デジタル照度計

デジタル照度計とは

デジタル照度計

デジタル式照度計とは、人間の視覚によって知覚される光の明るさを測定して数値化する測定器です。

国際単位系 (SI: International System of Units) における照度の単位であるルクス (Lx: Lux0)を用いて測定します。また、デジタル式照度計には連続的に変化する照度を段階的な数値データとして扱えるように、表示板が取り付けられているのが特徴です。

一方でアナログ式照度計には、連続的に変化する照度を連続的な変化を示す針等によって認知できる目盛板が取り付けられています。

デジタル照度計の使用用途

デジタル照度計は、光の明るさを測定する際に使用されます。表示される値が比較的読み取りやすいため、測定の初心者には扱いやすいです。

デジタル照度計には、センサー部と表示部が繋がった一体型、ケーブル等で離しているセパレート型があり、移動に従う場合や屋外にて簡易に照度を調べる場合は一体型、実験や試験などで人工気象室内の値をとる場合はセパレート型が適しています。

一体型は、携帯性が良いので持ち運びに便利なものが多いです。手軽に測定できる安価なものから、特殊環境やデータロガー機能を有する高価なものまであります。セパレート型は、光源の種類や測定環境に合わせた受光部を選択して変更することができたり、多点を同時に測定してデータを記録できたりするものがあります。

また、労働安全衛生規則第604条において、作業面の照度基準ですが、精密な作業は300Lx以上、普通の作業は150Lx以上、粗な作業は70Lx以上となっています。JIS Z9110において、営業室、設計室、玄関ホール等は 750-1,500Lx、役員室、会議室、電算機室等は300-750Lxです。そのため、労働衛生環境を維持する必要のある学校、工場、家、ビル等の施設でも使用されます。

デジタル照度計の原理

照度計の受光部には光の照射によって、電気抵抗が低下するフォトレジスタ、または電流や電圧を発生させるフォトダイオードを組み込んだものが多いです。これらの電子部品を用いると、光の強度を電流値や電圧値にアナログ変換できることから、照度を認知できるようになります。

さらに、アナログ変換された照度の値をデジタル変換するために、A/Dコンバーター (英: Analog-to-digital converter) を回路に組み込み、表示板で数値化します。光の強度を目の感度に合致させるための光学フィルタを受光部の上に設置して、標準光源としてフィラメント型電球を用いて検量線を引き、デジタル照度計の値を校正します。

そのため、標準電球と異なる波長特性を有する蛍光灯、LED照明、異なる天候時の太陽光などの照度は、構造や部品の異なる照度計を用いて測定した場合、異なる照度になることがあります。照度データを取得後に比較する際には、同じ構造や部品で構成された同じ型番のデジタル照度計を用いるような工夫が必要です。

デジタル照度計の選び方

デジタル照度計を選ぶ際には、以下の点を考慮する必要があります。

1. 測定範囲

デジタル照度計を選ぶ上で最も重要なことは、測定をしたい照度範囲に対応しているかどうかです。範囲に加え、精度を重要視する場合は高精度な測定ができる照度計を選ぶ必要があります。

2. 単位と表示

使用する国や業界の標準に合った照度単位を表示できるか確認が必要です。また、デジタル表示が明瞭で読み取りやすいものの方が読み取り間違いを防止できます。

3. 操作性と使いやすさ

ボタンの配置やメニュー構造が分かりやすく、直感的な操作が可能な照度計がポイントです。使いやすいインターフェースがあり、設定やデータの読み取りが簡単なものがおすすめです。

4. 応答時間

照度変化を素早く検知し表示する時間なので、瞬時の変動や高速な動作環境で使用する場合には、短い応答時間を持つ照度計を選ぶことが重要です。必要に応じてアラートや早急な対応を要することもあります。

5. 電源とバッテリー寿命

デジタル照度計は電源を必要としますが、使用する環境に合わせて電池駆動やACアダプター対応などの電源オプションの状況を確認しておきます。また、バッテリー寿命が長く、充電時間が短い製品を選ぶことも重要です。

サーマルカメラ

サーマルカメラとは

サーマルカメラ

サーマルカメラとは、物の表面温度を検出し画像として表示するカメラのことです。

サーマルカメラで撮影された画像はサーモグラフィーと呼ばれています。サーマルカメラで撮影されたサーモグラフィーは、人間の目で見た場合や通常のカメラで撮影した画像と異なり、画像中、温度の高い場所は赤く表示され、低いところは青く表示された画像です。この画像から、見ただけでは判断できない表面温度を知ることができます。

また、サーマルカメラは被写体に接触せず、温度を検出することが可能であるため、被対象物に触れるのが難しい場合にも使用されます。

サーマルカメラの使用用途

サーマルカメラは様々な場面で使用され、具体的な使用例は以下の通りです。

  • 人の体温測定
  • 工場および電気施設等の機械監視

非接触で人の体温を簡易かつ迅速に把握することができるため、人の体温測定に多く使用されています。また、非接触で測定ができるため、工場や電気施設などの機械の運転中の温度変化も、測定者の危険を回避し、測定対象に温度測定の影響を及ぼすことなく測定可能です。

さらに、サーマルカメラは、温度測定以外の目的でも使用されています。温度を感知する機能を利用して、海上のように温度がある程度一定の環境下に温度が異なるものが存在する場合、目視では確認できないほどの存在物でも検知可能です。なお、サーマルカメラは温度を検知するため、夜間や雨などで視界が悪くても存在物を検知することができます。

