回折格子

回折格子とは

回折格子

回折格子とは、ガラス基板上に等間隔に細かな溝をつけて作製される光学素子です。光を回折格子に照射すると、溝の効果で光の回折現象が生じるので、入射光を波長に応じて分けることができます。種類としては透過型、反射型、ブレーズド型などの種類があります。それぞれわずかに異なる構造を有しているので、分光性能も異なります。

回折格子では、ある特定の波長の光を取り出すことができるので、単一波長の光を出射するモノクロメータ、一定幅の波長の光を出射するポリクロメータなどの分光器に使用されています。

回折格子の使用用途

回折格子には表面に細かな溝がつけられており、入射した光を波長ごとに分光する性質があります。この性質を利用して、光の波長を制御するような装置に搭載されています。

例えば、単一波長を出射するモノクロメータ、一定幅の波長を出射するポリクロメータなどの分光器に使用されています。また、天文学観測における分光光度計、自然科学分野における各種分光分析装置、医薬品、化学品の製造装置や品質管理装置などに使用されています。

回折格子の原理

回折格子は、ガラス基板上にアルミニウムなどの金属を蒸着し、紫外~可視光用に15000~30000本、赤外用に1500~2500本の多数の平行線を刻んだものです。これらの溝が入射した光を散乱させることで、干渉縞が生じます。その結果、波長に応じて入射光を分光することができます。

プリズムと比較して光の分解能が優れており、すべての波長で等しい分散を示すので、多くの分光分析装置に回折格子が使用されています。プリズムは光学ガラスからつくられ、光の波長ごとに屈折率が異なることを利用して分散しています。一方、回折格子では入射光の回折方向が波長に応じて異なることを利用して分散しています。

回折格子の基本原理を図示します。回折格子は、光の回折現象を利用します。微細なスリットS0に入射した光は、S0を波源としてさまざまな方向に回折します。回折格子には、このスリットに相当する溝などの構造(S1,S2,…あるいはG1,G2,…) が等間隔に(格子状に)多数設けられており、溝から出射あるいは反射した光は、それぞれが干渉を起こします。隣接する溝同士の光路差が半波長の偶数倍(波長の整数倍)となるような出射角あるいは反射角の角度方向の干渉光は強め合い、逆に半波長の奇数倍(波長の半整数倍)となるような角度方向の干渉光は弱め合います。この原理を利用して、光を波長に分けて取り出すごとができます。

回折格子の原理

図1. 回折格子の原理

回折格子にはオリジナルとレプリカがあります。オリジナル回折格子は特に精密につくる必要があるので、作製するのが難しく、高価です。レプリカ回折格子はオリジナル回折格子から多数製造することができるので、その分安価で広く使用されています。

回折格子の種類

回折格子には大きく分けて2つの種類があります。一つは光を透過させるもの、もう一つは光を反射させるものです。光を透過させる透過格子は広い波長範囲で透明性が要求されることからあまり用いられませんが、自然光の分光などの簡単なデモンストレーションとして教育現場で用いられることが多いです。もう一つの回折格子である反射格子は金属表面に格子を刻んだもので、精度が必要な分光光度計では主にこちらの回折格子が使われています。

なお、回折格子を取り扱うときは汚れが付着しないように注意する必要があります。例えば素手で扱うと皮脂などの成分が回折格子に付着して性能が低下するおそれがあります。また、結露し易い環境では回折格子に水が付着して光学特性を劣化させるおそれがあります。そのほか、レーザー光などの強い光を扱う際は予め回折挙動を確認し、光が飛んでいく方向を把握して人に照射することが無いように注意する必要もあります。

参考文献
https://www.sci.keio.ac.jp/gp/87B7D75A/A6070F75/6E345155.pdf
https://web.tohoku.ac.jp/sspp/yoshizawa/holog.htm
https://www.jstage.jst.go.jp/article/oubutsu1932/38/3/38_3_255/_pdf/-char/ja

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