ZIGBEEモジュール

ZIGBEEモジュールとは

ZIGBEEモジュールとは、国際的な通信規格であるZigBeeに対応したICを内蔵したモジュールのことです。

通信規格ZigBeeは、近距離無線通信の規格の一つで、転送可能な距離が短く転送速度も比較的低速ではありますが、安価で消費電力を少なく回路を実現できる点が特徴です。そのため、小型機器やモバイル機器の実装に比較的多く用いられます。

なお、ZigBeeという名前は、ミツバチであるBeeがジグザグに飛び回ることから名づけられました。

ZIGBEEモジュールの使用用途

ZIGBEEモジュールは、近距離通信用途で消費電力が少ない利点を生かせる家電製品のリモコンや住宅設備のセンサー通信、電力の見える化などに用いられています。近年は、Bluetoothの省電力性能の向上により相対的な優位性は薄れており、Bluetoothが比較的様々な電子機器、シーンで用いられることが多くなってきています。

ZIGBEEならではの特徴として、最大同時接続数の多さに優位性があり、大量のセンサーから一度に情報を収集するのに適しています。

ZIGBEEモジュールの原理

ZIGBEEモジュールは、センサーなどの電池駆動可能な通信機器同士を、極力低消費電力でつなぐことを目的に、規格化されたアライアンスであるZigBeeを活用するためのICを搭載した通信用モジュールです。特に電気的な仕様は、IEEE 802.15.4で規格化されています。

通信周波数は、欧州向けには800MHz帯、米国向けには900MHz帯がありますが、日本国内で用いることができるのはISMバンドと称される2.4GHz帯のみです。ZIGBEEの最大の特徴として、スリープ時のスタンバイ消費電力が非常に小さいことが挙げられます。

また、スタンバイから通信までの応答速度も非常に速いシステムです。このことから、常時データのやり取りをするのではなく、必要な際に瞬時にデータを送信し、再度スタンバイ状態のスリープモードに入るような家電リモコンや住宅設備などに適したアプリケーションといえます。

一方で、2.4GHz帯での通信速度は最大250kbpsという低速であるが故に、音声や映像などの大容量データ通信のアプリケーションには向いていません。また、Wi-FiやBluetoothも同じ2.4GHz帯を用いることから電波干渉には十分注意しmその環境によってはシールド遮蔽などを実施する必要があります。

ZIGBEEモジュールのその他情報

1. インターネットとの親和性

ZIGBEEのプロトコルスタックは、TCP/IP (Transmission Control Protocol/Internet Protocol) ではなく、一般にインターネットとの親和性は高いとは言えない状況です。そのため、インターネット環境へ接続したい場合は、別途ゲートウェイ中継局を設ける必要があります。

2. Bluetoothとの比較

ZIGBEEは、同じ組込み機器に利用される無線規格であるBluetoothとよく比較されます。BluetoothもまたZIGBEEと同じ2.4GHzの周波数帯を利用し、近距離通信・低速度の通信、省電力の特徴を持っています。

一般的にZIGBEEのほうが省電力ですが、特徴の差から使うシーンによってBluetoothと使い分ける必要があります。一般的にZIGBEEはスリープ時の消費電力が小さく復帰時間も小さいことから、一定程度時間を空けてデータ通信を行う通信に適しています。十分にデータ通信間隔をあけられない場合は、省電力効果は低くなる点に注意しましょう。

それに対して、Bluetoothは接続や切断時間に時間がかかるため、Bluetoothを使用する際にはスリープにせずモジュール電源自体を切ってしまうほうが省電力につながります。また、ZIGBEEは複数の同時接続が可能で、複数のセンサー情報を収集するようなシステムを構築する場合、メリットを享受できます。

3. 同時接続手法

ZIGBEEは、様々な複数同時接続の手法を有します。ツリー型やメッシュ型の接続手法や、ルーターを介したバケツリレーのようなデータ転送も対応可能です。これはZIGBEEの特徴の一つであり、一例をあげると、ある通信ネットワークをZIGBEEで構築した場合、規格的には最大で65,536台 (0xFFFFまでのアドレスを利用) の端末が接続可能です。

よって低消費電力で多数のセンサーへ様々な手法で同時接続通信を行うようなアプリケーションに、ZIGBEEモジュールは適していると言えます。

参考文献
https://www.4900.co.jp/smarticle/11640/
https://persol-tech-s.co.jp/corporate/security/article.html?id=24#heading04

アイソレータ

アイソレータとは

アイソレータ (英: Isolator) とは、分離または絶縁するための装置です。

使用される業界によって指すものが異なり、電気・電子機器の業界ではアナログ信号を絶縁する装置を、建築業界では地震から建物を絶縁する装置を、医療や薬学の業界ではある系内を外部の雑菌から絶縁する装置を指します。

