ガス滅菌器

ガス滅菌器とは

ガス滅菌器とは、医療機器や化粧品容器等、衛生管理が求められる対象に付着している微生物をガスで死滅させる装置です。

滅菌には他に高圧蒸気やガンマ線等を用いた方法がありますが、ガス滅菌は他の方法と比較して対象にダメージを与えず処理可能です。

主にエチレンオキサイドガス (英: ethylene oxide gas) や過酸化水素は滅菌のガスに用いられます。エチレンオキサイドガスは酸化エチレン (EO) ガスとも呼ばれ、幅広い材質に適用でき、過酸化水素は滅菌後のエアレーションが不要なため、滅菌用途に非常に有用です。エチレンオキサイドガスを使った滅菌法は、エチレンオキシドガス滅菌、酸化エチレンガス滅菌、ETOガス滅菌、EOG滅菌と呼ばれます。

ガス滅菌器の使用用途

ガス滅菌器は主に医療現場で用いられる機器や材料の滅菌を目的として使われます。

繰り返し使用する医療機器や材料は事前に洗浄や乾燥を行った後にガス滅菌器に投入され、滅菌やエアレーションの後に再利用可能です。高圧蒸気を用いた滅菌法も医療機器によく用いられますが、高温、高圧、水蒸気に弱い対象ではガス滅菌器が選択されています。

医療目的以外では化粧品向け等、高温に弱いプラスティック容器の滅菌方法に用いられています。

ガス滅菌器の原理

ガス滅菌器として代表的なエチレンオキサイドを用いた装置では、滅菌に適した湿度や温度の管理、ガスへの対象物の曝露、終了後の排気、エアレーションの処理が行われます。エチレンオキサイドは常温で高い殺菌効果を持ち、プラスティックや金属等を腐食しません。

対象物を容器に入れて装置内に投入後、装置内の温度を40°C~60°C、湿度を40%以上に保ち、400~1,100mg/Lのエチレンオキサイドガスに1時間以上曝露させます。湿度、温度、曝露時間はハーフサイクル法等を用い、対象毎に最適な条件を決定可能です。

水蒸気等を用いた方法とは違いエチレンオキサイドガスは人体に対する毒性や発がん性があるため、ガスへの曝露によって対象物を滅菌した後にエアレーションによる残留ガスの除去が必要です。この工程に要する時間は対象物の厚さや材質等によって異なり、概ね8時間以上が推奨され、ガス滅菌の律速段階となっています。

ガス滅菌器の特徴

滅菌効果に影響する要素は、ガス濃度、湿度、温度、時間、分散の均一性などです。

1. ガス濃度

滅菌剤のエチレンオキサイドガスは高濃度の方が効果的です。ある濃度範囲内ではエチレンオキサイドガスの濃度が2倍になると微生物の滅菌速度は2倍になります。

2. 湿度

乾燥しているとエチレンオキサイドガスによる微生物の不活性化が起こりません。水分が存在すると菌体へのガスの浸透性が上昇し、微生物を構成するタンパク質や核酸をアルキル化する反応で水分子が必要です。滅菌には湿度が必要で、50%RHほどで行います。

3. 温度

10°C温度が上がると不活性化速度はおよそ2倍です。具体的には45°Cで滅菌時間が8時間かかる場合には55°Cでは半分の約4時間で同じ効果が得られます。ただしエチレンオキサイドガスは60°C以上で重合が進行し、滅菌剤の作用を失うため、通常滅菌温度は45°C~60°Cで実施します。

エチレンオキサイドガスを使用した滅菌では大型滅菌器の内部の湿度と温度を均一にできず、対象物の中心部の温度制御は困難です。ガス滅菌器内で対象物を滅菌する前に滅菌器外で設定湿度・温度に保って加湿や加温を実施するプレコンディション処理 (英: preconditioning) を行い、均一性のために滅菌器内部で攪拌装置を使います。

4. 時間

長時間滅菌すると効果的です。

5. 分散の均一性

プレコンディショニング処理や攪拌装置によってガス濃度、湿度、温度を均一にできますが、対象物の包装やガス滅菌器内の積載方法で分散性は違います。

参考文献
https://www.jsmi.gr.jp/pdf/Guideline2015ver3.pdf
http://kkiki.jp/eog.html
https://www.japangas.co.jp/project/
https://medical-logi.suzuyo.co.jp/archives/3436/

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