ハンディオシロスコープ

ハンディオシロスコープとは

ハンディオシロスコープ

ハンディオシロスコープとは、屋外での使用を想定した小型のオシロスコープを指し、電池で動作させることができるものです。

オシロスコープとは、電子回路内の信号電圧の変化を時系列に波形データとして表示する測定器のことです。この波形の変化や振幅の大きさを読み取って、信号の変化を計測します。もともと実験室や工場の生産ラインで使う前提だったため、高精度、高感度、高速のデータ処理等、高性能を求め、筐体は大きくかつ大きな消費電力となっています。

一方、電子機器が設置された現場で機器の調整や修理対応に使えるオシロスコープも必要となります。この場合は、性能が多少劣っても、小型軽量かつ商用電源が不要な電池駆動であることが必須条件です。この条件を満たすのがハンディオシロスコープです。

ハンディオシロスコープの使用用途

ハンディオシロスコープの使用用途は、前項で記した通り、機器が設置された現場へ持ち込んでの波形観測が第一に挙げられます。小型で電源不要であることから、小回りが利き、使い易く、作業の能率が高まります。

また、電池で駆動することから、フローティング状態の機器の波形観測に適しています。商用電源を用いるオシロスコープでは、感電防止のため本体は接地することが推奨されますが、接続先の機器のグランドレベルが定まらないフローティング状態だと、両者の間に大きな電位差が生じている可能性があり、機器やオシロスコープを破壊する恐れもあります。電池駆動であれば、ハンディオシロスコープ側もフローティング状態であるため、そのような問題は発生しません。

さらに、ハンディオシロスコープは、比較的機能がシンプルで安価なことから、個人の電子工作でも活用されます。同様に、教育機関における授業においても使いやすいです。

ハンディオシロスコープの原理

オシロスコープには、ブラウン管の残像効果を利用したアナログタイプと、信号波形をA/D変換してメモリに記録するデジタルタイプがありますが、ハンディオシロスコープは全てデジタルタイプです。

従って、信号波形を取り込む原理はデジタルオシロスコープと全く同じです。ただし、小型で電池駆動とするため、機能面での制約が多々あります。主な制約は以下の通りです。

  • 波形メモリの容量が小さい
  • 波形のサンプリング周波数を高速にできない
  • プローブなどのアクセサリーが限定されている
  • チャンネル数が限定される (2チャンネル構成の機種が多く、それ以上の機種は少ない)
  • 複雑なトリガ条件の設定ができない

一方で、電池駆動であることから、前項に記したようにグランドレベルは接地とは無関係に設定できるので、通常のオシロスコープでは差動プローブが必要な場面でも、普通のプローブが使えることがあります。

ハンディオシロスコープの種類

小型化されたハンディオシロスコープには、以下の様なタイプがあります。

1. PCをオシロスコープ化するタイプ

信号をA/D変換しメモリに格納するデジタイザー機能を纏めたもので、USB経由でPCに接続し、PCのディスプレイ上に信号波形を表示する機種を指します。USBバスパワー駆動を採用する機種ではACアダプターも不要です。このタイプは全般的に機能が単純で安価ですが、波形観測にPCが欠かせないので、厳密にはハンディとは言えません。

2. オールインワンタイプ

ディスプレイデバイスを備え、単独で信号波形の取り込みと波形の表示が可能なタイプです。取り込んだ信号波形をUSBやメモリーカードを介して外部機器に出力できるので、そのデータをPCを用いて波形解析することも可能です。また、充電池を内蔵しているため、ACアダプターで充電しておけば、商用電源に接続せずに測定することができます。機種によっては、市販のアルカリ乾電池が使えるものもあります。

3. デジタルマルチメーター機能付きのタイプ

オシロスコープの機能に加えて、デジタルマルチメーターの機能や周波数カウンタの機能を一体化したものです。個々の機能は専用の測定器には及びませんが、1台で一通りの測定機能を備えているため、特に機器が設置された現場へ持ち込んで測定する際に極めて便利なものです。

参考文献
https://www.cqpub.co.jp/column/books/11891osiro/
https://jp.tek.com/document/online/primer/xyzs-scopes/ch1/oscilloscope-basics
https://www.iti.iwatsu.co.jp/ja/support/05_07.html
https://www.iti.iwatsu.co.jp/ja/support/05_14.html
https://www.vector.co.jp/soft/win95/art/se376225.html
https://www.monotaro.com/

防錆シート

防錆シートとは

防錆シートのイメージ

図1. 防錆シートのイメージ

防錆シートとは、金属などの対象防錆シートとは、金属などの対象物に対して錆を防ぐために用いるシートです。防錆紙とも呼ばれています。

防錆シートは、紙などの素材に、防錆効果を有している薬品を含浸させたり、塗布したりする加工を施すことで製造しています。錆を防ぎたい金属などの製品を、防錆シートで包むだけで対象物を容易に錆から守ることが可能です。 シート状になっているため、対象物の大きさや形状に合わせて自在に変形させ、簡易包装から密閉梱包まで簡単に行うことができます。

防錆シートの使用用途

防錆シートは、錆びやすい材質のものや、錆が発生しやすい環境下などで、対象物を長期間錆から守って保存したい時に使用されています。鉄鋼や、自動車など、錆によって品質上に問題が発生するような金属を扱う業界での使用が一般的です。

様々な大きさの製品の防錆に対応するため、小型の部品から大型の鉄鋼製品まで対応できる幅広い製品展開があります。製品によってばらつきはあるものの、おおよそ半年から1年ほど防錆の効果を期待することができます。ただし、使っていなくても防錆成分が気化して効果が薄れていくため、購入してから早めに使うことが推奨されています。

