ラテックス手袋

ラテックス手袋とは

ラテックス手袋

ラテックス手袋は実験・医療用に使われる、使い捨て (ディスポタイプ) の手袋の一種です。

ラテックスはゴムの木から採取される天然ゴムです。ゴムでできているため、柔らかくフィットする上に、滑りにくいので細かい作業に向いています。

一方、耐油性・耐薬性は低いため注意が必要です。また、一部の人にはアレルギー反応を引き起こす危険性があるため、場合によっては合成ゴムでできたニトリル手袋が利用されています。

ラテックス手袋の使用用途

ラテックス手袋は、一部の実験室や医療現場において使われています。耐油性・耐薬性が低いため、薬品を取り扱う際は注意が必要です。

使用する際に最も配慮すべきことは、アレルギーの危険性です。実験者・医療者の健康はもちろんですが、医療用の場合は、医療を行う患者に危険を及ぼす可能性があります。天然ゴムに含まれるラテックスタンパク質と接触することで、痒み、蕁麻疹など症状を引き起こします。

頻繁にラテックス手袋を使用していると、アレルギーを生じやすいという報告もあるため、実験者・医療者は特に注意が必要です。

ラテックス手袋の原理

使い捨て手袋は、種類やグレードが複数存在するため、用途に応じて適切に選ぶ必要があります。特に医療用手袋は、JIS規格 (日本工業規格) において品質の水準が厳しく決められています。よく使用される使い捨て手袋には、ラテックス手袋の他に、ポリエチレン手袋、PVC手袋、ニトリル手袋があります。

1. ポリエチレン手袋

低価格ですので、気軽に使えるため広く普及しています。食品衛生法に適合しているものが多いため、食品製造の現場よく使われていますが、フィット感はないので細かい作業には向いていません。

2. PVC手袋

塩化ビニールでできており、薬品や油にも強く、幅広い現場で用いられています。フィット感がありますが食品へ使用することはできません。

3. ニトリル手袋

ニトリル手袋は、合成ゴムでできており、ラッテクス手袋と同様に、手によくフィットします。ラテックスアレルギーを避けるため、こちらを使う場合があります。ラテックス手袋よりも、耐油性・耐薬性が高いですが、価格はやや高価です。

ラテックス袋のその他情報

1. 医療用のラテックス手袋

医療従事者が手袋を使用する目的には大きく分けて手術、検査や検診、その他の作業の3つに大別されます。

手術に使用される手袋は厳格な管理が必要であり、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律 (薬機法) 」でその製造販売が規制されています。

分類としては、クラス2の「管理医療機器」として取り扱われ、製造や販売には第三者認証機関の認証が必要です。また検査や検診に使用される手袋についても、クラス1の「一般医療機器」として取り扱われ、製造販売は届出制度となっています。

さらに医療用の手袋については品質確保が非常に重要であり、日本の製造においては使用する手袋の用途に応じて、5つのJIS規格が設けられています。それぞれの手袋に関して、寸法 (幅、全長、厚さ) 、ピンホール試験、物性 (引張力、伸び) の検査水準が定められています。

  • JIS T9107「使い捨て手術用ゴム手袋
  • JIS T9113「使い捨て歯科用ゴム手袋」
  • JIS T9114「使い捨て歯科用ビニル手袋」
  • JIS T9115「使い捨て検査・検診用ゴム手袋」
  • JIS T9116「使い捨て検査・検診用ビニル手袋」

一方で、世界的な規格としては、ASTMインターナショナル (英: ASTM International) の認定・発行するASTM規格があります。ASTMインターナショナルは世界最大規模の国際標準化・規格設定機関です。医療用手袋に関しては、以下のASTM規格が知られています。

  • ASTM D3577「Standard Specification for Rubber Surgical Gloves」
  • ASTM D3578「Standard Specification for Rubber Examination Gloves」
  • ASTM D6319「Standard Specification for Nitrile Examination Gloves for Medical Application」
  • ASTM D5250「Standard Specification for Poly(vinyl chloride) Gloves for Medical Application」

2. パウダーフリーのラテックス手袋

ラテックス手袋の中には、着用をスムーズにするために手袋内面にパウダーが塗布されているものがみられますが、医療用のものに関しては、2016年に厚生労働省よりパウダーの付着していない製品への切替えに関する通知「パウダー付き医療用手袋に関する取扱いについて(薬生機審発1227第1号、薬生安発1227第1号)」が発出されています。

