ヘルールガスケット

ヘルールガスケットとは

ヘルールガスケットはヘルール配管同士を接続する際に使用するガスケットです。配管やバルブの接続には継手が使われています。継手の接続方法にはねじ込み・フランジ、ヘルールなどが使われています。

継手の中でも、より衛生的な環境で使用がなされているのがヘルールです。特にねじ込みやフランジに比べて分解が行いやすいことが特徴です。分解して洗浄を行う場面で良く用いられています。使用するガスケットは専用のものが用意されています。 

ヘルールガスケットの使用用途

ヘルールはサニタリー配管やサニタリー継手とも呼ばれています。サニタリーとは衛生的という意味で使われます。工具が不要で組み付けや分解が行えるため、洗浄等を行うために取り外しが多い部分で用いられます。

ヘルールの配管内部は凹凸がないことが特徴で、洗浄に優れています。また液だまりが少ないことから、異物混入や菌発生のリスクを減らすことができます。これら特徴から医薬品・化粧品・食品関連の分野で用いられています。

ヘルールガスケットの原理

ヘルールはヘルール配管とガスケット、クランプバンドの3点で構成されています。ヘルール配管のフランジ部分には溝が刻まれています。一方使用するガスケットは通常の平たい構造ではなく、ヘルール配管の溝に合うような十字のでっぱりが付いています。ヘルール配管同士を接続する場合、間に専用ガスケットを接続することでしっかりシールされます。接続したフランジ同士をクランプバンドで止めることで固定させます。締め付けは手で行うことができるため、工具が必要ありません。

ガスケットは使用する流体により変更することができます。一般的なのは白色のシリコンガスケットです。その他にもPTFEフッ素ゴム、EPDM、NBR、サニクリーンなど様々な種類が開発されています。

ヘルールガスケットにはA型とB型が存在します。A型は断面がL型となっており、ガスケットの周辺が盛り上がった形をしています。一方B型は断面が平面となっています。A型の方がヘルールのフランジ部分に乗せた時にずれが少ないです。 

参考文献
https://www.nitto-kinzoku.jp/archives/technic/sanitary_ferrule/
http://energy-kanrishi.com/ferrule/
https://kinokikou.jp/info/knowledge/gasket-a-b/

サニタリー継手

サニタリー継手 (フェルール継手) とは

フェルール継手サニタリー継手とは、清浄性が求められる配管に使用される継手です。フェルール継手とも呼ばれます。

サニタリー継手は、食品、医薬品及び化粧品など人体へ直接摂取したり、人体に作用する製品を製造する工場などで多く使われます。通常の配管継手は、その継手部に「溜まり」などが発生しても、大きな問題とはなりません。しかし、清浄性が求められる食品や医療品製造分野では、溜まりの部分で発生するバクテリアや異物が大きな問題となります。そのため、サニタリー継手を使用する場合が多くあります。

サニタリー継手の使用用途

サニタリー継手は医薬品・化粧品・食品関連などの分野で用いられています。サニタリーとは衛生的という意味です。サニタリー継手は工具が不要で組み付けや分解が行えるため、洗浄等を行うために取り外しが多い部分に用いられます。

サニタリー継手の配管内部は凹凸がないことが特徴です。使用上は、特に洗浄のしやすさの点で優れています。また、液溜まりが少ないことから、異物混入や菌発生のリスクを減らすことができます。

サニタリー継手の原理

 1. サニタリー継手の構成

サニタリー継手の構成部品は、サニタリー配管とガスケット、クランプバンドの3点です。サニタリー配管のフランジ部分にはガスケットを保持するための溝が刻まれており、ガスケットにはサニタリー配管の溝に合うような突起形状が付いています。

2. サニタリー継手の接続

配管同士を接続する場合、間に専用ガスケットを接続することでしっかりシールされます。接続したフランジ同士は、クランプバンドで固定しますが、締め付けは手のみで行うことができ、工具の必要がありません。

サニタリー継手は配管部品なので、エルボやチーズ、ソケット、ニップルなど複数の継手が存在します。配管や部品と接合しない場合など、末端の閉鎖を行う場合には、サニタリーキャップを使用します。

サニタリー継手で使用するガスケットは、配管内を流れる流体により変更できます。一般的なのは白色のシリコンガスケットです。その他、PTFEフッ素ゴム、EPDM、NBR、サニクリーンなど様々な種類が開発されています。

 サニタリー継手のその他情報

1. サニタリー継手の取り付け方

サニタリー継手の取り付けは、フランジに刻まれた溝にサニタリーガスケットをはめた後、接続先のフランジと突き合わせ、サニタリークランプでフランジを挟み込んで締め付けます。取り付けの際にフランジの溝やガスケットにホコリや異物が付着しているとシール性が確保できません。

液漏れの原因となりますので、各品を清浄な場所に保管するとともに、取り付け前に汚れのないことが必要です。また、ガスケットが溝にうまくはまっていない状態で締め付けると、ガスケットが破損するため注意が必要です。

2. サニタリー継手の規格

サニタリー継手は、ISO規格の他に3A規格 (アメリカの衛生関連3団体が定めたサニタリー規格) 、JISガス配管規格、JISステンレス鋼サニタリー管規格などの複数の規格があります。サニタリー用途として一般的に用いられる物はISO規格品であることがほとんどですが、互いに異なる規格との取り付けは基本的にできません。

