積式圧縮機はさらに、レシプロ圧縮機とロータリー式圧縮機の2種類に分けられます。

容積式圧縮
空気を圧縮チャンバに取り込んだ後、圧縮チャンバを閉じ込めます。閉じ込めた後に容積を減少させることで内部の空気圧を増大させる原理です。

レシプロ圧縮機
空気をシリンダ内に引き込んだあとに、シリンダ内部を往復運動をするピストンで圧縮室の空間容積を小さくすることで空気を圧縮します。

ロータリー式圧縮機
ケーシング内にある特殊なロータを用います。空気をケーシング内に引きこんだ後に、シャフト回転することにより、クランクが偏心回転します。それに伴い、ケーシング内の圧縮室の容積を変化させて圧縮する仕組みです。

2. ターボ式圧縮機

ターボ式圧縮機はさらに、軸粒式と延伸式の2種類に分けられます。

軸粒式
空気が羽根車を軸方向に流して、羽根車の前後に生じる圧力差を利用し空気を圧縮させます。一般的に遠心式に比べ小型で高圧縮率です。

遠心式
空気が吸い込み口から半径方向にむきを変えて羽根車に入り、空気を圧縮させます。一般的に多段化は難しいですが、一段あたりの圧力比が大きいです。

エアコンプレッサーのその他情報

1. ブラシレスモーター

エアコンプレッサーでは、内部でモーターを使用しています。モーターの種類は整流子モーター等様々ですが、1つにDCブラシレスモーターがあります。DCブラシレスモーターの利点は、コイルに電流を流す向きを決定するブラシと整流子が無いため寿命が長くて耐久性が高いことです。

上記のメリットがあるため価格は高価ではありますが、使用頻度の高いモーターの種類です。

2. インバータ回路

エアコンプレッサー内のモーターにてDCブラシレスモーターを使用する場合は、内部にインバータ回路を搭載する必要があります。インバータ回路は交流電流を直流に変換した後に、再度交流に戻す機能を持つ回路です。

エアコンプレッサー使用時は家庭用コンセントで、50Hzもしくは60Hz周波数の交流を使用します。実際にモーターを回転させる周波数は、家庭用交流周波数とは異なります。

そのため、インバータ回路を用いて任意の周波数に変換することでモーターを所望の回転数で回転させることが可能です。

参考文献
https://wis.max-ltd.co.jp/kikouhin/compressor-details/index.html#detail3
https://www.anest-iwata.co.jp/compressor/tech/2.html
https://www.atlascopco.com/ja-jp/compressors/wiki/compressed-air-articles/displacement-and-dynamic-compression
https://www.hitachi-ies.co.jp/products/cmp/screw_oilfree/sds_u/kind.html

ウレタン接着剤

ウレタン接着剤とは

ウレタン接着剤とは、ポリイソシアネートとポリオールの付加反応であるウレタン化反応を利用した接着剤です。

ウレタン樹脂を主成分としており、1液型や2液型、ホットメルト型などの種類があり、中でも2液型は、構造用接着剤など多種多様な用途で使用されています。特に樹脂への接着性が非常に高いため、樹脂用途に使われます。