背景としては、アメリカ食品医薬品局 (Food and Drug Administration、略称: FDA) により、パウダー付きの医療用手袋の流通を差し止める措置がとられたことにあります。手袋の素材が天然ゴムの場合、パウダーがアレルゲンのキャリアとなりアレルギーを誘発する可能性や、肉芽腫や術後癒着の形成リスクを高める恐れがあり、安全性上のリスク要因になりうると考えられています。

参考文献
https://www.medius.co.jp/asourcenavi/choice/
https://bihin.shop/?mode=f17
https://axel.as-1.co.jp/contents/ap/glove_selection/select2
https://www.foodomejapan.com/user_data/slct/cleanclean/gloves.php
https://allergyportal.jp/provision/latex-allergy/
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000147462.html

送液ポンプ

送液ポンプとは

送液ポンプ

送液ポンプとは液体を供給、移送する目的で利用されるポンプの総称です。

自然界では液体は高いところから低いところへ移動しますが、送液ポンプは液体を低いところから高いところへ、あるいは容器から容器へと移動させることができます。

液体を漏らすことなく移送することはもちろんですが種類によっては正確な液量の吐出や高速・高圧での吐出も可能で、家庭用の給油ポンプから大規模な工場の製造ラインや排水ラインなど、大きさも性能も多種多様なポンプが幅広い目的で利用されています。

送液ポンプの使用用途

送液ポンプは下記のように多くの場所で利用されています。

  •  家庭用給油ポンプ (手動・電動) 
  •  化学実験に使用する装置
  •  医療現場 (点滴、人工透析装置、人工心肺装置など) 
  •  食品製造ラインにおける液体の移送
  •  医薬品製造ラインにおける液体の移送
  •  上下水道施設
  •  汚水処理施設
  •  工場排水移送システム

医療用機器では一定時間内に一定量の液体を注入する、医薬品・食料品製造ラインでは決められた工程で正確な定量注入が必要であるなど、使用目的にあわせて最適な特性を持つポンプを選定します。

送液ポンプの原理

基本的な作動原理は吸込みと吐出の過程を繰り返すことで液体を移送します。

送液ポンプを構造で分類すると、非容積式ポンプと容積式ポンプの2種類に大別されます。

1. 非容積式ポンプ

筐体内で羽根車を回転させて液体を動かす構造で、下記のような特性があります。

  •  高速回転により連続流をつくることができる
  •  吸込み圧、吐出圧は比較的低い
  •  大容量の液体の移送が可能であるが、液体の性質によって流量が変動する

2. 容積式ポンプ

容積式ポンプは、筐体内のコンパートメント(小部屋)内の体積を変化させて液体を移動させる構造を持ち、下記のような特徴があります。

  •  高い吸込み圧、吐出圧を実現可能
  •  吐出圧、流量の正確な設定が可能
  •  送液量は比較的少ない

渦巻ポンプ軸流ポンプ斜流ポンプなどは非容積式ポンプに分類され、他にも内部部品の直線運動により吸引吐出を行うタイプ (ピストンポンププランジャーポンプダイヤフラムポンプ) や内部部品の回転を利用して吸込吐出を行うタイプ (ギアポンプロータリーポンプベーンポンプ) が存在します。

参考文献
https://www.apiste.co.jp/column/detail/id=4599
https://04510.jp/times/articles/-/216?page=1
https://www.nitto-kinzoku.jp/archives/technic/pomp/

濁度計

濁度計とは

濁度計とは、液体試料の濁り具合を評価する計測器です。

環境モニタリングや、工業製品の製造プロセス管理に用いられます。濁度計で採用されている測定方法は、複数存在します。散乱光法、透過光法、散乱光・透過光法、積分球法、表面散乱光法、微粒子カウント法が主流です。

また、濁度計にはセンサーと指示器が一体となったポータブル式と、配管据え置き型のインライン式があります。

濁度計の使用用途

濁度計は浄水場での原水、ろ過水、排水の管理、環境モニタリング、下水処理場や、工業製品の製造プロセス管理の現場において使われています。環境モニタリングへの活用の例として、公共用水域での水質監視や、工場・事業所からの排水の維持管理に使われています。

この用途における濁度計の規格は、日本工業規格 (JISK0801) において定められています。プロセス管理における濁度計の用途としては、製品の品質を保持するためのモニタリングや、生産に用いる純水の品質管理などです。