サーマルカメラの原理

サーマルカメラでは対象物が発する赤外線を検知し、赤外線の強弱を判断して対象物の温度を測定・表示しています。絶対零度以上の物体はすべて赤外線を発しており、このエネルギーは絶対温度の大きさに応じた値になることが分かっているため、赤外線から温度を測ることが可能です。

サーマルカメラは、対象物から発せられた赤外線を内部の検知器で受け取りスキャンした後、A/D変換、温度変換したデータを画像処理して、人の目で見ても分かりやすいように赤や青などの色で示したサーモグラフィー画像として表示しています。

人の視界は可視光の状態に依存するため、天候や時間帯により見え方が左右されますが、サーマルカメラでは対象物が発する赤外線を検知しており、環境の可視光の状態、例えば人間にとって視界が悪くても問題なくサーモグラフィー画像を表示することが可能です。

なお、熱電対や一般家庭でよく使用されている体温計などは、対象物からの熱伝導を利用した接触式で温度を検知しています。これに対して、サーマルカメラは対象物の熱放射を利用しており、直接対象物に触れることなく非接触で温度を測定できる点が大きく異なります。

サーマルカメラの種類

サーマルカメラは、その形態でハンディタイプと据え置き型に分けられ、データの保存方法でオンプレス型とクラウド型に分けられます。

1. ハンディタイプと据え置き型

人間の体温を測定する用途に使用されるサーマルカメラは、ハンディタイプと据え置き型に大きく分けられます。ハンディタイプのサーマルカメラは持ち運びが容易なため、店舗や受付、商業施設など少人数の体温を確実に測定する用途に使用されています。

一方の据え置き型のサーマルカメラは、大人数の体温を一度に測定する場合や恒常的な測定が必要な場所での使用に好適です。なお、据え置き型のサーマルカメラには広範囲の測定に向いているカメラ型やドーム型などの形状があります。

2. オンプレス型とクラウド型

サーマルカメラは、測定データの保存場所により、オンプレミス型とクラウド型に分けられます。オンプレミス型は、自社のサーバーを使用するシステムです。このため、「既存の自社設備を活用できる」「自社システムとの連携などの自由度が高い」というメリットがあります。その反面、運用・保守コストが高いという点がデメリットです。

一方のクラウド型は、クラウドサーバーを使用するシステムです。クラウド型では、「複数拠点でのデータ共有が容易である」「運用・保守コストが安い」というメリットがあります。その一方で、環境によってはセキュリティ面で問題を生じるケースもありますが、サーマルカメラからアプリケーション、安全な接続環境までセットで提供しているサービスもあります。

サーマルカメラのその他情報

1. サーマルカメラによる体温測定

サーマルカメラは通常の体温計と異なり、人間の皮膚の表面温度を測定しています。表面温度は、季節や外部環境の影響を大きく受けるため、冬場に外から部屋の中に入って直後に測定する場合には表面温度は低めに検出され、夏場の運動直後に測定する場合では表面温度は高めに検出されます。

そのため、サーマルカメラを用いて精度高く体温測定をするには、測定前後の環境の違いを考慮した測定を実施することが重要です。精度の高い測定の方法としては、ブラックボディを使用した測定があげられます。

このブラックボディとは、体温キャリブレーション用の装置です。このブラックボディの温度とブラックボディが発する赤外線の強さを基準として、サーマルカメラ内の温度補正を常におこなっています。これにより、サーマルカメラ自体の誤差を低く抑えることが可能です。

2. コロナウイルス感染症対策におけるサーマルカメラ

感染症対策として、日々の体温確認は非常に重要です。サーマルカメラは以下のようなメリットがあることから、既に様々なところに設置され、活用されています。

  • 測定対象物に触れることなく、広範囲の温度変化をリアルタイムで計測可能
  • 物体の出す遠赤外線をとらえるため、暗闇でも検知可能
  • 動いているものであっても素早く撮影して検知可能
  • 遠い場所にあるものでも検知可能
  • 遠赤外線には透過性があるため、視界を遮るものがあったとしても検知可能

サーマルカメラの導入を検討する場合、使用する場所や、何を検査するかによって、重視すべきポイントは異なります。たとえば、不特定多数の人が行き来するような場所では、AI搭載型のサーマルカメラが有効です。

異常温度を検知した場合にはアラートが出される仕組みになっています。大勢の人の往来があり、各人に時間をかけた検査が難しい空港や病院、大型商業施設などで活用されています。

参考文献
https://www.try-e.co.jp/knowledge/thermography.html
https://www.flir.jp/discover/industrial/Difference-between-thermography-thermal/
https://www.nttpc.co.jp/column/iot_mobile/thermal_camera.html
https://www.rakuten.ne.jp/gold/wtw-cctv-camera/erabikata/taion.html

スクリューフィーダ

スクリューフィーダとは

スクリューフィーダ

スクリューフィーダとは、スクリュー状の羽根を使用して、物資を一定の速度で供給するための機械です。

螺旋状のフライトと呼ばれる部分で構成されており、フライトが回転することで物資を送り出します。対象となる物体は粉体が多く、家畜用餌などのさまざまな物資を送り出すために使用されます。

