MOSFET

MOSFETとは

MOSFET

MOSFETは電子機器に欠かせない半導体デバイスの一つでありトランジスタの一種です。

MOSとは、「Metal Oxide Semiconductor」の略で、日本語では金属酸化膜のことを指します。FETとは、「Field-Effect Transistor」の略で、日本語では電界効果トランジスタと呼ばれています。

MOSFETは、基本的にオンオフのスイッチングや信号の増幅の動作を行います。長所としては、動作速度が非常に速く、緻密な制御に向いていることです。

以前の半導体デバイスはハイポーラトランジスタが主流でした。しかし、機器の小型軽量化や効率化のニーズが高まり、近年の半導体デバイスの主流はMOSFETになりつつあります。

MOSFETの使用用途

MOSFETは、各種ICやLSI向けの電子回路構成用のトランジスタとして使用されています。

使われる分野としては、単体 (ディスクリート) の用途にはパワーエレクトロニクス、センサなどの業界があり、他にも電源系やインバーターなどが相当します。各種LSIは、自動車や情報家電向けのマイコン、スマホやタブレットなどの携帯端末、PC用メモリや各種コンピュータ向けCPUなど、使用用途は幅広いです。

MOSFETは小型軽量化が可能で、集積化に対応できるため、近年の製品においては無くてはならない存在と言えます。

MOSFETの原理

MOSFETは端子 (電極) を3本有しており、それぞれ「ドレイン」「ゲート」「ソース」と呼ばれます。電圧を印加することで電流が流れる性質を持っており、ゲート電極に電圧を印加することでスイッチのオンオフ動作やトランジスタとしての増幅動作を行います。

MOSFETにはNチャンネル (N-Ch) 型とPチャンネル (P-Ch) 型の2タイプがあります。

  • Nチャンネル(N-Ch)型
    ソースの電位よりも正になる電圧をゲートに印加することで電流が流れます。
  • Pチャンネル (P-Ch) 型
    ソースの電位よりも負になる電圧をゲートに印加することで電流が流れます。Nチャンネル (N-Ch) 型の方が性能ならびに回路面において使い勝手が優れているため、使われる場合が多いです。

なお、デジタル回路やメモリIC、センサなどで広く汎用的に用いられているCMOS (Complementary Metal-Oxide-Semiconductor) はp型MOSとn型MOSが一対となった構造のトランジスタです。MOSFETは、動作速度が速く、高速スイッチングが可能となります。

また、駆動電力が小さいため高周波動作にも適しています。大電流化に弱いという性質を持っているものの、その集積のしやすさと取り扱いのしやすさから、近年では主力デバイスです。

MOSFETの種類

MOSFETにはp型とn型が存在しますが、動作特性の違いから、さらに「エンハンスメント型」と「デプレッション型」に分類されます。

1. エンハンスメント型

ノーマリーオフ型、つまりゲートに電圧が印加されていない場合、ソース・ドレイン間には電流が流れないものです。

2. デプレッション型

ノーマリーオン型、つまりゲートに電圧が印加されていない場合でも、ソース・ドレイン間に電流が流れているものです。

 

MOSFETには2種類ありますが、スイッチング用途として良く使われるのはエンハンスメント型です。最初に開発されたMOSFETはデプレッション型でしたが、現在では非常に限定的な用途で使われています。

例えば、負電源を回路に持たなければならない場合を想定します。-5Vを生成した際に、ここにデプレッション型のゲートを10kΩ程度の抵抗で接続をしておきます。

通常、負電圧-5Vが正しく出力されていれば、デプレッション型のソース・ドレイン間には電流が流れませんが、何らかの異常により負電源が正しく出力されていない場合はソース・ドレイン間に電流が流れるため、アラートを出力することが可能となります。