濁度計の原理

濁度計には多くの測定方法があり、それぞれの原理が存在します。しかし、いずれの測定においても、光の散乱と透過を利用している点は同じです。

綺麗な水ほど多くの光を透過し、濁った水ほど光を散乱させて透過させない性質を利用して水の濁度を評価します。

また、濁度の標準は濁度標準液によって決められています。濁度を正しく評価のためには、測定法ごとに定められた標準液による校正が重要です。

濁度計の種類

濁度計に用いられている各種方法と原理は以下の通りです。

1. 表面散乱光法

表面散乱光法は測定する液面に光を当て、照射光の散乱の度合いから、試料に含まれる懸濁物質の濃度を求めます。表面散乱光法は液面の表面を観察するので、測定液に接する窓が不要です。

窓の汚れが評価結果に影響することがありません。また、表面散乱光法では試料を分取して測定する方法と試料に直接センサーを入れて測定する方法があります。

2. 透過光法

透過光法は試料に片側から光を照射し、透過した光の減衰から濁度を求めます。濁度によって光が遮られるという、基本的な原理を利用した方法です。

透過光法はシンプルな測定法ですが、着色液の影響や窓のよごれの影響を受けやすいため、上水用としては多く用いられるものの、環境測定用にはあまり利用されていません。

3. 散乱光・透過光法

試料に光を当て、その散乱光と透過光を測定し、比をとります。散乱光と透過光との関係は、試料中に含まれる懸濁物質の多さに比例することから濁度が求まります。

また、散乱光と透過光の比によって濁度を計算するため、電源の変動やランプの劣化による影響を受けないという長所があります。また、対応できる濁度のレンジも広いです。

4. 積分球法

積分球法は光源から照射された光をセルに入れ、全入射光 (通過した光) を積分球に取り込みます。全入射光と散乱光との比から、濁度を算出します。試料そのものの影響を受けにくい利点がある一方、メンテナンス等の面からフィールド用としては使用しにくいため、試験室内で使用することが多いです。

5. 表面散乱光法

表面散乱光法は試料の液面に光を当て、散乱光の強さから濁度を求めます。散乱光を測定するので、試料の色に影響を受けにくいですが、比較的濁度が高い試料に用います。

6. 微粒子カウント法

微粒子カウント法は半導体レーザーによって、微粒子の数を測定する方法です。比較的微粒子が少ない試料 (=濁度が低い試料) に使われます。微粒子カウント法はゼロ点校正が不要であること、濁度以外に微粒子個数濃度の測定が可能である点が長所です。

濁度計のその他情報

1. 濁度標準液と濁度単位

濁度の測定は、それぞれ濁度標準液と濁度単位が決められています。例えば、JIS K0101 工業用水試験法において定められているのは、視覚法、透過光法、散乱光法、積分球法について、カリオン標準液とカリオン度、ホルマジン標準液とホルマジン度です。濁度標準液には他に、混和ポリスチレン標準液があります。

2. 測定方法の違いによる注意点

測定方式が違う濁度計では、例え同じ濁度標準液で校正しても、同じ濁度が計測されるとは限りません。濁度標準液によって濁質の粒度分布、光学特性といった性状は異なるため、測定方式によって検出感度が違うからです。

継続した管理には、同じ測定方式と同じ種類の濁度標準液を使った評価をすることが大切です。

参考文献
http://www.kikakurui.com/k0/K0101-2017-01.html
http://www.jeta.or.jp/jeta127/pdf/kangikyou/dakudokei_201307.pdf
https://www.jemima.or.jp/tech/5-02-03.html
http://www.dentan.co.jp/technology/index.html

水質チェッカー

水質チェッカーとは

水質チェッカー

水質チェッカーは、一度の測定で複数の成分を同時に評価できる、他項目水質計です。

測定できる項目は、機器によって異なります。フィールド利用できるように、衝撃への強度と、片手で操作がしやすいように工夫がされています。

機器にもよりますが、水質測定の基本である、pH、電気伝導率、溶存酸素、温度の項目は、ほとんどの水質チェッカーで測定可能です。複数のセンサーがまとめられており、測定結果を表示する本体部とコードで繋がっています。

水質チェッカーの使用用途

水質チェッカーは河川水や地下水、工場などの排水の成分の測定に用いられます。基本にフィールドや実務において利用することを想定しています。センサー部と本体部がコネクタによって繋がれており、センサー部を、測定した水域や水槽に直接投げ込んで測定します。長いケーブルも販売されているため、河川の流れに沿って移動しながらの測定や、深さがある湖沼での測定も可能となります。機器によって、ボーリング調査の際に、そのままパイプに投げ込んで測定することもでき、機器によって様々な使い方ができます。

