アロジン処理

アロジン処理とは

アロジン処理とは、アルミ材にクロメート処理することです。

アロジンは日本パーカライジング社の登録商標で、アロジン法はアメリカのAmchem Product社によって開発されました。アロジン処理はアルサーフ処理とも呼ばれ、アルミニウム素材に施す化成処理です。

アルミ及びその合金上に優れた耐食性皮膜を形成します。一般的なアルマイトは導電性がありませんが、アロジンは導電性が得られることが大きな特徴として挙げられます。

しかし、環境汚染物質として知られる六価クロムを含有する化成処理皮膜でもあるため、近年はその代替品として三価クロムの化成処理皮膜やノンクロムアロジンやパルコート処理なども開発されています。

アロジン処理の使用用途

アロジン処理は、放熱板 (電子機器) や装置部品・自動車部品(軽量化目的) 、アルミニウム合金全般、航空部品などに使用されています。化学反応のみで表面に薄い皮膜を生成可能なため、複雑な形状品に対しても適用できます。

使用する薬液によって皮膜の色を変えられるので、無色系 (#1000) と黄色系 (#1200) で使い分けるのが一般的です。また、 通電目的のアルミ材への処理としても非常に有効です。その他、塗装下地としても使用されており、アルミと塗装の密着をサポートします。

アロジン処理の原理

アロジン処理は、リン酸クロム酸、もしくは重クロム酸を主成分とする処理液を用いて、アルミニウム表面にクロメート処理を施します。加工処理としては優秀なのですが、六価クロムを含有するため、環境汚染対策として他素材への代替が行われつつあります。

リン酸を用いた手法はリン酸クロメートと呼ばれ、 緑色の比較的厚い皮膜を形成可能です。クロム酸を用いた手法はクロム酸クロメートと呼ばれ、黄金色の薄い皮膜が得られます。アロジン処理の特徴は、耐食性に極めて優れた皮膜が比較的容易な条件下で得られることです。

処理温度は室温、電気などを使わず対象物を溶液に浸漬させ、多くの場合は3分以内で処理は完了します。実際の作業工程としては脱脂、除錆及び洗浄が都度行われます。

工程を簡単に表すと「脱脂→洗浄→除錆→洗浄→表面調整→皮膜化成→洗浄→湯洗→乾燥」の順番です。まず加工面を清浄な状態に保ってから皮膜を形成することが、加工後の性能を向上させる必須条件となります。また、アロジン (#1200) では処理時間を変えることにより、接触電気抵抗値を調整可能となっています。

アロジン処理のその他情報

1. アロジン処理とアルマイト処理の違い

アルミニウムに対する表面処理には、クロメート処理を施すことで六価クロムを含有する化成処理皮膜を生成する「アロジン処理」以外にも、アルミニウム表面に陽極酸化被膜を生成する「アルマイト処理」があります。アルマイト処理によってアルミニウム表面に生成した陽極酸化被膜は、耐食性が高いです。

アルミニウムは比較的イオン化傾向が高い金属であり、水、酸素をはじめ、さまざまな化学物質と容易に化学反応を引き起こします。そのため、アルミニウムは容易な化学反応が原因で腐食や変色を非常に引き起こしやすい物質ですが、アルマイト処理を行うことでその欠点をサポートすることが可能です。

さらに、アルマイト処理ではアルマイト被膜上の微細な孔に染料を付着させることで、さまざまな色にカラーリングできます。ただし、アルマイト処理による被膜はアルカリ性に弱いので、アルカリ環境下では使用できません。アロジン処理によって得られる酸化被膜は、0.1ミクロン~0.3ミクロン程と非常に薄く、アルマイト処理で生成した陽極酸化被膜と比較したときの耐食性、耐摩耗性は低いです。

しかし、アロジン処理においては、電解処理のプロセスが必要無いことに加え、処理に必要な時間が短いというメリットもあります。こういったことから、耐食性や耐摩耗性を必要としないアイテムの保護に関しては、アロジン処理が広く利用されています。

2. アルミニウム表面処理前の化学研磨と電解研磨

アルミニウム表面処理を行う前には前処理として、金属表面の凹凸部分の突起部分を先に融解させることによって平滑面を得るために、化学研磨および電解研磨トリートメントを行います。

化学研磨は研磨溶液にアルミニウムを浸漬させることで、化学的に金属表面を研磨する手法です。電解研磨は研磨溶液にアルミニウムを浸漬し、電解処理を行うことで金属表面を研磨する手法です。

化学研磨、電解研磨を施す前にサンドブラスト等を用いてアルミニウム表面を故意的に荒らしておくと、光沢のある平滑面を得ることができます。

参考文献
https://sales.parker.co.jp/knowledge/tips/j_a.html
https://mitakakinzoku.com/aluminum_chromate/
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jcorr1991/49/10/49_10_579/_pdf
http://www.yoshizaki-mekki.co.jp/eigyou/al-sonota/al-sonota.html
https://www.sanwa-p.co.jp/mekki/alumite/
https://www.toshin-alumite.jp/knowledge/

ウレタン樹脂

ウレタン樹脂とは

ウレタン樹脂

ウレタン樹脂とはイソシアネート基を有する化合物と水酸基を有する化合物の重付加反応により生成される高分子の総称です。結合部位はウレタン結合(図1)と呼ばれ、一般的には、ジイソシアネートとポリオールを重付加させて生成します。

略称記号としては、プラスチックの場合はPUが、ゴムの場合はUが使用されます。ウレタン樹脂は抗張力、耐摩耗性や耐油性、耐薬品性に優れるため、塗料やコーティング剤にも応用されています。ただし、加水分解や紫外線などにより、徐々に劣化する欠点も併せ持っています。

ウレタンの構造式

図1. ウレタンの構造式

ウレタン樹脂の使用用途

ウレタン樹脂は、汎用性が高いため身近な生活用品から工業用品まで、幅広い用途で使用されています。身近な製品例では、衣類や車のバンパー部、工業用途では防音材や接着剤などが挙げられます。

また、高い柔軟性を活かしてスポーツシューズの靴底にも利用されており、我々の生活に欠かせない樹脂の一つです。本素材は、もともとは天然ゴムの代替品として利用されてきた歴史があります。そのためゴムの特徴である高い弾性や引張強度を活かした用途開発が進められています。

ウレタン樹脂の特徴

ウレタン樹脂は、柔軟性や耐衝撃性、抗張力、耐薬品性などに優れていますが、3年ほどで劣化が進行していきます。このように多くの特性を有している一方で、製造方法によって特性が大きく変わります。

劣化の原因としては、酸素、オゾン、光、熱などの様々な因子、水との反応による加水分解、微生物による分解などのように多岐に渡ります。また、ポリウレタンはその特徴として、製造方法によりその物性を変化させることができます。そのため、その使用用途に応じて様々な種類のウレタン樹脂が存在します。その代表例は以下の通りです。