液体ではバルブの開閉によって流量を制御できますが、粉体の場合は運搬速度を変更する必要があります。また、コンベアなどの速度を1カ所だけ変更すると、棚釣りや噴出が起きる場合があります。そのような不具合を起こしにくく、供給量を制御する装置がフィーダです。

フィーダにはスクリューフィーダの他、電磁フィーダ・テーブルフィーダなど様々な方式があります。供給する粉粒体の粒径・強度や処理量、定量供給性など要求性能によって使い分けられています。スクリューフィーダは比較的定量供給性の高いフィーダです。

スクリューフィーダの使用用途

スクリューフィーダは粉体輸送を目的に様々な用途で使用されます。

代表的な用途は畜産業における飼料供給で、養鶏場などで家畜や鳥類の餌を自動で供給するために使われます。家畜のコンディションや時間帯などに応じて、適切量の餌を供給することが可能です。餌を自動で供給することで、飼育員の負担を軽減し、飼育管理の効率化に貢献します。

また、建築現場などでも使用されます。コンクリートやセメントなどの建材を自動で供給するために使用されます。スクリューフィーダは、建材を一定の速度で供給することができ、作業効率の向上に貢献します。

工場における原料供給にも使用されます。特に、粉状の原料を自動で供給するために有効です。原料の供給を一定の速度で行うことができ、生産ラインの安定した動作を支援します。

スクリューフィーダの原理

スクリューフィーダは螺旋状のフライトと呼ばれる部分で構成されており、フライトが回転することで物資を送り出します。

スクリューフィーダは物資の供給を制御できます。回転速度やフライトの形状、コンテナの傾斜角度などを調整することで供給制御します。回転速度の制御はインバータの採用などで対応します。

また、物資の流れを制御するために、バッフルと呼ばれる板をフライト間に配置する場合があります。バッフルは物資の流れを制御し、均一な供給を実現するために使われます。

スクリューフィーダの構造

円筒形の容器に取り付けられたスクリューと呼ばれる螺旋状のフライトで構成されています。フライトは、円筒形の容器の内側に取り付けられ、フライトが回転することで、物資をコンテナから送り出すことができます。フライトは、左巻きの製品と右巻きの製品があり、物資を送り出す方向に応じて選択されます。

スクリューの形状は羽根式だけでなく軸自体がらせん状であるリボン式などがあります。軸の数も1軸・2軸などさまざまです。これらは輸送する粉粒体の特性に合わせて設計されることが一般的です。

スクリューフィーダの選び方

スクリューフィーダはスクリューと粉粒体の摩擦が輸送の駆動力です。したがって、粉粒体の摩耗や形状破壊が起きる恐れがあり、これを避けるためにはスクリューの耐摩耗処理や羽根形状の適切な選択が必要です。破砕が起きやすい粗大粒子の輸送には適していません。

また、物質の性状に応じて選定する必要があります。使用する物質の性質に応じて、適切な材質のスクリューフィーダを選択する必要があります。腐食性のある物質を扱う場合などは耐腐食性の高いステンレスなどのスクリューフィーダを選択する必要があります。

上記を検討した上で、出力能力を選定します。スクリューフィーダの出力は物質の供給速度に影響します。出力は1時間あたりに供給できる物質の量を表し、単位はL/hやkg/hなどで表されます。

スクリューフィーダのその他情報

スクリューフィーダの設置場所

スクリューフィーダはホッパーと呼ばれる逆円錐型の粉体貯留容器の下部に設置されることが一般的で、スクリューの回転によって粉体を押し出して排出します。スクリューで押していくためある程度上方に傾斜している場合でも輸送することが可能です。

またスクリュー内および前段のホッパーが粉粒体によってシールされるため、大気圧と真空など圧力差のある工程間輸送ができる点も特徴です。配管内の気流に乗せて粉体を運ぶ空気輸送においては、シール性の高いスクリューフィーダが用いられます。

参考文献
https://www.screwfeeder.jp/about/86

サーボプレス機

サーボプレス機とは

サーボプレス機(英語: Servo Press Machine)は、サーボモータで「ラム」を直接スライドさせるプレス機です。

サーボモータでスライドを駆動することで、油圧では成立しなかった精密な動作が可能です。

上記により、スライドをNC制御することでアルミニウムやマグネシウム、カーボンファイバーなどの難加工材や、複雑な形状のプレスが出来るようになるというメリットを提供します。

但し、電動化に伴う設備本体のコストが油圧式に比べて上がってしまうという点がデメリットです。

近年はIoTによる上位システムとの連携で大規模な自動化が進んでいます。

サーボプレス機の使用用途

サーボプレス機は輸送機器・電子機器などの製造過程に置いて、主に外形側の部品を金型を用いて成型することを目的に利用されます。

サーボプレス機を用いることによる最大のメリットは加工用途ごとに最適なモーション・ストロークの条件変更がNC制御を用いて実装できる点です。

サーボ制御によってプレスの加圧位置、加圧速度、加圧力を自在に変更できます。

主な仕様用途としては以下があります。

  • 自動車の車体成型
  • USBケーブルのコネクタ成型

サーボプレス機の原理

ここではサーボプレス機の原理について説明します。

サーボプレス機は、従来のプレス機では困難とされてきた加圧部の速度や加圧回数を制御するために、サーボコントローラ、サーボアンプ、サーボモータの3つを組み込み加圧部の動きをデジタル制御できるようにしました。