水質チェッカーの原理

水質チェッカーは、機器によって測定できる項目が異なるため、採用されているセンサーや原理は異なります。水質チェッカーで測定できる、主要な水質測定項目について以下で説明します。

  • pH
    pHは水素イオン濃度を指します。pHは、その溶液の特徴を示すので水質測定の基本となる項目です。pHセンサーは使用前に標準液を用いて校正する必要があります。水質チェッカーにpHの測定方法はガラス電極式がほとんどです。
  • 電気伝導率(EC)
    溶液の中の電気の流れやすさを表します。溶液に物質が溶けていればいるほど、電気伝導率は高くなります。海水には塩分が溶けているため、海水の電気伝導率は高くなります。電気伝導率と塩分濃度の間には一定の関係があり、電気伝導率と温度から、塩分濃度を求めることも可能です。
  • 溶存酸素(DO)
    水中の生き物は、水に溶けている酸素を取り込みます。溶存酸素量は気温などの環境要因によって変化するため、測定項目として用いられています。測定方式は複数あります。センサーは定期的なメンテナンスが必要です。

参考文献
https://www.horiba.com/jp/process-environmental/products-jp/water-quality-measuring-instruments/environment/details/u-50-multiparameter-water-quality-checker-368/
https://www.horiba.com/uploads/media/R002-10-065_01.pdf
https://www.horiba.com/jp/application/material-property-characterization/water-analysis/water-quality-electrochemistry-instrumentation/the-story-of-ph-and-water-quality/the-story-of-do/what-is-do/
https://www.yokogawa.co.jp/library/resources/faqs/an-ph-orp-02-measuring-methods/

水質センサー

水質センサーとは

水質センサーのイメージ

図1. 水質センサーのイメージ

水質センサーとは、水質の測定を行うためのセンサーです。

主な測定項目は、pH (水素イオン濃度) 、ORP (酸素還元電位) 、DO (溶存酸素) 、EC (電気伝導度) 、などですが、単項目測定センサーだけでなく複合センサーもあります。また、これらの項目以外に水温や水位・水圧、塩分濃度やアンモニア、濁度などを測れる製品などさまざまです。

水質センサーの使用用途

水質センサーの主な用途は、研究機関などによる河川や湖沼、海での水質の測定、農業の現場において水耕栽培や液肥・農業排水などの管理、工場での排水管理などです。

地表水、地下水の測定の他、正確な水質管理が必要な水産養殖場の水質検査でも重要な役割を果たしています。上水を利用した後に再生処理したものを中水と呼ばれることがありますが、この中水の品質管理においても水質センサーが利用されています。

水質センサーの原理

水質センサーの主な測定項目は、pH (水素イオン濃度) 、ORP (酸素還元電位) 、DO (溶存酸素) 、EC (電気伝導度) などです。これらはそれぞれの項目が別々に測定される場合と、1つの複合センサーで測定される場合があります。

1. pH 

pHセンサーの模式図

図2. pHセンサーの模式図

pHとは、水素イオン濃度です。測定方式は主にガラス電極法が用いられています。ガラス電極法とは、ガラス電極と比較電極を用い、2つの電極の間に生じる電位差 (電圧) を測定することにより、pHを決定する方法です。

河川水は基本的に7前後を示しますが、場所や条件によって変化するため、水質調査において主要な項目とされています。

2. ORP

ORPとは、酸素還元電位のことです。水の酸化性もしくは還元性を示す指標であり、溶存している酸化体と還元体のバランスによって決まる電位を表します。

測定方法はpH測定と類似しており、mV測定機能を有するpH計本体と貴金属電極 (白金電極または金電極) と比較電極を用いて測定します。

3. DO

蛍光法のDOセンサーの模式図

図3. 蛍光法のDOセンサーの模式図

DOとは溶存酸素を示します。溶存酸素とは、水質に溶存している酸素の量を示し、温度や塩分濃度・気圧によって変動する数値です。水中の生物は水に溶けている酸素を消費して生きているため、生物の生存しやすさの1つの指標として用いられています。

具体的な測定方法は、滴定法、隔膜電極法、蛍光法などです。蛍光法のセンサーでは、蛍光を試料に対して照射し、溶存酸素により消光 (クエンチング) される現象を利用して透過光の減衰から溶存酸素濃度を算出します。すなわち、溶存酸素の濃度が高いほど消光現象が強くなり、検出器で検出される蛍光が少なくなります。