防錆シートの原理

防錆シートの原理

図2. 防錆シートの原理

防錆シートは、製造の際、原紙に防錆塗料が塗工または含浸されます。なお、防湿性が特に必要な製品は、ラミネーターでポリエチレンラミネート加工されます。

防錆シートが金属の錆を防ぐ原理は以下の通りです。

  1. シートに含有される防錆剤は、常温で徐々に気化 (昇華) し、蒸気はシートと金属の間の密閉された空間をすみやかに充満します。
  2. 気化した防錆剤が、金属表面の水分中に溶解します。溶解した防錆剤が物理的、化学的に分子またはイオンとして吸着することにより形成されるのが、「防錆被膜」です。
  3. 防錆被膜が、鉄を錆の原因となる外気から遮断し錆への変化を防ぎます。

この気化性防錆剤による防錆被膜は、膜厚が極めて薄く、吸着力も弱いため、金属表面に外観上の変化を与えることはありません。防錆包装後、表面を洗浄することなく直ちにの金属製品を使用することが可能です。また、気化性を利用した防錆であるため、即効性も期待できます。金属表面への防錆剤の吸着機構

図3. 金属表面への防錆剤の吸着機構

防錆シートは、錆を発生させる原因になる活性物質などが含有されていないことが大切な条件になります。したがって、シートにも、発錆の原因になる塩素イオンや酸が含まれていない素材を使用する必要があります。

防錆シートの選び方

防錆シートには、「鉄・鉄鋼用」などと表記された鉄専用の他、鉄・非鉄金属共用、亜鉛・鉄共用、・銅合金用などがあります。また、製品によって厚さ、幅、長さ、など、寸法も様々です。自分が使いたい金属製品の種類・大きさに合わせた製品を選びましょう。

塗工タイプは、長年多くの製品が使われてきましたが、防錆剤を紙の表面に塗って製造されているため、開梱時に防錆剤が製品に付着する場合もあります。一方、含浸タイプは、紙に防錆剤をしみ込ませており、そのような懸念はありません。現在では、特別な理由がない限り含浸タイプを用いることが多いです。

より高い防錆効果が必要な場合は、ポリエチレンラミネート製品が効果的です。外部からの水分や湿気の流入を防いだり、気化した防錆成分が外部へ流出することを防ぐ効果があります。

また、メーカーによってはプラスチック・ゴムの変色テスト結果を公表している場合があります。防錆したい製品にプラスチック部分がある場合は、調べてから購入するのが無難です。テスト用サンプルの提供を行っているメーカーもあるので、心配であれば活用すると良いでしょう。

参考文献
https://www.monotaro.com/s/c-59413/
https://bouseishi.com/what/index.html
https://www.ryoko.co.jp/products/vci_paper/vci_paper_02.pdf

液体窒素容器

液体窒素容器とは

液体窒素容器

液体窒素容器とは、液体窒素を貯蔵と保存をしたり、運搬をしたりするために使用する容器のことです。液体窒素とは、マイナス196℃以下で液体の状態にした窒素のことで、主に物体の冷却に使用されます。 

使用方法を誤ると、爆発や窒息や凍傷などを引き起こして大変な事故などに繋がる危険があるため、取り扱いには注意が必要です。液体窒素保存容器を用いることで、液体窒素を安全で効率的に貯蔵・保存・運搬が可能となります。

液体窒素容器の使用用途

液体窒素容器は、サンプルの保存や実験を行う研究室や医療機関、食品関連の瞬間冷凍やIT関連機器の冷却材などで液体窒素を使用する際に、保存・運搬などの目的で用いられます。また、特殊な分析機器において液体窒素が使用されることもあります。

液体窒素容器には、開放容器と密閉容器の2種類があり、開放容器は小型から中型の大きさの容器が主流で、密閉容器は容量の大きい大型の容器が主流となっています。液体窒素を充填する容器口にキャップがかぶせてあるだけで固定されていないのが開放容器で、固定されて密閉状態になっているものが密閉容器です。

液体窒素容器は、長期間の保存に適していませんが、毎日の使用や短期間での使用には向いています。液体窒素容器を用いることで、短距離の運搬や、短期間の貯蔵・保存、定期的な補充などが可能です。

液体窒素容器の原理

窒素は液体から気体になる際に体積が約700倍に膨張するため、爆発や酸欠などの事故に繋がります。そのため、液体窒素容器は真空二重構造によって断熱し、高い保温性で温度を安定させることで、液体窒素の保存が可能となります。

また、衝撃や振動に強い構造にすることで、破損にも耐えられるようにしてあります。ただし、液体窒素容器に入れている場合でも、少しずつ気化していきます。

液体窒素容器の構造

液体窒素容器は、容器の外側を形成する外槽と、液体窒素を充てんする内槽から構成され、外槽と内槽との間には真空断熱層が配置されています。開放型の液体窒素容器は、内槽の開放端にキャップを被せるだけで固定しない簡易的な構造を有しており、大学の研究室等で多く使用されています。

開放型は、外槽がアルミニウム製のものが一般的であり、内槽に硬質ガラス、金属、FRP(ガラス繊維強化樹脂)などで構成されたものが一般的に使用されています。

液体窒素容器の構造

図1. 液体窒素容器の構造 (1)

自加圧型(密閉型)の液体窒素容器は、外槽と内槽との間に加圧コイルが配置されており、内槽の圧力を高めて内槽中の液体窒素を加圧することにより、液体窒素を取り出す構造を有しています。

自加圧型には、液体窒素の取出し側に配置される液取出弁と、内槽の圧力を高めるときに使用する昇圧元弁と、内槽中の内圧の過剰な上昇を抑制するガス放出弁が設けられており、これらの制御弁を調整することにより必要な量の液体窒素を取り出せるようになります。

液体窒素容器のその他情報

1. 液体窒素容器の使い方

開放型の液体窒素容器は、小型で比較的軽量であるため容器を持ち上げて傾けると、液体窒素を取り出すことができます。しかし、安全性を考慮してサイフォンなどを使用して取り出すことが推奨されています。