1. フォーム系

フォーム系とは発泡剤を加えて重合することで、樹脂内に空気を取り込ませたウレタン樹脂のことです。本素材は軟質ウレタンフォームと硬質ウレタンフォームに分けられ、前者はクッション性、耐久性に優れ軽量なことから自動車の座席などに使われています。後者は断熱性に優れるため、冷蔵庫、冷凍庫、エアコンなどの断熱材用いられています。

ウレタンフォームの製造方法のうち、スラブ成型やモールド成型、ラミネート成型などは大規模な製造装置が必要になります。一方でスプレー発砲法は断熱が必要な箇所にその場で混合し発泡させることができるため、手軽に扱えます。

2. 非フォーム系

非フォーム系はスポーツシューズなどに使われるエラストマつまり、ゴム弾性を有するウレタン樹脂がその代表例です。このような特性のウレタン樹脂は高い伸縮性を持つため、スポーツウェアやスラックスなどに使用されます。

ウレタン樹脂のその他情報

1. ウレタン樹脂の環境残留性とリサイクルについて

ウレタン樹脂は優れた断熱性を有する事から、冷蔵庫、冷凍庫、クーラーなどの断熱材として幅広く用いられています。ただし、その化学的特性からリサイクルや後処理が難しいという問題もあり、研究が進められている分野です。

なお、分解とリサイクルの技術としては既に確立されており、その例としては熱分解法、加水分解法、グリコール分解法、アンモニア分解法、アミン分解法などがあげられますが、分解効率やコスト面などで解決すべき問題が残されているのが現状です。

2. ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂の違い

ウレタン樹脂・アクリル樹脂・エポキシ樹脂の構造の違い

図2. ウレタン樹脂・アクリル樹脂・エポキシ樹脂の構造の違い

これらの3種類の用語は、いずれも樹脂という単語が含まれるせいか、混同して使用される場合も多いのですが、全く異なる素材を意味します。

ウレタン樹脂とは、本記事の冒頭で解説したように、ウレタン結合を有する重合体の総称です。一方でエポキシ樹脂とは、分子の末端に反応性に富んだエポキシ環を有する熱硬化性樹脂を意味します。

また、アクリル樹脂は、アクリル酸およびその誘導体の重合体、共重合体です。つまり、その構造や化学的性質の違いにより、厳密にその意味が定義づけられているため、その用法には注意が必要です。

3. 接着剤でのウレタン樹脂の位置づけ

接着剤には両面テープやシーミングテープなどの固形状の接着剤と、塗布された接着剤が圧着し、硬化して接着効果を発揮できる液体状の接着剤があります。

液体状の接着剤の種類は、接着方法から、乾燥固化型と反応硬化型の大きく種類に分類できます。乾燥固化型は、接着剤に含まれる水分、もしくは溶剤揮発する事により接着します。一方で反応硬化型は、接着剤に含まれる成分が化学反応でおこる硬化を利用した接着剤です。

反応硬化型はさらに二種類に分類できます。主剤と硬化剤で硬化をおこすエポキシ樹脂系と、空気中の水分で硬化をおこすウレタン樹脂系です。その中でもウレタン樹脂系接着剤は高い密着性と、素早い接着が可能なことから万能性能であり、一般の幅広い用途で使用されます。

4. ウレタン樹脂を使用したフロアコーティング剤

フロアコーティング剤は水性系と油性系の二種類に分類できます。もともとウレタン樹脂を使用したコーティング剤も水性系と油性系に分かれていました。しかし、油性系には安全面に疑問があったことから、現在は一般的に水性系を意味します。

水性ウレタンコーティング剤はガラスコーティング、シリコンコーティングなどの油性系フロアコーティング剤に比べて耐久性が低いことが特徴です。しかし、価格が低コストで仕上げられる特徴も持ち合わせています。そのため他のフロアコーティング剤と比べても、水性ウレタンコーティング剤が多く選ばれます。

水性ウレタンコーティング剤を選ぶメリットは、硬化の速さから速乾性に優れていることや、シンナーのような揮発臭がなく、ほぼ無臭であることです。また、ほとんどのフローリングの材質に適合するため、種類を選ばずに使用できます。

一方でデメリットとしては、ウレタン樹脂の弱点ともいえる、経年劣化が挙げられます。水性ウレタンコーティング剤の耐久年数は10年以下がほとんどです。しかし、前述のメリットに加えて安全性、手軽さも優れていることから水性ウレタンコーティング剤は、現在でも人気のコーティング剤として選ばれています。

参考文献
https://i-maker.jp/blog/polyurethane-8450.html
https://www.fujigomu.co.jp/whats_urethane/
https://www.toli.co.jp/product_adhesive/pdf/gijutu02.pdf
http://www.bousyoku.com/publics/index/49/
https://isamu-f.com/glue/
https://belcasa.jp/wb-urethane-5merrit/
https://www.jstage.jst.go.jp/article/adhesion/40/6/40_6-4/_pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/networkpolymer1996/23/4/23_188/_pdf/-char/ja
三省堂 新化学小事典

USBオシロスコープ

USBオシロスコープとは

USBオシロスコープ

USBオシロスコープとは、USBインターフェイスを介してPCと接続し、電圧の波形を観測・解析する測定機器です。

デジタルオシロスコープの1種で、アナログ入力された信号をADコンバータでデジタル化し、波形データをUSB経由でPCに転送して解析します。USBオシロスコープのメリットは、デスクトップ型のオシロスコープに比べて小型かつ低価格である点です。

また、専用のソフトウェアを使うことで波形の観測だけでなく、周波数解析やデジタルフィルタ処理などの高度な信号処理がPC上で実行できるのが特徴です。工場の現場での保守・点検や開発現場でのデバッグに活用されています。

USBオシロスコープの使用用途

USBオシロスコープは、信号の観測を行うのに使われます。主な用途として以下のものがあります。

1. デバッグとトラブルシューティング

USBオシロスコープは、電子機器の設計や開発の過程で、デバッグとトラブルシューティングのための極めて貴重なツールとなります。特定の信号が正しく動作しているかどうかを確認したり、機器間の通信に問題がないかを診断したりする際には、信号の視覚的な表現が欠かせません。

2. 教育現場での実験・実習

教育現場で、USBオシロスコープは生徒や学生が電子信号の振る舞いを直接観察し、理解を深めるための助けとなります。実験や実習の際に、理論を現実の観察結果と結びつけることが可能となり、学習効果を高められます。

3. 信号品質の確認

電子機器が正しく動作するためには、信号品質が一定であることが必要です。USBオシロスコープは、信号の品質や整合性を視覚的に確認可能にします。特に高速なデジタルシステムでは、タイミングのズレやノイズ、ジッターなどの問題を早期の発見が重要となります。