サーボプレス機を使用することでプレス成型途中まで高速で駆動し、下死点(加圧時の最下点)に近いところで速度を落とすなどのデジタル制御ができるようになったことで総じて歩留まりと生産性の向上が図れるようになることがメリットです。

サーボプレス機の主な制御系統は以下のようになっています。

  1. コントロールパネルより、加圧速度、加圧力、加圧位置などを入力。
  2. サーボコントローラからサーボアンプを通じ、サーボモータへ入力内容を指令。
  3. サーボモータ側で作動信号をサーボアンプを通じ、サーボコントローラへフィードバック。
  4. 加圧部における成型動作

参考文献
https://sanki.komatsu/tanatsu/H1F-2.html
https://www.aida.co.jp/products/list02.html

ポリエステル樹脂

ポリエステル樹脂とは

ポリエステル樹脂

ポリエステル樹脂とは、エステル基を主鎖に含む高分子の総称です。

多塩基酸と多価アルコールを脱水縮合させることで得られる樹脂で、原料モノマーが異なる様々なポリエステル樹脂が販売されています。代表例としては飲料容器などに用いられているポリエチレンテレフタレート (PET) が挙げられます。

また、主鎖中に不飽和結合を有する不飽和ポリエステルも活用されており、例えばガラス繊維や炭素繊維と不飽和ポリエステルなどの樹脂を混ぜた繊維強化プラスチック (FRP) は建材、航空機やロケットの部品としても使われています。

その他、最近では環境への負荷を減らすため、生分解性を有するポリエステル樹脂も開発されており、代表的なものとしてポリ乳酸が挙げられます。ポリ乳酸は紫外線や水によって主鎖が分解しやすく、廃棄物が環境中で分解するため環境負荷が少ない材料として期待されています。

ポリエステル樹脂の使用用途

ポリエステル樹脂とはエステル基を主鎖に含む高分子の総称です。代表例としてはポリエチレンテレフタレート (PET) が挙げられます。PETは耐熱性や耐寒性に優れており、飲料容器などに用いられています。ポリエステル樹脂は繊維としても用いられており、PETのほかにポリブチレンテレフタレート (PBT) 、ポリトリメチレンテレフタレート (PTT) などもポリエステル繊維として用いられます。

他にも、不飽和結合を分子内に有する不飽和ポリエステル樹脂もあります。こちらはガラス繊維や炭素繊維と混合することで、軽くて強度が高い繊維強化プラスチック (FRP) として用いられます。FRPは航空機などの輸送機の部品や建材、スポーツ用品、ロケットなどの宇宙関係の部品など幅広い業界で使われる材料です。

ポリエステル樹脂のその他情報

1. ポリエステル樹脂の製造法

ポリエステル樹脂はカルボン酸COOHとアルコールOHが脱水縮合してエステル結合を形成する重合反応によって得られます。製法としてはジメチルテレフタレートを原料としたエステル交換法とテレフタル酸を原料とする直接重合法がありますが、現在は直接重合法が一般的に用いられています。

また、重合で用いられる触媒として従来はアンチモン触媒が用いられていましたが、重金属を用いない新たな触媒への転換が進んでおり、現在はチタン触媒、ゲルマニウム触媒などが用いられています。このような新たな触媒は今もなお各社で開発が進められています。

ポリエステル樹脂の製造法

図1. ポリエステル樹脂の製造法

不飽和ポリエステル樹脂は多塩基酸と多価アルコールの脱水縮合による重合反応で得られるベースポリマーに重合性ビニルモノマーを混合し、ラジカル触媒重合させることで得られます。モノマーとしてはビスフェノールなどが用いられており、モノマーの化学構造によって樹脂の性質も大きく変わります。

2. ポリエステル樹脂の安定性とリサイクル

ポリエステル樹脂は他の樹脂と比べて安定性が高い材料です。例えばポリエチレンテレフタレート (PET) は耐熱性、耐薬品性に優れています。一方でPETはエステル結合を有しているため、アルカリ水溶液で加水分解反応を起こします。また、高温高湿下ならば中性の水とも加水分解反応を起こすため、PETのリサイクルへの応用が検討されています。

その他、生分解性機能を付与したポリエステル樹脂も盛んに開発されており、代表的な樹脂としてポリ乳酸が挙げられます。ポリ乳酸は紫外線、水によって主鎖の加水分解が促進され、分子量の急激な低下が起こります。そのため使用後の分解、再成形が可能であったり、廃棄物も環境に残存せずに自然に分解させることができます。

ポリエステルフィルム

ポリエステルフィルムとはポリエステルフィルム

ポリエステルフィルムとは、ポリエステルと呼ばれる合成樹脂を薄く成形加工したフィルム状の素材です。

ポリエステルは、石油や天然ガスなどの石化製品から作られる合成樹脂の一種で、ポリエチレンテレフタレート (PET) 、ポリエチレンナフタレート (PEN) 、ポリブチレンテレフタレート (PBT) などがあります。ポリエステルフィルムは、これらのポリエステルを溶かして押出機で薄く延ばし、冷却して固めたものです。