また、同じISO規格品であっても、異なるメーカーの製品はガスケット溝の形状が微妙に違っている場合があるので、基本的に1つの工程配管は同じメーカー品で揃える方が無難です。

3. サニタリー継手の耐圧性

サニタリー継手は脱着の容易さを主眼に置いた機構であり、耐圧性はそれほど高くありません。一般的には1MPa以下の範囲での使用が推奨され、流体の腐食性や温度等によっても耐圧性は変化します。余裕を持った範囲で使用することが大切です。

サニタリー継手は、ある程度の低圧・低真空まで使用可能ですが、高真空用には真空用規格であるNW/KF規格が用いられます。これは一般のサニタリー継手と同様に、ガスケットをフランジで挟み、サニタリークランプで締め付けるものですが、Oリングに金属製のインナーリングが取り付けられた特殊なガスケットを使用します。NW/KF規格フランジでは10^-7Pa程度の高真空が可能です。

サニタリー継手はフランジ面の傷つきやガスケットの劣化、汚れの付着等により耐圧性が損なわれる可能性があるため、取扱いには注意し噛み合わせ部分の劣化を防ぐことが必要です。

参考文献
https://www.nitto-kinzoku.jp/archives/technic/sanitary_ferrule/
http://energy-kanrishi.com/ferrule/
https://www.consuss.co.jp/faq/
http://www.sakura-seal.co.jp/category/1932408.html

真空発生器

真空発生器とは

真空発生器とは、真空状態を生成する装置です。

真空とは気体分子が存在しない空間を指し、その圧力は通常の大気圧よりも非常に低いレベルに保たれている状態のことです。真空発生器は物理学や工学分野において真空が必要な場合に使用される装置で、重要な役割を果たします。

エジェクター、真空ポンプ、真空ブロワの3種類が存在し、それぞれ用途によって使い分けます。真空発生器の中でもエジェクターは原動力が不要なため、遠隔地や不便な場所でも使用することが可能です。一方で、真空ポンプや真空ブロワは電動のため、効率よく真空をつくることができます。 

真空発生器の使用用途

さまざまな製造現場で活用される真空発生器は、半導体製造などにおける産業プロセスを支えるために使用されます。また、自動車産業では、物体を表面に密着させる「吸着」の原理を利用して車体やガラスの取り付け時、大きな部品を確実に保持するために不可欠です。

その他にも、医療現場や生活に身近な食品包装などに活用されています。

1. 半導体製造

真空発生器は、半導体製造などの微細な部品を作る際に高い真空度が必要とされます。真空発生器の用途として、高真空状態を作り出すことで物体を吸着させるというものがあります。

例えば、エッチングプロセスや蒸着プロセスにおいて、微細な部品を精確に配置するために、吸着を使って部品をハンドリングすることで、高度なプロセス制御が可能となります。

2. 医療機器の製造

医療機器の製造においては、高品質でクリーンな真空環境が必要とされます。例えば、血液分析装置や放射線治療機器の製造には真空発生器が使用されます。これにより、機器内部の汚染や気体の影響を最小限に抑え、正確な機能を実現します。

3. 食品包装

食品や製品の保存期間を延長し、鮮度を保つための真空包装などにも多く使用されます。例えば、スーパーなどに並ぶ肉や野菜などの鮮度を保つための真空包装は欠かせない装置です。

真空発生器の原理

真空発生器の基本的な原理は、気体分子を取り除くことで空間の圧力を下げるというものです。幅広い産業分野において使用されている装置で、電子デバイスの製造、化学反応の制御、空間シミュレーション、真空管の動作などに欠かせません。

1. エジェクター

エジェクターは、ポンプやコンプレッサーのように動力源を必要とせず、単純で信頼性の高い仕組みが特徴です。ベンチュリ―効果を用いて真空発生させます。エジェクター内は部分的に絞られた構造となっており、そこを駆動流体であるエアーが高速で通り抜けることで、部分的に真空になります。

2. 真空ポンプ

真空ポンプは、空気や気体を取り除き、容器内の圧力を低下させることで、真空を生成します。真空を生成する方法は、排気と吸着、拡散の3点です。

排気による方法では、機械的なポンプや分子ポンプを利用して気体を排出し、圧力を低下させます。具体的には、モーターの回転によりベーンが回り、ケーシング内の気体を密封しながら排出します。

吸着による方法では、吸着剤を使用して気体分子を吸着させ、空間内の圧力を下げます。拡散による方法では、気体分子の運動を制御することで圧力を減少させます。

3. 真空ブロワ

真空ブロワは、真空ポンプとは逆の原理で動作する装置です。圧縮空気を用いて真空を発生する機能を持っており、モーターを回すことで内蔵された羽を回転させて気体を取り込み、排気します。この吸気・排気過程により、容器内の圧力が低下し、真空が生成されます。