4. 工場の保守・点検

工場の設備やシステムの保守・点検にも、USBオシロスコープは有用です。機器の性能を監視し、異常が発生した場合には即座に警告して、大きなトラブルを未然に防ぎます。

また、定期的な点検時には、機器の性能を評価し、必要な場合にはメンテナンスを行うことが可能です。これにより、長期的な運用の効率性と信頼性を確保します。

USBオシロスコープの原理

USBオシロスコープの本体側では、被測定物の波形をキャプチャして、これをデジタルデータに変換します。その後、USB端子を経由して、PC本体に送信するのが役割です。このようにUSBオシロスコープは、PCのUSB端子で接続されています。

USBオシロスコープの種類

現在、USBでPC接続できるオシロスコープは非常に増えており、近年のモデルでは接続できない機種の方が少なくなっています。また、大きさによって以下の2つに分けられます。

1. ハンディタイプタイプ

小型で持ち運びがしやすいタイプです。小型化のため内臓ストレージのみのタイプがほとんどです。小さいながら液晶を装備しているものが多く、PCと接続せずに波形を確認できます。また、USB充電式で電池やACアダプター不要なタイプもあります。

2. デスクタイプ

従来の据え置きタイプにPCとのUSB接続端子を装備したものです。ハンディタイプよりは大きく持ち運びでかさばるとはいえ、小型・軽量化が進んでおり、1kg程度のものも多く存在します。

性能は従来型と変わらず、違いはPC接続のほかにUSBメモリにデータ保存できるタイプがあることや、専用のPCソフト・ドライバが同梱されていることです。この専用のソフトでパソコンに取り込んだデータ解析もできるようになっています。

USBオシロスコープのその他情報

USBオシロスコープの注意点

1. 共通のGND
1点目は、USBオシロスコープとPCのUSBポートのGNDが共通であることです。USBオシロスコープのGND端子に、不用意に高い電圧 (数十V以上) を印加すると、この電圧がPCのUSB端子のGNDを経由してPCの内部に入り込む可能性があります。

これにより、PCのUSB端子が破壊され、PCボードの故障につながることも多いです。したがって、不用意に高い電圧を加えることは避けなければなりません。

2. USB端子の耐圧
2点目は、PCのUSB端子の耐圧はさほど高くないことです。したがって、USB端子のGND端子だけではなく、他の端子に不用意に数十Vの電圧を印加するとPCのUSBポートもしくは、内部の基板が故障する可能性があります。

3. 操作性
3点目は、PCのキーボードを利用して全ての設定を行うため、操作に慣れにくいことです。キーボードの1つ1つに、直接関係のない機能が割り当てられることが多いため、簡単に覚えられるものではありません。

それに対して、スタンドアロン型のオシロスコープの場合、専用の操作ボタンがついているので、一度操作方法を覚えてしまえば比較的操作がしやすいです。

参考文献
https://beiznotes.org/usb-oscilloscope/

MOSFET

MOSFETとは

MOSFET

MOSFETは電子機器に欠かせない半導体デバイスの一つでありトランジスタの一種です。

MOSとは、「Metal Oxide Semiconductor」の略で、日本語では金属酸化膜のことを指します。FETとは、「Field-Effect Transistor」の略で、日本語では電界効果トランジスタと呼ばれています。

MOSFETは、基本的にオンオフのスイッチングや信号の増幅の動作を行います。長所としては、動作速度が非常に速く、緻密な制御に向いていることです。

以前の半導体デバイスはハイポーラトランジスタが主流でした。しかし、機器の小型軽量化や効率化のニーズが高まり、近年の半導体デバイスの主流はMOSFETになりつつあります。

MOSFETの使用用途

MOSFETは、各種ICやLSI向けの電子回路構成用のトランジスタとして使用されています。

使われる分野としては、単体 (ディスクリート) の用途にはパワーエレクトロニクス、センサなどの業界があり、他にも電源系やインバーターなどが相当します。各種LSIは、自動車や情報家電向けのマイコン、スマホやタブレットなどの携帯端末、PC用メモリや各種コンピュータ向けCPUなど、使用用途は幅広いです。

MOSFETは小型軽量化が可能で、集積化に対応できるため、近年の製品においては無くてはならない存在と言えます。

MOSFETの原理

MOSFETは端子 (電極) を3本有しており、それぞれ「ドレイン」「ゲート」「ソース」と呼ばれます。電圧を印加することで電流が流れる性質を持っており、ゲート電極に電圧を印加することでスイッチのオンオフ動作やトランジスタとしての増幅動作を行います。

MOSFETにはNチャンネル (N-Ch) 型とPチャンネル (P-Ch) 型の2タイプがあります。

  • Nチャンネル(N-Ch)型
    ソースの電位よりも正になる電圧をゲートに印加することで電流が流れます。
  • Pチャンネル (P-Ch) 型
    ソースの電位よりも負になる電圧をゲートに印加することで電流が流れます。Nチャンネル (N-Ch) 型の方が性能ならびに回路面において使い勝手が優れているため、使われる場合が多いです。

なお、デジタル回路やメモリIC、センサなどで広く汎用的に用いられているCMOS (Complementary Metal-Oxide-Semiconductor) はp型MOSとn型MOSが一対となった構造のトランジスタです。MOSFETは、動作速度が速く、高速スイッチングが可能となります。

また、駆動電力が小さいため高周波動作にも適しています。大電流化に弱いという性質を持っているものの、その集積のしやすさと取り扱いのしやすさから、近年では主力デバイスです。

MOSFETの種類

MOSFETにはp型とn型が存在しますが、動作特性の違いから、さらに「エンハンスメント型」と「デプレッション型」に分類されます。

1. エンハンスメント型

ノーマリーオフ型、つまりゲートに電圧が印加されていない場合、ソース・ドレイン間には電流が流れないものです。

2. デプレッション型

ノーマリーオン型、つまりゲートに電圧が印加されていない場合でも、ソース・ドレイン間に電流が流れているものです。

 

MOSFETには2種類ありますが、スイッチング用途として良く使われるのはエンハンスメント型です。最初に開発されたMOSFETはデプレッション型でしたが、現在では非常に限定的な用途で使われています。

例えば、負電源を回路に持たなければならない場合を想定します。-5Vを生成した際に、ここにデプレッション型のゲートを10kΩ程度の抵抗で接続をしておきます。

通常、負電圧-5Vが正しく出力されていれば、デプレッション型のソース・ドレイン間には電流が流れませんが、何らかの異常により負電源が正しく出力されていない場合はソース・ドレイン間に電流が流れるため、アラートを出力することが可能となります。

MOSFETの選び方

MOSFETの選定で最も重要なのは、ソース・ドレイン間耐圧VDSSの絶対最大定格です。これはMOSFETの耐圧を大きくすると、オン抵抗が高くなる傾向があるからです。システム用途を考慮して、マージン込で最適な耐圧を選定しないと、無駄にオン抵抗が高く、システムの消費電力増加につながってしまいます。