ポリエステルフィルムの使用用途

ポリエステルフィルムは、透明性、強度、耐熱性、耐薬品性、耐光性などの優れた性質を持ち、さまざまな分野で使用されています。

1. 包装用途

ポリエステルフィルムは、耐熱性、耐薬品性に優れているため、食品や医薬品などの包装材として広く使用されています。また、透明性が高いので商品の見た目もよく、デザイン性に優れています。

2. 工業用途

ポリエステルフィルムは、強度や耐久性に優れているため、磁気テープやフィルムコンデンサなどの工業用部品としても使用されています。また、耐熱性が高く、電子部品や自動車部品の保護フィルムとしても使用されています。

3. 日用品用途

ポリエステルフィルムは、透明性や耐久性に優れているため、光学フィルムなどの日用品としても使用されています。また、耐熱性が高いため、レジャー用品やアウトドア用品としても使用されています。

ポリエステルフィルムの性質

ポリエステルフィルムは、以下のような特徴を持っています。

1. 耐熱性

高温にも耐えられるため、加熱や冷凍にも適しています。一般的に、PETフィルムは約200℃、PENフィルムは約250℃、PBTフィルムは約180℃まで耐えられます。

2. 耐光性

紫外線や可視光にも耐えられるため、色あせや劣化が少ないです。特に、PENフィルムは紫外線に対する耐性が高いです。

3. 耐薬品性

酸やアルカリなどの薬品にも耐えられるため、汚れや腐食が少ないです。ただし、強い酸やアルカリには注意が必要です。

4. 強度

引っ張りや圧縮などの力にも耐えられるため、破れや変形が少ないです。特に、PBTフィルムは機械的な強度が高いです。

5. 透明性

光を通す能力が高く、高い透明性を有します。特に、PETフィルムは透明性が高いです。

ポリエステルフィルムの種類

1. PETフィルム

PETフィルムは、テレフタル酸とエチレングリコールから作られるポリエステルフィルムです。最も一般的に使用されているポリエステルフィルムで、包装用や工業用、日用品用などの用途に使用されています。

また、PETフィルムにシリコンコーティングを施して剥離性を付与したものはシールや粘着テープの台紙、プレス成形用のセパレータなどに使用されます。

最近ではその優れた光学特性により、PETフィルムは液晶ディスプレイやプラズマディスプレイなどの薄型テレビの表面保護・反射防止用フィルムとしても用いられています。

2. PENフィルム

PENフィルムは、ナフタレンジカルボン酸とエチレングリコールから作られるポリエステルフィルムです。PETフィルムよりも耐熱性と耐薬品性に優れており、電子部品や自動車部品などの工業用部品に使用されています。PENフィルムは、電子部品や回路基板などの絶縁材料として使われることが多いです。

3. PBTフィルム

PBTフィルムは、テレフタル酸と1,4-ブタンジオールから作られるポリエステルフィルムです。PETフィルムよりも耐熱性と耐久性に優れており、機械部品や構造部品などの工業用部品に使用されています。PBTフィルムは、工業用のベルトやギアなどの部品として使われることが多いです。

ポリエステルフィルムのその他情報

ポリエステルフィルムの製造方法

1. 樹脂合成
ポリエステル樹脂はジカルボン酸とジアルコールとを脱水縮合させることで作成されます。ジカルボン酸はPET、PBTの場合はテレフタル酸、PENの場合はナフタレンジカルボン酸で、ジアルコールはPET、PENの場合はエチレングリコール、PBTの場合は1,4-ブタンジオールです。

合成した樹脂をペレット状に加工して取り出すか、溶融状態のまま、次のフィルム化工程に移ります。

2. フィルム化
ポリエステル樹脂のフィルム加工は、一般的に次のように行われます。最初に原料であるペレット状のポリエステル樹脂をホッパーに投入後、押出し機内で完全に溶解させます。その後、押出・急冷固化させることでフィルム状に加工し、それから縦と横の2方向に延伸します (2軸延伸) 。

フィルム状に延伸することでPETの場合、耐熱温度を200℃程度にまで向上できることが知られています 。そのため、耐熱性が必要となる用途には延伸したものが用いられることが多いです。 

延伸したフィルムに所望の特性を与えるために各種薬品を塗布した後、塗布成分を乾燥・硬化させます。その後、裁断や巻き取りを実施して加工が完了します。

参考文献
https://ono-plus.com/blog/
https://www.neion.co.jp/blog/useful/film
https://www.smcworld.com/products/subject/ja-jp/film/
https://www.tanimura.biz/dictionary/pet_film.html
https://www.finepack.co.jp/products/petfilm/
http://kagakucafe.org/ouchi080301.pdf

熱交換塗料

熱交換塗料とは

熱交換塗料とは、主に太陽光による熱による温度の上昇を抑えるための遮熱塗料の1つです。

温度の上昇を抑制する塗料には光を反射させるメカニズムの製品もありますが、熱交換塗料は光反射とは違ったメカニズムで遮熱を行います。建築物の外壁に塗布することによって、外部からの熱の侵入を防ぐための塗料を、遮熱塗料とよびます。

一般的な遮熱塗料は外部からの太陽光を反射させることで遮熱を行いますが、この場合だと塗装面の汚れにより太陽光の反射率が落ちたり、反射した光が周囲に影響を及ぼしかねません。一方で熱交換塗料では、塗料内の熱交換物質が太陽光エネルギーを運動エネルギーに変化させることで遮熱を行います。