英語のisolationが分離や絶縁を意味し、isolatorは絶縁するものを意味するため、装置の機能をそのまま表しています。

アイソレータの使用用途

各業界の指すアイソレータは装置が異なるため使用用途も違います。

1. 電子機器業界

電子機器業界のアイソレータは信号受信装置のサージ電圧保護や責任分界点の切り分け等に使用されます。

2. 建築業界

建築業界のアイソレータは耐震装置として建物の下で基礎鉄骨を支えるために使われます。

3. 医薬業界

医薬業界のアイソレータは医薬品開発のための環境作りに用いられます。患者や薬品を無菌状態で保つためにも使用可能です。

アイソレータの原理

各業界で使用されるアイソレータは仕組みが全く異なります。

1. 電子機器業界

電子機器業界のアイソレータは外部から流入する電気信号を完全に絶縁した状態で出力端子から同信号を出力可能です。具体的には入力信号に対してアンプを介して出力電圧を増幅させて検知した後、その信号を出力回路に伝達して出力します。電圧入力の場合には直接入力し、抵抗を介して電圧入力に変換します。出力信号の種類は需要に応じて変換しているため、信号変換器としても使用可能です。

2. 建築業界

建築業界のアイソレータはゴム等の弾性が高い材料を主鉄骨の下に敷くことで振動を逃がす構造を有します。高層ビル等で地震が発生した場合には上部へ向かう程振幅が増幅し、機械的衝撃が強くなります。免震ゴム等によって地下で衝撃を吸収すると振幅を抑え、建物への機械的衝撃を軽減可能です。

3. 医薬業界

医薬業界のアイソレータはドラフトチャンバと同様に吸引ファンを有し、常に陰圧に保つことで菌や毒物の系外流出を防ぐ装置です。流入する気体は過酸化水素等で殺菌されて系内無菌環境が担保されます。

アイソレータの種類

アイソレータには光アイソレータやデジタルアイソレータがあります。

1. 光アイソレータ

光アイソレータの部品内部には受光素子やLEDがあり、光で信号を伝送します。フォトカプラとも呼ばれ、発光素子と受光素子がパッケージングされており、各素子は抵抗体に接続されています。

2. デジタルアイソレータ

デジタルアイソレータはコンデンサやコイルを使用して出力側と入力側を絶縁する部品です。絶縁に用いる部品で誘導式 (インダクティブ) と容量式 (キャパシティブ) に分けられます。

誘導式は電流がコイルに流れた際に生じる磁界を使用し、容量式は直流信号をコンデンサが絶縁して交流信号だけを伝送します。

アイソレータの選び方

光アイソレータやデジタルアイソレータにはメリットやデメリットがあります。

1. 光アイソレータ

光アイソレータは光の送受信が離れた状態でも可能なため、容易に絶縁できます。構造がシンプルで信頼性が高く低コストで長寿命なため、昔から幅広い用途で使用され続けてきました。ラインナップが豊富なため、用途に合う製品を選択しやすいです。

フォトトランジスタやLEDは長寿命ですが、温度変化で発光効率が落ちる可能性があり、入出力効率が低下して信号伝送に支障が出ます。

2. デジタルアイソレータ

誘導式と容量式はどちらも部品がほとんど劣化せず、長寿命で高性能です。フォトカプラで対応が難しい用途で使われます。

しかし伝送できるのはデジタル信号だけであり、高価でラインナップも少ないです。CMOS (英: Complementary Metal-Oxide-Semiconductor) を使った製品によって高速応答や小型化が可能になり、現在でもデジタルアイソレータは進化しています。

参考文献
https://www.m-system.co.jp/mstoday/plan/mame/b_signal_con/0207/index.html
http://www.airexx.co.jp/contents/isolater/

オートクレーブ

オートクレーブとは

オートクレーブ

オートクレーブとは、飽和蒸気を吹き込むことで、ある物体を加圧加温する装置です。

高温高圧の蒸気によって、細菌や微生物のタンパク質を変性し、死滅させることができるため、オートクレーブは主に分子生物学実験での滅菌処理として利用されます。オートクレーブでは、高温高圧の蒸気を使用するため、取り扱いには十分な注意が必要です。

飽和蒸気を容器内に吹き込むので、産業用途として巨大化した場合、日本国内では労働安全衛生法の規制が掛かり、届出等を怠ると違法となります。具体的な条件は、「ゲージ圧力0.1MPa以上で使用する容器で、内容積が0.04m3以上のもの、または、胴の内径が200mm以上で、かつその長さが1,000mm以上のオートクレーブ」です。

該当したオートクレーブを使用する場合、使用前検査や年次検査の実施が必要となります。

オートクレーブの使用用途

オートクレーブは主に、分子生物学実験での滅菌処理装置に使用されます。分子生物学実験では、大腸菌などを培養するためのフラスコシャーレのほか、菌体を扱う道具を再利用する際、前回使用時の菌が混入 (タミネーション) しないようにするため、滅菌処理が必ず必要です。この滅菌処理では、高温加熱ができるオートクレーブが使用されます。

また、遺伝子工学の実験では、遺伝子組み換えを行った、世の中には存在しない菌や細胞を扱いますが、これらが外部に流出するのを防ぐため、再利用する道具だけでなく、不要な菌や細胞を培養した液、固体培地などをごみ箱や水道の流しにそのまま捨ててはなりません。これらの菌を処分する前にも、オートクレーブが用いられます。