また、エポキシ系やアクリル系接着剤と比較して柔軟性が高く、高い耐衝撃性と衝撃吸収性を持った接着剤です。

ウレタン接着剤の使用用途

1. 自動車産業

自動車の部品やパネルの接着に利用されます。これにより、車両の強度を向上させるだけでなく、外部からのノイズや振動を軽減し、乗車快適性を高めることができます。

2. 建築産業

建材の接着や絶縁材の固定などに使用されます。窓枠やドアの取り付け、断熱材の固定、さらには屋根材の貼り付けにも適しています。

3. 家具製造

家具の製造において、木材や合板の接着に使用されます。堅牢な接着を提供し、耐久性のある家具の製造に貢献します。

4. 電子機器産業

電子機器の組み立てにも広く利用されます。基板やコンポーネントの固定、ケーブルの保護などで使用され、電子機器の信頼性を向上させます。

5. 靴製造

靴底と靴の上部を接着する際に使用されます。靴の強度を高め、耐久性を向上させるために欠かせない材料です。

6. 包装産業

包装材料の接着や封緘に使用されます。食品や医薬品などの包装を安全かつ衛生的に保つ役割を果たします。

7. 航空宇宙産業

航空機の製造においても使用されます。軽量で強固な接着を提供し、航空機の性能向上に寄与します。

ウレタン接着剤の原理

ウレタン接着剤の主要な成分は、イソシアネートとポリオールです。これらの成分が混合されると、イソシアネートとポリオールの間で反応が起こり、ウレタン結合が形成されます。この化学反応によって、強力な分子間結合が生じ、接着剤が基材としっかりと結びつきます。

また、ウレタン接着剤は化学反応だけでなく、物理的な結合も提供します。ウレタン接着剤は粘性が高く、液体状態で基材に塗布されます。

その後、接着剤が硬化する過程で基材との物理的な結合が形成され、この物理的な結合によっても接着強度が向上が可能です。

ウレタン接着剤の種類

1. 一成分ウレタン接着剤

一成分ウレタン接着剤は、硬化剤を混ぜる必要がないため、使用が簡便です。これは主にDIYや小規模な現場で使用され、硬化は湿気を利用して行われ短時間で硬化する特徴があります。耐久性や接着力は一般的に低いですが、簡易的な用途に適しています。

2. 二成分ウレタン接着剤

二成分ウレタン接着剤は、硬化剤を接着剤と混ぜて使用します。これにより、硬化の制御が可能で、より高い接着強度と耐久性が得られます。木材、プラスチック、金属など、さまざまな材料の接着に使用され、工業的な用途に広く適用される接着剤です。

3. 柔軟性の高いウレタン接着剤

柔軟性のあるウレタン接着剤は、温度変化や振動に耐える必要がある場所で使用されます。車両や建築など、高い耐久性と柔軟性が求められる場面に適しています。

4. 高強度ウレタン接着剤

高強度ウレタン接着剤は、非常に強力な接着性能を持ち、金属同士や異なる材料間の接着に使用されます。自動車産業や航空産業など、厳しい環境下での使用に適しています。

5. 耐熱ウレタン接着剤

耐熱ウレタン接着剤は、高温環境での使用に適した種類です。耐熱性が高く、高温での変形や劣化が少ないため、エンジン部品や熱処理装置などで使用されます。

6. 食品接触用ウレタン接着剤

食品加工産業や医薬品業界など、衛生的な環境で使用される場合に適したウレタン接着剤です。安全基準を満たし、食品や医薬品との接触に対して安全性が保たれます。

ウレタン接着剤のその他情報

表面準備の重要性

ウレタン接着剤の効果的な接着には、基材表面の準備が重要です。基材表面は汚れや酸化物で覆われていることがあり、これらの物質が接着の効果を低下させる可能性があります。適切な表面処理を行うことで、接着剤が基材としっかりと結合し、優れた接着強度が得られます。

参考文献
https://www.haraga-secchaku.info/app/download/10569310879/171109
https://www.etec.jsr.co.jp/technical/249/

ウェッジプリズム

ウェッジプリズムとは

プリズム(prism)とは、透明な物質で作った三角柱です。素材には、ガラスやプラスチックが用いられます。プリズムに平行光線やレーザー光線を当てると、反射されたり屈折されたりします。

ウェッジプリズムは、リズレープリズムとも言われ、傾斜した光学面があるプリズムを指します。通常は、1面がもう片面に対して非常に小さい角度で傾斜しています。

ウェッジプリズムに入った光は厚い方へ屈折するため、特別な角度に光を屈折させるときに用いられます。

ウェッジプリズムの使用用途

ウェッジプリズムは、光を微小な角度に偏角する(偏向させる)用途に用いられます。偏角とは、プリズムによる光の屈折において、入射光線と射出光線が作る角のことで、プリズムの頂角(三角形の底辺に向かい合っている角)と屈折率によって異なります。

単体もしくは他のウェッジプリズムと組み合わせて用いることで、ビームステアリングに利用できます。ビームステアリング部品は、レーザーを搭載する多くの光学システムに不可欠な要素で、内視鏡レーザーメスなどにも使用されています。