太陽光を反射させず周囲の環境に与える影響が非常に少ないため、熱交換塗料は環境に優しい塗料です。

熱交換塗料の使用用途

熱交換塗料は、遮熱と環境負荷の両方を考慮した優れた塗料です。そのため、遮熱が必要な建築物・設備などに多く使用されています。

具体的には、一般住宅やビルの屋根・外壁などです。建物以外にも、アスファルトの歩道、テニスコート、サッカー場、学校のグラウンド、農業用ビニールハウスの屋根、プールサイド、子供の遊具などにも使用されています。生コン車ドラムも用途の1つです。

熱交換塗料の原理

熱交換塗料の内部には、光エネルギーを運動エネルギーに変換する物質 (熱交換物質) が含まれています。太陽光は様々な波長の光の集合体ですが、熱交換物質が反応するのはこのうち可視光~赤外線領域の光です。

太陽光が熱交換塗料に当たると、熱交換物質が可視光~赤外線領域の光に反応して塗料内部の熱交換物質が振動します。つまりこの時点で、太陽光エネルギーは熱交換物質の運動エネルギーに変換されていることになります。この運動エネルギーは熱交換物質が動くことで消費されます。つまり、光エネルギーを塗料内部で、ほぼ全て消費することが可能です。

熱交換塗料は冬場 (5℃~25℃程度) だと機能しません。交換塗料を用いると冬場は外部からの太陽光エネルギーを建物内に取り込むことができるため、暖房機器の必要性が低下して省エネにつながります。一般の遮熱塗料の場合は冬場でも太陽光を反射してしまうため、このような省エネ効果は得られません。この点からも、熱交換塗料は自然に優しい塗料であるといえます。

熱交換塗料の特徴

1. 周辺環境への影響が少ない

熱交換塗料は光の反射によらないため、周辺へ熱害を与えることがありません。都市のヒートアイランド現象を助長せずに済みます。

2. チョーキングがおきにくい

チョーキングとは、外壁の表面が白亜化という自己崩壊によって白い粉を吹く現象です。手で触るとチョークのような白い粉が付着します。チョーキングの原因は塗料中の二酸化チタニウムの光触媒作用ですが、熱交換塗料はチョーキングの発生を遅らせる性質があります。

3. 汚れが影響しない

光の反射を利用した遮熱塗料は、汚れると遮熱効果も減少してしまいますが、熱交換塗料なら汚れが影響しません。長期間にわたって使用可能で、塗り替えサイクルも長くなります。

4. 輻射熱を抑制できる

輻射熱とは赤外線で伝わる熱のことで、建物の内部を温めているのも輻射熱です。熱交換塗料は輻射熱を抑制するため室温の温度上昇も少なくし、冷房の効率を向上させることができます。

5. 建築部材の耐久性を向上させる

熱交換塗料と施工すれば、塗装した部材の温度上昇も抑えられるため、屋根材などの耐久性向上にも貢献します。

6. 保温効果もある

熱交換塗料の効果は25度以上から発揮されるため、冬場は熱を逃すことはありません。光の反射を使った遮熱塗料では冬場でも熱を反射してしまうため、むしろ暖房費を増やしてしまう可能性があります。

参考文献
https://oacis.repo.nii.ac.jp/
http://www.yoshidakenso.co.jp/coat/index.html#a01
http://www.kyc.co.jp/products/development/tough-coat.html
http://www.arbar.co.jp/products/hep
http://www.mihashitoso.com/

回折格子

回折格子とは

回折格子

回折格子とは、ガラス基板上に等間隔に細かな溝をつけて作製される光学素子です。光を回折格子に照射すると、溝の効果で光の回折現象が生じるので、入射光を波長に応じて分けることができます。種類としては透過型、反射型、ブレーズド型などの種類があります。それぞれわずかに異なる構造を有しているので、分光性能も異なります。

回折格子では、ある特定の波長の光を取り出すことができるので、単一波長の光を出射するモノクロメータ、一定幅の波長の光を出射するポリクロメータなどの分光器に使用されています。

回折格子の使用用途

回折格子には表面に細かな溝がつけられており、入射した光を波長ごとに分光する性質があります。この性質を利用して、光の波長を制御するような装置に搭載されています。

例えば、単一波長を出射するモノクロメータ、一定幅の波長を出射するポリクロメータなどの分光器に使用されています。また、天文学観測における分光光度計、自然科学分野における各種分光分析装置、医薬品、化学品の製造装置や品質管理装置などに使用されています。

回折格子の原理

回折格子は、ガラス基板上にアルミニウムなどの金属を蒸着し、紫外~可視光用に15000~30000本、赤外用に1500~2500本の多数の平行線を刻んだものです。これらの溝が入射した光を散乱させることで、干渉縞が生じます。その結果、波長に応じて入射光を分光することができます。

プリズムと比較して光の分解能が優れており、すべての波長で等しい分散を示すので、多くの分光分析装置に回折格子が使用されています。プリズムは光学ガラスからつくられ、光の波長ごとに屈折率が異なることを利用して分散しています。一方、回折格子では入射光の回折方向が波長に応じて異なることを利用して分散しています。