真空発生器の選び方

真空発生器を選ぶ際には、いくつかの重要な要素を考慮することが大切です。

1. 真空度

使用する産業や用途に応じて必要な真空度が異なるため、適切な真空度を選ばなければなりません。

2. 排気速度

排気速度は、装置がどれだけの量の気体を処理できるかを示す指標であり、作業効率に影響を与えます。高い排気速度が必要な場合は、それに適した真空発生器を選びます。

3. 耐久性・メンテナンス性

長期間安定した動作が求められる場合は、耐久性が高く、メンテナンスが容易な製品を選ぶことが重要です。

スパイラル熱交換器

スパイラル熱交換器とはスパイラル熱交換器

スパイラル熱交換器とは、名前の通りスパイラル形状を利用した熱交換器です。

流体が渦巻流になるのが特徴です。また、化学工学的な観点から見ると軸側流路は断面積が広いことから圧力損失が低く、狭い流路間隔を形成できることから流体同士を近づけた熱交換ができます。

スパイラル形の流路は、多管式熱交換器での円管流路に比べて乱流が生じやすいです。そのため、高い熱伝導性が得られます。流路は板幅などを柔軟に変化させることが可能で、条件に合った設計が行いやすいです。 

スパイラル熱交換器の使用用途

熱交換器は高温流体と低温流体を接触させて熱交換させる機器で、廃熱を利用するなど主に省エネの分野で用いられます。また、流体同士が直接触れてはいけない場合にも熱交換器を経由して、間接的に熱交換させることが可能です。

温度条件が厳しい場合、多管式熱交換器は直列に複数基の熱交換器を接続しますが、スパイラル熱交換器は1基で賄えたりするケースもあります。また、熱交換器の汚れが少ないことから、洗浄を減らしたいときにも有用です。

スパイラル熱交換器の原理

スパイラル熱交換器の伝熱部分は、2枚の金属板をスパイラル状に巻き付けた流路になっています。2か所から送られた流体がスパイラル内を通ることで、金属板表面を介して熱交換が行われます。このとき、流路で乱流が発生していることが起因して、より効率的な熱交換を実施することが可能です。

2枚の金属板を巻き付ける構造であることから、流路断面積を小さく保つことができます。それにより熱交換器内の流速を上げることが可能で、スケールを剥離するような自浄作用がは働きます。反対に流路幅を少し広めに調整することで、固形分を含む流体でも対応するようになります。

スパイラル熱交換器の種類

スパイラル熱交換器の構造は接触させる流体の種類によって1型〜3型の3つに分けられます。また、塔頂が直接接続できるようになっている塔頂コンデンサー式も存在します。

1. 1型

1型は2つの流体を流す管を隣同士に渦形状で配置した構造です。逆向きに各流体を流します。単一流路である管の構造上、沈殿物が堆積しても洗い流されやすいです。

沈殿物が堆積すると管内が詰まるため、詰まった箇所での流速が増加します。流速が増加した流体が堆積物を流す仕組みです。形状がどこを取っても同じ断面であることも、固体が堆積しにくい理由の1つです。上記の理由から1型は汚れが残りにくくなっています。

2. 2型

2型は中央に半径が大きな軸方向の菅が存在し、その周囲に渦形状の管が配置された構造です。軸方向の管には気体を流し、渦形状の管には液体を流すことで熱交換を実施します。

軸方向の管は半径が大きい管を使用しているため、気体の通過距離を短くすることが可能です。圧力の損失が小さい特徴を持ちます。管同士の距離を近く配置できるため、熱交換効率を高くすることが可能です。

3. 3型

1型のスパイラル面を地面に対して、垂直に設置した構造です。

スパイラル熱交換器のその他情報

層流と乱流

流体の流れ方向は、管に対して自然な流れ方向である層流と不規則な方向に流体が流れる乱流の2種類があります。流体内の流れが層流か乱流なのかは、レイノルズ数と呼ばれる指数で知ることができます。レイノルズ数とは、流体速度や流体の粘性などで定まる指数です。

流体の流れが乱流になると、熱伝導性は上がります。一方で、層流は熱伝導性は小さいものの圧力損失が小さく済む特徴を持ちます。熱交換機ではこの層流と乱流を菅内で制御することが重要です。

スパイラル熱交換器が持つ渦形状の管は、乱流を発生しやすくなる形状です。そのため、流れの観点でも多管式熱交換器等と比較して熱伝導性に優れています。

参考文献
https://www.kurose.co.jp/sh_merit.htm
https://www.hisaka.co.jp/phe/workbook/first_period04.html
http://www.morimatsu.jp/construction/pressure/hex.html

ステンレスタンク

ステンレスタンクとは

ステンレスタンク

ステンレスタンクとは、材質がステンレスのタンクです。

特に指定がない場合は、金額面の観点から鉄製タンクが用いられますが、錆を防止したい場合はステンレスタンクが用いられます。また、ステンレスの中にも種類があり、細かい用途や予算に応じて使い分ける必要があります。

ステンレスタンクは、タンク内に材料を入れ、撹拌器を用いて撹拌混合する用途で用いられる場合が多いです。そのほか、20号タンクとしても用いられます。なお、20号タンクとは、危険物を一時的に貯蔵するタンクのことです。

ステンレスタンクの使用用途

ステンレスタンクは錆に強いことから、錆びやすい場面で用いられる場合が多いです。ただし、ステンレス製でも錆びることはあります。錆びないのではなく、あくまでも錆にくいという点に注意が必要です。

具体的な使用用途の例としては、製品の保管、攪拌機による調合、加熱、冷却などが挙げられます。業種は、化学・食品・製薬・化粧品・工業など、非常に幅広いです。ステンレスの表記はSUS (StainLess Steel) の後に数字がくるようになっており、耐薬品性が低い順に「SUS430→SUS304→SUS316→SUS316L」となります。