その他、オートクレーブの高温高圧条件下を利用して、特殊な化学反応過程 (コルベ・シュミット反応や金属触媒による水素化反応) やプラスチックの成形などに利用することも可能です。

オートクレーブの原理

オートクレーブの構造は、圧力鍋と似たような構造です。圧力鍋と同様、中に入れる水分量、蓋の開閉、圧力開放弁など取り扱いに注意が必要です。水が100℃以上になると、大気圧と同圧であれば沸騰して気化します。

ただし、水分を密閉容器で100℃にしてさらに熱すると、水はほとんど気化されず100℃以上の温度になり、密閉容器の内圧が徐々に大気圧以上に上がっていきます。圧力鍋は意図的にこの状態を作り出し、調理時間を短縮する調理器具です。密閉された容器に水分を含んだ食材を入れ、火にかけることで水分を100℃以上に上昇させ、熱湯以上のエネルギーで調理します。

オートクレーブも、密閉容器に水分を含んだ中間生成物を投入します。オートクレーブの場合は、容器を火にかけることなく、飽和蒸気を吹き込むことで内圧を上昇させる仕組みです。処理工程が終了したら、圧抜弁を開放して、内圧を大気圧程度まで下降させて処理生成物を取り出します。飽和蒸気の圧力によって内包できるエネルギーが変化するため、蒸気圧力は処理工程に合わせて減圧して使用します。

オートクレーブのその他情報

オートクレーブでの加熱滅菌

オートクレーブに入れる内容物には、ガラスフラスコやガラスシャーレのガラス容器や金属容器など、耐熱性の優れたものを使用します。プラスチックやゴム、布製品など、耐熱温度が低いものを使用すると溶けてしまう危険があるため、事前に内容物の耐熱温度を確認するようにしましょう。プラスチックなどの容器は、オートクレーブとは別の方法で滅菌処理をする必要があります。

菌体の培養などで使用したガラスフラスコやガラスシャーレなどを滅菌する場合、オートクレーブの加熱条件は、135~145℃であれば3~5時間、160~170℃であれば2~4時間、170~180℃であれば1時間、180~200℃であれば30分間が目安です。オートクレーブは使用時に水が高温高圧の状態となるため、稼働時前に水の量、蓋の閉める強さを十分に確認し、事故がないよう注意する必要があります。

参考文献
https://www.nite.go.jp/nbrc/industry/cultures/anaerobic.html
https://www.jbanet.or.jp/examination/classification/vessel-1/

オゾン殺菌器

オゾン殺菌器とは

オゾン殺菌器とは、オゾン (O3) が有する強力な酸化作用を利用して空間や物質を効率的に除菌処理するための装置です。

オゾン殺菌は一般的な殺菌剤と異なり、耐性菌を生じさせないという特徴を有します。また、オゾンガスが酸化反応の後に安全な酸素ガス (O2) に変わるため比較的安全性が高いです。オゾン殺菌は加熱せずに常温で実施可能なため、非耐熱性の材料を殺菌処理できる点も特徴です。

これまでの研究によって、大腸菌、黄色ブドウ球菌、緑膿菌など種々の細菌に対して効果的であることが分かっています。

オゾン殺菌器の使用用途

オゾン殺菌器の使用用途は、主に殺菌や除菌です。具体的には、装置内でオゾンガスを発生させ空気中へと拡散させて、浮遊するウイルスや細菌を不活化させます。ウイルスや細菌を減らすべき場所は、多数の人たちが利用する施設です。

このような施設では、公衆衛生の観点からウイルスや細菌を不活化させることは重要です。例えば、病院、介護施設、学校、保育所、ホテル、食品工場、飲食店といった施設においてオゾン殺菌器が使用されます。

また、オゾン殺菌器は臭い物質を分解するために利用されます。すなわち脱臭のために用いられます。具体的には、クリーンセンターでゴミの臭気を抑制したり、ペットを飼育している家庭で臭いを抑えたりする際に使用されます。臭気を抑えることで、作業環境や居住環境を改善できます。

その他、オゾン殺菌器を害虫忌避に利用することも可能です。ゴキブリなどの害虫を直接駆除することはできませんが、害虫の繁殖に必要なフェロモンなどを分解できるため、害虫を寄せ付けない効果があります。

オゾン殺菌器の原理

オゾン殺菌器の原理は、上記の通りオゾンガスの酸化力による物質分解です。オゾン分子は酸素原子3個からなる簡単な分子 (O3) であり、フッ素に次いで高い酸化力を有することが知られています。

オゾン殺菌器は、内部で発生させたオゾンガスによって有機物質を酸化させて分解します。酸化分解作用によって、細菌などの微生物やウイルスを不活化させるだけでなく、臭い物質を分解させることも可能です。