4. EC

ECとは、電気伝導率を表します。電気伝導率は、水中の電気の通りやすさの指標です。溶液に浸した電極間に電気を流すことで測定されます。

純水は電気を通しませんが、水中の電解質が多い溶液は電気が通りやすい性質です。水中の電解質の例としては、排水に溶けている窒素などがあります。

水質センサーの種類

水質センサーには、用途に合わせて設置するタイプと、持ち運びができるポータブルタイプがあります。ポータブルタイプは、棒状のセンサーと、機器モニターなどの操作部がケーブルで繋がっています。

電極を水面に入れて本体のパネルから数値を読み取ります。野外や現場での使用において、落下などのリスクが想定されるため、堅牢で片手でも操作しやすいよう設計されている製品が多いです。また、熱への適応力が高く、温度変化が激しい場所でも測定ができるように開発された機種も販売されています。

参考文献
http://www.weather.co.jp/catalog_html/CWQ-series.html
https://www.rex-rental.jp/large/120/middle/050/product/20920
https://www.horiba.com/

気象観測システム

気象観測システムとは

気象観測システム

気象観測システムは、風速や、雨量・気温・湿度・風向きなどの気象に関連するデータを自動で収集できる機材です。

複数の項目が測定できるセンサーを現場に設置することで、以前は有人で行っていた観測も、無人で行うことができるようになりました。気象観測システムは、消防・地方自治体をはじめ、工場や建築現場などの産業分野から、研究機関まで幅広く利用されています。雨や風に関係する気象データのみならず、Webカメラがついたものも開発されています。既製品も販売されていますが、ユーザーの用途に合わせてオーダーメイドできるものが多いです。

気象観測システムの使用用途

気象観測システムは、複数の気象観測センサーを兼ね備えており、無人で運用できるため、あらゆるシーンで使われています。農業や研究機関など、気象データのモニタリングそのものを目的とした用途から、河川・沿岸の監視といった、消防や地方自治体における防災向けの気象情報を目的としたシステムや、交通事故防止を目的とした、雨量や風速のモニタリングにも、気象観測計は活用されています。

また、近年は夏場の暑さが顕著になっているため、建設現場や野外イベントにおける熱中対策として、暑さ指数(WBGT:Wet Bulb globe temperature)の表示が組み込まれたシステムも活用されています。

気象観測システムの原理

気象観測システムは、気象観測のためのセンサー、得たデータを保存するための記録計(データロガー)、通信機器から構成されます。電源を確保することが難しい環境でも観測できるように、記録計の省電力化や、電池電源への対応などの工夫がなされてきました。気象観測システムにおける、温度や湿度、風速等の観測方法や原理は、項目ごとに異なります。項目ごとのセンサーを必要に応じて選定し組み合わせて、記録計や電源と共に設置します。また、データの出力方法も様々です。データが本体にそのまま保存されるものから、データに応じて警報を出すもの、通信機能を持ちクラウド上への自動アップロードが可能な機種も存在します。

近年、地球温暖化や異常気象の頻発により、局所的な気象観測が必要とされるケースが増えてきました。コストを抑えた簡易型のセンサーを組み合わせた装置から、精度が高く堅牢な高性能の装置まで、選択の幅が広がったため、気象観測データを入手するハードルが下がり、農業施設や地方自治体等にとって業務における重要なデータをもたらしたといえます。

参考文献
http://www.sky-system.net/weather-observation.html
http://u-sonic.co.jp/product/category/detail/sid:5e5df542-018c-4173-be30-3e67b65d7232/pid:5e5df4f4-e2f4-4ddb-80f3-3e2ab65d7232
https://www.wics.co.jp/気象観測システム/
https://fieldpro.jp/word/word-system/
https://www.wics.co.jp/observation-system/

暗渠排水管

暗渠排水管とは

暗渠排水管とは、主に農地において水を管理するための水路の一種です。

暗渠排水とは、地下水位や地表の水を流すために、地下にパイプを埋設する手法です。土壌の水はけの改善や、農業機械の作業効率向上などのメリットがあります。地面に埋めて使用するため、耐久性や施工性、環境への影響を考慮した素材が使用されます。

また、作物や地域にあった施工方法を選ぶ必要があります。例えば、寒冷地では凍結の心配があるため、寒冷地使用の暗渠排水管を用います。

暗渠排水管の使用用途

暗渠排水管は、主に農地(水田・畑地・果樹園等)に設置する場合が多いです。地下水位を下げる点、排水をコントロールする点などにおいて、農業へのメリットをもたらします。

まず、作物の生育環境の改善(根腐れの防止等)として、作物そのものへプラスの効果をもたらします。次に、春先の融雪の促進・地温の向上といった、農地の土壌環境をコントロールしやすくなることや、農業機械が入りやすくなること・農地の汎用性が上がるといった、農地の利用性向上の利点があります。