タンク用途以外も含めて一般的なのはSUS304です。化学薬品や海水などを扱う場合は、更に耐薬品性のあるSUS316を用います。医薬品や化粧品などではSUS316Lが用いられます。

ステンレスタンクの原理

錆は鉄が空気中の酸素と反応し、酸化鉄になることが原因です。ステンレスは中にクロムが入っており、鉄より先にクロムが空気中の酸素と結合することで錆を防止します。クロムが酸化すると、表面に数ナノメートル程度の不動態膜を形成します。

不動態膜は化学変化しづらいため、鉄と酸素が結合するのを防ぐのが役割です。ステンレスに傷がつくと不動体膜が剥がれる場合もありますが、すぐにクロムが酸化して新たな不動体膜を形成します。前述したステンレスのSUS304は、クロム18%、ニッケル8%が含有しています。18-8ステンレスとも呼ばれており、ニッケルは不動体膜を更に形成しやすくする効果があります。

さらに、ニッケルを増量し、モリブデンを追加したステンレスがSUS316です。モリブデンの効果により、不動体膜が厚くなることで耐食性を増加させます。SUS316をより強力にしたものがSUS316Lです。炭素含有量を減らすことで、溶接部分の腐食性を低下させる性能があります。

ステンレスタンクの選び方

ステンレスタンクのラインナップはメーカーによって異なるため、使用目的に合わせてメーカーと容器を選びます。製品の保管用には、移動しやすい取っ手付、攪拌用には攪拌機の取り付け台座付など、種類はさまざまです。

保温や冷却など、内容物の温度調節用には、ジャケット容器を選定します。また、内容物の残量が見えるようにレベルゲージ付、製品の回収ができるようにドレン排出口付の容器もあります。製品の回収を目的とする場合、排出をなめらかにするため、容器の底がホッパー形状やスロープ形状となることが多いです。

容器底が鏡板形状の場合は、攪拌時に底部の液が滞留しなかったり、荷重を分散させるため、圧力に強くなったりします。製品が食品の場合は食品衛生法適合の容器、危険物の場合には危険物容器など、法規を満たした製品を選びます。

ステンレスタンクのその他情報

ステンレスタンクの電解研磨

ステンレスタンクの清浄性や耐食性を上げる際、電解研磨を実施する場合があります。電解研磨とは、電気分解の作用により、金属表面を溶かして平滑化する処理のことです。

ステンレスに電解研磨を施した場合、表面に耐食性に優れるクロムの割合が高くなった酸化被膜が形成されるため、汚れがつきにくくなります。また、溶接焼けの削除、バリ取り、金属光沢を出せるなどもメリットです。

溶接焼けを削除する方法として、酸洗いも挙げられます。酸洗いとは、製品を酸系の溶液に浸し、表面に付着した酸化物を除去する処理のことです。酸洗いはコストや対応サイズに優れる一方、金属光沢を出せないというデメリットもあり、製品用途によって処理方法を使い分けます。

参考文献
https://www.nitto-kinzoku.jp/archives/technic/sus-rust/
https://www.nitto-kinzoku.jp/archives/technic/sus316l/
https://www.monotaro.com/s/pages/cocomite/833/

PH計

PH計とは

PH計

pH計とは、液体のpHを測定する装置です。

pHは水質を表す指標の一つであり、液体の水素イオン濃度を表すものです。例えば水道水は中性、炭酸水や胃酸は酸性、石灰水やせっけん水などはアルカリ性に分類されます。

簡単な測定方法としてはリトマス試験紙を用いた比色法による測定方法があります。ただし、より正確なpHを知るためにはpH計が必要になります。pH計は主にガラス電極を用いているものが主流であり、これをガラス電極法と呼びます。

PH計の使用用途

主に燃焼を行うゴミ焼却場、ボイラー、火力発電などでのpH測定や、建設土木工事やコンクリート工場での工場排水放水時のpH測定などで用いられます。pH計を設置しておくことで常時測定し、異常なpHにならないか監視する用途でも用いられます。

食品分野ではpHによって味や安全性が変化するものも多々あります。食品それぞれに適したpHがあり、適したpHでないと風味が損なわれたり、異物が混入してしまったりと問題が発生してしまいます。

PH計の原理

PH計の原理

図1. PH計の原理

一般的なガラス電極法でのpH系は、ガラス電極と比較電極の2種類を用いて測定します。この2つの電極の電位差を測定することでpHを測定することができます。

ガラス薄膜の内外にpH差が発生しているとその差に応じた電位差が発生します。理論上では、25℃の溶液においてpH差が1あれば起電力は約59mV発生します。ガラス電極の中の液は通常pHが7の液を用いるため、起電力を測定することで測定対象のpHが分かります。