オゾン殺菌器の特徴

以前から、微生物に対して殺菌効果や不活化効果を発揮できる殺菌法は知られています。従来の殺菌方法としては、酸化エチレンガスによる殺菌法、ガンマ線や紫外線の照射による殺菌法などが用いられてきました。

しかし、紫外線などを照射する殺菌法は、紫外線が届かない部分では殺菌処理できないという欠点があります。また、酸化エチレンガスを使用する殺菌法は、残留物が人体に悪影響を及ぼす可能性があります。

これに対して、オゾンガスによる殺菌法の場合、オゾンガスは気体であるため複雑な構造内であっても送り込むことが可能です。また、オゾンガス自体は微生物を酸化させるときに分解し、分解した後にすぐに酸素ガスに変わります。したがって、オゾン殺菌器は、殺菌処理を行いにくい箇所でも効果を発揮できるうえに、適切に用いれば人体への影響が少ないです。

オゾン殺菌器のその他情報

1. オゾン殺菌器の維持費

オゾン殺菌器では、オゾンガスの発生のために紫外線ランプやプラズマが使用されます。紫外線やプラズマの照射によって、空気中の酸素から高濃度のオゾンを発生させることができます。もともと空気中にある酸素ガスを原料として、照射に必要な電力だけを必要とするため、オゾンガス発生に複雑な工程を必要としません。

したがって、オゾン殺菌器はランニングコストが低い点も特徴の1つです。オゾン殺菌器は、人体への安全性が比較的高く、また大気環境汚染の危険性も低いことから、SDGsが重視される現代において有力な殺菌機器として浸透しつつあります。

2. オゾンガスの人体への影響

オゾンガスは上記の通りすぐに酸素ガスへ変わるため、低濃度であれば人体に対して比較的安全です。しかし、酸化力を有するため高濃度では有害です。

安全なオゾンガス濃度の目安として、0.05ppm以下が推奨されています。オゾンガス自体に特有の臭いがあるため、ごく低濃度であってもオゾンガスの存在を把握できます。

参考文献
http://www.jaeat-tokaihokuriku.org/tokai/newpage/symposium/ishikawajima.pdf

ガススプリング

ガススプリングとは

ガススプリング

ガススプリング (英: gas spring) とは、圧縮されたガスの圧力を利用したスプリングです。

ガスダンパー、ガス圧スプリング、ガス圧ダンパーとも呼ばれています。密閉されたシリンダ内に高圧の窒素ガスとオイルを封入し、ピストンに対して常に一方向 (ピストンロッドがシリンダから押し出される方向) に力が作用するように作られています。

ガススプリングは構造的にばね定数が小さいため、大きなストロークで使用しても力の変化は少ないです。動作はスムーズで、メンテナンスも不要です。封入された高圧ガスの圧力を利用しているため反力が温度の影響を受ける場合があり、経時的に反力が少しずつ落ちていく可能性もあります。

ガススプリングの使用用途

ガススプリングは自動車のハッチバックの開閉部に使用可能です。同様の使い方で棚や窓の開閉扉 (車のハッチバックと同様に回転式の扉を持ち上げる側に開く方式) にも多数使用されています。

これらは開くときにガススプリングが扉の重量を支持し、開いたポジションで保持します。また閉じた際には扉を閉める方向にガススプリングの力が働くように支点位置関係を設計する場合が多いです。そのほか産業機器やOA機器など、幅広く使用されています。

ガススプリングの構造

ガススプリングは取り付け方向が自在なタイプと取り付け角度が限定されるタイプに分けられます。取り付け角度が限定されるタイプはおおむねピストンロッドを下側に配置して±60°程度の許容範囲があります。これはシリンダ内の構成の違いで、ガススプリングの原理はいずれも同様です。

ガススプリングの原理

ガススプリングは長いストロークに対してほぼ一定の力を得ています。

1. 取り付け角度が限定されるタイプ

密閉されたシリンダ内にはピストンがあり、上下動できるように構成されています。

シリンダはピストンにより2つのスペースに仕切られており、ピストンロッドが出ている側 (ストロークして伸び縮みする側) をA室、反対側をB室とします。シリンダ内には高圧で窒素ガスが封入されており、この圧力がガススプリングの力の源です。ピストンにはオリフィスと呼ばれる小さな孔が開けられ、A室とB室を窒素は自由に行き来可能です。

ピストンに対して高圧窒素の圧力がかかり、ピストンが圧力を受ける面積はA室側とB室側では差があります。B室側ではピストン径全体で圧力を受けるのに対し、A室側はロッド径の分だけ面積が少なく、結果的にA室側の方にピストンが押されていき、常にロッドを伸ばす方向に力が働いています。

A室内のロッドがシリンダから出入りする部分にはオイルが封入されており、ロッドがシリンダに出入りする際に潤滑・シール性を確保可能です。取り付け角度が限定されるのは常にこのオイルをA室内のロッドが出入りするシール部分に留めるためです。

2. 取り付け方向が自在なタイプ

取り付け方向が自在なタイプはA室とB室には窒素ガスではなくオイルが封入され、B室のA室側と反対側にはフリーで動作するピストンで隔てられたC室があり、C室に高圧窒素が封入されています。

