アルマイト処理

アルマイト処理とは

アルマイト処理

アルマイト処理の使用用途

アルマイト処理とは、アルミニウム表面に酸化被膜を人工的に形成させる表面処理の一種です。

アルミニウムは、空気中の酸素と結合して酸化されやすく、空気に触れているとその表面に非常に薄い酸化皮膜を生成します。

この自然に作られる皮膜で保護されているので、耐食性が比較的良いと言われてます。

さらに、アルミニウムは軽量かつ加工性も高く、生活用品をはじめとした身の回りのありとあらゆる製品に使用されています。

しかしながら、加工性の高さゆえに折り曲げることや摩擦により表面に傷がつきやすいという性質も持っています。

また、アルミニウム表面に自然に出来る酸化膜の膜厚は非常に薄く、使用環境によっては、化学反応などで腐食したり、先に述べた様に折り曲げや摩擦などにより酸化膜が破損することもあり、破損部分から腐食が著しく進行する場合もあります。

そこで、アルミニウムを電解液中で通電させ、酸化を促し、アルミニウム表面を保護する酸化被膜を人工的に形成させるアルマイト処理を施します。

この酸化被膜を形成することで、耐腐食性や耐摩耗性、絶縁性、強度の向上などが期待できます。

アルマイト処理を施した製品は数多くあり、具体的には、生活用品ではやかんやサッシ、スマートフォン、工業用途では光学部品や自動車、航空機、半導体、医療機器などが挙げられます。

アルマイト処理の原理

アルマイト処理は、アルミニウムを陽極に硫酸電解液中で電気分解することにより、酸化被膜を形成させています。

図1に示すように電解液中に陽極と陰極を配置し、陽極側にアルミニウム製品を配置して電極から通電するとアルミニウム製品の表面に酸化被膜が形成されます。

アルマイト処理の模式図

図1. アルマイト処理の模式図

この酸化被膜は図2および図3に示すように、中に細孔が形成された六角柱状のセルの集合体です。

この原理に基づいてアルマイト処理をおこないますが、処理の方法によって、特性が変化するため用途に応じたアルマイト処理が求められます。

酸化被膜の模式図

図2. 酸化被膜の模式図(左) / セルの模式図(右)

アルマイト処理の種類

1. 一般アルマイト処理

通常用いられるアルマイト処理で、複雑な構造をした小さな部品から大型の製品まで対応可能です。耐腐食性と硬度の向上を目的に使用される手法です。

2. 硬質アルマイト処理

一般アルマイト処理よりさらに高硬度にするための処理方法で、低温の電解質中で時間をかけて処理します。酸化被膜の厚さは一般アルマイトの数倍となり、高い耐久性が求められる車のエンジン部や航空機などに使われます。

3. 光沢アルマイト処理

アルマイト処理を施す前に化学研磨処理を行い表面を光沢化します。見た目が美しくなることから、装飾品や反射材に使用されます。

4. カラーアルマイト処理

酸化被膜を形成させた直後に染料液中に浸漬させ、着色します。染料の濃度や浸漬時間、酸化被膜の厚さによって着色をコントロールできます。軽量性とデザイン性が求められる水筒などに使われます。

アルマイト処理のその他情報

アルマイト膜の厚さと膜厚のばらつき要因

アルマイト処理の膜厚
アルマイト処理の中で最も一般的な一般アルマイト処理により形成されるアルマイト酸化被膜の膜厚は、通常5~25ミクロンの範囲であり、使用条件等を考慮して設定されます。

硬質アルマイト処理により形成されるアルマイト酸化被膜の膜厚は20~70ミクロンの範囲で設定されます。

硬質アルマイト処理は、自動車のエンジン部品のような摺動性が求められる部材において施されることが多く、耐摩耗性などを発揮させるために一般アルマイト処理と比較して大きな膜厚が設定されます。

膜厚のバラツキ要因
このようにおこなわれるアルマイト処理ですが、アルマイト酸化被膜の膜厚にはバラツキが生じます。1つの要因が電流分布によるものであり、もう1つの要因が温度分布によるものです。

電流分布に起因するバラツキ
アルマイト処理は電気化学的な反応を利用して行われるため、電気分布が不均一であるとアルマイト酸化被膜の膜厚にバラツキが生じます。

アルミニウム製品が保持される陽極と陰極の距離により、複数のアルミニウム製品間で膜厚のバラツキが起こります。また、複数のアルミニウム製品を一度にアルマイト処理する場合には、配置位置により電流分布が異なり、これが膜厚のバラツキにつながります。

複数のアルミニウム製品を一度にアルマイト処理する場合には、膜厚が厚くなりやすい位置や条件の場所にあるアルミニウム製品の近くにダミーのアルミを吊るして電流を逃がす方法などが用いられています。

温度分布に起因するバラツキ
アルマイト処理は電解液の中で行われますが、電解液の温度分布がアルマイト酸化被膜の膜厚のバラツキ発生の原因となります。

アルマイト処理では、浴内が撹拌されるため電解液槽内の温度は均一に保たれます。このように温度が均一に保たれる状態では電解液が自由に流動できるので電解液の温度分布が均一となります。

しかし、アルミニウム製品近くの拡散層のエリアでは、電解液が比較的動きにくく温度分布が不均一となります。これにより、アルマイト酸化被膜の膜厚にバラツキが生じます。このような問題への対策として噴射ノズルの使用など電解液の流動を促す方法が用いられています。

2. アルマイト処理のデメリット

アルマイト処理によりアルミニウム表面に形成されたアルマイト酸化被膜は、柔軟性に乏しく脆いという欠点があり、このためアルマイト処理部分を屈曲させたり加工したりするとアルマイト酸化被膜が割れたり剥がれたりするデメリットがあります。

また、耐熱性に弱点があり、通常のアルマイト酸化被膜においては、100 ℃を超える高温環境下で、熱膨張によるクラックや剥がれが発生する懸念があります。

アルマイト処理により、耐腐食性や硬度が向上しますが、強酸や強塩基の溶液に弱く、このような溶剤には溶解する問題点もあります。

それ以外にも金属類に湿潤状態で触れると腐食のリスクが増加します。そのため使用用途に応じて、処理方法を工夫する必要があります。

参考文献
http://toeidenka.co.jp/alumite.html
http://toeidenka.co.jp/alumite.html
https://www.sanwa-p.co.jp/faq/detail673.php
https://www.toshin-alumite.jp/knowledge/alumite.html
https://koiketechno.co.jp/chiebukuro_blog/page/10

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