回折格子の基本原理を図示します。回折格子は、光の回折現象を利用します。微細なスリットS0に入射した光は、S0を波源としてさまざまな方向に回折します。回折格子には、このスリットに相当する溝などの構造(S1,S2,…あるいはG1,G2,…) が等間隔に(格子状に)多数設けられており、溝から出射あるいは反射した光は、それぞれが干渉を起こします。隣接する溝同士の光路差が半波長の偶数倍(波長の整数倍)となるような出射角あるいは反射角の角度方向の干渉光は強め合い、逆に半波長の奇数倍(波長の半整数倍)となるような角度方向の干渉光は弱め合います。この原理を利用して、光を波長に分けて取り出すごとができます。

回折格子の原理

図1. 回折格子の原理

回折格子にはオリジナルとレプリカがあります。オリジナル回折格子は特に精密につくる必要があるので、作製するのが難しく、高価です。レプリカ回折格子はオリジナル回折格子から多数製造することができるので、その分安価で広く使用されています。

回折格子の種類

回折格子には大きく分けて2つの種類があります。一つは光を透過させるもの、もう一つは光を反射させるものです。光を透過させる透過格子は広い波長範囲で透明性が要求されることからあまり用いられませんが、自然光の分光などの簡単なデモンストレーションとして教育現場で用いられることが多いです。もう一つの回折格子である反射格子は金属表面に格子を刻んだもので、精度が必要な分光光度計では主にこちらの回折格子が使われています。

なお、回折格子を取り扱うときは汚れが付着しないように注意する必要があります。例えば素手で扱うと皮脂などの成分が回折格子に付着して性能が低下するおそれがあります。また、結露し易い環境では回折格子に水が付着して光学特性を劣化させるおそれがあります。そのほか、レーザー光などの強い光を扱う際は予め回折挙動を確認し、光が飛んでいく方向を把握して人に照射することが無いように注意する必要もあります。

参考文献
https://www.sci.keio.ac.jp/gp/87B7D75A/A6070F75/6E345155.pdf
https://web.tohoku.ac.jp/sspp/yoshizawa/holog.htm
https://www.jstage.jst.go.jp/article/oubutsu1932/38/3/38_3_255/_pdf/-char/ja

光ファイバーケーブル

光ファイバーケーブルとは

光ファイバーケーブル

光ファイバーケーブル (英: optical fiber cable) とは、光信号により情報を伝える光ファイバーに保護皮膜を施したケーブルです。

光ケーブルとも呼ばれます。光ファイバーと呼ばれる繊維を複数束ねて被覆を施し、屋内外での使用に耐える構造にしたものが光ファイバーケーブルです。電気信号ではなく、半導体レーザーやLED等の光によって通信します。現代のインターネットは、電話回線通信から光ファイバー通信へと移行しています。

光ファイバーは高純度のガラス繊維やプラスチックからできた透明度の高い繊維であり、遠距離でも光信号をほぼ減衰させずに伝搬できます。そのため、電話回線よりも長距離で高速な通信が可能です。

光ファイバーケーブルの使用用途

光ファイバーケーブルの主な使用用途は、インターネット用光回線による通信をはじめ、各種計測器やイルミネーションなどの照明、医療用・工業用のファイバースコープなどです。

ファイバースコープは、アクセス困難な装置や人体の内部を観察するために使用されます。医療用の内視鏡もファイバースコープの一種であり、光ファイバーを伝搬する光情報を基に、患部をリアルタイムで確認することが可能です。

光ファイバーケーブルの原理

光ファイバーケーブルを構成する光ファイバーは、中心部の「コア」とその周囲の「クラッド」という2種類のガラスから作られています。コアは高屈折率、クラッドはやや低屈折率のガラスなどで作られるため、ケーブル内の光信号はコアとクラッドの境界で全反射します。これにより、光信号をほぼ減衰させずに、遠くまで伝播が可能です。

光ファイバーケーブルは、中心にはテンションメンバがあり、敷設時にファイバに掛かる張力を緩和します。テンションメンバを中心にして光ファイバーを集合し、その外側に緩衝材や押え巻き、外被を施した構造をしています。

光ファイバーケーブルの種類

光ファイバーケーブルを構成する光ファイバーは、コアの直径によりシングルモードファイバーとマルチモードファイバーの2種類に分類されます。

1. シングルモードファイバー

コアの直径が小さい (10μm程度) 光ファイバーです。ある一定の角度で全反射する光のみを伝えます。光の到着速度が一定なので、長距離でも安定して大容量の通信を行うことができます。

2. マルチモードファイバー

コアの直径が大きい (50μm程度) 光ファイバーであり、全反射角度が異なる複数の光を同時に伝えます。各光の到着速度が異なるため長距離には適さず、近距離の中・小容量通信における使用がメインです。

光ファイバーケーブルのその他情報

1. 光ファイバケーブルの接続方法

光ファイバーの接続方法は大きく分けて、融着による方式とコネクタによる方式の2種類があります。それぞれ特徴が異なるため、用途に応じた接続方法を選定します。

融着方式
光ファイバーの先端部を加熱して融解し、光ファイバー同士の先端部を接着します。融着方式は接続部の信号減衰が小さいことから、接続のために必要なスペースも小さい特徴があります。接続部は衝撃に弱くなり折れやすいため、心線補強にファイバー保護スリーブを被せた加熱処理が必要です。

顕微鏡でコアの中心軸が一致するよう位置決めして接続する「コア調心方式」と、多心ファイバーを固定V溝に並べて溶融時の表面張力で融着する「固定V溝調心方式」があります。