上記の様に起電力を測定するには、対比となるもう1本の電極が必要となります。これを比較電極と呼びます。比較電極は液絡部を介して電極内部液と被験液が接触しており、被験液が変化しても電位がほとんど変化しません。ただし、液絡部では常に電極内部液が被験液の方に流れることが理想であり、このため測定時は比較電極の内部液補充口を開け、内部液の液面は被験液面よりも高くする必要があります。

pH測定を行うにあたり、必ず標準液を用いた校正を行う必要があります。標準液には緩衝液が用いられます。JISにより決められた5種類の標準液が存在します。シュウ酸塩、フタル酸塩、中性リン酸塩、ホウ酸塩、炭酸塩の5種類です。pH差が1で約59mVと小さな電位差ですので、まずこれら標準液を用いて校正を行うことでpH差による起電力を測定する際に正確に測定することができます。

PH計のその他情報

1. PH計の電極

PH計の電極

図2. PH計の電極

一般的にpH計は、電極と温度補償用の温度センサで構成されています。電極にはガラスが用いられ、このガラス電極と比較電極の2本の電極間に生じた電位差を測定することによりpHを確認します。

pH計の測定電極は白金/水素電極が用いられてきましたが、この電極は現在では一般的には使用されていません。一方で、高精度の測定結果を得るための参照電極として使用されています。

現在では多様化している被測定溶液に対応するために、ガラス電極が使用されています。ガラス電極は、pH感度を持つガラス膜内に内部緩衝液を封入し、内部導通用電極を通り、電位を測定します。また、外側の電極管は高い耐アルカリ性をもち、ガラス膜の持つ電気抵抗に比べ数倍の抵抗を持つことが要求されます。

pH計は、ガラス電極(測定電極)と参照電極が対となって、2本の電極を用いて測定するのが多かったのですが、測定電極と参照電極が1つに組み合わされた複合電極が考案され、多くの場で使用されています。
複合電極では、測定電極の外側に同心円状で参照電極が付いている構造となっています。

2. PH計での土壌測定

作物を育てる際に、土壌のpHを確認し、酸性側か、アルカリ性側かを確認する必要があります。

例えば、茶はpHが5で酸性、ジャガイモはpHが6で弱酸性、ほうれん草はpHが7で中性というように各作物で土壌中のpHの領域が異なります。ただし、土壌のpH測定は難しく、溶液のようにガラス電極を地面に刺すこができません。

土壌のpH測定としては、農林水産省がマニュアルを作成し、指示薬を使用した簡易測定法があります。

これは、採取した土壌を自然乾燥させ、水道水と混ぜます。5-10分ほど静置し、上澄液を採取して、指示薬を滴下します。検水の発色を読み取り、対応するpHを確認します。なお、これ以外に、ポータブルのpH測定器もあり、直接地面に刺して、対象となる土壌のpHを測ることも可能になっています。

参考文献
http://www.fkk-net.co.jp/pc/contents19.html
https://www.horiba.com/jp/application/material-property-characterization/water-analysis/water-quality-electrochemistry-instrumentation/the-story-of-ph-and-water-quality/the-story-of-ph/measurement-of-ph-in-many-fields/foods-medicines-cosmetics-and-medical-care/
https://www.horiba.com/jp/application/material-property-characterization/water-analysis/water-quality-electrochemistry-instrumentation/the-story-of-ph-and-water-quality/the-basis-of-ph/measuring-ph-using-a-glass-electrode/
https://www.horiba.com/jp/application/material-property-characterization/water-analysis/water-quality-electrochemistry-instrumentation/the-story-of-ph-and-water-quality/the-basis-of-ph/measuring-ph-using-a-glass-electrode/reference-solution/
https://www.tactec.co.jp/download/hamilton_dl/hamilton_pH_info_1.pdf
https://www.toadkk.co.jp/support/useful/useful05.html
https://www.toadkk.co.jp/support/useful/useful03.html
https://www.suzuken-ltd.co.jp/choose/soil/

バラクタダイオード

バラクタダイオードとは

バラクタダイオードとは、逆電圧を印加することによって、静電容量を変化することができるダイオードのことです。

可変容量ダイオードやバリキャップとも呼ばれています。一般的に、ダイオードのPN接合部分に逆方向の電圧を印加すると発生すると、電子や正孔といったキャリアが無い部分である空乏層がコンデンサのようにふるまいます。

バラクタダイオードはそのコンデンサとしてふるまう静電容量が、さらに印加する電圧の大きさによって変化する性質を積極的に利用しているものです。

バラクタダイオードの使用用途

バラクタダイオードの使用用途は、電子同調回路や電圧制御発振器 (VCO) などの電子部品です。電子同調回路や電圧制御発振器 (VCO) は、ラジオやテレビ、通信機器、スマートフォンなどの移動式通信機器などの電波を受信するような機器で用いられています。

それらの機器は、特定の周波数の信号を受信するため、受信部のコンデンサの容量やコイルのインピーダンスの値を調整しなければなりません。そのために、静電容量を電圧によって制御することができるバラクダイオードが使用されます。

バラクタダイオードの原理

バラクタダイオードの原理は、ダイオードのPN接合部に逆方向電圧を印加した際に生じるキャリアがない空乏層を容量として活用し、その容量の値が逆方向電圧値に依存する特性を積極的に用いることにあります。通常のダイオードは、順方向の向きにバイアス電圧が印加されると順方向電流が流れ、逆方向の向きにバイアス電圧が印加されると電流が流れなくなります。

この逆方向に電圧を印加した状態では、PN接合部分から、P型半導体部分では正孔が電極側に移動し、N型半導体部分では電子が電極側に移動するため、PN接合部分ではキャリアがない空乏層と呼ばれる層を形成します。その空乏層には電荷が無く、空乏層の両サイドには電荷が発生するため、コンデンサのようにダイオードがふるまうことになります。