ウェッジプリズムの原理

ウェッジプリズムは、1面がもう片面に対して非常に小さい角度で傾斜しているプリズムです。ウェッジプリズムに入った光は、プリズムの厚い方向へ屈折するので、特別な角度に光を屈折させることができます。これは出射面の角度に依存し、通常、直角面に入射するビームを2°~10°の角度に偏向させます。

レーザーを光源にしてウェッジプリズムを回転させると、軌跡が円を描きます。2枚のウェッジプリズムを使用すると、自由に光ビームを回転させることが可能で、入力したビームに対してどのような方向にも方向付けすることができます。偏角量を最大2倍にすることも可能です。

また、ウェッジプリズムを2枚組み合わせて使うことで、アナモルフィックプリズムとして機能させることができます。アナモルフィックプリズムは、楕円形の半導体レーザー光の縦横の像倍率を変更して、ほぼ円形のビームに変換することに用いられます。逆に、円形のビームを楕円形に変換することも可能です。

参考文献
http://quasar.cc.osaka-kyoiku.ac.jp/colorworld2010/law/prism/prism.htm
https://www.thorlabs.co.jp/newgrouppage9.cfm?objectgroup_id=147
http://www.bblaser.com/bbl_item/uoptic_wedge_prism.html
https://www.sugitoh.com/product/prism/wedgeprism.html
https://www.sekiyarika.com/lens/22.html

POEスイッチングハブ

POEスイッチングハブとはPOEスイッチングハブ

POEスイッチングハブとは、Ethernetポートから給電する機能を持ったスイッチングハブのことです。

POEは「Power over Ethernet」の略で、Ethernetケーブル (いわゆるLANケーブル) で受電機器に電源を供給する機能を指します。POEの標準規格に対応した機器同士をEthernetケーブルで接続することで使用します。

スイッチングハブとは、複数のコンピュータ同士で通信を行う際、ネットワークを効率的に中継する機器のことです。Ethernetという通信規格が使用され、Ethenetポートを使用してコンピュータのやり取りを中継します。

スイッチングハブは1990年代に製品が発売されました。その頃のネットワークは10Gbpsが一般的なスピードでしたが、現在では100Gbpsやそれ以上の通信速度に上がっており、スイッチングハブもこのスピードに対応した製品が発売されています。

POEスイッチングハブの使用用途

POEスイッチングハブは、Ethernet通信によるネットワーク上で使用されます。以下は、POEスイッチングハブに接続される機器の一例です。

  • IP電話機やネットワークカメラ
  • WiFiアクセスポイント
  • 照明器具
  • スイッチングハブ

POE対応受信機器は電源ケーブルが不要となるため、遠隔地に配置される機器に適しています。したがって、監視カメラなどに多く使用されます。

ただし、POEスイッチングハブによって給電可能機器数や電源容量などの仕様が異なるため注意が必要です。

POEスイッチングハブの原理

POEスイッチングハブはPOE機能とスイッチングハブ機能を有する装置です。それぞれの機能は、以下の通りです。

1. POE機能

POE機能とは、LANケーブルの配線を使用して給電する機能です。LANケーブルは2本4対の細い芯線がまとまったケーブルです。

100Mbps以下の通信では、送信用と受信用の2対しか使用していませんが、1Gbps以上の通信では4対全て使用します。給電方式にはTypeAとTypeBがあります。

TypeAは通信線と電源線を共有する方式で、1Gbps以上の通信ではこちらを使用します。TypeBは、100Mbps以下では使用されない2対を使用して給電する方式です。

2. スイッチングハブ機能

スイッチングハブとは、Ethernet通信を効率的に中継する機能です。ただのハブも中継機能がありますが、入ってきた通信データを接続された全機器に再送信する特徴があります。

通信相手以外にも届いてしまうことから、ネットワークが渋滞しやすい欠点があります。それに対してスイッチングハブは、MACアドレスという機器固有アドレスを使用して通信すべき相手を特定します。必要な機器にのみデータを送信するため、効率的に信号を中継可能です。