排水性のアップを期待して一般家庭の庭になどにも設置する場合があります。

暗渠排水管の原理

暗渠排水は地表水の排水を目的としたものと、浸透水の排水を目的としたものに大別されます。暗渠排水管に用いられる素材は、主にポリエチレンが多いです。しかし、埋設する場所や用途・利便性を考えて以下の素材も使われます。

  • 硬質塩ビ管:軽いので取り扱いやすく、適応できる土性の範囲が広いです。一方、低温・衝撃に弱いので注意が必要です。また、軟弱な地盤には向いていません。
  • ポリエチレンパイプ:適応できる土性の範囲が広い上、低温にも強いですが、強度が低いことが欠点です。
  • 塩ビコルゲート管:硬質で、埋設の方法を選択できるという利点がある一方、低温・衝撃に弱いです。
  • ポリエチレンネットパイプ:吸水断面が大きく、低温に強い利点がありますが、適応できる土性は少ないです。
  • コンクリート管:耐圧力性は高いですが、重たく取り扱いにくいので、設置が困難です。
  • 陶管:適応できる土壌の種類は多いですが、重量があるので取り扱いにくく、設置が困難です。
  • ポリエチレンコルゲート管:ポリエチレンに比べて、圧力に対する強度も高く、低温にも強い特徴がありますが、粗度係数がやや高く、水の流れが悪いことが欠点です。

暗渠排水管と疎水材と呼ばれる資材を一緒に埋めます。これを本暗渠と呼びます。疎水材の選定には、透水性の良さ、入手しやすさ、耐久性の良さ、水や土壌を汚染する恐れがないかどうかを考慮して選定されます。入手しやすさ・安全性から、籾殻や砂利、竹などの素材を使用することが多いです。本暗渠を基本として、より排水をスムーズにするための工法を補助渠と呼びます。補助渠の種類には、心土破砕、トレンチ、せん孔暗渠、弾丸暗渠があります。

参考文献
https://www.toyo-green.com/enterprise/detail/Underdrainage.html
https://www.maff.go.jp/j/nousin/noukan/tyotei/kizyun/pdf/06_ankyo_gijutsusho26-36.pdf

放熱ゴム

放熱ゴムとは

放熱ゴムは、熱伝導を促進する材料です。

一般的にゴムは熱を伝えにく材料ですが、フィラーなどの配合技術により、熱伝導性を高めた材料として電子機器の冷却などに用いられます。

接触面に空気のギャップが生じると熱移動の効率が悪化しますが、放熱ゴムはこれらのギャップを埋め、熱伝導を促進させます。材料が柔軟であるため、振動を吸収し、電子機器を振動から守り信頼性を向上させます。

放熱ゴムは柔らかく、各種部品と組み合わされた状態において、熱源からの熱を移動させる役割を担っています。

放熱ゴムの使用用途

近年、電子機器等の小型化が求めらており、機器の熱的な負荷は上昇しています。放熱ゴムは熱伝導率が高く、対象部品に合わせた形状設計が容易であることから、これらの電子機器の熱設計に欠かせないアイテムとなっています。

上記に加えて電気絶縁性があり、加工性が良いことから、電子機器だけでなく自動車を含めた様々な製品に用いられています。電子機器では、電源用トランジスタやパソコン搭載のCPU、LSIなどの電子回路に使用されています。自動車では、HEVやEVに搭載されるバッテリー、モーターなどの駆動系パワーモジュールに使用されています。

放熱ゴムの原理

放熱ゴムには複数の種類が存在しますが、ここではシリコーンタイプの構造を紹介します。シリコンーンタイプは、硬度の高い熱伝導性シリコーンゴムと硬度の低い熱伝導性シリコーンパッドを組みあせた構造をしています。硬度の高いゴムは剛性があり取り扱い性が良好で、硬度の低いゴムは装着面への密着性が良い特徴があります。

一般的に放熱ゴムは、電気絶縁性とともに熱伝導性に優れる特徴を有しています。放熱ゴムは柔軟性が高く、ヒートシンクなどのデバイスに密着し、熱源の熱を効率良くで外部へ放出します。電子デバイスにおいては、過剰の熱が生じた場合に性能を発揮できないため、熱設計および熱管理が重要となります。放熱ゴムは、熱源から冷却エリアへの放熱の媒体として重要な役割を担っています。

