ブラスト装置

ブラスト装置とは

ブラスト装置とは、製品や素材にブラスト処理と呼ばれる表面処理を行う装置です。

ブラスト処理は、金属などの製品や素材に、鉄や砂などの固く細かな粒子状の研磨材を高速で投射し、被加工物の表面に打ち付けることによって、削ったり細かな凹凸を付ける処理を行ったりする加工を指します。

ブラスト処理にはいつかの種類があり、これに伴いブラスト装置も複数種類存在します。代表的なブラスト処理は、サンドブラスト、ショットブラスト、グリットブラストなどです。

ブラスト装置の使用用途

ブラスト装置は、表面の仕上げ加工を行う際に使用されます。具体的な使用用途として、以下が挙げられます。

1. 研磨

被加工物を研磨し、表面仕上げやバリ取りを行います。投射させる研磨材を変えることで、鏡面にしたり梨地加工を施したりできます。

2. サビ取り

金属の表面に発生するサビを瞬時に除去することができます。ブラスト処理は物理加工のため、鉄に限らずアルミや銅のサビ取りも可能です。

3. ショットピーニング

研磨材を被加工金属の表面に衝突させることで、圧縮残留応力が作用し、金属の表面をより硬化させることができます。耐摩耗性や疲労強度が向上に繋がります。

4. 塗装の剥離

研磨材を投射し、被加工物の表面を研磨することで塗装を剥離できます。ブラスト処理は手作業でも行えますが、量が多かったり、大型だったりする場合は、ブラスト装置によってブラスト処理を行うのが一般的です。

 

ブラスト処理の方法以外にも、ブラスト処理する対象や処理数により、ブラスト装置にはテーブル式、ハンガー式、ドラム式、レール式など多くの種類があります。そのため、対象により最適なブラスト装置を選択することが大切です。

ブラスト装置の原理

1.サンドブラスト(エアーブラスト)装置

サンドブラスト装置は、高圧の圧縮エアーを使用して研掃材 (珪砂やガラス粒など) を投射して、サンドブラスト処理を行います。通常、投射した研掃材はブラスト処理する対象に衝突した後、集塵機によって回収され再び研掃材として使用されます。

回収される途中で、ブラスト処理する対象から削られたゴミなどの粉末と分離されるのが一般的です。

2. ショットブラスト装置

ショットブラスト装置は、羽根車を持った投射機を高速で回転させることにより発生する遠心力で、研掃材を投射せさます。ショットブラスト装置で使用する研掃材は、鉄やステンレス、亜鉛など固く比重が大きいものを高速で投射する必要があります。

そのため、ショットブラスト装置はこの様な機構が必要です。また、投射される研掃材は固く重いものであることから、処理対象も鉄などの金属が多くなっています。

ブラスト装置の特徴

粒子状の研磨材を投射し、直接被加工物の表面を加工するブラスト処理には下記の特徴があります。

1. 化学成分などを使わない物理的な加工

ブラスト処理はどの方法も研磨材を投射し、物理的に被加工物の表面を研磨するため、薬品類を使用しません。

2. 均一な加工が可能

ブラスト処理は、研磨材が投射された時点でほかの外部的な力が加わることがありません。そのため、投射時の研磨材の質量や形状、速度を調整することで、被加工物の表面の仕上がりは均一になります。

また、大量の研磨材が被加工物の表面全体を研磨するので、ほかの研磨と比べ方向性のない表面に仕上げることができます。

3. 対象物の材質を選ばない

ブラスト処理はいずれの方法でも、物理加工のため材質を選ばない加工が可能です。金属を始め、ガラスや石、プラスチックや木材などさまざまな材質のものを加工できます。

フレキ

フレキとは

フレキ

フレキ (英: Flexible Tube) とは、その特有の特性により、多岐にわたる用途において広く利用される管状の製品です。

その主な特徴は、柔軟性を持ちながらも一定の耐圧性や耐久性を兼ね備えていることです。この特性は、様々な産業分野でのニーズに合わせて選定される要因となっています。

フレキの使用用途

1. 建築分野

フレキは建築分野で幅広く利用されます。空調や給排水設備、ガス供給などの配管システムにおいて、柔軟な配置と調整が必要な場面で活用されます。建物内部のレイアウトの変更や狭いスペースにも適しており、効率的な配管設置が可能です。