POEスイッチングハブのその他情報

1. PoEの規格

PoEは、アメリカの標準化団体であるIEEE (Institute of Electrical and Electronics Engineers) によって規格として定義されました。規格化によって受給電する機器同士のメーカーが異なる場合も接続が可能です。

PoEの規格は、IEEE802.3afおよびIEEE802.3atにて定義されています。IEEE802.3afは少し古い規格で、より高い電力出力に対応できるようにIEEE802.3atが策定されました。IEEE802.3atは「PoE+」と表記されることが多く、最近のPoEスイッチングハブはPoE+に対応している製品が増加傾向です。

PoEは供給電力に応じて0~8までクラスが分かれており、クラスが大きいほど電源供給能力が上がります。最大のクラス8では給電電力90W、受電電力73Wと定義されています。

2. PoEスイッチングハブのパススルー

PoE受電対応のPoEスイッチングハブが販売されています。この製品は、POE給電機器からの電力をPOE受電機器に伝達することが可能です。この機能をパススルーと呼びます。

通常であれば、最大距離が100mまでと定められているPoEですが、パススルーによって合計200mの伝送距離を実現することが可能となります。大規模な工場などで役立つ機能です。

パススルーを利用する際は、総電力量が最大値を超えないように設計する必要があります。PoEで利用できる電力量は大きくないため、多数の機器をPoEスイッチングハブに接続すると容易に最大電力量を超えてしまいます。

参考文献
https://www.jp.netgear.com/business/solutions/feature/PoE/
https://www.jp.netgear.com/business/solutions/feature/PoE/default.aspx
https://www.netgear.jp/faqDetail/919.html

高周波電源

高周波電源とは

高周波電源 (英: radio frequency power supply) とは、数kHzから数百kHz程度の周波数で、一定の電圧を出力する電源のことです。

スイッチング素子によって電源の種類が分類され、トランジスタを用いるものと真空管を用いるものがあります。真空管式は古くから用いられ、大型の送信管やトランスを用いるので電源のサイズが大きくなります。

一方、トランジスタを用いる方法は、近年、MOSFETと呼ばれる素子を利用したインバーターの開発が進み、メリットは小型化と電源出力の効率向上です。高周波電源は、誘導加熱と呼ばれる手法で、主に物体を加熱するのに使われます。

産業分野での用途は、焼入れ、電縫管溶接、薄鋼板加熱、及びプラズマ発生、洗浄などです。

高周波電源の使用用途

高周波電源は、高周波誘導加熱において、物体を加熱するための渦電流の生成に使用されます。具体的な使用用途は、以下のとおりです。

  • マイクロ波・電磁誘導加熱
  • プラズマ発生
  • 表面改質
  • 洗浄

半導体製造や液晶製造、MEMS製造、太陽電池製造、プラズマ洗浄、鉄鋼・鍛造業界などで使用されます。また、新素材業界、食品製造、建材製造、木材乾燥、医用温熱治療、電子機器、自動車、ビニール融着などの産業分野での使用も増えています。

プラズマ発生用の高周波電源は、高周波電界によりプラズマを励起させることで、プラズマを形成するイオンや電子を加熱することが可能です。高分子材料などの表面に照射することで、官能基の種類を選択したり、表面のラジカル種を制御したりすることで、機能性材料の開発にも利用されます。

高周波電源の原理

高周波電源を生成するためには、入力された交流電源を一旦直流へと変換し、インバータを通した後、再度交流への変換が必要になります。まず、交流電源は、ブリッジダイオードを用いて直流へ変換されます。

ブリッジダイオードは、ブリッジ接続された6個のダイオードを1つにまとめた素子です。交流電源の負電圧側を反転させることで、直流電圧を出力することが可能です。次に、直流電圧をスイッチング素子を用いて矩形波へ変換し、この矩形波をマッチングトランスに接続します。

