オートクレーブ

オートクレーブとは

オートクレーブ

オートクレーブとは、飽和蒸気を吹き込むことで、ある物体を加圧加温する装置です。

高温高圧の蒸気によって、細菌や微生物のタンパク質を変性し、死滅させることができるため、オートクレーブは主に分子生物学実験での滅菌処理として利用されます。オートクレーブでは、高温高圧の蒸気を使用するため、取り扱いには十分な注意が必要です。

飽和蒸気を容器内に吹き込むので、産業用途として巨大化した場合、日本国内では労働安全衛生法の規制が掛かり、届出等を怠ると違法となります。具体的な条件は、「ゲージ圧力0.1MPa以上で使用する容器で、内容積が0.04m3以上のもの、または、胴の内径が200mm以上で、かつその長さが1,000mm以上のオートクレーブ」です。

該当したオートクレーブを使用する場合、使用前検査や年次検査の実施が必要となります。

オートクレーブの使用用途

オートクレーブは主に、分子生物学実験での滅菌処理装置に使用されます。分子生物学実験では、大腸菌などを培養するためのフラスコシャーレのほか、菌体を扱う道具を再利用する際、前回使用時の菌が混入 (タミネーション) しないようにするため、滅菌処理が必ず必要です。この滅菌処理では、高温加熱ができるオートクレーブが使用されます。

また、遺伝子工学の実験では、遺伝子組み換えを行った、世の中には存在しない菌や細胞を扱いますが、これらが外部に流出するのを防ぐため、再利用する道具だけでなく、不要な菌や細胞を培養した液、固体培地などをごみ箱や水道の流しにそのまま捨ててはなりません。これらの菌を処分する前にも、オートクレーブが用いられます。

その他、オートクレーブの高温高圧条件下を利用して、特殊な化学反応過程 (コルベ・シュミット反応や金属触媒による水素化反応) やプラスチックの成形などに利用することも可能です。

オートクレーブの原理

オートクレーブの構造は、圧力鍋と似たような構造です。圧力鍋と同様、中に入れる水分量、蓋の開閉、圧力開放弁など取り扱いに注意が必要です。水が100℃以上になると、大気圧と同圧であれば沸騰して気化します。

ただし、水分を密閉容器で100℃にしてさらに熱すると、水はほとんど気化されず100℃以上の温度になり、密閉容器の内圧が徐々に大気圧以上に上がっていきます。圧力鍋は意図的にこの状態を作り出し、調理時間を短縮する調理器具です。密閉された容器に水分を含んだ食材を入れ、火にかけることで水分を100℃以上に上昇させ、熱湯以上のエネルギーで調理します。

オートクレーブも、密閉容器に水分を含んだ中間生成物を投入します。オートクレーブの場合は、容器を火にかけることなく、飽和蒸気を吹き込むことで内圧を上昇させる仕組みです。処理工程が終了したら、圧抜弁を開放して、内圧を大気圧程度まで下降させて処理生成物を取り出します。飽和蒸気の圧力によって内包できるエネルギーが変化するため、蒸気圧力は処理工程に合わせて減圧して使用します。

オートクレーブのその他情報

オートクレーブでの加熱滅菌

オートクレーブに入れる内容物には、ガラスフラスコやガラスシャーレのガラス容器や金属容器など、耐熱性の優れたものを使用します。プラスチックやゴム、布製品など、耐熱温度が低いものを使用すると溶けてしまう危険があるため、事前に内容物の耐熱温度を確認するようにしましょう。プラスチックなどの容器は、オートクレーブとは別の方法で滅菌処理をする必要があります。

菌体の培養などで使用したガラスフラスコやガラスシャーレなどを滅菌する場合、オートクレーブの加熱条件は、135~145℃であれば3~5時間、160~170℃であれば2~4時間、170~180℃であれば1時間、180~200℃であれば30分間が目安です。オートクレーブは使用時に水が高温高圧の状態となるため、稼働時前に水の量、蓋の閉める強さを十分に確認し、事故がないよう注意する必要があります。

参考文献
https://www.nite.go.jp/nbrc/industry/cultures/anaerobic.html
https://www.jbanet.or.jp/examination/classification/vessel-1/

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