加工硬化

加工硬化とは

加工硬化とは、金属に力を加えると硬くなる現象を指します。

針金を折り曲げると硬く、もろくなって破断する現象は加工硬化の一例です。硬さの増加に伴って、伸びや絞りのような粘り強さは低下します。

加工度が増すにつれて顕微鏡組織が乱され、電気抵抗は増加し、比重は低下します。加工硬化した材料は加熱されると、加工硬化によって増えた転移が消滅し柔らかくなります。熱間加工では、熱の作用で材料は柔らかくなりますが、冷間加工では加工硬化のみ起こるので、硬くもろい性質があります。

加工硬化の使用用途

加工硬化は、アルミニウムやステンレスなど焼き入れのできない材料の強度向上に利用されます。鋼材の場合は、冷間加工後、焼きなましと併用して行う場合があり、歯車や自動車のばねに適用されます。

焼きなましによって加工硬化で増えた内部のひずみや残留応力を取り除き、割れにくく靭性に富んだ製品にします。冷間加工をすると結晶は、歪んで不規則な配列をしていますが、再結晶温度まで加熱すると結晶粒の再配列によって、硬くてねばりのある材料に変えることができます。

加工硬化の原理

はじめ金属に荷重を加えると金属は変形しますが、荷重を抜いたあと、変形が元に戻る場合と戻らない場合があります。元に戻ることを弾性変形、戻らないことを塑性変形と呼びます。塑性変形は、ある結晶面を境に原子がすべる現象です。線状の格子欠陥である転移が動くことによって塑性変形が生じます。

転移が動きやすい材料は塑性変形が容易で、転移が蓄積され動きにくくなると硬い材料になります。加工硬化のしやすさは材料によって異なり、加工硬化指数 (n値) を目安にします。縦軸応力と横軸ひずみの関係を示した曲線において、降伏点より高い塑性域の応力とひずみの関係は以下の関係になります。

   σ=Cεn

このときのnがn値を示し、n値が大きくなるについて加工硬化しやすくなります。加工硬化は、硬くなる反面、もろくなるため塑性加工によって加工硬化が進んだ場合は、焼きなましを行い、軟化させます。これは原子の動きが活発になる再結晶温度まで加熱することで、転位がなくなる原理を使用したものです。

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