ポリエステルフィルムとは
ポリエステルフィルムとは、ポリエステルと呼ばれる合成樹脂を薄く成形加工したフィルム状の素材です。
ポリエステルは、石油や天然ガスなどの石化製品から作られる合成樹脂の一種で、ポリエチレンテレフタレート (PET) 、ポリエチレンナフタレート (PEN) 、ポリブチレンテレフタレート (PBT) などがあります。ポリエステルフィルムは、これらのポリエステルを溶かして押出機で薄く延ばし、冷却して固めたものです。
ポリエステルフィルムの使用用途
ポリエステルフィルムは、透明性、強度、耐熱性、耐薬品性、耐光性などの優れた性質を持ち、さまざまな分野で使用されています。
1. 包装用途
ポリエステルフィルムは、耐熱性、耐薬品性に優れているため、食品や医薬品などの包装材として広く使用されています。また、透明性が高いので商品の見た目もよく、デザイン性に優れています。
2. 工業用途
ポリエステルフィルムは、強度や耐久性に優れているため、磁気テープやフィルムコンデンサなどの工業用部品としても使用されています。また、耐熱性が高く、電子部品や自動車部品の保護フィルムとしても使用されています。
3. 日用品用途
ポリエステルフィルムは、透明性や耐久性に優れているため、光学フィルムなどの日用品としても使用されています。また、耐熱性が高いため、レジャー用品やアウトドア用品としても使用されています。
ポリエステルフィルムの性質
ポリエステルフィルムは、以下のような特徴を持っています。
1. 耐熱性
高温にも耐えられるため、加熱や冷凍にも適しています。一般的に、PETフィルムは約200℃、PENフィルムは約250℃、PBTフィルムは約180℃まで耐えられます。
2. 耐光性
紫外線や可視光にも耐えられるため、色あせや劣化が少ないです。特に、PENフィルムは紫外線に対する耐性が高いです。
3. 耐薬品性
酸やアルカリなどの薬品にも耐えられるため、汚れや腐食が少ないです。ただし、強い酸やアルカリには注意が必要です。
4. 強度
引っ張りや圧縮などの力にも耐えられるため、破れや変形が少ないです。特に、PBTフィルムは機械的な強度が高いです。
5. 透明性
光を通す能力が高く、高い透明性を有します。特に、PETフィルムは透明性が高いです。
ポリエステルフィルムの種類
1. PETフィルム
PETフィルムは、テレフタル酸とエチレングリコールから作られるポリエステルフィルムです。最も一般的に使用されているポリエステルフィルムで、包装用や工業用、日用品用などの用途に使用されています。
また、PETフィルムにシリコンコーティングを施して剥離性を付与したものはシールや粘着テープの台紙、プレス成形用のセパレータなどに使用されます。
最近ではその優れた光学特性により、PETフィルムは液晶ディスプレイやプラズマディスプレイなどの薄型テレビの表面保護・反射防止用フィルムとしても用いられています。
2. PENフィルム
PENフィルムは、ナフタレンジカルボン酸とエチレングリコールから作られるポリエステルフィルムです。PETフィルムよりも耐熱性と耐薬品性に優れており、電子部品や自動車部品などの工業用部品に使用されています。PENフィルムは、電子部品や回路基板などの絶縁材料として使われることが多いです。
3. PBTフィルム
PBTフィルムは、テレフタル酸と1,4-ブタンジオールから作られるポリエステルフィルムです。PETフィルムよりも耐熱性と耐久性に優れており、機械部品や構造部品などの工業用部品に使用されています。PBTフィルムは、工業用のベルトやギアなどの部品として使われることが多いです。
ポリエステルフィルムのその他情報
ポリエステルフィルムの製造方法
1. 樹脂合成
ポリエステル樹脂はジカルボン酸とジアルコールとを脱水縮合させることで作成されます。ジカルボン酸はPET、PBTの場合はテレフタル酸、PENの場合はナフタレンジカルボン酸で、ジアルコールはPET、PENの場合はエチレングリコール、PBTの場合は1,4-ブタンジオールです。
合成した樹脂をペレット状に加工して取り出すか、溶融状態のまま、次のフィルム化工程に移ります。
2. フィルム化
ポリエステル樹脂のフィルム加工は、一般的に次のように行われます。最初に原料であるペレット状のポリエステル樹脂をホッパーに投入後、押出し機内で完全に溶解させます。その後、押出・急冷固化させることでフィルム状に加工し、それから縦と横の2方向に延伸します (2軸延伸) 。
フィルム状に延伸することでPETの場合、耐熱温度を200℃程度にまで向上できることが知られています 。そのため、耐熱性が必要となる用途には延伸したものが用いられることが多いです。
延伸したフィルムに所望の特性を与えるために各種薬品を塗布した後、塗布成分を乾燥・硬化させます。その後、裁断や巻き取りを実施して加工が完了します。
参考文献
https://ono-plus.com/blog/
https://www.neion.co.jp/blog/useful/film
https://www.smcworld.com/products/subject/ja-jp/film/
https://www.tanimura.biz/dictionary/pet_film.html
https://www.finepack.co.jp/products/petfilm/
http://kagakucafe.org/ouchi080301.pdf