ソース・ドレイン間に加わる電圧がほぼ一定の場合は特に問題なく選定できますが、問題はサージが生じた場合をいかに考慮するかです。サージ込で考えると、どうしても定常定格の数倍のマージンを見込む必要があります。

同じ耐圧のMOSFETでも、アバランシェ電流やアバランシェエネルギーに対する耐量は異なります。サージ込で考える場合は、高アバランシェ耐量のものを選ぶことで、より低耐圧で低オン抵抗のMOSFETとなります。

MOSFETのその他情報

1. IGBTとのすみわけ

Si-MOSFETは大電流化には適しておらず、2Vを超えた高いバイアス動作や大電流向けのインバーター回路などのパワーデバイス用途向けには、ゲートにMOSFETを、出力部にバイポーラトランジスタを集積した構造であるIGBTの方が適しています。

IGBTは複合デバイスであり、動作には一般にゲートドライバ回路が必要でSOA (Safety Operation Area) や絶対最大定格を超えると破壊しやすいトランジスタであるため、その保護回路が必要という点でMOSFETと比較して扱いが難しい面があります。

昨今は、MOSFETの基板をSiではなく化合物半導体であるSiCを用い、材料物性のバンドギャップを大きくすることで高い耐圧特性を可能にしたSiC-MOSFETも普及し始めています。これらのデバイスはコスト含め一長一短を有するため、当面は市場での用途に応じてのすみ分けがなされるでしょう。

2. SOI-CMOSの情報

MOSFETはそのプロセスの微細化により、オン抵抗低減などの特性改善とともに高周波数対応が図られてきました。従来はバルク基板と呼ばれるp型 (ないしはn型) のSi基板に構造をウェル層ともにCMOS構造を形成するのが一般的でした。

しかしながら、特にRFモバイル向けの高周波数対応デバイスの必要性から、Si基板をバルクではなく、SOI (Silicon On Insulator) と呼ばれる絶縁層のBOX層を導入し基板の絶縁性を高めることでMOSFETならではのリークパスを抑制し特に高周波数特性を改善したCMOSデバイスが登場しています。

これらはSOI-CMOSと呼ばれ、高速動作かつ低損失なデバイスの一つとして着目されています。

3. MOSFETのプロセス微細化

MOSFETの最大の特徴は、低消費電力かつ大規模集積化に適した半導体デバイスであることです。しかし、プロセス寸法を微細にすることで、トランジスタをより高速かつ低電圧動作させ、また回路の集積度も飛躍的に向上させることが可能です。

特に集積度が非常に重要な前述のCMOSを用いた大規模なデジタルプロセッサの場合、2000年代初頭に100nmだったプロセス加工寸法は2022年現在では3nmと言われ、その構造にはFinFETと呼ばれるトランジスタの断面構造に工夫を取り入れた最先端プロセスが採用されています。

今後のさらなる微細化の予測は難しい面が多いですが、一つの技術の流れとして、マルチチップ構造のチップレットと呼ばれる3次元のチップ実装技術の導入が世界の研究開発機関を中心に盛んに検討されている状況です。

参考文献
https://contents.zaikostore.com/semiconductor/4779/
https://www.shindengen.co.jp/products/semi/column/basic/mosfet/mosfet.html
https://amasawahakusyo.com/electronics/mosfet-how-work/
https://toshiba.semicon-storage.com/jp/semiconductor/knowledge/faq/mosfet_common/what-is-a-mosfet.html
http://sudoteck.way-nifty.com/blog/2011/05/post-2a19.html
https://www.infineon.com/dgdl/Infineon-JPPowerDevice1311-02-ART-v01_00-JA.pdf?fileId=5546d462576f34750157b11d2413134c

アルマイト処理

アルマイト処理とは

アルマイト処理

アルマイト処理の使用用途

アルマイト処理とは、アルミニウム表面に酸化被膜を人工的に形成させる表面処理の一種です。

アルミニウムは、空気中の酸素と結合して酸化されやすく、空気に触れているとその表面に非常に薄い酸化皮膜を生成します。

この自然に作られる皮膜で保護されているので、耐食性が比較的良いと言われてます。

さらに、アルミニウムは軽量かつ加工性も高く、生活用品をはじめとした身の回りのありとあらゆる製品に使用されています。

しかしながら、加工性の高さゆえに折り曲げることや摩擦により表面に傷がつきやすいという性質も持っています。

また、アルミニウム表面に自然に出来る酸化膜の膜厚は非常に薄く、使用環境によっては、化学反応などで腐食したり、先に述べた様に折り曲げや摩擦などにより酸化膜が破損することもあり、破損部分から腐食が著しく進行する場合もあります。

そこで、アルミニウムを電解液中で通電させ、酸化を促し、アルミニウム表面を保護する酸化被膜を人工的に形成させるアルマイト処理を施します。

この酸化被膜を形成することで、耐腐食性や耐摩耗性、絶縁性、強度の向上などが期待できます。

アルマイト処理を施した製品は数多くあり、具体的には、生活用品ではやかんやサッシ、スマートフォン、工業用途では光学部品や自動車、航空機、半導体、医療機器などが挙げられます。

アルマイト処理の原理

アルマイト処理は、アルミニウムを陽極に硫酸電解液中で電気分解することにより、酸化被膜を形成させています。

図1に示すように電解液中に陽極と陰極を配置し、陽極側にアルミニウム製品を配置して電極から通電するとアルミニウム製品の表面に酸化被膜が形成されます。

アルマイト処理の模式図

図1. アルマイト処理の模式図

この酸化被膜は図2および図3に示すように、中に細孔が形成された六角柱状のセルの集合体です。

この原理に基づいてアルマイト処理をおこないますが、処理の方法によって、特性が変化するため用途に応じたアルマイト処理が求められます。

酸化被膜の模式図

図2. 酸化被膜の模式図(左) / セルの模式図(右)

アルマイト処理の種類

1. 一般アルマイト処理

通常用いられるアルマイト処理で、複雑な構造をした小さな部品から大型の製品まで対応可能です。耐腐食性と硬度の向上を目的に使用される手法です。

2. 硬質アルマイト処理

一般アルマイト処理よりさらに高硬度にするための処理方法で、低温の電解質中で時間をかけて処理します。酸化被膜の厚さは一般アルマイトの数倍となり、高い耐久性が求められる車のエンジン部や航空機などに使われます。

3. 光沢アルマイト処理

アルマイト処理を施す前に化学研磨処理を行い表面を光沢化します。見た目が美しくなることから、装飾品や反射材に使用されます。

4. カラーアルマイト処理

酸化被膜を形成させた直後に染料液中に浸漬させ、着色します。染料の濃度や浸漬時間、酸化被膜の厚さによって着色をコントロールできます。軽量性とデザイン性が求められる水筒などに使われます。