コネクタ方式
専用コネクタを使用して接続する方法です。融着方式では1度接続すると取り外せませんが、コネクタ方式は繰り返し着脱が可能です。光サービスの運用、保守など切り替えポイントが必要な場所で使用されます。コネクタの先端形状は自由に選択できるため、機器に直接接続できる点もメリットです。

2. 光ファイバーケーブルの断線

光ファイバーケーブルは細いガラス素材でできているため、金属ケーブルに比べると、曲げに弱く折れやすい性質があります。

外部からの衝撃による断線
光ファイバーケーブルに衝撃が加わって断線する最もシンプルなケースです。細いガラス素材の光ファイバーケーブルは、衝撃によって破損する場合があります。人通りが多い場所などには配線はしないよう注意が必要です。

災害による電柱への衝撃による断線
光回線を引き込んでいる電柱に衝撃が加わることで、断線する場合もあります。地震や事故などで電柱が衝撃を受けると、接続している光ファイバーケーブルが損傷します。

動物による断線
動物がかじったりなどして断線するケースもあります。ペットを飼う場合はペットの動線上に配線しないようにするか、ペットが通れない措置を講じる注意が必要です。

参考文献
https://global.canon/ja/technology/s_labo/light/003/08.html
https://www.sanwa.co.jp/product/network/hikaricable/index.html
https://www.panduit.co.jp/column/naruhodo/4390/

サーボシリンダ

サーボシリンダとは

サーボシリンダ (英: Servo Cylinder) とは、モーターの回転運動をボールネジによって直線運動に変換する電動式のシリンダのことです。

時間・位置・荷重の数値設定が可能で、油圧シリンダでは成立しなかった精密な動作が実現されます。これにより、不良率の低減や歩留まりの向上、検査工程の簡略化など、さまざまなメリットを提供します。なお、各種用途にあわせてサーボコントローラを選定することが大切です。

近年、製造現場を改善するために、サーボモーターとサーボシリンダを組み合わせたハイブリッド方式の生産設備などの導入が進んでいます。

サーボシリンダの使用用途

サーボシリンダは主として、各種の産業機械で使用されています。具体的な使用事例は、ギアとプーリーを圧入するための圧入機構です。様々な機構部品との組合せで使用される場合も多くあります。

応答性に優れたモーターを採用しているため、油圧シリンダ・空圧シリンダでは実現できなかったような高精度な位置決めが可能です。一方で、サーボコントローラを通じた制御の構築が必要で、設備設計時の検討工数が増える傾向にあります。

サーボシリンダの原理

サーボコントローラを経由してサーボシリンダに時間、位置、荷重などの情報を設定すれば、サーボシリンダを意図する形で制御可能です。

制御方式は大きく、荷重制御方式と位置制御方式の2つに分類されます。事例として、良く使用される荷重制御方式の設計フローを説明します。

  • 荷重停止
    荷重15kNになるまで速度30mm/secで移動。
  • 現在位置停止 (時間)
    荷重30kNになった時点で5.0sec停止。
  • 位置移動
    原位置まで速度100mm/secで移動。

サーボシリンダの構造

サーボシリンダはモーターを通じてボールネジを回転させることで直線運動を行っており、主としてボールネジ・リニアガイド・サーボモーターで構成されています。サーボシリンダには小型、中型、大型の様々なタイプが存在しますが、基本的な構造は同じです。

1. ボールネジ

ボールネジは、サーボモーターの回転運動を直線運動に変換します。動力伝達精度が高いことと位置決め精度が高いことが特長です。ボールネジは、例えばタイミングプーリおよびタイミングベルトを介してサーボモーターに連結されます。カップリングによってサーボモーターの回転軸に直接連結されるものもあります。

2. リニアガイド

リニアガイドは、ボールネジの直線運動をサポートします。ボールネジは動作方向以外の方向に対する耐性があまり高くありません。そのため、ボールネジの直線運動に支障を来さないようにリニアガイドが補助的な役割を果たします。

3. サーボモーター

サーボモーターは、エンコーダを備えています。エンコーダを用いた回転制御によって、モーターの回転量の制御が可能です。また、ボールネジによる直線動作距離を自在に制御できます。

サーボシリンダの種類

サーボシリンダには大きく分けて2つのタイプがあり、ロッドタイプとスライダタイプに分類されます。

1. ロッドタイプ

ロッドが伸縮するタイプです。押付動作などに適していますが、設置スペースは大きくなります。ラジアル荷重を受けるためには、リニアガイドを併用したり、ガイド付きのものを選定する必要があります。

ロッドタイプの場合、必要推力を超える推力を出せるものを選定すれば問題はありません。

2. スライダタイプ

リニアガイドのガイドレールに沿って直線移動するスライドを使用するタイプです。スライダに移動物を直接取り付けて使用できます。

スライダタイプの場合、使用条件がリニアガイドの許容範囲内に収まるものを選定します。具体的にはまず、スライダに取り付けた移動物の重心位置と重量からスライダにかかるモーメントを算出して、許容モーメント荷重を超えない型式を選定します。

その後、使用速度での可搬重量を確認し、移動物の重量が可搬重量を超えないようにします。なお、可搬重量は垂直取付と水平取付で大きく変わる可能性があるため、注意が必要です。

参考文献
https://www.orientalmotor.co.jp/products/actuator/list/