この圧力がA室やB室のオイルに加わるため、前述した原理と同様にピストンロッドを外へ押し出す方向に力が働きます。A室とB室は常にオイルで満たされているため、自在な取り付け方向が実現可能です。

ガススプリングの種類

ガススプリングには機能や特性によって複数の種類があります。

1. 標準タイプ

重いものを持ち上げたり押し下げる操作の補助に適しています。具体的には装置のカバーや車のボンネットで使用されます。

2. プッシュオープンタイプ

基本的に標準タイプと機能は同じですが、押す操作でラッチを解除できます。収納式のコンセントタップのように、頭部を押すと自動で徐々に上昇して使用後は押し込むと収納されます。

3. ロックありタイプ

ロック機能は剛性タイプと弾性タイプの2種類に分類されます。剛性タイプは任意の位置でロックし、弾性タイプはクッション性があるためロック後の衝撃を吸収できます。用途に応じてロックがかかる位置も選択可能です。

剛性タイプはしっかりロックするためにテーブルの上下昇降に、弾性タイプは快適な座り心地を保つためにオフィスチェアの上下昇降に使用できます。

参考文献
https://www.nabeya.co.jp/jig/point-gas-spring.html

ガス滅菌器

ガス滅菌器とは

ガス滅菌器とは、医療機器や化粧品容器等、衛生管理が求められる対象に付着している微生物をガスで死滅させる装置です。

滅菌には他に高圧蒸気やガンマ線等を用いた方法がありますが、ガス滅菌は他の方法と比較して対象にダメージを与えず処理可能です。

主にエチレンオキサイドガス (英: ethylene oxide gas) や過酸化水素は滅菌のガスに用いられます。エチレンオキサイドガスは酸化エチレン (EO) ガスとも呼ばれ、幅広い材質に適用でき、過酸化水素は滅菌後のエアレーションが不要なため、滅菌用途に非常に有用です。エチレンオキサイドガスを使った滅菌法は、エチレンオキシドガス滅菌、酸化エチレンガス滅菌、ETOガス滅菌、EOG滅菌と呼ばれます。

ガス滅菌器の使用用途

ガス滅菌器は主に医療現場で用いられる機器や材料の滅菌を目的として使われます。

繰り返し使用する医療機器や材料は事前に洗浄や乾燥を行った後にガス滅菌器に投入され、滅菌やエアレーションの後に再利用可能です。高圧蒸気を用いた滅菌法も医療機器によく用いられますが、高温、高圧、水蒸気に弱い対象ではガス滅菌器が選択されています。

医療目的以外では化粧品向け等、高温に弱いプラスティック容器の滅菌方法に用いられています。

ガス滅菌器の原理

ガス滅菌器として代表的なエチレンオキサイドを用いた装置では、滅菌に適した湿度や温度の管理、ガスへの対象物の曝露、終了後の排気、エアレーションの処理が行われます。エチレンオキサイドは常温で高い殺菌効果を持ち、プラスティックや金属等を腐食しません。

対象物を容器に入れて装置内に投入後、装置内の温度を40°C~60°C、湿度を40%以上に保ち、400~1,100mg/Lのエチレンオキサイドガスに1時間以上曝露させます。湿度、温度、曝露時間はハーフサイクル法等を用い、対象毎に最適な条件を決定可能です。

水蒸気等を用いた方法とは違いエチレンオキサイドガスは人体に対する毒性や発がん性があるため、ガスへの曝露によって対象物を滅菌した後にエアレーションによる残留ガスの除去が必要です。この工程に要する時間は対象物の厚さや材質等によって異なり、概ね8時間以上が推奨され、ガス滅菌の律速段階となっています。

ガス滅菌器の特徴

滅菌効果に影響する要素は、ガス濃度、湿度、温度、時間、分散の均一性などです。

1. ガス濃度

滅菌剤のエチレンオキサイドガスは高濃度の方が効果的です。ある濃度範囲内ではエチレンオキサイドガスの濃度が2倍になると微生物の滅菌速度は2倍になります。

2. 湿度

乾燥しているとエチレンオキサイドガスによる微生物の不活性化が起こりません。水分が存在すると菌体へのガスの浸透性が上昇し、微生物を構成するタンパク質や核酸をアルキル化する反応で水分子が必要です。滅菌には湿度が必要で、50%RHほどで行います。

3. 温度

10°C温度が上がると不活性化速度はおよそ2倍です。具体的には45°Cで滅菌時間が8時間かかる場合には55°Cでは半分の約4時間で同じ効果が得られます。ただしエチレンオキサイドガスは60°C以上で重合が進行し、滅菌剤の作用を失うため、通常滅菌温度は45°C~60°Cで実施します。

エチレンオキサイドガスを使用した滅菌では大型滅菌器の内部の湿度と温度を均一にできず、対象物の中心部の温度制御は困難です。ガス滅菌器内で対象物を滅菌する前に滅菌器外で設定湿度・温度に保って加湿や加温を実施するプレコンディション処理 (英: preconditioning) を行い、均一性のために滅菌器内部で攪拌装置を使います。