そして、トランスの巻き数に応じた電圧変換が施され、最終的に共振回路において交流電源へ変換されます。

高周波電源の種類

高周波電源装置 (インバーター) は、スイッチング素子により分類されます。

1. サイリスタインバーター

発振素子にサイリスタを使用しています。 商用電源周波数〜10kHz、高電圧向きで、素子は大きめです。    

2. バイポーラトランジスタインバーター

小型発振器500W〜2kWに向いています。素子が小型で、ハンディタイプ等に使われます。

3. IGBTインバーター

IGBTは、「Insulated Gate Bipolar Transistor」の略で、「絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ」です。素子が大きく、大電流用途・直列共振回路向きです。周波数10kHz〜50kHz、大出力用です。

4. MOSFETインバーター

MOSFETは、「Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor」の略で、「金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ」と呼ばれます。高周波用途向きで、他の素子に比べ小型です。周波数100kHz 〜400kHzが多く、大出力には向いていません。

5. 真空管系

高周波用途に向き、自励発振型で周波数は100kHz 〜10MHz程度です。大型送信管や大型トランスを使用するので装置が大きくなります。

高周波電源のその他情報

電源制御の種類

1. 電圧制御
サイリスタなどで、DC電圧を抑制する素子を使った制御方式です。周波数が固定され、電流浸透深さを固定できるため、焼入れに向いています。

電源コンデンサで平坦化の必要があるので、回路が複雑で高価です。

2. 電流制御
発振器側では、指示された電流値に合うように、負荷抵抗値を自動調整して周波数を変化させるので、出力電流値が一定です。したがって、発振周波数は常に変化します。

3. 電力制御
DC部の電圧と電流値を掛け合わせて、投入電力値を算出します。そして、指示値に対して出力を制御します。

4. PWM制御
小型の発振器で見られる制御方式です。パルス幅 (デューティ比) を変化させる制御方式で、周期は一定のままです。

参考文献
http://www.nikoha.co.jp/high-frequency_supply/cat05_class02/1441.html
http://www.tokyo-seiden.co.jp/tag/ps-hf/

高周波誘導加熱装置

高周波誘導加熱装置とは高周波誘導加熱装置

高周波誘導加熱装置 (英: high frequency induction heating device) とは、高周波誘導により加熱する装置です。

金属体を入れたコイルに交流を流すと、コイルの中を流れる電流により磁界が発生し、誘導損失、即ちヒステリシス損が生じて熱が発生します。同時に、交流によって変化する磁場中で発生するのは、電磁誘導による渦状の電流、即ち渦電流です。この渦電流はジュール熱を発生させて渦電流損が起こります。

高周波誘導加熱装置は、ヒステリシス損と渦電流損の2つの加熱原理を活用して加熱を行います。被加熱物に単位面積・単位時間当たりに供給されるエネルギーが大きく、高速加熱ができる点が特徴です。

高周波誘導加熱装置の使用用途

高周波誘導加熱は、金属などの導体を非接触で加熱できるため、金属の溶解や焼入れ、ろう付けなどによく使われます。身近な例は、IHクッキングヒーターです。この他、樹脂や木材、繊維、食品、医療などにも利用されます。

熱可塑性樹脂の場合、樹脂を金型でプレスしながら誘導加熱を行うことで、樹脂の溶着が可能です。また、食品製造の場合、多量の食品を加工する際に高周波誘導加熱装置を工場ラインに組み込み、食品を急速に解凍することができます。

医療現場では、がん温熱治療などが開発されており、高周波誘導加熱法も利用されています。

高周波誘導加熱装置の原理

高周波誘導加熱は、電磁誘導を利用して物体を加熱する方法です。被加熱物に直接電流を流すか、導電性の容器に電流を流して加熱するかによって、直接加熱方式と間接加熱方式とに分類できます。

1. 直接加熱方式

一般に電磁誘導の法則では、コイルに交流電流を流すと、その中心を通過し外部を取り囲むように磁束が発生します。この磁束の変化を妨げるように、金属内に発生するのは渦電流です。

この渦電流の大きさと、金属が持つ電気抵抗に応じて金属内にジュール熱が発生します。直接加熱方式では、このように金属内に直接渦電流を発生させることで、被加熱物を直接加熱が可能です。