逆方向の印加電圧の絶対値が大きければその分だけ空乏層の厚みが大きくなり、結果として等価的な静電容量は小さくなります。この逆方向電圧を印加しその値を可変することにより、静電容量が変化するダイオードがバラクタダイオードです。この容量の変化特性を有効に活用しています。

バラクタダイオードのその他情報

1. バラクタダイオードを用いたLC共振回路

バラクタダイオードは、バイアス印加電圧で容量値を可変できることから、インダクタとLC共振回路を形成し、その共振周波数を調整することが可能です。

この電圧値で可変できるLC共振回路を用いて、例えば一例としてコルピッツ発振器などに共振回路を組み込んだものが、電圧制御発振器 (VCO) です。

電圧制御発振器 (VCO) は、移動体通信用の周波数調整回路であるPLL (Phased Lock Loop) の一部です。基地局と移動体端末の間で実施されるセルラー通信用途には欠かせない非常に重要な回路となっています。また、同調回路としては、ラジオなどのFM変調用途にもこのLC共振回路は使われています。

2. バラクタやバリキャップの語源と降伏電圧

バラクタダイオードのバラクタ (英: Varactor) とは「Variable Reactor」の略称であり、可変リアクタンスを意味し、バラクタダイオードの場合には特に容量性の可変リアクタンスを表しています。一方で、バリキャップとは「Variable Capacitor」の略称であり、文字通りに可変容量という意味です。

バラクタやバリキャップは共に容量を変更できるという意味合いの略称ですが、容量を可変できる逆方向側のダイオードバイアスにもブレークダウン電圧 (降伏電圧) があることには注意が必要です。使用予定のバラクタダイオードの電気的な仕様をよく確認し、逆方向側の使用可能範囲内の電圧で用いるようにしましょう。

なお、ブレークダウン電圧 (降伏電圧) はツェナー電圧とも呼ばれ、この領域を積極的に用いるダイオードはツェナーダイオードとも呼ばれます。ツェナーダイオードは過電圧が本体の回路へ印加されることを防止する保護回路向けの用途や、定電圧生成のための回路用途などに用いられる場合が多いです。

参考文献
https://www.marutsu.co.jp/contents/shop/marutsu/mame/61.html
https://toshiba.semicon-storage.com/jp/semiconductor/knowledge/e-learning/discrete/chap2/chap2-9.html
https://detail-infomation.com/variable-capacitor-diode/

電流発生器

電流発生器とは

電流発生器とは、電子機器などの電気的な測定のために、一定の定電流を発生させる装置です。

製品としては、電圧電流発生器として発売されているものが多いです。一定の電流を流し続ける必要があるため、負荷抵抗が変化しても定電流を流せるように、搭載されているオペアンプや基準電圧ICによって電流の大きさを制御しています。

電流発生器の中には、大電流を流すことで大規模な電気設備の測定などを行える電流発生器もあります。

電流発生器の使用用途

電流発生器は、半導体デバイスや電子機器、電子部品の電気特性の評価や測定などの用途が主です。また、大電流を発生できる電流発生器では、ブレーカなどの遮断動作の確認や、ヒューズの溶断の検査、変電設備の評価などの用途で使用されます。

電流計電圧計が備え付けられている製品が多く、高精度で測定対象の電気特性を計測することが可能です。装置を選定する際は、対応している電圧や電流の大きさ、測定精度、安全性などの各種仕様を良く考慮する必要があります。

電流発生器の原理

電流発生器の原理は、負荷のインピーダンス値によらない定電流発生回路を構成すべく、オペアンプや基準電圧回路による負帰還回路を活用し、発生する電流値を基準電圧 (Ref電圧)と内部の抵抗値で決定している点にあります。

定電流を発生させるための回路でよく用いられているのが、負帰還回路でのオペアンプの入力端子で0Vになるバーチャルショートを成立させる回路です。バーチャルショートを成立させる回路には、通常は吸い込み型と吐き出し型があります。

1. 吸い込み型

吸い込み型は、外部から電流をトランジスタに吸い込むように定電流発生の回路に流し、オペアンプとグランドを利用して、バーチャルショートの回路を作る方式です。

2. 吐き出し型

吐き出し型は、電流発生器の回路からトランジスタを利用して増幅させて吐き出すように、外部に電流を流すことでバーチャルショートを成立させる方式です。 

 

ともにオペアンプに印加されるRef電圧を内部の抵抗で割った値で電流値が決定するため、負荷インピーダンスに依存なく、電流値は抵抗でその値を調整可能となっています。

電流発生器のその他情報

1. 電流発生器と計装設備

計装設備の分野で標準的に用いられる、4-20mA及び1-5Vとはアナログ信号の一種で、センサー (変換器) からの出力信号または調節器、シーケンサなどの制御信号として幅広く使われています。

例えば、バルブの開度で考えた場合、開度計からの出力信号は次のようになります。

  • バルブ開度0%: 4mAまたは1V
  • バルブ開度100%: 20mAまたは5V

つまり、計測値が0の時に4mAまたは1Vを出力し、計測値が100の時に20mAまたは5Vを出力すると言うことです。信号を標準化・統一化することで、計装機器同士の信号の受け渡しが可能です。