サイフォンには、ゴム球を使用した手動タイプとコントローラを使用した自動で送液するタイプがあります。特に電子顕微鏡のEDX検出器の冷却用デュワーなどは中の液面が見えにくいため、レベルセンサーがついたサイフォンを使用すると、あふれて精密機器に液体窒素がかかることを防止できます。

液体窒素容器の使い方

図2. 液体窒素容器の使い方

また、容器を保管する場合には、内部で水分が凍結して取出しが遮られないように専用の蓋を使用する必要があります。万が一、蓋を紛失するなどで被せられない場合には、乾燥したウェスをかぶせるなどして、密閉は避けながら大気開放を抑えなければなりません。

内槽は必要最小限の構造で固定されているのみの構造を有しています。このため、横からの力に弱く、保管場所にも注意が必要です。自加圧型(密閉型)の液体窒素容器は、複数の弁を調整してガスを取り出す構造を有しており、各調整弁の取り扱いにも注意する必要があります。

容器から液を取り出す際には、まずガス放出弁を閉め、加圧弁を開いて容器内圧が上昇することを確認します。そして、液取出弁を開き、容器内圧が過度に上昇しないように確認しながら液体窒素を取り出します。

取り出しが終了したら、液取出弁と加圧弁を順に閉めた後、ガス放出弁を開いて容器の内圧を下げます。

2. 液体窒素容器使用時の注意点

液体窒素を取り扱う上で、窒息、凍傷、爆発に注意する必要があります。凍傷を防止するために、使用時はグローブやフェイスガードを使用し、スリッパなどは液体窒素がこぼれた際に直接接触する可能性があるため、液体が侵入しにくい履物を着用してください。

同様に、軍手などでは浸透する可能性があるため、乾燥した専用の手袋を使用することが推奨されています。液体窒素を屋内で出し入れする場合は、部屋を十分に喚起する必要があります。また、エレベーターを使用する場合は内部が密室になるため、液体窒素と同乗はしないようにします。

エレベーターに液体窒素を載せている場合は、看板などで注意書きを出し、他の人が乗らないようにしましょう。頻繁に液体窒素を使用する部屋などは、酸素モニタの取り付けをおすすめします。

開放式の場合は当然ですが密閉を想定した構造になっていないため、密閉は厳禁です。また、使い方で説明したように蓋をしないまま放置をすることも厳禁です。これは、単に液体窒素の気化が早くなるだけでなく、保存容器内で水分や酸素が液化し、混入する可能性があるためです。

特に液体酸素は、有機物と接触した際に急激に反応を起こすことがあります(液体酸素は青みを帯びています)。蓋を損失したなどの場合は、乾燥した布などをかぶせます。開放式は構造上、揺れや衝撃に弱く、真空断熱層が壊れる可能性があるため、丁寧に使用する必要があります。

自加圧式では安全弁により内部の圧力を安全な状態に保っているため、安全弁が正しく機能していることを定期的に確認しましょう。また、配管内で凍結が起きた場合に正しく取り出しができなかったり、急に吹き出す可能性があるため、取り出し口をのぞき込むことは危険です。

参考文献
http://www.csrea.kobe-u.ac.jp/teion_vesselse.html
https://www.labinox.co.jp/item_thermolyne_03.html
http://physics.s.chiba-u.ac.jp/cryo2/nitrogenatukai.html
https://www.ekitaichisso.com/ln2_2
http://www.csrea.kobe-u.ac.jp/teion_vesselse.html
http://physics.s.chiba-u.ac.jp/cryo2/vessel_cut2.html
http://ic.ims.ac.jp/kiki/teion/N2_user_manual2008.pdf

排ガス分析計

排ガス分析計とは

排ガス分析計とは、排気ガスの成分を分析するための装置です。

燃料や原料を燃焼させた際に発生する硫黄酸化物などの有害物質やススをばい煙と呼びます。大気汚染防止法ではばい煙を発生させる設備の中でも、大規模な設備をばい煙発生施設として特定しています。

ばい煙発生施設では排ガスのばい煙濃度とばい煙量を連続的に測定し、記録することが義務付けられています。そのため、ばい煙を発生させる施設では排ガス分析計を用いて、排気ガスの成分を分析して記録することが必要です。

また、燃焼効率化のための指標としても使用されます。特に、半導体や液晶ディスプレイ製造ではフッ素系のガスを多く用います。フッ素系ガスは地球温暖化係数が二酸化炭素の一万倍もあるため、世界半導体会議では排出量の削減が課題です。排ガス量削減のための指標として、排ガス分析計で排ガス濃度を測定する場合があります。

排ガス分析計の使用用途

排ガス分析計は産業用途で使用される装置です。以下は使用用途の一例です。

  • ボイラーや産業廃棄物焼却炉の排ガス濃度測定
  • 汚泥焼却炉やゴミ焼却設備の排ガス濃度測定
  • 水素発生装置の水素発生量測定
  • 酸素プラントやガス発生プラントの発生ガス量測定
  • 半導体製造設備のフッ素ガス濃度測定
  • 鉄鋼設備における酸素吹込み量監視

大気汚染防止法において、有害物質の排出量を把握することが必要です。大気汚染物質の低減化や環境保全のために、排ガス分析計による測定が欠かせません。

また、鉄鋼設備などでは、酸素の吹込み量を監視することで品質管理にも寄与します。

排ガス分析計の原理

排ガス分析計の種類によって原理は異なりますが、排ガス規制用には複数成分を同時測定可能な煙道用排ガス分析装置が使用されます。煙道用排ガス分析装置は以下の順で排ガスをサンプリング・測定します。