MOSFETの選び方

MOSFETの選定で最も重要なのは、ソース・ドレイン間耐圧VDSSの絶対最大定格です。これはMOSFETの耐圧を大きくすると、オン抵抗が高くなる傾向があるからです。システム用途を考慮して、マージン込で最適な耐圧を選定しないと、無駄にオン抵抗が高く、システムの消費電力増加につながってしまいます。

ソース・ドレイン間に加わる電圧がほぼ一定の場合は特に問題なく選定できますが、問題はサージが生じた場合をいかに考慮するかです。サージ込で考えると、どうしても定常定格の数倍のマージンを見込む必要があります。

同じ耐圧のMOSFETでも、アバランシェ電流やアバランシェエネルギーに対する耐量は異なります。サージ込で考える場合は、高アバランシェ耐量のものを選ぶことで、より低耐圧で低オン抵抗のMOSFETとなります。

MOSFETのその他情報

1. IGBTとのすみわけ

Si-MOSFETは大電流化には適しておらず、2Vを超えた高いバイアス動作や大電流向けのインバーター回路などのパワーデバイス用途向けには、ゲートにMOSFETを、出力部にバイポーラトランジスタを集積した構造であるIGBTの方が適しています。

IGBTは複合デバイスであり、動作には一般にゲートドライバ回路が必要でSOA (Safety Operation Area) や絶対最大定格を超えると破壊しやすいトランジスタであるため、その保護回路が必要という点でMOSFETと比較して扱いが難しい面があります。

昨今は、MOSFETの基板をSiではなく化合物半導体であるSiCを用い、材料物性のバンドギャップを大きくすることで高い耐圧特性を可能にしたSiC-MOSFETも普及し始めています。これらのデバイスはコスト含め一長一短を有するため、当面は市場での用途に応じてのすみ分けがなされるでしょう。

2. SOI-CMOSの情報

MOSFETはそのプロセスの微細化により、オン抵抗低減などの特性改善とともに高周波数対応が図られてきました。従来はバルク基板と呼ばれるp型 (ないしはn型) のSi基板に構造をウェル層ともにCMOS構造を形成するのが一般的でした。

しかしながら、特にRFモバイル向けの高周波数対応デバイスの必要性から、Si基板をバルクではなく、SOI (Silicon On Insulator) と呼ばれる絶縁層のBOX層を導入し基板の絶縁性を高めることでMOSFETならではのリークパスを抑制し特に高周波数特性を改善したCMOSデバイスが登場しています。

これらはSOI-CMOSと呼ばれ、高速動作かつ低損失なデバイスの一つとして着目されています。

3. MOSFETのプロセス微細化

MOSFETの最大の特徴は、低消費電力かつ大規模集積化に適した半導体デバイスであることです。しかし、プロセス寸法を微細にすることで、トランジスタをより高速かつ低電圧動作させ、また回路の集積度も飛躍的に向上させることが可能です。

特に集積度が非常に重要な前述のCMOSを用いた大規模なデジタルプロセッサの場合、2000年代初頭に100nmだったプロセス加工寸法は2022年現在では3nmと言われ、その構造にはFinFETと呼ばれるトランジスタの断面構造に工夫を取り入れた最先端プロセスが採用されています。

今後のさらなる微細化の予測は難しい面が多いですが、一つの技術の流れとして、マルチチップ構造のチップレットと呼ばれる3次元のチップ実装技術の導入が世界の研究開発機関を中心に盛んに検討されている状況です。

参考文献
https://contents.zaikostore.com/semiconductor/4779/
https://www.shindengen.co.jp/products/semi/column/basic/mosfet/mosfet.html
https://amasawahakusyo.com/electronics/mosfet-how-work/
https://toshiba.semicon-storage.com/jp/semiconductor/knowledge/faq/mosfet_common/what-is-a-mosfet.html
http://sudoteck.way-nifty.com/blog/2011/05/post-2a19.html
https://www.infineon.com/dgdl/Infineon-JPPowerDevice1311-02-ART-v01_00-JA.pdf?fileId=5546d462576f34750157b11d2413134c

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