2. 間接加熱方式

間接加熱方式では、セラミックなどの絶縁体を加熱する場合で、被加熱物に渦電流を生成することができません。そこで導電性の容器に被加熱物を入れ、容器を温めることで間接的な加熱が可能です。

加熱効率を高めるためには、被加熱物の外形と加熱コイルのギャップを小さくすることで、透過する磁束密度を高めます。さらに、交流電源の周波数を、数十Hzから数百kHzの間で制御することで加熱します。

高周波誘導加熱装置のその他情報

1. 高周波誘導加熱装置の長所

均一加熱
電磁誘導で生じる渦電流に対する抵抗加熱による発熱なので、被加熱物の内部から均一に加熱されます。

急速加熱
発信機を制御することで被加熱物に対して瞬時に高周波は与えることができ、さらに内部自己発熱であるため急速加熱が可能です。外部から熱を加える加熱炉と比較して生産性に優れ、さらに待機加熱も不要なので、低コストな生産方式です。

選択加熱
アルミニウム合金と鋼などのクラッド鋼のような複合材料であっても、そのうち電気抵抗率の高い材料を使用した部分のみを、選択的に加熱できます。

高いエネルギー効率
一般的な加熱炉では燃焼や発熱体による外部加熱になるため、被加熱物はもちろん、炉の構成物や雰囲気などが余計に加熱されてエネルギーロスが生じています。高周波誘導加熱装置では、被熱処理物のみが自己発熱で加熱されるため、無駄がなく、高いエネルギー効率での熱処理が可能です。

2. 高周波誘導加熱装置の短所

設備投資が高価
高周波誘導加熱には、高周波電源や制御装置が高価であるうえ、周囲への電磁波漏れの対策設備などが必要になるため、初期の設備投資が高価というデメリットがあります。

形状選択性が低い
被加熱物の電界が不均一になると、発熱自体も不均一になるため温度ムラが生じてしまい、最悪の場合溶融するなどのトラブルに繋がる可能性があります。そのため、被加熱物は円柱などの対称性の高い形状であることが望ましく、角材や歯車のような複雑な形状の物は、均一に加熱するのが困難です。

個別・部分加熱
高周波誘導加熱は、被加熱物を均一に加熱するために設計された任意形状のコイルにより、被加熱物の全体もしくは一部分のみを加熱する方式です。このため、基本的には一個流し処理になるため、外部加熱のようなバッチ式の大量同時処理ができません。製品や生産の状況によっては生産性が低下するデメリットもあります。

参考文献
https://www.inductionheating.jp/technical/about_ih/
https://www.avio.co.jp/products/assem/principle/highfrequency/
http://www.vinita.co.jp/institute/radiofrequency/010070.html
https://i-mecs.com/highfrequency-etc/index30.html

電動トルクレンチ

電動トルクレンチとは

電動トルクレンチ

電動トルクレンチとは、ボルトやナットの締結作業をモーターなどの電気による動力源によって行う工具のことです。

ナットランナと呼ばれる場合もあります。電動トルクレンチは、電動ソケットレンチとトルクレンチの役割を一挙に担うことによって、高速でボルト・ナットを規定トルクで締め付けられます。ボルトやナットの締結作業の効率を飛躍的に向上させられる電動工具です。

電動トルクレンチには仮締めから最終目標の条件 (締結トルクや回転角度) まで行うもの以外に、仮締めまでを電動で行い、最終の締め付けは手動で行うことができる製品もあります。一部を手動で作業するため、半自動電動トルクレンチと呼びます。

電動トルクレンチの使用用途

電動トルクレンチは締結するボルトやナットの数が多い作業、作業スピードが求められる現場の他、人力で締め付けるのが困難な高トルクの締結作業に使用されます。例えば、鉄骨構造の大型建築物では、多数のボルト締結が必要です。

作業効率の向上は、工期短縮にもつながります。また、送電線鉄塔や風力発電用風車の建設の場合、高所での作業となるため、作業者がバランスを崩せば転落事故につながりかねません。