アルマイト処理のその他情報

アルマイト膜の厚さと膜厚のばらつき要因

アルマイト処理の膜厚
アルマイト処理の中で最も一般的な一般アルマイト処理により形成されるアルマイト酸化被膜の膜厚は、通常5~25ミクロンの範囲であり、使用条件等を考慮して設定されます。

硬質アルマイト処理により形成されるアルマイト酸化被膜の膜厚は20~70ミクロンの範囲で設定されます。

硬質アルマイト処理は、自動車のエンジン部品のような摺動性が求められる部材において施されることが多く、耐摩耗性などを発揮させるために一般アルマイト処理と比較して大きな膜厚が設定されます。

膜厚のバラツキ要因
このようにおこなわれるアルマイト処理ですが、アルマイト酸化被膜の膜厚にはバラツキが生じます。1つの要因が電流分布によるものであり、もう1つの要因が温度分布によるものです。

電流分布に起因するバラツキ
アルマイト処理は電気化学的な反応を利用して行われるため、電気分布が不均一であるとアルマイト酸化被膜の膜厚にバラツキが生じます。

アルミニウム製品が保持される陽極と陰極の距離により、複数のアルミニウム製品間で膜厚のバラツキが起こります。また、複数のアルミニウム製品を一度にアルマイト処理する場合には、配置位置により電流分布が異なり、これが膜厚のバラツキにつながります。

複数のアルミニウム製品を一度にアルマイト処理する場合には、膜厚が厚くなりやすい位置や条件の場所にあるアルミニウム製品の近くにダミーのアルミを吊るして電流を逃がす方法などが用いられています。

温度分布に起因するバラツキ
アルマイト処理は電解液の中で行われますが、電解液の温度分布がアルマイト酸化被膜の膜厚のバラツキ発生の原因となります。

アルマイト処理では、浴内が撹拌されるため電解液槽内の温度は均一に保たれます。このように温度が均一に保たれる状態では電解液が自由に流動できるので電解液の温度分布が均一となります。

しかし、アルミニウム製品近くの拡散層のエリアでは、電解液が比較的動きにくく温度分布が不均一となります。これにより、アルマイト酸化被膜の膜厚にバラツキが生じます。このような問題への対策として噴射ノズルの使用など電解液の流動を促す方法が用いられています。

2. アルマイト処理のデメリット

アルマイト処理によりアルミニウム表面に形成されたアルマイト酸化被膜は、柔軟性に乏しく脆いという欠点があり、このためアルマイト処理部分を屈曲させたり加工したりするとアルマイト酸化被膜が割れたり剥がれたりするデメリットがあります。

また、耐熱性に弱点があり、通常のアルマイト酸化被膜においては、100 ℃を超える高温環境下で、熱膨張によるクラックや剥がれが発生する懸念があります。

アルマイト処理により、耐腐食性や硬度が向上しますが、強酸や強塩基の溶液に弱く、このような溶剤には溶解する問題点もあります。

それ以外にも金属類に湿潤状態で触れると腐食のリスクが増加します。そのため使用用途に応じて、処理方法を工夫する必要があります。

参考文献
http://toeidenka.co.jp/alumite.html
http://toeidenka.co.jp/alumite.html
https://www.sanwa-p.co.jp/faq/detail673.php
https://www.toshin-alumite.jp/knowledge/alumite.html
https://koiketechno.co.jp/chiebukuro_blog/page/10

シリコンダイオード

シリコンダイオードとは

シリコンダイオード

シリコンダイオードとは、半導体部品の1つで、シリコンを主成分とするPN接合型のダイオードです。

シリコンの結晶構造を利用してP型とN型の半導体を接合させ、一方向にのみ電流を流しやすくしています。シリコンダイオードはIT機器や電化製品に広く使われており、整流作用によって交流を直流に変換するなど、用途は幅広いです。

高速スイッチングが可能でありながら低コストであることから、電子機器を始めとするあらゆる装置の中で主要な半導体部品の1つとして不可欠な存在となっています。

シリコンダイオードの使用用途

シリコンダイオードは電子技術の基本的な部品であり、多くの分野でさまざまな用途に使われています。スマートフォンやコンピューターなどの日常的なデバイスから、工業、自動車、通信業界の専門的な設備まで、現代の技術のほぼ全てにその存在が見られます。

1. 整流

ダイオードの主な用途は電源の整流であり、交流を直流に変換します。この整流過程は、ラップトップやテレビ、携帯電話の充電器などの電源供給で重要です。

2. 電圧調整

シリコンダイオードの1種であるツェナーダイオードは、電圧調整によく使われます。これらは入力電圧が変動しても一定の出力電圧を維持し、安定した電圧供給を必要とする繊細な電子デバイスにとって不可欠です。

3. 信号の変調/復調

可変容量ダイオードと呼ばれるシリコンダイオードは、適用される電圧に基づいてその容量を変えます。この特性は、特に無線周波数技術で信号の変調や復調に使用されます。

4. 過電圧保護

一部のシリコンダイオードは、過電圧から回路を保護するために使用されます。例えば、ツェナーダイオードと過電圧防止ダイオードは、電子部品を電圧スパイクから保護する過電圧保護を提供します。

5. 発光

LEDは、電流が流れると光を発します。LEDは照明アプリケーションで広く使用されており、シンプルな指示灯からディスプレイ画面、省エネ型の室内照明まで、様々な場面で活用されています。

6. スイッチングアプリケーション

ショットキーダイオードなどの特定のタイプのシリコンダイオードは、非常に高速なスイッチング速度を持っています。ラジオ送信機やデジタルコンピューターなどの高周波回路での使用に適しています。

7. 信号の混合

ダイオードは、異なる周波数帯域からの信号を混合するために使用できます。これはラジオ放送や信号処理などのアプリケーションで有用です。

シリコンダイオードの用途範囲は広範で、常に進化しています。これらの小さな部品は多くの電子デバイスの動作で重要な役割を果たし、私たちのデジタルな世界を可能にしています。

シリコンダイオードの原理

シリコンダイオードはPN接合によってできた半導体部品です。シリコン結晶をP型半導体とN型半導体で構成し、その接合部分で整流作用を生み出します。

1. シリコン

シリコンは四価の半導体で、熱励起によって一部の原子が電子を失いホールを生み出すとP型半導体となり、逆に電子が過剰になればN型半導体となります。このP型とN型半導体を接合させた部分がPN接合で、この接合界面を過ぎるときに電子とホールが再結合します。

