バラクタダイオード

バラクタダイオードとは

バラクタダイオードとは、逆電圧を印加することによって、静電容量を変化することができるダイオードのことです。

可変容量ダイオードやバリキャップとも呼ばれています。一般的に、ダイオードのPN接合部分に逆方向の電圧を印加すると発生すると、電子や正孔といったキャリアが無い部分である空乏層がコンデンサのようにふるまいます。

バラクタダイオードはそのコンデンサとしてふるまう静電容量が、さらに印加する電圧の大きさによって変化する性質を積極的に利用しているものです。

バラクタダイオードの使用用途

バラクタダイオードの使用用途は、電子同調回路や電圧制御発振器 (VCO) などの電子部品です。電子同調回路や電圧制御発振器 (VCO) は、ラジオやテレビ、通信機器、スマートフォンなどの移動式通信機器などの電波を受信するような機器で用いられています。

それらの機器は、特定の周波数の信号を受信するため、受信部のコンデンサの容量やコイルのインピーダンスの値を調整しなければなりません。そのために、静電容量を電圧によって制御することができるバラクダイオードが使用されます。

バラクタダイオードの原理

バラクタダイオードの原理は、ダイオードのPN接合部に逆方向電圧を印加した際に生じるキャリアがない空乏層を容量として活用し、その容量の値が逆方向電圧値に依存する特性を積極的に用いることにあります。通常のダイオードは、順方向の向きにバイアス電圧が印加されると順方向電流が流れ、逆方向の向きにバイアス電圧が印加されると電流が流れなくなります。

この逆方向に電圧を印加した状態では、PN接合部分から、P型半導体部分では正孔が電極側に移動し、N型半導体部分では電子が電極側に移動するため、PN接合部分ではキャリアがない空乏層と呼ばれる層を形成します。その空乏層には電荷が無く、空乏層の両サイドには電荷が発生するため、コンデンサのようにダイオードがふるまうことになります。

逆方向の印加電圧の絶対値が大きければその分だけ空乏層の厚みが大きくなり、結果として等価的な静電容量は小さくなります。この逆方向電圧を印加しその値を可変することにより、静電容量が変化するダイオードがバラクタダイオードです。この容量の変化特性を有効に活用しています。

バラクタダイオードのその他情報

1. バラクタダイオードを用いたLC共振回路

バラクタダイオードは、バイアス印加電圧で容量値を可変できることから、インダクタとLC共振回路を形成し、その共振周波数を調整することが可能です。

この電圧値で可変できるLC共振回路を用いて、例えば一例としてコルピッツ発振器などに共振回路を組み込んだものが、電圧制御発振器 (VCO) です。

電圧制御発振器 (VCO) は、移動体通信用の周波数調整回路であるPLL (Phased Lock Loop) の一部です。基地局と移動体端末の間で実施されるセルラー通信用途には欠かせない非常に重要な回路となっています。また、同調回路としては、ラジオなどのFM変調用途にもこのLC共振回路は使われています。

2. バラクタやバリキャップの語源と降伏電圧

バラクタダイオードのバラクタ (英: Varactor) とは「Variable Reactor」の略称であり、可変リアクタンスを意味し、バラクタダイオードの場合には特に容量性の可変リアクタンスを表しています。一方で、バリキャップとは「Variable Capacitor」の略称であり、文字通りに可変容量という意味です。

バラクタやバリキャップは共に容量を変更できるという意味合いの略称ですが、容量を可変できる逆方向側のダイオードバイアスにもブレークダウン電圧 (降伏電圧) があることには注意が必要です。使用予定のバラクタダイオードの電気的な仕様をよく確認し、逆方向側の使用可能範囲内の電圧で用いるようにしましょう。

なお、ブレークダウン電圧 (降伏電圧) はツェナー電圧とも呼ばれ、この領域を積極的に用いるダイオードはツェナーダイオードとも呼ばれます。ツェナーダイオードは過電圧が本体の回路へ印加されることを防止する保護回路向けの用途や、定電圧生成のための回路用途などに用いられる場合が多いです。

参考文献
https://www.marutsu.co.jp/contents/shop/marutsu/mame/61.html
https://toshiba.semicon-storage.com/jp/semiconductor/knowledge/e-learning/discrete/chap2/chap2-9.html
https://detail-infomation.com/variable-capacitor-diode/

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