4. 時間

長時間滅菌すると効果的です。

5. 分散の均一性

プレコンディショニング処理や攪拌装置によってガス濃度、湿度、温度を均一にできますが、対象物の包装やガス滅菌器内の積載方法で分散性は違います。

参考文献
https://www.jsmi.gr.jp/pdf/Guideline2015ver3.pdf
http://kkiki.jp/eog.html
https://www.japangas.co.jp/project/
https://medical-logi.suzuyo.co.jp/archives/3436/

スキマゲージ

スキマゲージとは

スキマゲージ

スキマゲージとは長方形の形状をした板材で、部品同士や製品などの隙間に挿入して隙間の寸法を測定するゲージです。シックネスゲージやシクネスゲージと呼ばれることも有ります。シックネスゲージという呼称は、物の厚みを挟んで測定する測定器に対しても使われていますので、混同しないように注意が必要です。一枚一枚の薄い板をリーフと言い、厚み違いのリーフを複数枚束ねたものを組み合わせリーフと言います。これらを含めてスキマゲージに関してはJIS B 7524 にて規格が定められていますが、規格外のスキマゲージも流通しています。

スキマゲージの使用用途

スキマゲージは、ノギスなどでは測定できない狭い隙間を測定する時に使用します。基本的には平行な面と面のスキマを測定するのに適しており、例えばひび割れ形状のスキマを測定することはできません。ユニットを組付ける際にベースとなる部分とのスキマの測定や、ドアとドア枠とのスキマの測定、部品を取り付け調整時の基準位置と部品のスキマの測定、ピストンとシリンダの間隙の測定などで使用されます。スキマゲージはメートル系、インチ系の両タイプがあり、メートル系では0.01mm厚みのリーフから市販されています。スキマゲージを使用する事で他の工具では測定できない小さなスキマの測定が可能です。

スキマゲージの特徴

スキマゲージは小さなスキマを簡単に測定できるのが特徴です。リーフを1枚だけ使って測定ができますが、複数枚を重ねて測定することも可能です。ただし、複数枚重ねる場合は精度が若干犠牲になる事に留意しなければなりません。リーフは0.01mmから用意されていますので、0.01mmのスキマから測定が可能です。しかしながら薄いリーフはくしゃくしゃになりやすく折れ目がついてしまうと正しい測定ができないので注意が必要です。

リーフの形状はJISにて2種類規定されています。リーフの先端がR形状となっているものがA型、リーフの先端がとがったR形状になっているものがB型です。A型はリーフ幅が一定で先端のみR形状であるため、B型よりは強度が高いです。測定するスキマに十分なスペースが有る場合、通常はA型を使用します。B型はリーフ幅が徐々に狭くなり先端部分では半分程度の幅になります。幅の狭いスキマを測定する時に使用しますが、強度がA型と比較すると弱いため、折れ曲がりに注意が必要です。

参考文献
https://kotobank.jp/word/%E9%9A%99%E9%96%93%E3%82%B2%E3%83%BC%E3%82%B8-541102
http://benrikougu.com/clearance-gauge/

スコヤ

スコヤとは

スコヤ

スコヤは、金属製でL字形をしている直角の精度を確認するための工具です。似た工具に指矩(さしがね:指金とも記載します)が有りますが、これらは明確に区別されています。スコヤは直角の短辺側に厚みが有り土台となっています。土台部分を平面に密着させて精度の確認を行います。いっぽう指矩は縦横の両辺とも薄い金属板でできており、いわゆる直角のスケールです。直角を確認する場合は、基準となる面への接触がスコヤは正確ですが指矩はあいまいです。

スコヤの使用用途

スコヤは、直角の測定や寸法の測定で使用されます。金属や木材など、加工時の直角の確認やケガキ、炭付けをする際に用いられます。スコヤにはいくつかの種類に分かれていますが、台付きスコヤは直角の短辺側に幅のある台がついている為、自立することができます。床やベースとなる部分に台を置くことで、部品や家具が直角であるかを確認できるとともに、正確に直角な位置にケガキや墨入れをする事が可能です。また、電動工具の刃が直角に取りついているかどうかの確認に使用する事もできます。

スコヤの特徴

スコヤを代表的な種類別に特徴を説明します。

  • 台付きスコヤ/完全スコヤ/平型スコヤ
    いずれもL型形状をしており、直角であるかどうかの測定に使用します。台付きスコヤ/完全スコヤは短辺が厚みのある台になっているのに対して、平型スコヤは短辺、長編とも同じ厚みで構成されています。
  • マイティスコヤ
    L字型形状をしており台付きスコヤと見た目が変わらないように見えますが、台の長辺とつながる部分の端に45°の角度がついています。直角であるかどうかの測定に加え、45°の角度でのケガキ線や墨付けが可能です。
  • 止型スコヤ
    台形形状をしており4つの内角はそれぞれ45°、135°、90°、90°で作られています。台形の短辺が台になっているものや、長辺が台になっているものが有ります。45°と90°の正確な測定やケガキ、墨付けが可能です。
  • 自由スコヤ
    2つの板をねじでつないでいるスコヤです。ねじを緩めると2つの板が自由な位置に回転しますので、任意の角度で止めることができます。図面の角度に合わせたり、現物の角度に合わせたりすることで、角度をうつす目的で使用されます。
  • プロトラクタ
    自由スコヤの一種です。プロトラクタ(PROTRACTOR) は、分度器という意味です。分度器の中心を回転中心として2枚の板が構成されていますので、目的の角度の測定やケガキ、墨付けが可能です。