1. 一次フィルタ

煙道に一次フィルタを挿入してガスをサンプリングします。一次フィルタの設置目的はサンプルガス中の大きな塵をフィルタリングしながら加熱し、水分の結露による詰まりなどを防止することです。一次フィルタを潜ったガスはテフロンチューブやSUS管などの導管を通り、排ガス分析計本体へ導入されます。

2. ドレンセパレータ・ミストキャッチャ

排ガス分析計へ導入されたサンプルガスはドレンセパレータやミストキャッチャによって水分を除去されます。後段装置の腐食や詰まりを防止することが目的です。ミストキャッチャは定期的な交換が必要な部品の一つです。

3. NOコンバータ

NOXの測定をする場合は、NOコンバータを使用します。分析計で測定しやすいように、NO2成分をNOへ変換します。NOXを測定しない場合は付属しません。

4. 二次フィルタ

二次フィルタによってサンプルガス内のススなどをさらに除去します。二次フィルタには紙やテフロンペーパーが使用されます。

5. エアーポンプ

水分を除去したサンプルガスは、エアーポンプで加圧されて分析ユニットに送り出されます。エアーポンプにはダイヤフラムポンプを使用される場合が一般的です。エアーポンプでガスを吸引できていることを確認するために、後段に流量計が取り付けられます。

6. 分析計ユニット

分析計ユニットの内部にはキャピラリ配管などへサンプルガスを導入し、各種成分を測定します。複数成分を同時測定する場合は、赤外線吸収方式や磁気力方式を活用して分析します。

排ガス分析計の種類

排ガス分析計には複数の種類が存在し、測定成分に合わせて使い分けされます。以下は代表的な排ガス分析方式の種類です。

1. 熱伝導方式

ガスの熱伝導率比の違いを利用して測定します。試料ガスと比較ガスの2種類のガスを比較測定し、熱伝導率の変化を電気抵抗変化として濃度を検出します。

2. 赤外線吸収方式

試料セルと基準となるセル (ブランク) とを比較してガスの濃度を検出するダブルビーム方式と試料ガスのみのシングルビーム方式があり、試料ガスに赤外線光線を当てて、マスフローセンサで赤外線吸収量を電気信号として検出します。

3. 磁気力方式

酸素成分を測定するための方式です。試料ガスがセルに入ると、酸素分子が磁界に引き寄せられて酸素濃度に応じた力を電気信号に変換して検出します。

4. ジルコニア方式

酸素成分を測定するための方式です。ジルコニア素子が高温で酸素イオンのみを通す導電性を利用し、比較ガス (ブランク) と試料ガスを流し、電極に発生する酸素濃淡電池の起電力を検出します。

参考文献
https://www.fujielectric.co.jp/products/instruments/products/anlz_gas/ZSU.html
https://felib.fujielectric.co.jp/
https://www.yokogawa.co.jp/library/resources/application-notes/an-an10g02b01-01/
https://www.tn-sanso.co.jp/jp/rd/giho/pdf/25/12.pdf

耐熱両面テープ

耐熱両面テープとは

両面テープ耐熱

耐熱両面テープ (英: Heat resistant double sided tape) とは、 電気配線など高温な物の修理やメンテナンスに使用するテープです。

粘性を持つ部分が両面にあります。アルミやポリイミドなどの素材で作られ、電気絶縁、マスキングなどの機能を持っています。テープの厚さや硬さによってさまざまな種類がありますが、硬く薄い方がよりズレに強いです。また、柔らかく厚い方がより凸凹に強くなります。

中には1,000℃の高熱に耐えるものや厚さ50μ以下の薄型耐熱両面テープもあるため、粘着性や難燃性などを考慮して目的に合ったものを選ぶことが大切です。

耐熱両面テープの使用用途

1. 自動車産業

自動車の製造過程では、高温環境での接着が求められます。エンジンルームや排気系の部品、内装パーツの固定などに耐熱両面テープが使用されます。耐熱性により、高温下での接着が確保することが可能です。

2. 電子機器製造

電子機器内部や基板への配線、部品固定などに耐熱両面テープが利用されます。特に高温発生部分での使用や耐久性が求められる場面で重要です。

3. 建築業界

建材の接着や取り付けにおいても、耐熱性が必要です。屋外での設置や高温環境下での使用に適しており、効果的な固定が可能です。

4. 産業機械

工場の機械部品や装置の組み立てに使用されることがあります。高温の作業環境でも接着が維持されるため、効率的な生産プロセスをサポートします。

5. 熱処理

金属の熱処理工程において、特定の部位を保護するためのマスキングに利用されます。高温に耐える性質が求められます。

6. 食品業界

食品加工ラインのコンベアベルト修理や、耐熱性が求められる食品包装材の製造にも使用されます。

7. 航空宇宙産業

航空機や宇宙船の製造において、高温環境での耐久性が必要な部位での使用が考えられます。

耐熱両面テープの特徴

1. 耐熱性

耐熱両面テープは、高温環境においても安定した接着性能を維持します。この特性は、特殊な耐熱素材と粘着剤の組み合わせによって実現されています。高温作業や高温発生部分での使用に適用可能です。

2. 耐久性

耐熱テープは、長期間の使用に耐える耐久性を持ちます。高温下での環境変化や振動などに対しても安定した接着力を保ち、信頼性のある接合を提供します。

3. 接着力

耐熱両面テープは、様々な材料に対して強力な接着力を発揮します。高温環境下でも剥がれたり劣化したりすることなく、しっかりと接合することができます。

4. 多様な用途

耐熱両面テープは、その耐熱性によって幅広い用途に使用されます。自動車産業、電子機器製造、建築業界、産業機械、食品業界など、さまざまな分野で重要な役割を果たします。