2. PN接合

このPN接合では、電子とホールの再結合によって運動エネルギーが熱エネルギーに変換されます。接合を横切る電流の向きによって、この熱エネルギーの発生量が変化し、シリコンダイオードの整流作用が実現します。順方向に電流を流すと、電子とホールが滑らかに再結合してほとんどの運動エネルギーが熱に変換されるため、電圧降下は小さくなります。

逆方向に電流を流そうとすると、電子とホールの再結合が阻害されるために運動エネルギーをほとんど熱エネルギーに変換できず、大きな電圧降下が生じます。この電圧降下の違いを利用して、シリコンダイオードは交流を整流し、順方向にしか電流を流さない整流作用を示します。これが、シリコンダイオードで最も基本的な動作原理です。

シリコンダイオードの種類

以下に、いくつかの主要なシリコンダイオードの種類を説明します。

1. 整流ダイオード

整流ダイオードは、交流を直流に変換するために最も一般的に使用されるダイオードのタイプです。電力供給やバッテリー充電器などのアプリケーションで見つけることができます。

2. ショットキーダイオード

ショットキーダイオードは、一般的なダイオードに比べて順方向の電圧降下が低く、スイッチング速度が非常に速い特性を持っています。これらの特性により、高速スイッチングアプリケーションや電力整流に適しています。

3. ツェナーダイオード

ツェナーダイオードは、特定の電圧 (ツェナーブレークダウン電圧) で逆バイアス状態で導通を始める特性を持つダイオードです。これにより、ツェナーダイオードは電圧調整や過電圧保護などのアプリケーションで広く使用されています。

4. 可変容量ダイオード

可変容量ダイオードは、特に高周波アプリケーションで用いられ、変調や混合、周波数変換などの機能を果たします。

5. 発光ダイオード (LED)

LEDは、電流が通ると光を発する特性を持つダイオードです。色々な色や形状で利用でき、照明、表示、シグナル送出など、多くのアプリケーションに使用されています。

シリコンダイオードの選び方

電子プロジェクトや製品に適したシリコンダイオードを選ぶことは、その成功にとって重要な要素となります。シリコンダイオードを選ぶ際の主な考慮点は、以下のとおりです。

1. ダイオードの目的

選択するダイオードの種類は、その使用目的に大きく依存します。例えば、整流用途であれば、単純な整流ダイオードが適しています。

電圧調整が必要であれば、ツェナーダイオードが良い選択となります。光を発する必要がある場合には、当然ながらLEDが最適です。

2. 最大順方向電流

ダイオードが破損なく処理できる最大の順方向電流を指します。アプリケーションの最大電流を安全に処理できるダイオードを選ぶことが重要です。

3. 順方向電圧降下

このパラメータは、ダイオードが導通状態にあるときのダイオードを通過する電圧降下を示します。順方向電圧降下が小さいと消費電力が少なくなるため、電力効率が重要なアプリケーションでは、順方向電圧降下が小さいショットキーダイオードなどが適しています。

4. 逆方向ブレークダウン電圧

これはダイオードが逆方向に導通し始める (ブレークダウンする) 最大の逆方向電圧を示します。アプリケーションで経験する可能性のある任意の逆方向電圧よりも、遥かに高いブレークダウン電圧を持つダイオードを選択するようにしてください。

5. 動作速度

ラジオ周波数やデジタル回路など、非常に素早くオン・オフを切り替える必要があるアプリケーションでは、スイッチング速度の速いダイオードを選択します。

6. 温度

すべてのダイオードには、安全かつ効率的に動作する温度範囲があります。もしアプリケーションが高温で動作する場合、それらの条件に耐えられるダイオードを選ぶべきです。

7. パッケージタイプ

ダイオードのパッケージタイプは、その熱の放散、サイズ、そして回路への統合の容易さに影響を及ぼします。回路設計と環境制約に合ったパッケージタイプを選んでください。

参考文献
https://www.matsusada.co.jp/column/diode.html
https://kurashi-no.jp/I0021164
https://toshiba.semicon-storage.com/content/dam/toshiba-ss-v2/apc/ja/semiconductor/knowledge/e-learning/discrete/discrete-basic-chap2.pdf

ガラス基板

ガラス基板とは

ガラス基板

ガラス基板とは、用途に応じた機能が付与されたガラス製の平らな基板の総称です。

一口にガラスといってもアルカリの含有量や板厚によって種類はさまざまで、平滑性や電気的特性も一般の板ガラスとは異なります。用途もパソコンのモニターやスマートフォンのディスプレイから、太陽電池まで幅広いです。

また、ガラス繊維を布状に織ったものにエポキシ樹脂を含侵させて成形したガラスエポキシ基板というものもあります。ガラスエポキシ基板は低コストで製造が可能で、基盤上に電子部品を実装し、電子機器を作動させるための電子回路が形成されます。一般にはプリント基板とも呼ばれています。

ガラス基板の使用用途

ガラス基板は、民生用機器から産業機器に至るまでさまざまな用途で使用されています。具体的な使用用途は、以下のとおりです。

1. ディスプレイ、カバーガラス用途

私たちが日常的に使っているスマートフォンやタブレットなどのモバイル機器やカーナビのディスプレイなどにガラス基板が使われています。厚さは0.5~1.1mmと薄く、透明性と平滑性が特に求められます。

液晶テレビ用のディスプレイに使用する場合は、アルカリ成分を含有したものだと液晶材料の汚染やトランジスタ特性への影響を抑えるため、アルカリ含有率を0.1%まで抑えることが重要です。

また、タッチパネルやイメージセンサー用のカバーガラス用途もあり、これには化学薬品によって一般の5倍程度の強度を付与したガラス基板が使われています。

2. 電気・電子機器用途

パソコンやデジカメの内部にあるマザーボードなどの基板にガラスエポキシ基板が使われています。プリント基板の中でガラスエポキシ基板は最もよく使われており、電気・電子機器の安定した動作を下支えしています。

ガラス基板の原理

ディスプレイ用ガラス基板は、一般のガラスと違い、非常に高い性能が求められます。液晶や有機ELに表示される、鮮明度の高い画像や映像を正確に映し出すために、表面の凹凸を極限までなくし、平滑になるように加工されています。

また、混入する異物も視認できないほどの厳しい基準が定められています。ディスプレイの大型化と軽量化に伴って、薄さと剛性を両立するガラス基板の需要が高まってきている状況です。

ガラスエポキシ基板は、ガラス繊維にエポキシ樹脂を含侵させ硬化させた材料であるため、周辺温度が変化しても寸法変化が小さいというメリットがあります。また、材質そのものが硬く、更に耐熱性や吸湿性、電気的特性にも優れていることもメリットの1つです。

製造コストは比較的安価で、さまざまな銅箔厚の材料も販売されていることから汎用性も高いです。両面基板や多層基板を作りやすく、広く電子機器などに利用されています。一方で、製造において専用の器具が必要というデメリットもあります。