参考文献
https://www.monotaro.com/s/pages/cocomite/103/

ステッパ

ステッパとは

ステッパ

ステッパとは、半導体や液晶の製造工程であるフォトリソグラフィ (photolithography) で用いられる投影露光装置のことです。

IC回路パターンの微細化に伴い、実寸大のフォトマスクパターンの作成が困難になってきており、実寸より大きなマスクパターンを縮小投影露光する際に、ステップアンドリピート方式で露光を行う露光装置を意味しています。ステップアンドリピート方式とは、半導体ウェーハや液晶の基板に露光する際に、露光エリアをいくつかの区分に分割し、一つの区分を露光すると次の区分に移動 (ステップ) し、露光を繰り返すことを指します (リピート) 。

ステップとリピートを行いながら、露光したいエリア全面の露光を行うタイプの露光装置がステッパです。

ステッパの使用用途

ステッパの使用用途は、半導体や液晶の製造の中で特にフォトリソグラフィ工程でのマスクを用いた露光処理を行うために用いられます。

ステッパの方式には、一回で転写できる領域が小さいことからウェーハをステップさせながら逐次露光をするステップアンドリピート方式と、スキャナーと呼ばれるレチクルとウェーハを投影倍率に応じた速度で同期させてスキャンすることで露光を行うタイプがあり、後者はステッパとは区別され、スキャナーとして扱われる場合があります。

ステッパの原理

ステッパは、大口径のウェーハや液晶に対して縮小投影露光を高速で行うために、高い解像度を得る波長の短い光源と、レチクル上のICマスクのパターンを投影露光したのち、ステージを移動させウェーハに複数のパターンの露光を繰り返す動作を実施します。ステッパの内部の構造は、露光光源、投影レンズ、ウェーハステージ、ウェーハローダでなどです。

露光光源はICの大規模集積化の要求に伴い、波長が短いものが利用されるようになりました。微細化が望まれ、一般的に露光に用いる光の波長が短いほど高解像度が得られるためです。90年代は365nmのi線が中心でしたが、その後Krf (波長248nm) 、Arf (波長193nm) と短波長化が進んでいます。

ウェーハステージは、ICなどの半導体をより速くより多く生産性高く作るために、ウェーハを高速に動かすステージです。高速に動かすのはもちろんのこと、微細な加工のため、高い位置決め精度が求められます。ウェーハローダは、ウェーハステージからウェーハを取り外したり、ウェーハを置いたりなどウェーハの搬送を担います。

IC製造に異物の付着などは大敵で、その繊細なウェーハの出し入れを高速に行うことが必要です。ステッパは、上記のような構成でウェーハをステップさせながら逐次露光を行います。

ステッパのその他情報

1. 液浸

昨今のステッパやスキャナー装置はその精密さの要求の高さから、大規模な機構が施されており、1台あたりの単価も上昇しています。よって配線プロセスノードの微細化に伴い、いきなり光源や装置の機構を大きく変えるのは好ましくなく、何世代も装置の改良により使いこなそうとする傾向にあります。

それらを実現する技術の一つが「液浸」です。液浸とは、光源の露光解像度を高めるべく、純水などの溶液をウェーハ上のレジストと投影レンズの間に挿入し、光の波長を空気中に比較して短くすることで、露光解像度を上げる手法を指します。最先端のフォトリソグラフィ工程で用いられている技術の一つです。

2. EUVリソグラフィ

EUVリソグラフィ (Extreme ultraviolet lithography) は、波長13.5nmで露光可能な、数nmの最先端プロセスノード向けの次世代露光技術の中心的存在であり、極端紫外線リソグラフィと呼ばれています。最先端プロセスでしのぎを削る世界の大手半導体メーカーはこの技術を活用していますが、現在このEUVリソグラフィ装置を実用化できているメーカーは、2022年現在において世界で1社のみの寡占状態になっています。

参考文献
https://www.ushio.co.jp/jp/technology/glossary/glossary_sa/stepper.html
https://www.tochigi-nikon-precision.co.jp/stepper/structure/index.htm
http://sts.kahaku.go.jp/diversity/document/system/pdf/022.pdf

