高周波電源

高周波電源とは

高周波電源 (英: radio frequency power supply) とは、数kHzから数百kHz程度の周波数で、一定の電圧を出力する電源のことです。

スイッチング素子によって電源の種類が分類され、トランジスタを用いるものと真空管を用いるものがあります。真空管式は古くから用いられ、大型の送信管やトランスを用いるので電源のサイズが大きくなります。

一方、トランジスタを用いる方法は、近年、MOSFETと呼ばれる素子を利用したインバーターの開発が進み、メリットは小型化と電源出力の効率向上です。高周波電源は、誘導加熱と呼ばれる手法で、主に物体を加熱するのに使われます。

産業分野での用途は、焼入れ、電縫管溶接、薄鋼板加熱、及びプラズマ発生、洗浄などです。

高周波電源の使用用途

高周波電源は、高周波誘導加熱において、物体を加熱するための渦電流の生成に使用されます。具体的な使用用途は、以下のとおりです。

  • マイクロ波・電磁誘導加熱
  • プラズマ発生
  • 表面改質
  • 洗浄

半導体製造や液晶製造、MEMS製造、太陽電池製造、プラズマ洗浄、鉄鋼・鍛造業界などで使用されます。また、新素材業界、食品製造、建材製造、木材乾燥、医用温熱治療、電子機器、自動車、ビニール融着などの産業分野での使用も増えています。

プラズマ発生用の高周波電源は、高周波電界によりプラズマを励起させることで、プラズマを形成するイオンや電子を加熱することが可能です。高分子材料などの表面に照射することで、官能基の種類を選択したり、表面のラジカル種を制御したりすることで、機能性材料の開発にも利用されます。

高周波電源の原理

高周波電源を生成するためには、入力された交流電源を一旦直流へと変換し、インバータを通した後、再度交流への変換が必要になります。まず、交流電源は、ブリッジダイオードを用いて直流へ変換されます。

ブリッジダイオードは、ブリッジ接続された6個のダイオードを1つにまとめた素子です。交流電源の負電圧側を反転させることで、直流電圧を出力することが可能です。次に、直流電圧をスイッチング素子を用いて矩形波へ変換し、この矩形波をマッチングトランスに接続します。

そして、トランスの巻き数に応じた電圧変換が施され、最終的に共振回路において交流電源へ変換されます。

高周波電源の種類

高周波電源装置 (インバーター) は、スイッチング素子により分類されます。

1. サイリスタインバーター

発振素子にサイリスタを使用しています。 商用電源周波数〜10kHz、高電圧向きで、素子は大きめです。    

2. バイポーラトランジスタインバーター

小型発振器500W〜2kWに向いています。素子が小型で、ハンディタイプ等に使われます。

3. IGBTインバーター

IGBTは、「Insulated Gate Bipolar Transistor」の略で、「絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ」です。素子が大きく、大電流用途・直列共振回路向きです。周波数10kHz〜50kHz、大出力用です。

4. MOSFETインバーター

MOSFETは、「Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor」の略で、「金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ」と呼ばれます。高周波用途向きで、他の素子に比べ小型です。周波数100kHz 〜400kHzが多く、大出力には向いていません。

5. 真空管系

高周波用途に向き、自励発振型で周波数は100kHz 〜10MHz程度です。大型送信管や大型トランスを使用するので装置が大きくなります。

高周波電源のその他情報

電源制御の種類

1. 電圧制御
サイリスタなどで、DC電圧を抑制する素子を使った制御方式です。周波数が固定され、電流浸透深さを固定できるため、焼入れに向いています。

電源コンデンサで平坦化の必要があるので、回路が複雑で高価です。

2. 電流制御
発振器側では、指示された電流値に合うように、負荷抵抗値を自動調整して周波数を変化させるので、出力電流値が一定です。したがって、発振周波数は常に変化します。

3. 電力制御
DC部の電圧と電流値を掛け合わせて、投入電力値を算出します。そして、指示値に対して出力を制御します。

4. PWM制御
小型の発振器で見られる制御方式です。パルス幅 (デューティ比) を変化させる制御方式で、周期は一定のままです。

参考文献
http://www.nikoha.co.jp/high-frequency_supply/cat05_class02/1441.html
http://www.tokyo-seiden.co.jp/tag/ps-hf/

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