5. 設計の自由度

柔軟な素材である耐熱両面テープは、複雑な形状や曲面にも適用可能です。これにより、特殊な形状や設計に対応することができます。

6. 簡易な取り付け

耐熱両面テープは、ボルトや釘などの従来の固定方法よりも簡単に取り付けることができます。作業効率を向上させ、製品の組み立てプロセスをスムーズにします。

7. 環境への配慮

一部の耐熱両面テープは、環境に優しい素材を使用しています。これにより、製品の廃棄時にも環境への影響を最小限に抑えることができます。

耐熱両面テープの種類

両面テープの種類は、使用される素材によって分類できます。

1. シリコン

シリコン素材をベースにした耐熱テープは、高温環境下での使用に適しています。シリコンは高温に強く、耐候性にも優れており、電子機器や自動車部品などの製造に広く使用されています。

耐熱性と耐久性が特徴で、高い粘着力を維持しながらも残留物を残さない優れた特性を持ったテープです。

2. アクリル

アクリル素材をベースにした耐熱テープは、高温環境だけでなく、屋外や化学薬品への耐性も求められる場面で使用されます。アクリルテープはさまざまな素材に対して強力な接着力を提供し、耐久性が高いため、建築や産業機械の組み立てなどで重宝されています。

3. ガラスクロス

ガラスクロスをベースにした耐熱テープは、高温に耐える性能を持ちつつ、耐摩耗性や耐薬品性にも優れています。特に航空宇宙や軍事産業などで使用されることが多く、高い信頼性を求められる環境で重要な役割を果たします。

4. 金属箔

金属箔をベースにした耐熱テープは、熱伝導率が高く、断熱材や導電性材料として使用されることがあります。特に高温の状況下での熱管理や電磁波シールドなどに用いられ、工業的な用途で重要な役割を果たします。

5. 特殊合成ポリマー

特定の熱可塑性ポリマーをベースにした耐熱テープは、特定の用途に適した耐熱性を提供するために設計されています。これらのテープは特殊な条件下での使用に向いており、特定の産業や用途に合わせてカスタマイズされています。

参考文献
https://www.monotaro.com/g/00319338/

リーマー

リーマーとは

リーマー

リーマーとは、穴加工において仕上げに使う工具です。

穴加工では、最初にドリルなどの切削工具で目的の穴よりも小さい径の下穴を加工します。この下穴にリーマーを使って、設計書などにある穴のサイズや表面の精度に仕上げます。

リーマーは穴加工に使う工具ですが、リーマーだけで穴をあけることはできません。あくまでも、ドリルであけた下穴の仕上げをするための工具です。

リーマーの使用用途

リーマーは高い加工精度が求められる穴加工の製造現場で、広く用いられています。ここでの加工精度とは、穴の直径、真円度や円筒度、穴の加工面の表面粗さなどのことです。具体的には、機械部品の摺動部、金型のガイドピン位置決めピンが挿入される穴などの加工が挙げられます。

このような高い加工精度の穴が必要になる製造部品には、自動車や航空機の部品、金型、電子部品やノズルなどがあります。

リーマーの原理

リーマーは、円筒形や円錐形の軸の外周に、一般に6枚から8枚の切削刃がついた形状をしています。この外周にある刃を機械か手動によって回転させ、下穴の側面を削ることによって穴のサイズや表面を整えます。

ドリルは先端に切削刃があり、ドリルを回転させながら加工面に押し付けることによって、穴開けが可能です。リーマーの切削刃は、先端ではなく、円筒の側面だけにあります。

リーマーが下穴から加工する削りしろは、直径50mm程度の穴でも、直径で0.5mm以下と非常にわずかな量です。仕上げる穴径や材質によって、適切な削りしろになるように、適切な直径の下穴をあける必要があります。

リーマーの種類

リーマーには目的や使い方によって、いつか種類があります。代表的な種類は以下の通りです。

1. ハンドリーマー

ハンドリーマーは、ボール盤などの動力機械ではなく、手作業によって穴を仕上げるために使われるリーマーです。シャンク部と呼ばれる、工具をつかむ部分がストレートで先端は四角形になっています。この四角形の部分をハンドルがついた工具でつかみ、ハンドリーマーを手で回転させます。

2. チャッキングリーマー

チャッキングリーマーは、旋盤、ボール盤、ねじ盤などに取り付けて使うリーマーです。チャッキングリーマーにもシャンク部の形状によって、ストレートシャンクチャッキングリーマーとテーパシャンクチャッキングリーマーがあります。

また、リーマーには先端部分に、加工を始める際のガイドとなる面取りのような形状があります。この部分を食付き部といい、傾斜角度を食付き角と言います。ハンドリーマーの食付き角が約1°と非常に小さいのに対して、チャッキングリーマーの食付き角は約45°程度あります。

3. マシンリーマ

マシンリーマもチャッキングリーマーと同じように、機械に取り付けて使います。シャンク部の形状がストレートとテーパー付きのものがあるのも同じです。チャッキングリーマーとの違いは、刃の長さが長くなっている点です。

4. テーパーリーマー

テーパーリーマは、テーパ穴を仕上げるために使うリーマーです。テーパー穴には2つ以上の部品の結合に使われるテーパーピン用の穴や、ドリルやフライス盤などの加工機械の回転軸に、切削工具などを取り付けるためのテーパー穴などがあります。

5. スパイラルリーマ

スパイラルリーマは、加工によって生じる切り粉の排出をしやすくしたリーマーです。具体的には刃が真っ直ぐではなく、螺旋状にねじれた形状になっています。

また、スパイラルリーマーでは、穴側面の面粗さを低く仕上げることが可能です。自動車部品や航空機部品などで、特に穴の位置精度が重要になる部位で使われます。

参考文献
http://www.fptools.com/reamer.html
https://toolnavi.jp/convenient/knowledge/page2
https://www.monotaro.com/s/c-69550/