計測値が0の時に4mAを出力させる理由は、電線が断線しているかどうかを判断するためです。すなわち、4mAの電流が流れて0を指示しているのか、若しくは電線が途中で切断して0を指示しているのかを判断する目的です。広角度形指示計においては、4mAで0を示し、断線して電流が流れていない場合は0以下を示すように作られています。

2. 計装設備評価時のノイズ対策

電圧で信号を送ると電圧降下が発生し測定誤差の要因となりますが、電流で信号を送った場合には電圧降下が発生しないため長距離の伝送に適しています。

その他、別の計装機器の入力が1-5Vであった場合、250オームの抵抗を挿入すれば、容易に電圧信号に変換できることが電流信号の特徴です。反対にデメリットとして、ノイズの影響を受けやすく測定値に誤差が生じることがあります。

ノイズ対策としては、シールドケーブルを使用する、ノイズフィルタを取り付ける、アースの取り方などを考慮することで、ノイズの影響を最小限に抑えることが効果的です。また、4-20mAの信号でループ回路を形成している場合には、断線するとループ全体に影響が出るといった点が挙げられます。これは、直列回路であるためです。対策として、アイソレータを使用することも1つの手段です。

参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kogyobutsurikagaku/40/4/40_258/_pdf
http://www.nahitech.com/nahitafu/mame/mame3/teid1.html
https://www.marutsu.co.jp/contents/shop/marutsu/mame/123.html
https://tmi.yokogawa.com/jp/solutions/products/generators-sources/source-measure-units/
http://www.tokyo-seiden.co.jp/technic/current/
http://energy-kanrishi.com/4-20ma/

小型サーボモーター

小型サーボモータとは

小型サーボモーター

小型サーボモータとは、精度の高い位置ぎめや速度制御ができるモータです。

モータの内部には、回転数やトルクの制御装置が内蔵されているので、指令値にフィードバックしながら制御することによって、高精度の制御を実現しています。サーボモータの「サーボ」とはギリシャ語のServus (奴隷) が語源で、命令に対して正確に動くという意味が含まれます。

従来は直流電流で駆動するDCサーボモータが主流でしたが、現在は耐久性やメンテナンス性に優れいて、交流電流で駆動するACサーボモータが主流です。なお、本記事では「小型」と称していますが、小型に対する明確な区分けは定義されていません。

各モーターメーカーのラインナップに応じて、大型、小型、精密といった区分けがされています。

小型サーボモータの使用用途

小型サーボモータは、精密な動作が要求される生産ラインや計測装置、医療機器などで使用されます。具体的な例としては、工作機械や産業用ロボット、精密機器や電子部品、液晶ディスプレイ、半導体の製造装置、検査装置、バイオ機器などです。

自動車製造工場で活躍する産業用ロボットであれば、部品にピッキング、溶接、塗装などの作業を、繰り返して正確に行うことができますが、サーボモータによる正確な制御によって実現しています。私たちの日常生活においてはさまざまなOA機器、自動車などにもサーボモータは使用されています。

小型サーボモータの原理

サーボモータは複数の機器と組みわわせることによって、正確な動作が可能になります。サーボモータのシステムは、司令塔となるコントローラ、制御部となるドライバまたはサーボアンプ、そして駆動部となるモータで構成されます。さらに、モータの実際の駆動状況を把握するための検出器になるのがエンコーダ です。

サーボモータが動作する際には、コントローラからドライバに、位置や回転数、トルク、速度などの動作条件が伝達されます。ドライバが伝達された条件と、エンコーダから伝達されたモータの回転状態などから、回転に最適な電力をモータにながし、モータがコントローラから伝えられた目標の回転条件になるように、エンコーダからのフィードバックをもとに制御されます。

また、サーボコントローラがドライバに指令をする際の制御は速度制御システム、または位置制御システムのいずれかの方式が用いられるのが一般的です。

小型サーボモータのその他情報

ACサーボモータとDCサーボモータとの違い

サーボモータに限らずモータには、直流モータ、交流モータ、パルスモータがあります。このうちサーボモータとしては直流モータであるDCサーボモータと、交流モータであるACサーボモータがあります。現在、もっとも広く使われているのは、ACサーボモータです。

ACサーボモータは、ロータと呼ばれる回転軸に永久磁石が使われており、回転軸の周りにステータとして、鉄心とコイルで囲まれている構造になっています。交流電流の周波数のタイミングに合わせて、ステータのコイルに電流をながして磁場を発生させ、回転軸の永久磁石との間に引力や反発力を生じさせることによって回転軸を回転させます。

回転軸はコイルなどには非接触で動作するため、摩擦摺動する部分はベアリングのみです。ステータ側に電流が流れるので、発熱するのはモータの外側にあるステータになります。DCモータは回転子に電流がながれるので、発熱するのもロータです。放熱性の面から見ると、モータの外側になるステータが発熱するACモータのほうが放熱しやすいモータになります。 

反対にDCサーボモータは、比較的小型であっても大きなトルクが得られます。制御性がよく低コストなのも特徴の1つです。しかし、DCモータはブラシと整流子が直接接触して電気を流すため、ブラシの摩耗が発生します。摩耗に対してのメンテナンスが必要で、また環境によってはブラシ摩耗粉によって火花が発生する可能性があるのもデメリットです。