一方、製品によっては経年劣化や外的要因によって接着性が低下する場合があります。使用用途に応じて、接着方法もしくは固定方法を検討する必要があります。

参考文献
https://www.silicone.jp/products/notice/131/index2.shtml

放熱グリス

放熱グリスとは放熱グリス

放熱グリスとは、高熱を発生する部品や電子機器の放熱を助けるために使用される熱伝導性の高いグリスのことです。

熱を発生する熱源とヒートシンクなど、熱を拡散するデバイスとの接続部に用いられます。

放熱グリスの使用用途

放熱グリスは、パワートランジスタ、CPUやGPUなどの半導体デバイスにおいて、電気抵抗によって生じた熱を速やかに放熱させるために用いられます。過剰な熱はデバイスの性能を低下させ、デバイスの故障の原因となるため、これらのデバイスを冷却することは欠かせません。

パソコンにおいては、CPUとヒートシンクの間の熱伝導を向上させるために使われています。ハイブリッド車や電気自動車などに搭載されるECUなどにも用いられており、電子デバイスの放熱速度を向上させます。また、LED照明なども高輝度のものやサイズが大きいものに使用する場合は、電子機器の放熱が目的です。

放熱グリスの原理

熱源とヒートシンクなどの放熱部品との接合部においては、接合面のわずかな歪みや、接合表面には微細な凹凸が存在しています。このため、両者の間には空気のギャップやスペースができてしまうことが一般的です。

空気は極めて断熱性が高いため、接合部の熱抵抗は極めて高くなり、放熱の際の熱移動の効率を悪化させます。放熱グリスはこれらのギャップやスペースを埋めることで、接合部の熱伝達を最大化する役割を担います。

放熱グリスの構造

放熱グリスは、揮発性が低く粘性のあるオイル状の成分 (グリス) に、熱伝導度の高い無機粒子などを分散させて、高い熱伝導性を持つように調整されています。性状も高粘度で扱いやすいことから、放熱や熱伝導に関する幅広い分野で利用されています。

放熱グリスの成分となる、グリスとその中に熱伝導性フィラーの特徴は以下のとおりです。

1. グリス

温度による粘度変化が小さいシリコーングリスがよく用いられます。シリコーングリスは、高い耐熱性や化学的安定性を持ち、耐水性にも優れていることが特徴です。そのため、高温環境や潤滑用途以外にも、シール材料や接着剤としても広く使用されています。

放熱グリスの場合、高温環境下にさらされることが多いため、粘度変化が少なく、耐熱性や化学的安定性の高いシリコーングリスは最も適した材料の1つです。

2. 熱伝導性フィラー

放熱グリスでは、ベースとなるグリスの中に熱伝導率の高い金属もしくは金属酸化物の粒子を混ぜ込んでいます。アルミや、銀などの金属粒子やアルミナ酸化マグネシウム窒化アルミニウムなどの金属酸化物粒子が使われます。これらを各々の粒子直径に見合った方法で分散させます。

金属粒子を使用した場合、熱伝導性だけでなく、電子伝導性も発現します。このため、電子伝導性がでてほしくない用途の場合は、金属酸化物粒子を用いた放熱グリス一択です。また、金属は酸化しやすいため物性も変わりやすく、化学的安定性の点からも金属酸化物粒子が使用されることが多いです。

これらの2つの材料を混ぜ合わせる比率によって、電気的特性や熱伝導率が決まります。比率に基づいて、それぞれの放熱グリスの特性が変わります。例えば、高濃度にフィラーを添加した放熱グリスは、低濃度のものと比較して熱伝導率が高いです。

また、放熱グリスは、塗布直後は適度な粘度を有していても、時間の経過と共に劣化して硬化する性質があります。接合する材質の膨張係数の差によってはクラックが入り、熱伝導特性が低下する場合もあります。

放熱グリスのその他情報

放熱グリスの使い方

放熱グリスを使用する際の基本的な使い方は、以下の通りです。

1. 清掃
放熱グリスを塗布する前に、塗布する箇所を清掃する必要があります。汚れや油膜がある場合は、洗剤や溶剤を使用して汚れを落としてください。

2. 放熱グリスの塗布
放熱グリスを適量取り出して、塗布したい箇所に塗布します。放熱グリスの役割は空気層のギャップを埋めて熱を効率的に伝導することです。放熱グリスが過剰であると分厚くなった分、熱伝導距離が長くなり伝熱性が悪くなったり、部品の組み立て上、サイズ的な不具合が生じたりする可能性があるので、注意が必要です。