フッ素樹脂テープ

フッ素樹脂テープとは

フッ素樹脂テープ

フッ素樹脂テープとは、フッ素樹脂の一種であるPTFE (ポリテトラフルオロエチレン) をフィルムに用い、その上からシリコン粘着剤を塗布したテープです。

フッ素樹脂は他の樹脂素材よりも、優れた特性を多く持っています。例えば、熱に強い、滑らかで摩擦が小さい、薬品に対する耐性や、電気に対して絶縁性があることが挙げられます。また耐候性が高く、屋外で使用しても劣化の心配がありません。

フッ素樹脂テープを貼ることで、これらの優れたフッ素樹脂の効果を手軽に利用することが出来ます。

フッ素樹脂テープの使用用途

フッ素樹脂テープの使用用途を特性ごとに解説します。

1. 幅広い耐温性

フッ素樹脂は、樹脂の中でも耐温性に優れており、融点や分解開始の温度が300℃を超えています。製品にもよりますが、フッ素樹脂テープとしても200℃かそれ以上の温度域まで使用可能です。そのため、高温環境下での使用やフィルム溶着のためのヒートシールの被覆用途などに用いられています。

2. 摩擦がなく滑らか

様々な固体と比較しても、摩擦関数が最も小さく、潤滑性を有しています。そのため、ラインの潤滑材の役割としてコンベアなどの機器の滑らせたい部分に使用されたり、印刷機の用紙すべりの目的などにも使用されています。

3. 電気絶縁

高い絶縁性を有するため、コイルやモーターなどの結束部分の被服などに活用されます。

4. 薬品耐性

酸やアルカリの性質にも耐性があり腐食されることがないので、薬品を扱う場合や、溶出などの心配がある部分にマスキングとして使用することで、漏洩を防止・抑制したり保護することができます。空気や水に弱い薬品の劣化を防止することを目的に、薬品を入れている容器のキャップ部分に巻き付けてシールするために使われることもあります。

フッ素樹脂テープの原理

フッ素樹脂テープは、フィルムにフッ素樹脂を使用しており、その上からシリコン粘着剤でコーティングしています。下記では、フッ素樹脂がなぜそのような特長を有するのかを物質の構造の観点から解説します。

1. 炭素-フッ素間の強い結合力

フッ素樹脂として利用される物質は主にPTFEというもので、これは炭素原子とフッ素原子のみからなります。フッ素原子特有の性質を発揮することで、他の樹脂にはない優れた特性を示します。

炭素-フッ素の結合は非常に強く切れにくいです。強い結合力により他の物質との化学反応が起きにくく、分解や溶解することがないため高い安定性を有します。これが高い耐熱性や優れた薬品耐性を示す理由です。

また、分子内の結合力が強いことで、他の物質と接触した時にその相手材との相互作用 (分子間力) が小さくなり、それが低摩擦性という特性に繋がっています。

2. 対称性の高い構造

PTFEは構成原子が炭素とフッ素の2種類のみであり、それが分岐せずに直鎖上に伸びていることから対称性の高い構造になっています。そのため分子表面における凹凸が少なく、素材としても滑らかな表面構造になっています。低摩擦性はこの特性にも起因しています。

また、構造の対称性が高いことで、分子内において電荷的な偏りが極めて小さくなっており、電気抵抗が非常に大きいことが知られています。更に、PTFEの電気抵抗は周波数や温度の影響をほとんど受けません。これらの性質から優れた絶縁体として利用されています。

3. 低い表面自由エネルギー

PTFEは分子内の電荷的な偏りが極めて小さいことから、分子間力 (分子同士が引きつけ合う力) が非常に弱く、それにより表面自由エネルギーが固体の中でも非常に低いです。表面自由エネルギーとは液体の表面張力のように、物質の中で分子同士が引き合う力の強さを表す値です。

表面自由エネルギーが小さいほど他の物質を引きつける力が弱いことを意味します。PTFEの低い表面自由エネルギー (=他の物質を引きつける力が弱い性質) は撥水性、非粘着性に表れており、屋外での使用にも耐えられる高い耐候性を示します。

フッ素樹脂テープの種類

フッ素樹脂テープの種類は、構造の観点から大きく2つに分けることができます。

1. スカイブドタイプ

フッ素樹脂であるPTFEのみからできているタイプです。円筒型に押し固めたPTFE樹脂を薄いフィルム状に削り出すことで成形するタイプです。削り出されたテープの厚みは約0.1mmと非常に薄いため、引き伸ばしながら巻き付けることで物質表面に張り付けることができます。粘着性はないため、ガムテープやセロハンテープのように平面に貼り付けることはできません。

2. 接着剤塗布タイプ

フッ素樹脂の表面に接着性・粘着性のあるシリコーン樹脂やアクリル樹脂を塗布したタイプです。粘着面の物質に貼りつくことで、物質表面に撥水性、絶縁性などのフッ素樹脂の特性を付与することができます。

参考文献
https://tape-omakase-navi.com/column/post-370/
https://www.monotaro.com/s/c-70787/
https://www.meikou.jp/fluororesin.html
https://www.meikou.jp/fluororesin-2.html
https://www.y-skt.co.jp/magazine/coating/lowfriction/
https://www.y-skt.co.jp/magazine/coating/electrical_character/
https://www.y-skt.co.jp/magazine/coating/teflon_repel/

シリコンオイル

シリコンオイルとは

シリコンオイルシリコンオイル(シリコーンオイル)はケイ素と酸素の結合であるシロキサン結合でつながった高分子の一種です。耐熱性、耐候性、化学的な安定性に優れており、温度変化による粘度の変化も起きにくいため様々な用途で用いられています。生理的に不活性な物質で人体にもほぼ無害なため、機械の潤滑油などの工業的な用途の他、化粧品、衣類への撥水性の付与など人体と触れるものにも使われています。

