ステンレス鋼

ステンレス鋼とは

ステンレス鋼

ステンレス鋼とは、主成分となる鉄 (Fe) を50%以上とし、炭素 (C) を1.2%以下、クロム (Cr) を10.5%以上含む合金鋼です。

耐食性に優れ、さびにくい合金であることが良く知られています。耐熱性・加工性・強度などの面でも優れた特性を持っています。ステンレス鋼という名は、英名の「Stainless Steel」に由来しており、Stain (さび) less (少ない) という意味合いです。

 ステンレスの錆びにくい仕組み

ステンレス鋼が錆に強いのは、表面に不動態被膜という薄い膜を形成しているためです。一般に、鉄は酸素と結びつくと酸化鉄となり錆が発生します。しかし、クロムは鉄より酸素と結びつきやすい性質があり、鉄先にクロムが酸化することで、不動態被膜を形成して鋼の表面を覆い、錆の発生を抑制します。

このクロムの性質によって、ステンレス鋼が錆に強い性質となっています。このステンレス鋼に、ニッケルを加えると、さらに耐食性が増し、より錆に強いステンレス鋼が得ることが可能です。ただし、ステンレス鋼でも錆が発生する場合があります。具体的には、錆びている金属に長期間触れていたり、傷がついたりしているケースなどです。

ステンレス鋼は、「SUS304」「SUS430」のように「SUS+数字」で種類を表します。SUSとは、「steel use stainless」の頭文字をとったもので、後に続く数字はステンレスの鋼種です。種類に応じて、300番台、400番台などに分類され、「SUS304」は世界中で使われているステンレス鋼です。

ステンレスの種類と添加元素

ステンレス鋼の使用用途

ステンレス鋼の種類と主な特徴・用途

ステンレス鋼は、優れた耐食性という特徴を活かして多種多様な分野で使用されています。精密機器・家電・産業機器などでは、外装のカバーや機構部品として使われるケースが多いです。

表面処理がなくてもきれいな外観を得られることや、二防錆目的でのめっきや塗装が不要であるため、部品のリードタイムが短く、一定の条件の下ではステンレス鋼を使用する方が一般的な鉄鋼を使用するよりも低コストで済む場合があることが理由として挙げられます。

また、熱伝導率が低いため耐熱性や保温性に優れている点もメリットの一つです。家庭ではスプーン、フォーク、キッチンシンクなどにステンレス鋼が使用されています。その他、強度や硬度が高いという点から、ドーム球場など大型施設の屋根材料、ジェット機に使用するタービンブレードやブレーキディスクなど、重要な役割を担う部品に使用されることもあります。

ステンレス鋼の特徴

主なステンレス鋼の添加元素の例

非常に耐食性が優れており、合金の比率などによって5種類に分別することができ、それぞれ異なる特徴を有します。

ステンレス鋼の種類

ステンレス鋼の系統図

1. マルテンサイト系

マルテンサイト系はクロムと炭素を主な成分とし、ニッケルを含まないステンレス鋼です。これは、熱処理によってマルテンサイトという硬い金属組織を形成するため硬度が高い反面、他の種類と比べると、厳しい環境において錆びやすく最も耐食性が劣るという特徴があります。

一般の鉄鋼と同様に磁性を持っている (磁石がくっつく) のが特徴です。主な用途として、刃物やノズル、タービンブレード、ディスクブレーキなどが挙げられます。SUS410、SUS403などがマルテンサイト系ステンレス鋼です。

2. フェライト系

フェライト系は、クロムを主成分としており、ニッケルを含まないステンレス鋼です。オーステナイト系に次いで、耐食性に優れ、熱処理をしても硬化が少なく軟質を維持できるためプレス加工に適しているという性質があり、価格は安価です。

主な用途として、建築内装材やガス・電気器具部品が挙げられます。磁性を持っている点も特徴の一つと言えます。SUS430などがフェライト系ステンレス鋼です。

3. オーステナイト系

オーステナイト系は、クロムとニッケルを主成分とし、常温の状態でオーステナイトという金属組織を形成しており、唯一ニッケルを含むステンレス鋼です。そのため、耐食性、耐熱性、溶接性が優れていて、スプーンやフォークなどの家庭用品、自動車部品、建築用品など幅広い分野において使用されています。SUS304、SUS316などがオーステナイト系ステンレス鋼です。

4. 析出硬化系

析出硬化系とは、クロムとニッケルと主成分とし、アルミニウムなどの元素を添加し、焼入れや焼戻しと同様の熱処理である析出硬化処理によって、これらの元素の金属間化合物の析出を利用し、硬度を向上させたステンレス鋼のことです。オーステナイト系と比べると耐食性は及びませんが、フェライト系よりは優位です。

耐食性があり、高温に強いため、宇宙開発や航空機分野で使用されています。SUS630は析出硬化系ステンレス鋼です。

5. 二相系

二相系とは、オーステナイト系・フェライト系を掛け合わせて、それぞれの金属組織が混在しているステンレス鋼です。耐食性と強度が高く、塩化物の環境下にも耐える特徴があり、海水機器や化学プラント用装置などに使用されています。SUS329J1が代表格です。

参考文献
http://www.jssa.gr.jp/contents/about_stainless/
https://www.daido.co.jp/products/stainless/what/index.html

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