3. 塗布後の確認
放熱グリスを塗布したら、塗布した箇所が十分に放熱グリスで覆われているかを確認します。過剰な放熱グリスは拭き取っておくことも重要です。

4. 組み立て
放熱グリスを塗布した箇所に、必要な部品を組み立てます。組み立ての際には、指示書などを参考にして、正しい順序で行うことが大切です。

参考文献
https://www.silicone.jp/products/function/heat/index.shtml

微量分光光度計

微量分光光度計とは

微量分光光度計のイメージ

図1. 微量分光光度計のイメージ

微量分光光度計とは、ごく少量サンプルの測定に特化している分光光度計です。

分光光度計と同様に、サンプル中に含まれる特定の物質の濃度を調べる定量分析を目的としています。サンプル中に含まれるDNAや、タンパク質等の量を分析することが可能で、ライフサイエンス分野において幅広く活用されています。

機器自体も小型で扱いやすく、タッチパネルが採用されている機種やデータの外部出力が容易な機種も販売されており、操作性にも優れているのも特徴です。

微量分光光度計の使用用途

微量分光光度計の主な使用用途は、極めて微量の試料からDNA、RNA、オリゴ核酸やタンパク質を定量することです。主に、ライフサイエンス分野の研究開発において使用されています。

核酸およびタンパク質の定量や純度の評価は、ゲノムDNA調製や、RT-qPCR、サンプルの品質管理などにおいて必要なプロセスです。また、細菌培養増殖のモニタリングや経時的測定による速度論的評価も行われます。

微量分光光度計の原理

分光光度計の原理

図2. 分光光度計の原理

微量分光光度計の基本的な原理は、分光光度計と同じです。分光光度計はサンプルに当てた光が、サンプルを透過してどれくらい届くかを元に、サンプルに含まれる特定の物質の濃度を定量します。濃度が高いほど、サンプルに溶けている物質に光が遮られるため、透過率は下がります。

微量分光光度計の構造

分光光度計は、光源、試料セル (微量分光光度計の場合はサンプルポートなど) 、検出器から構成される装置です。光源から発された光を、分光器を使って単色光に分け、サンプルに照射し試料を通過した光 (透過光) を検知器で測ります。

予め既知濃度溶液を用いて透過光の量 (吸光度) と濃度の検量線を作成し、未知試料の濃度を求めます。

微量分光光度計の種類

微量分光光度計は、一般的にごく少量の試料を測定できることが特徴ですが、その最小ボリュームは装置によって異なります。例えば、0.3μLや0.5μL、1μLなどがあり、用いるサンプルに合わせて適切なものを選択することが大切です。

一方、機器によってはある程度量の多い試料測定も対応できるよう、セルに入れて測定する方法やキュベットボードが使えるものがもあります。また、微量分光光度計の中には、アルゴリズムやプログラムが搭載されているものもあり、高度な分析を行うのに役立ちます。

例えば、波長を指定して経時的に測定できるプログラムが搭載されているものは、速度論的分析を行うのに役立ちます。また、スペクトルのリファレンスライブラリと不純物の予測アルゴリズムを搭載しているものでは、サンプル中の不純物を予測して、より正確なサンプル濃度を算出することが可能です。

微量分光光度計のその他情報

1. 微量分光光度計の試料の取り扱い

通常の分光光度計で用いられるセルと微量分光光度計との比較

図3. 通常の分光光度計で用いられるセルと微量分光光度計との比較

通常の分光光度計では、試料をセルに入れて測定を行いますが、微量分光光度計は試料が極微量であるためピペットでサンプルポートに垂らして測定する方法が一般的です。機器によっては微量以外の測定にも対応しており、通常の分光光度計のようにサンプルをセルに入れて分析する方法やキュベットボードを使用することも可能です。

微量分光光度計では、表面張力によって液滴が形成されることが重要であることが多いため、適切な測定ができるよう、それぞれの製品で仕組みが工夫されています。また、蒸発やコンタミネーションのリスクを軽減するよう、試料が密封空間に閉じ込められるような仕組みの装置もあります。

2. 光源

光源には、キセノンフラッシュランプが使用されていることが多いです。キセノンフラッシュランプの特徴は、輝度の高さと、ランプの発熱量が少ないことです。温度変化に弱いサンプルへのダメージを低減することができます。

参考文献
https://www.hitachi-hightech.com/hhs/products/tech/ana/uv/basic/
https://www.an.shimadzu.co.jp/uv/micro.htm
https://www.ikedarika.co.jp/catalog/item/3519.html
https://www.an.shimadzu.co.jp/uv/support/lib/uvtalk/uvtalk2/basic.htm