なお、シリコンオイルは化学構造や粘度が異なる様々なものが販売されているため、用途に応じて適切なものを選定する必要があります。

シリコンオイルの使用用途

シリコンオイル(シリコーンオイル)は電気絶縁油や潤滑油、防振油のような製造、工業用に用いられる他、化粧品や消泡剤であったり、繊維やガラスなどの撥水処理にも用いられます。化学構造や粘度が異なるいくつかのシリコンオイルが販売されており、用途に応じて使い分けられます。化学的に安定で、金属や他の化合物に対して反応、腐食することもほとんど無いため幅広い材料に使うことが可能です。

シリコンオイルの種類

シリコンオイルはケイ素と酸素で形成されるシロキサン結合でつながった高分子です。そして側鎖にどのような原子、分子が結合しているかによってシリコンオイルは分類されます。側鎖にメチル基(CH3)が結合したジメチルシリコンオイル、側鎖の一部にベンゼン環を有するメチルフェニルシリコンオイル、側鎖の一部が水素であるメチルハイドロジェンシリコンオイルがあり、これら3種類のオイルを総称してストレートシリコンオイルと呼びます。これらは化学構造が異なるため、性質や用途も異なります。
シリコンオイルその他、ストレートシリコンオイルの一部の化学構造を変化させた変性シリコンオイルも販売されています。

シリコンオイルの特徴

シロキサン結合は結合エネルギーが非常に強く、容易に切断させることはありません。そのため、シリコンオイルは耐熱性、耐候性に優れているほか、化学的にも極めて安定です。また、温度変化による粘度の変化量も小さいことも特徴の一つで、この性質から自動車や鉄道車両などの計器油などのオイルの粘性を利用したものにも使用されています。

表面張力が水や一般的な合成油に比べて非常に小さいのも特徴の一つで、様々な物質の表面でシリコンオイルは弾かれずに広がることが可能です。他にもシリコンオイルは様々な特徴的な性質を有しており、多種多様な用途で使用されています。

シリコンオイルの安全性

シリコンオイルは生理的に不活性な物質です。皮膚への刺激性や眼刺激性、急性毒性はほぼ無く、大量に摂取しない限り無害です。ただし空気雰囲気において150℃以上の高温で加熱した場合、有害なホルムアルデヒドが微量生じる可能性があるため、上記の条件で取り扱う場合は十分な換気が必要です。

シリコンオイルは高温でも安定な物質ですが、一部は消防法の指定可燃物(可燃性液体類)に該当する物質です。該当する物質は法律に従って適切な量、保管条件のもとで管理することが求められます。

参考文献
https://www.silicone.jp/products/type/oil/index.shtml
https://www.hagitec.co.jp/yy/sozai/008-002-1g-13g.htm
https://www.silicone.jp/products/type/oil/detail/about/index.shtml
https://www.marutsu.co.jp/contents/shop/marutsu/datasheet/KF9650CS1_3053__SDS.pdf
https://www.silicone.jp/catalog/pdf/kf96_j.pdf

微生物資材

微生物資材とは

微生物資材とは、微生物を高濃度で含む粉末または液体です。

微生物は、植物が光合成で生み出す有機物を無機物に変える役割を果たしています。微生物基材を活用することで、この微生物の力を様々な分野で応用可能です。

微生物資材には、生きた微生物だけでなく、微生物を吸着させるための基材や、微生物を活性化するための栄養素も含まれます。各微生物は異なる特徴を持つため、適切な微生物資材の選択が重要です。

微生物資材の使用用途

1. 土壌

土壌用の資材には、農業用と汚染土壌浄化用のものが一般的に利用されています。農業用資材には、様々な種類が存在し、用途や土壌環境にあわせて適切な効果を持つ資材の選択が必要です。

例えば、土壌の微生物環境を改善し、窒素を蓄える性質を持つ根粒菌を活性させる効果がある資材や、同じ作物を植え続けることで発症する連作障害を軽減させる効果を持つ微生物資材などがあります。

汚染土壌浄化用資材は、土壌の生態系の有益な微生物を活性化させる効果を持つことから、工業地帯の土壌改良などに役立っています。

2. 水質

水用の資材は、下水や産業廃水の浄化などに用いられています。化学工場の廃水や、レストランの厨房から出る廃水の処理にも利用されています。

3. 大気

大気用の資材としては、微生物脱臭剤や微生物消臭剤があります。これらは食品工場、ごみ処理場、下水処理施設などで使用され、臭いの軽減に効果的です。

また、大気汚染物質の1つであるNOx (窒素酸化物) を分解する微生物を使用した温室効果ガス削減用微生物資材なども販売されています。

4. その他

その他にも、生ごみ処理用の資材や堆肥化促進資材、水産養殖用水質改良微生物資材などの微生物資材が販売・利用されています。

微生物資材の特徴

微生物資材には、多様な用途に応じた機能性、持続可能性、生分解性があることが特徴です。微生物は石油原料と異なり、持続可能な資源の1つです。また、 微生物資材の多くは生分解可能であり、廃棄する際の環境負荷が低く、プラスチック代替品としての利用において重要な特徴を持ちます。

さらに、微生物資材は遺伝子工学技術を用いて性能をカスタマイズできるため、特定の要件に合わせて資材を設計・生産可能です。

微生物資材のその他情報

1. 製造方法

まず初めに、様々な微生物を収集し、その中から有用な微生物を選別します。次に選択した微生物を専用の培養装置で培養し、増殖した後、遠心分離などで分離・収集します。

分離、収集した微生物は、液体資材として使用するか、微生物を基材に吸着させて資材として使用可能です。基材の選択は、微生物の成長に影響を与えるため重要です。

最後に、微生物資材が目的の微生物を含んでいるか、実際の使用で効果があるかを評価します。

2. 産業利用の課題

微生物資材が利用される環境は多様であり、特定の環境で効果を発揮する微生物にとっては、使用条件の確保が実質的に難しい場合があります。

例えば土壌改良のために微生物資材を利用する場合、バックホウと呼ばれる機械で土壌を混合、撹拌する作業を数日おきに行う必要があり、大きな労力がかかります。

また、微生物資材が在来微生物と競合する可能性があり、在来微生物の繁殖能力が高い場合、微生物資材は本来の能力を発揮できない可能性も考えられます。

3. 品質

一般的に、微生物を長期に渡って保存する場合は、冷凍もしくは乾燥させる方法が用いられます。微生物資材は、使用条件が微生物に依存するため、使用前に環境条件や微生物の特性調査が必要です。