参考文献
https://www.fujielectric.co.jp/products/column/servo/servo_01.html
https://www.yaskawa.co.jp/newsrelease/product/35763
https://www.on-side.co.jp/pdf/yokuwakaru_ac_servo_motor.pdf

ロードスイッチIC

ロードスイッチICとは

ロードスイッチICとは、電源供給をON/OFFするオン抵抗の低いMOSFETとFETを駆動する機能に加えて、 各種保護機能と異常状態をIC外部に出力する機能が一体化された集積回路です。

ロードスイッチICを使用することで、単体の電子部品を組み合わせで同機能を実現した場合よりも部品点数が削減可能で、省スペース化にもつながります。

ロードスイッチICの使用用途

ロードスイッチICは、 電子機器内の電源供給回路で使用されます。 ロードスイッチICの定格電流は0.5Aから5Aの製品が多いため、 モーターやソレノイド等を動作させる産業機器よりもバソコン本体、パソコン周辺機器、モバイル機器等の情報通信機器に用いられることが多いです。

各種保護機能が付いているため、 負荷の短絡故障やFETの異常発熱時に周辺回路やハーネスを保護したい場合やUSBを代表とする電源を入れたまま接続機器を挿入できる用途に適しています。

ロードスイッチICの原理

1. 負荷への電源供給

ロードスイッチICは、内部のPチャネル型FETまたはNチャネル型FETを使用して負荷への電源供給をON/OFFします。 ロードスイッチIC内部のFET駆動回路がFETのゲート電圧を制御し、FETのドレイン-ソース間の抵抗値が変化することで、負荷への電源供給ON/OFF機能を実現しています。

2. 過電流保護

ロードスイッチICの出力する電流が規定以上になった場合に、 負荷への電源供給をOFFします。ロードスイッチICの出力端子がGNDとショート時や、負荷に電流が流れた場合にロードスイッチICを保護することができます。

例えば、負荷動用のFETに過電流が流れた場合、過電流保護機能が無い場合は、過電流がFETに流れ続けます。 その結果、 FETが故障したり、 配線が切れたりしますが、 過電流保護機能がある場合は、負荷への電源をOFFするため、 FETが故障したり配線を切れたりすることはありません。

3. 過熱保護

ロードスイッチIC内部の半導体接合部温度が規定以上になった場合に、 負荷への電源供給をOFFにします。 外部環境の異常発熱時や負荷電流が想定よりも大きい場合に、ロードスイッチICを保護することが可能です。

例えば、 負荷が故障し、 想定よりも大きな電流がFETに流れた場合、 過保護機能が無いときはFETが発熱し続け、FETが故障します。それに対して、過熱保護機能があると、負荷への電源をOFFするため、 FETが故障することはありません。

4. 低電圧保護

ロードスイッチICに入力する電源電圧が規定以下になった場合に、 負荷への電源供給をOFFします。電源回路の故障で電源電圧が低下した際、 負荷の誤動作を防止することができます。

例えば、 電源回路が故障し、 電源電圧が動作保証より低い電圧になった場合、 低電圧保護機能がないと負荷への電源供給をONし続けるため、負荷が誤作動します。一方で、 低電圧保護機能があると、 負荷への電源をOFFするため、 負荷が誤作動することはありません。

ロードスイッチICのその他情報

ロードスイッチicの端子

ロードスイッチICの代表的な端子は、VCC、GND、EN、FLG、VOUTの5ピンです。

1. VCC端子
VCC端子は、ロードスイッチICの電源入力端子です。負荷に供給する電源線を接続し、VCC端子とGND端子間にはバイパス用のセラミックコンデンサを接続します。バイパス用のセラミックコンデンサは、端子の近くに配置しないと効果が出ません。

2. VOUT端子
VOUT端子は、電源出力端子で負荷の電源線を接続します。ロードスイッチIC内MOSFETの寄生ダイオードは無効化されているので、VOUTからVCCに逆電流は流れません。

3. EN端子
EN端子は、ロードスイッチ接点の電源出力をON/OFF制御する入力端子です。EN端子とマイコンの出力ポートを接続することで、負荷への電源供給を制御することができます。

ロードスイッチICによって、EN端子の論理や電圧レベルが異なりますので、データシートを確認して適切な論理、電圧を接続します。

4. FLG端子
FLG端子は、ロードスイッチICの状態を示す出力端子です。ロードスイッチICが正常時と異常時でFLG端子の電圧が変化します。

FLG端子をマイコンの入力ポートに接続することで、ロードスイッチICの状態を監視することができます。通常、FLG端子はオープンドレイン出力なので、外付けにプルアップ抵抗を接続し、FLG端子を使用しない場合は端子を未接続状態にします。

参考文献
https://detail-infomation.com/load-switch/
https://www.rohm.co.jp/electronics-basics/transistors/tr_what8
https://toragi.cqpub.co.jp/Portals/0/backnumber/2004/12/p106-107.pdf
https://toshiba.semicon-storage.com/info/docget.jsp?did=68574
https://toshiba.semicon-storage.com/info/docget.jsp?did=13560
https://toshiba.semicon-storage.com/jp/semiconductor/knowledge/faq/liner_load-switch-ics/load-switch-ics12.html