ガラス基板の種類

ガラスは珪砂やソーダ、アルミナなどの無機混合物です。構成される素材の含有比率によってさまざまな種類のガラス基板を製造することができます。各種ガラス基板の特徴は、以下のとおりです。

1. 無アルカリガラス

アルカリ酸化物の含有率を0.1%に抑えたガラスで、液晶ディスプレイ用途に主に用いられています。薄肉化が可能で、薄いものでは0.3mmの厚みのガラス基板も製造されています。平滑性、耐熱性に優れています。

2. 化学強化ガラス

化学薬品によって強度を高めたガラスで、一般的なガラス基板に比べて約5倍の強度を示します。タッチパネル・光ディスク用ガラス・イメージセンサ用のカバーガラスなどにも使用されます。

3. ガラスエポキシ基板

従来、民生機器ではコストの安い紙フェノール基板や紙エポキシ基板が多用されていましたが、近年はガラスエポキシ基板がプリント基板の中でも最も広く利用されています。片面、両面基板、多層基板のいずれもガラスエポキシ基板がそのほとんどを占めています。

4. テフロン基板

ガラス布にポリテトラヒドロフラン (PTFE) 樹脂を含侵させて製造したプリント基板です。フッ素樹脂は比誘電率が低いため、高周波特性に優れています。

参考文献
https://www.ballad-movie.jp/

電極保持器

電極保持器とは

電極保持器

電極保持器とは、電極式レベルスイッチの電極を保持するための部品です。

電極式レベルスイッチとは、液体貯蔵用タンクの液体の高さを感知して電気接点を開閉する産業機器のことです。微弱電圧を掛けた電極棒をタンクに複数本指しておき、液体に接することで電極同士が導通してレベルを感知します。レベルスイッチの仕組み上、電極棒は接液しないとき、お互い絶縁されておかねばなりません。

電極保持器は電極を絶縁しつつ固定する部品です。電極保持器には端子が付いており、端子上で電極棒と配線を接続します。レベルスイッチで使用する電極棒の本数に合わせて、1~5極の電極棒に対応している製品が発売されています。

電極棒が長い場合は、自重や液体の粘性で電極同士が変形して接触してしまう恐れがあります。長い電極の接触防止部品として、電極同士を離して固定するセパレータも販売されています。

電極保持器の使用用途

電極保持器は様々な用途で使用されます。以下はその一例です。

1. オフィスビル

オフィスビルでは、屋上などに給水タンクが設置されています。電極保持器は給水タンクの液位を監視し、水の供給を管理します。液位が低下した場合には、自動的に水を補充するために、電極の信号によってポンプを作動させる仕組みです。

また、エアコンや冷却装置からの排水に対しても使用されることが多いです。電極式レベルスイッチを使用して排水タンクの液位を監視し、タンクが一定の容量に達したときに排水ポンプを作動させ、排水を行います。

2. 工場

工場では液体原料が保管されているタンクを使用することがあります。電極式レベルスイッチは原料の液位を監視し、必要に応じて供給を制御する場合が多いです。タンクが空になった場合には自動的に注入装置を作動させて、生産ラインの中断を防ぐ仕組みです。

3. 公共施設

市民プールなどでは、プールの水位を一定に保つ必要があります。電極式レベルスイッチによって、水位が低下した場合に自動的に水を補給し、適切な水位を維持させることが可能です。。給湯タンクの水位を監視する際にも使用されます。

4. その他

その他として、医療や農業用途に使用されることがあります。医療においては、医薬品や生体試料の保管に電極式レベルスイッチを使用し、液体の供給を管理します。農業では電極式レベルスイッチを使用して灌漑タンクの水位を監視し、必要に応じて灌漑を制御することが可能です。

電極保持器の原理

電極保持器は電極式レベルスイッチの構成要素の一つで、フロートレススイッチと電極棒を合わせて使用されます。電極をタンクに保持しつつ、フロートレススイッチから掛けられる微弱電圧を電極棒へ伝達する部品です。

電極式レベルスイッチは、ポンプの運転停止によってタンク液位を制御したり、タンク液位の警報用として使用されます。電極保持器自体は電極棒取付部と配線接続端子、タンクとの固定部品、カバーで構成されています。

電極棒取り付け部は一般的には雌ネジ、電極棒が雄ネジとなっており、ネジ穴を合わせることで接続します。配線接続端子は、配線端末を固定しつつ、フロートレススイッチからの微弱電圧を電極棒へと掛ける役割があります。タンクとの固定部品は金属タンクと電極を絶縁するために、一般に樹脂製です。

電極保持器の選び方

電極保持器を選ぶ際は、以下の要素を考慮することが重要です。

1. サイズ

タンクや容器のサイズに合わせて適切な電極保持器を選ぶ必要があります。電極の長さや保持器の全体的なサイズが、設置するタンクの寸法に適合していることを確認します。

2. 極数

電極保持器の極数は、液体レベルの検知に使用される電極の数を指す指標です。一般的に極数が多いほど、多くの信号を発信することが可能です。ただし、必要な極数は使用環境や用途によって異なるため、適切な極数を選択する必要があります。

3. 材質

電極保持器の材質は耐久性や耐腐食性、適合性に影響を与えます。一般的な材質としては、ステンレス鋼やプラスチック、セラミックなどがあります。使用環境や液体の性質に応じて適切な材質を選択します。

4. オプション

電極保持器には追加の機能やオプションが付属している場合があります。例えば、配線保護カバーや取付ネジなどがその一例です。使用環境や用途に応じて、これらの追加機能を検討し、適切な電極保持器を選択します。

参考文献
https://www.fa.omron.co.jp/guide/faq/detail/faq04834.html
https://esctlg.panasonic.biz/iportal/CatalogPageGroupSearch.do?method=catalogPageGroupSearchByCatalogCategory&type=clcsr&volumeID=PEWJ0001&catalogID=4887880000&catalogCategoryID=1870120000
https://www.fa.omron.co.jp/products/category/switches/level-switches/electrode-holders_electrodes/
https://www.keyence.co.jp/ss/products/process/levelsensor/type/electrode.jsp

光電センサー

光電センサーとは

光電センサーは光を検出するセンサーです。

光の性質を利用して、測定対象の表面形状や状態、構成物質などを検出します。非接触で表面の形状や構成物質を検出可能なため、出荷前検査や非破壊検査装置に適しています。長距離測定可能かつ応答時間が短いこと、分解能を高くできることも特徴です。検出方法としては、透過型や回帰反射型、拡散反射型などがあります。

光電センサーの使用用途

光電センサーは民生品から産業機器まで幅広い用途で使用されています。使用例は以下の通りです。

1. 食品や消費材などの生産工場での検品
2. ビルやマンションなどの自動ドアや改札
3. 鉄道や自動車など移動運搬機器の距離測定センサー
4. 厚み測定器や非破壊検査装置などの実験器具