現状、市販の微生物資材の一部では、保管や復元方法が十分に検討されておらず、十分な効果を発揮できない商品も存在しています。また、微生物の機能が製造過程で失われる可能性や日本においては微生物資材に関する法制度が不明瞭で市場も小規模であるという課題が存在します。

参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/shigentosozai/122/1/122_1_1/_pdf

クリーンルーム用掃除機

クリーンルーム用掃除機とは

クリーンルーム用掃除機のイメージ

図1. クリーンルーム用掃除機のイメージ

クリーンルーム用掃除機 (英: Clean Room Vacuum Cleaners) とは、各分野で使用されているクリーンルーム内部において使用されている専用の掃除機です。

クリーンルームは高度に清浄な環境であることから、通常の掃除機よりも特殊な超高性能フィルターなどが搭載されています。一般の掃除機に比べて、排気が清浄であることや、粉塵を巻き上げない構造になっていることなどが特徴です。

クリーンルーム用掃除機の使用用途

医療関係、精密機器関連施設など、清浄な環境に対する需要が増加しており、現在ではクリーンルームは多くの分野で使われている設備です。具体例には、食品や工業製品の工場、研究、実験施設、病院や医療関係、半導体素子、集積回路など精密機械の製造工場、コンピューター関連施設、バイオテクノロジー研究所、原子力発電所などがあります。

クリーンルーム用掃除機は、これらのクリーンルームにおいて使われます。その他にも人の集まる施設で衛生管理のために使われることもあり、興行場、集会場、図書館、博物館、美術館、旅館などの使用施設があります。

代表的な使用例は以下の通りです。

  • 成形機室クリーンルームの清掃
  • 乾燥機室クリーンルームの清掃
  • 半導体製造装置組立工場、検査、試験工程に使われるクリーンルームの清掃
  • CPC・臨床試験室などのクリーンルーム清掃
  • 医療器具製造工場
  • 包装室クリーンルームの清掃
  • 食品工場の清掃
  • プログラミング保守室、磁気テープカード保管室、光ディスク保管室の清掃

クリーンルーム用掃除機の原理

クリーンルーム用掃除機も、基本的には掃除機の一種であるため一般の所謂バキュームクリーナと同じ構造をしています。ほこりが含まれた空気が入ってくる空気吸入口、ほこりをキャッチし浄化された風だけを通すフィルター素材の紙パック、そしてモーター回転を通じて弱い水準の真空状態を作り出す送風装置部分に分けられます。

1. 吸気・捕集フィルター機構

クリーンルーム用掃除機に使用されているHEPAフィルターのイメージ

図2. クリーンルーム用掃除機に使用されているHEPAフィルターのイメージ

クリーンルーム用掃除機が一般の真空掃除機と大きく異なっている点は、高性能なフィルターや高密度紙パックなどにあります。クリーンルーム用掃除機で採用されているフィルターは、微粉じん、バクテリア、カビ胞子など、あらゆる微粒子を高精度で捕集することが可能です。

具体的には、吸入フィルターは、ULPA (ウルパ) フィルター、HEPAフィルタなどが用いられます。ULPAフィルターとは、0.15μmの粒子を99.9995%捕集できるフィルターであり、HEPAフィルターとは0.3μmの粒子を99.97%捕集できるフィルターです。

これらのフィルターは主に直径1~10 µm以下のガラス繊維でできています。ULPAフィルターの欠点は、濾材密度が高く、空気抵抗を減らすために薄くなっているため、HEPAフィルターよりも強度は弱いことです。製品によって、3段階濾過フィルター構造を使用しているもの、紙パックに極細強力帯電層を採用してごみがごみを引き寄せて立体的に捕集する3種3層構造としているものなど様々な工夫が見られます。

2. 排気

クリーンルーム用掃除機のフィルターに使用されるナノチタンのイメージ

図3. クリーンルーム用掃除機のフィルターに使用されるナノチタンのイメージ

クリーンルーム用掃除機では、清浄空間で使用されることから、排出される空気もきれいな状態で排出させることが必要であり、高性能な排気フィルターを採用しています。中には、排気フィルターにはナノチタンを使って除菌や消臭効果を上昇させた製品もあります。

ナノチタンは、従来触媒の約1/200の大きさであり、ニオイの原因となる分子を効率よく捕捉する効果のある物質です。多くの製品で、低風速排気システムを採用しており、床面などのホコリが舞い上がらないような構造になっています。

クリーンルーム用掃除機の種類

クリーンルーム用掃除機には、乾式の他、液体も吸引することができる乾湿両用などの種類もあります。乾湿両用では、モーター保護機能、水位計、排水ドレンバルブ、特殊コーティング撥水フィルターなどの機能が搭載されています。ただし、液体のみを大量に吸引する場合、ドラムアダプターの併用などが推奨です。

エアー駆動タイプ、水銀回収、液体・酸回収ユニットなどの様々なタイプがあり、また加圧滅菌処理可能な回収タンクや筐体及びツールキットなどのオプション品が豊富な機種もあります。大きさ・容量等も含め、多様な製品が展開されているため、用途に合わせたものを適切に選択することが必要です。

参考文献
https://www.hitachi-ies.co.jp/products/cln/gyomu/cvg104c.htm#cvg12ct
http://www.c-w-d.jp/
https://www.webshiro.com/syouhinsetumei/as100m.htm