電動トルクレンチは反力を受け止めるサポート機構や作業者が操作する部分には応力が発生しにくい構造にすることで、安全かつ効率的な作業ができます。大きなトルクが必要な作業としては、例えばISO方式の大型車用10穴ホイールナットの規定トルクは、600N・mと非常に高きなトルクです。

3軸車であれば、6輪分で60本締め付けなければなりません。電動トルクレンチは、大きなトルクで多数の締結が求められる作業に適した工具です。

電動トルクレンチの原理

電動トルクレンチは電気モーターによる回転によって締結作業を行います。小型のモーターでも大きなトルクまで締め付けられるよう、減速機機構が組み込まれています。減速機に多く用いられているのは、遊星歯車機構です。また設定したトルクで作業を完了させるためのクラッチ機構や角度管理による作業にも対応できるよう、角度検出機構も組み込まれています。

電動トルクレンチの特徴

電動トルクレンチはインパクトレンチのような打撃音が発生しないため、夜間や住宅地での作業に使用に向いています。加騒音や振動が少ないことは、労働災害の予防にも役立つ工具です。作業者の身体的負担が減るほか、振動が原因となって引き起こされる手腕振動症候群や手根管症候群や、騒音による難聴などの発症リスクを低減できます。

一部の製品には、コンピューターと接続することによって作業自体の管理を行うことができるものがあります。これは「どのボルト・ナットがどれくらいのトルクで締め付けられたか」を記録しデータ化することにより、締め忘れによる事故を防ぐとともに作業手順の確認を行うことが可能です。

多くのメリットがありますが、大トルクに対応するものは重量増が避けられません。大型の電動トルクレンチを使用する際には、ダンパーで持ち上げをサポートするレンチハンガーを使用する必要があるため、作業場の広さや収納場所の制約を受けるというデメリットがあります。

電動トルクレンチのその他情報

1. 小型の電動トルクレンチ

小型電動トルクレンチは手持ちで使われることが多く、バッテリー充電式が多く利用されています。充電式は電源コードが無いため、作業動作や配置に制限がないメリットがあります。

また、電動トルクレンチに要求されるトルク管理も、ワイアレスでホストと通信ができる機能を保持している機種も多く、測定したデータの送信、制御信号の受信が可能です。この機能はコード式であっても同様に機能することができるため、工場内のデータ管理を一元化できます。

2. 電動トルクレンチによるトルク管理

電動トルクレンチは、締付時のトルクとその角度や速度の変化をモニターしながら動作します。作業の記録は電動トルクレンチ自体で記憶したり、ワイヤレスでホストへ転送し、組立結果のデータとして管理できます。また、これらの機能を利用すれば、ボルトの締付けの良否を判定することも可能です。例えば、ボルトを斜めに差し込んでしまう斜め締めやワッシャの挿入漏れ、2枚挿入などをトルクのデータから検出できます。

また、高機能な機種では、電動トルクレンチの姿勢や位置の検出にも対応しています。締結する穴の位置を判断して、締め付けているボルトやナットが指定されたものに合致しているかどうか判断したり、ボルトやナットの仕様を作業位置から判断して、締付トルクを自動的に変更したりすることも可能です。

参考文献
https://www.plarad.net/nutrunner/
https://www.tohnichi.co.jp/products/detail/253
https://hytorc.co.jp/product/liongun.html
https://www.tohnichi.co.jp/

電動グリッパ

電動グリッパとは

電動グリッパ

電動グリッパとは、電動モーターを使用して対象物をつかむための装置です。

グリッパ (Gripper) は物体を掴んで保持するための機構です。その中でも電動で駆動し、物体を掴む装置を電動グリッパと呼びます。一般的にロボットアームや自動機械に組み込まれ、対象物をつかんで移動するまたは解放するために使用されます。

グリッパの形状は保持する対象物の形状や表面性状などによって異なります。ただし、最も汎用的に使用されるグリッパは、2本指で物体を挟む二指平行グリッパです。ロボットアームなどとして広く活躍しています。