光電センサーの原理

光電センサーは、発光素子が内蔵されている投光器、受光素子が内蔵されている受光器、アンプなどの増幅機器、出力端子などで構成されます。また、測定方法によって透過型、回帰反射型、拡散反射型に分類可能です。

1. 透過型

透過型は投光器と受光器の間に測定対象を置き、投光器から出された光を測定対象が遮ることで測定対象を検出します。検出対象が不透明であれば、色や構成物質などに関係なく測定可能です。

2. 回帰反射型

回帰反射型は投光器と受光器が一体になった投受光器と反射板の間に測定対象を置き、投受光器から発光した光を反射板から反射させて検出します。反射板は狭い場所でも設置できるので、限られたスペースに設置して測定することが可能です。

3. 拡散反射型

拡散反射型は投受光器から発光した光を測定対象で反射させて検出します。色の判別が可能なことが特徴です。

光電センサーのその他情報

1. 光電センサーとレーザーセンサーの違い

光電センサーとレーザーセンサーは、使用する光源の種類によって分けられます。光電センサーは一般的にLED光源を使用し、レーザーセンサーはレーザ光を使用します。レーザ光はLED光に比べ指向性が良く、投光器から照射される光の拡散が小さくなります。そのため、小さな物体も検出することが可能です。また、エネルギーも高いため長距離でも減衰せずに投光することができます。

LED光は投光器から照射されると拡散や回り込みが発生するため小さな物体を検出できません。エネルギーも高くないため長距離での検出には不適です。また、隣の光電センサが近くに設置されている場合、拡散光による誤検出が起こる可能性もあります。そのため光電センサーあまり精度を必要としない場合に使用され、価格も安価です。レーザーセンサーは長距離の検出や小型物体検出など精度が必要な用途に用いられ、比較的高額な製品が多いです。

2. 光電センサーの使い方

光電センサーは安価で取り扱いが簡単なことから多くの設備に使用されていますが、使用方法を間違えるとトラブルの原因となります。

光電センサーのトラブルで多いものが、隣り合ったセンサーの相互干渉です。相互干渉は一方のセンサーの投光器から照射された光がもう一方のセンサーの受光器に入光してしまうことで起こります。光電センサーのLED光源は照射後に拡散していき、投光距離が長くなると拡散幅も大きくなります。

相互干渉を防ぐためには、設置距離を離したり、投光受光を交互に設置するほか、干渉防止フィルタや遮光板を取り付けることが効果的です。設置距離は一般的に動作距離の1.5から2倍を推奨しています。設置距離を近くしたい場合は干渉防止フィルタを検討します。干渉防止フィルタは各メーカーがセンサーに合わせて販売しています。

参考文献
https://www.fa.omron.co.jp/products/category/sensors/photoelectric-sensors/
https://www.keyence.co.jp/ss/products/sensor/sensorbasics/pe_info.jsp
https://ac-faq.industrial.panasonic.com/jp/faq_detail.html?id=11042
https://www.fa.omron.co.jp/product/special/knowledge/pes/whole_definition/good_usage.html

油圧プレス

油圧プレスとは

油圧プレス

油圧プレスは、油圧を動力源として薄い板金に圧力を加え、金型の形に加工する装置です。油圧モータによって、油圧シリンダに油が送られ、油圧シリンダ内のピストンによって、金型を上下にスライドさせることによってプレスします。油圧プレスの特徴としては、スライドの速度や動作時の圧力、ストロークが長いことがあります。一方で、油の漏れなどによって、落下事故などの危険性もあるので、使用する場合はそのリスクも考慮に入れる必要があります。

油圧プレスの使用用途

プレス機には作動方式により機械式やサーボモーター式などがあります。

油圧プレス機は生産速度が比較的遅いものの、幅広い材料に対応可能であり、プレスの速度、加速度、力、ストローク長などを精密に制御することができます。また、比較的小さい規模で大きな圧縮能力が得られます。このような特徴から小規模生産や絞り・曲げ加工などに向いています。

油圧プレスは、自動車や家電、電気機器の板金素材の加工で主に使用されます。プレスの種類としては、切断プレスや深絞りプレス、射出プレス、成形プレス、パンチングプレス、鍛造プレスなどに対応できます。選定の際には、プレスの圧力の大きさ、ストロークの長さ、プレスに対応している大きさ、安全面を考慮する必要があります。

油圧プレスの使用例を以下に示します。

  • 車の車体のプレス加工
  • 歯車の概形のプレス加工
  • 弁当やふろの浴槽の金属部分のプレス加工

油圧プレスの原理

油圧プレスはパスカルの原理を利用することで小さな力で大きな力を生み出すことができます。パスカルの原理とは「密閉容器内の流体は、容器形状に関係なく、ある一点に受けた単面積当たりの圧力をそのまま流体の他のすべての部位に伝える」というものです。例えば下図の場合、両側の圧力が釣り合うためF1/A1=F2/A2となり、F2=F1×A2/A1となります。つまり、面積比が大きいほどより大きな力を生み出すことができます。

油圧プレスの原理

図1. 油圧プレスの原理

また、テコの原理によりレバーの力点の力(f)を作用点により大きな力(F1)にして伝えることができます。この二つの原理を利用することで、人力でも非常に大きな力を生み出すことができます。

ここで注意しなければならないことは、両側の面積比を大きくするだけ生み出せる力も大きくなりますが、同時に動かせる長さ(ストローク)が短くなってしまうことです。ストロークは押し出した油量によって決まりますが、面積比が大きくなるほど押し出せる油量が少なくなるため、ストロークも短くなってしまいます。

油圧プレスの構造

原理の説明ではレバーによる手動方式を簡単に説明しましたが、実際に工業的に利用される油圧プレス機は非常に大きな力を精密に加える必要があるため、油圧ポンプを用いて油を押し出しています。

油圧プレスの動作原理を説明します。油圧プレスは、油圧ポンプ、油圧シリンダ、圧力制御弁、流量調整弁、方向切換弁、油圧タンク、プレス部分で構成されています。油圧タンクから、油圧ポンプと圧力制御弁、油圧シリンダが接続されています。油圧ポンプから伸びるパイプには圧力制御弁、流量調整弁、油圧シリンダにつながれています。

油圧プレスの構造

図2. 油圧プレスの構造

油圧プレス動作時は、油圧タンクから油圧ポンプによって油がパイプを通じて油圧シリンダに輸送します。その時は、圧力制御弁と流量調整弁によって、目標の圧力とストロークの速さになる様に、油の圧力と流量を調整します。その後、油圧シリンダが油によって押し出され、シリンダを動作させることによって、プレスをします。設定していた時間、プレスが完了した場合、油圧シリンダから油圧タンクに使用した油が送られます。

方向切換弁によりシリンダによる圧縮、停止、シリンダの戻しを制御することが可能である。