バーリング加工とは
バーリング加工とは、金属板をプレス機によって加工する成形加工方法の1種で、素材となる金属板に穴をあけ、その穴の縁を円筒状に伸ばして周囲に立ち上がり (フランジ) をつける加工のことです。
バーリング加工の特徴として、平面に立体的な部分を作り出せることと、穴の縁にRが付いているため通常の穴では金属のエッジ当たりになってしまう部分を面当たりに緩和できることが挙げられます。その他、円筒状にフランジを伸ばしたあと、フランジに対してボルト締結用のタップを立てることでナットを溶接せず、締結用のめねじ部として使用することも可能です。
バーリング加工の使用用途
バーリング加工は、比較的負荷のかからない箇所の部品締結用に使用されています。板金にねじ穴を空ける場合、一般的にねじ山を3山分開ける必要がありますが、板金の板厚が薄く3山に満たない場合はバーリングで円筒部を形成することで、板金自体の板厚を増やさずに必要なネジ山数を局所的に増やすことが可能です。
従来はナットを溶接していた箇所に対して、ボルト締結時にそれほど荷重がかからない場所であれば、バーリング加工に変更することでナットを廃止できるため、コスト削減につながります。バーリング加工にはその他にも、ねじ穴加工せずパイプとの溶接を容易に行えるようパイプの迎え形状とするような用途でも使用されています。
バーリング加工の原理
バーリング加工は、プレス機によってバーリング用のピアスパンチを用いて加工を行いますが、加工時のパンチ形状と成型後のフランジ高さに違いがあります。
バーリング用のピアスパンチは、大きく分けて先端形状が以下のような種類があります。
- 砲弾型
- テーパ型
- 平底型
- 半球形
先端形状によって、加工時に必要なプレス機の加工力やフランジの高さも異なります。ピアスパンチの先端形状が丸みを帯びて緩やかなほど、加工時に穴の角Rが大きくなり、フランジの高さが低い代わりにプレス機の必要な加工力が少なくなります。
逆に穴の角Rが小さいほど、加工力は上がる代わりにフランジの高さも高くなります。そのため、必要に応じて適切なバーリング用のピアスパンチを選定することが大切です。
バーリング加工の種類
バーリング加工には、大きく2つに分類されます。
1. 普通バーリング
フランジにタップを立てる前提で、ねじとして使用するためのバーリングです。バーリング前の下穴径とバーリング後の中心直径の差 (クリアランス) が板厚と同じになります。フランジの先端の肉厚が板厚よりも薄くなることが特徴です。
2. しごきバーリング
クリアランスが板厚よりも小さくなる加工です。位置決め用もしくはカシメ用のピンとして使用されます。普通バーリングに対してフランジの肉厚を均一に確保可能で、フランジが高いのが特徴です。
板厚に比べてフランジ自体の肉厚は薄くなりますが、フランジの寸法精度は良くなります。バーリングを加工において、2つの注意点があります。
バーリング加工のその他情報
1. ねじ径と最小板厚の関係
ボルト締結用としてバーリング加工のフランジ部分にタップを立てる場合は、ボルト締結時の強度を考慮して一般的にねじ山を3ピッチ分は確保しておかないと、最悪の場合ボルトが緩んでしまう等の問題が発生する懸念があります。ボルトのサイズによってもねじ山のピッチが異なるため、ねじ径と最小板厚の関係は下記のとおりです。
- M3: 0.8t
- M4: 1.0t
- M5: 1.6t
- M6: 2.0t
ハーリング加工によってできたフランジに対してボルト締結用のタップを立てる場合は、ボルトのサイズと板厚の関係に注意が必要です。溶接と比較して、穴の角部にRがついているので、汚れがたまりにくく、溶接に伴う母材のひずみや腐食を防止できるのがメリットです。
2. バーリング加工の注意点
- 板厚が2mm以上ある場合は、バーリング加工を避けた方が無難です。板厚が増えることで、プレス時の負荷が大きくなり、バーリング加工が困難になります。
- 下穴を打ち抜いた後、下穴と同じ方向からバーリング加工を行なうと、下穴の時にできたバリによって材料が割れやすくなります。対策として、下穴を打ち抜く方向に対して逆の方向からバーリング加工を行なう、もしくは下穴のバリを面打ちする等してバリを無くしてからバーリング加工を行なう方法があります。