電動グリッパは空気圧グリッパと比較して精密な制御が可能です。また、対象物の大きさが変化する場合や、掴む力を必要に応じて変化させたい場合にも有利です。

電動グリッパの使用用途

電動グリッパは様々な用途で使用されます。以下はその一例です。

1. 製造業

自動車製造においては部品の組み立てや車体の溶接、塗装などの工程に電動グリッパが使用されます。ロボットアームに取り付けられ、自動車のドアやパネルなどの部品をつかんで組み立てたり、車体を移動させたりします。また、電子機器産業においては、基板やコネクタなどの部品を適切な位置に配置するために使用される場合も多いです。

2. 物流

電動グリッパは自動倉庫のピッキングロボットに組み込まれ、棚から商品をつかんで運搬するのに使用されます。これにより、効率的な在庫管理と迅速な発送が可能です。配送センターでは荷物の積み込み作業で使用される場合もあります。

3. 医療機器

精密な手術を実行するための手術ロボットには、微細な操作を可能にする電動グリッパが装備されています。これにより、手術中に必要な器具を正確に操作することが可能です。手術ロボットの活用により、外科手術の精度や技術を向上させることができます。

4. 航空宇宙

惑星探査機には目的地の地表サンプルを採取するためのアームが装備されています。これらのアームには、試料をつかんで採取するための電動グリッパが組み込まれている場合も多いです。採取された試料は地球に持ち帰られて分析されることがあります。

電動グリッパの原理

電動グリッパはグリップと直動機構、モーターなどで構成されます。

1. グリップ

電動グリッパのグリップは、対象物をつかむ部分です。一般的には可動部品であり、対象物に密着してしっかりとつかむように設計されています。掴む力を制御したい場合には、これにロードセルなどのセンサが組み込まれる場合もあります。

形状や素材は、対象物や使用環境に応じて選定します。例えば、ゴム製の爪は滑りにくく、柔らかな素材にも対応できます。鋼鉄製は堅牢で、摩耗や衝撃に強い点が特徴です。

2. 直動機構

直動機構はアームを開閉するための構造部品です。一般的にはスクリューやレールなどの機構を使用して、アームを正確に移動させて開閉動作が制御します。モーターからの動力を受け取り、その動力をアームの動きに変換する役割を果たします。

3. モーター

動力源として使用されるのは一般的に電動モーターであり、直動機構を駆動してアームの開閉を制御する部品です。一般的に使用されるモーターには直流モーターやステッピングモーターなどがあります。これらのモーターは高いトルクや精密な制御が可能であり、グリッパの動作を効率的に制御することが可能です。

モータの回転方向と速度を制御することで開閉動作を制御します。モータに内蔵されたロータリーエンコーダから回転数を読み取ることで、開閉の幅をフィードバックする仕組みが多く採用されます。これらの情報に応じてプロセス制御やPID制御を構築することで、精密な制御を実現することが可能です。

電動グリッパの選び方

電動グリッパを選ぶ際は、以下の選定要素を考慮することが重要です。

1. モーター出力

電動グリッパのモーター出力はつかむ対象物の重さや操作する環境に応じて選択する必要があります。重い対象物を持ち上げる場合や、操作に速度や力が必要な場合は、より高出力のモーターが必要です。一般的にはkWなどの単位で表され、動作速度はrpmなどの単位で表されます。

2. 動作精度

電動グリッパの動作精度は対象物を正確につかむために重要な要素です。特に精密な組み立て作業や検査作業などでは高い動作精度が求められます。モーターの制御性や直動機構の精度によって決まる要素です。

3. グリップ形状・素材

グリップの形状や素材は、つかむ対象物に合わせて選択する必要があります。滑り止め加工が施されたグリップは、滑りやすい対象物をしっかりとつかむのに有利です。また、グリップの形状も、対象物の形状やサイズに合わせて選択する必要があります。

4. インターフェイス

電動グリッパの制御方法も重要な要素です。一般的なインターフェイスにはアナログ入力やシリアル通信などがあります。特定の制御システムやロボットアームとの互換性を考慮して、適切なインターフェイスを選択します。

参考文献
https://www.orientalmotor.co.jp/products/solution_application/detail15/
https://www.nbk1560.com/resources/handling_technology/article/electric-gripper/