ステンレス鋼

ステンレス鋼とは

ステンレス鋼

ステンレス鋼とは、主成分となる鉄 (Fe) を50%以上とし、炭素 (C) を1.2%以下、クロム (Cr) を10.5%以上含む合金鋼です。

耐食性に優れ、さびにくい合金であることが良く知られています。耐熱性・加工性・強度などの面でも優れた特性を持っています。ステンレス鋼という名は、英名の「Stainless Steel」に由来しており、Stain (さび) less (少ない) という意味合いです。

 ステンレスの錆びにくい仕組み

ステンレス鋼が錆に強いのは、表面に不動態被膜という薄い膜を形成しているためです。一般に、鉄は酸素と結びつくと酸化鉄となり錆が発生します。しかし、クロムは鉄より酸素と結びつきやすい性質があり、鉄先にクロムが酸化することで、不動態被膜を形成して鋼の表面を覆い、錆の発生を抑制します。

このクロムの性質によって、ステンレス鋼が錆に強い性質となっています。このステンレス鋼に、ニッケルを加えると、さらに耐食性が増し、より錆に強いステンレス鋼が得ることが可能です。ただし、ステンレス鋼でも錆が発生する場合があります。具体的には、錆びている金属に長期間触れていたり、傷がついたりしているケースなどです。

ステンレス鋼は、「SUS304」「SUS430」のように「SUS+数字」で種類を表します。SUSとは、「steel use stainless」の頭文字をとったもので、後に続く数字はステンレスの鋼種です。種類に応じて、300番台、400番台などに分類され、「SUS304」は世界中で使われているステンレス鋼です。

ステンレスの種類と添加元素

ステンレス鋼の使用用途

ステンレス鋼の種類と主な特徴・用途

ステンレス鋼は、優れた耐食性という特徴を活かして多種多様な分野で使用されています。精密機器・家電・産業機器などでは、外装のカバーや機構部品として使われるケースが多いです。

表面処理がなくてもきれいな外観を得られることや、二防錆目的でのめっきや塗装が不要であるため、部品のリードタイムが短く、一定の条件の下ではステンレス鋼を使用する方が一般的な鉄鋼を使用するよりも低コストで済む場合があることが理由として挙げられます。

また、熱伝導率が低いため耐熱性や保温性に優れている点もメリットの一つです。家庭ではスプーン、フォーク、キッチンシンクなどにステンレス鋼が使用されています。その他、強度や硬度が高いという点から、ドーム球場など大型施設の屋根材料、ジェット機に使用するタービンブレードやブレーキディスクなど、重要な役割を担う部品に使用されることもあります。

ステンレス鋼の特徴

主なステンレス鋼の添加元素の例

非常に耐食性が優れており、合金の比率などによって5種類に分別することができ、それぞれ異なる特徴を有します。

ステンレス鋼の種類

ステンレス鋼の系統図

1. マルテンサイト系

マルテンサイト系はクロムと炭素を主な成分とし、ニッケルを含まないステンレス鋼です。これは、熱処理によってマルテンサイトという硬い金属組織を形成するため硬度が高い反面、他の種類と比べると、厳しい環境において錆びやすく最も耐食性が劣るという特徴があります。

一般の鉄鋼と同様に磁性を持っている (磁石がくっつく) のが特徴です。主な用途として、刃物やノズル、タービンブレード、ディスクブレーキなどが挙げられます。SUS410、SUS403などがマルテンサイト系ステンレス鋼です。

2. フェライト系

フェライト系は、クロムを主成分としており、ニッケルを含まないステンレス鋼です。オーステナイト系に次いで、耐食性に優れ、熱処理をしても硬化が少なく軟質を維持できるためプレス加工に適しているという性質があり、価格は安価です。

主な用途として、建築内装材やガス・電気器具部品が挙げられます。磁性を持っている点も特徴の一つと言えます。SUS430などがフェライト系ステンレス鋼です。

3. オーステナイト系

オーステナイト系は、クロムとニッケルを主成分とし、常温の状態でオーステナイトという金属組織を形成しており、唯一ニッケルを含むステンレス鋼です。そのため、耐食性、耐熱性、溶接性が優れていて、スプーンやフォークなどの家庭用品、自動車部品、建築用品など幅広い分野において使用されています。SUS304、SUS316などがオーステナイト系ステンレス鋼です。

4. 析出硬化系

析出硬化系とは、クロムとニッケルと主成分とし、アルミニウムなどの元素を添加し、焼入れや焼戻しと同様の熱処理である析出硬化処理によって、これらの元素の金属間化合物の析出を利用し、硬度を向上させたステンレス鋼のことです。オーステナイト系と比べると耐食性は及びませんが、フェライト系よりは優位です。

耐食性があり、高温に強いため、宇宙開発や航空機分野で使用されています。SUS630は析出硬化系ステンレス鋼です。

5. 二相系

二相系とは、オーステナイト系・フェライト系を掛け合わせて、それぞれの金属組織が混在しているステンレス鋼です。耐食性と強度が高く、塩化物の環境下にも耐える特徴があり、海水機器や化学プラント用装置などに使用されています。SUS329J1が代表格です。

参考文献
http://www.jssa.gr.jp/contents/about_stainless/
https://www.daido.co.jp/products/stainless/what/index.html