2. 自動車産業

自動車エンジン内部や排気系統において、フレキは重要な役割を果たしています。振動や熱膨張による変位に対応し、エンジン性能や振動の吸収に貢献し、排気ガスの効率的な排出や騒音の軽減など、自動車の性能向上に寄与します。

3. 産業機械と装置

産業機械や装置の配管において、フレキは欠かせない部品です。機械の動作に伴う振動や変位に対応し、設備内部の液体やガスの流れをスムーズに保ちます。特に可動部分の連結やガス供給など、様々な工業プロセスに適用されます。

4. 電子機器分野

フレキは電線や配線の保護に用いられます。電線の曲げや動きに対応し、断線や接触不良を防ぎます。特に移動部分のある機器や機械内部の配線で重要です。携帯電話やコンピュータ、家電製品などに広く使用されています。

5. 医療機器と医療用具

医療分野でもフレキは重要な役割を果たし、内視鏡やカテーテルなどの柔軟性と耐久性が求められる部分に適用され、手術や診断を支援します。人体内への導入や操作性の向上に貢献し、医療技術の進化に寄与しています。

フレキの原理

1. 層構造の設計

フレキは複数の層からなる構造を持つことがあります。内部の補強層や保護層が、フレキの耐圧性や耐久性を向上させる役割を果たします。この層構造によって、柔軟性と強度が両立可能です。

2. スプリング効果と螺旋構造

フレキのらせん状の構造は、スプリング効果を持ちます。このスプリング効果によって、フレキは伸縮や曲げに対応し、変位を吸収します。また、螺旋状の構造によって、内部の流体やガスの流れを円滑に保つことが可能です。

3. 膨張と収縮の制御

フレキは熱膨張や振動に対する変位を吸収する役割も担います。特に高温環境下では、材料の膨張が発生しますが、フレキの柔軟性によって変位を吸収し、設備や装置の損傷を防ぎます。

4. 接続と連結

フレキは配管や機器の部品を連結する際に使用されます。この際、フレキの柔軟性によって、振動や変位の影響を吸収し、連結部の応力を軽減します。これによって、配管や機器の長寿命化が可能です。

フレキの種類

フレキは耐圧性と柔軟性を兼ね備えるために、適切な材料で作られます。一般的には金属や合金、樹脂などが使用され、これらの材料の特性を組み合わせることで、フレキの性能が実現されます。

1. 金属フレキ

金属フレキは、ステンレス鋼や銅合金などの金属を使用して作られます。これにより、高い耐圧性と耐熱性を持ちながらも、曲げや伸縮が可能です。特に高温や高圧の環境で使用され、配管や機器の連結に広く利用されます。

2. 樹脂フレキ

樹脂フレキは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタンなどの樹脂を使用して作られます。これにより軽量でありながら柔軟性があり、腐食や電気絶縁性に優れています。水道やガスの供給管、電線の保護などに使用される製品です。

3. 合成ゴムフレキ

合成ゴムフレキは、エラストマーなどの合成ゴムを使用して作られます。これにより、柔軟性と耐久性を持ちながら、薬品や燃料に対する耐性を備えています。自動車や航空機の燃料供給管、工業用ホースなどで使用される製品です。

4. 複合材料フレキ

複合材料フレキは、異なる材料を組み合わせて作られます。例えば、金属と樹脂を組み合わせることで、金属の強度と樹脂の軽量性を兼ね備えることが可能です。これにより、特定の要件に応じたフレキが製造されます。

5. 耐熱フレキ

耐熱フレキは、高温環境で使用されるために特別に設計されたフレキです。耐熱性の高い素材や断熱材を組み込んでおり、熱膨張や熱伝導をコントロールします。鋼鉄製造や発電所などの高温プロセスで活用されます。

ピストンバルブ

ピストンバルブとはピストンバルブ

ピストンバルブとは、管内などを流れる流体(液体、気体など)の流量を調整したり完全に遮断する事を可能とする、流体の流量制御を行う流量制御バルブの一種です。

2サイクルエンジンの吸気ポートと排気ポートの関係も一種のピストンバルブと考えられ、最近の電子化で使用される機会は減っていますが、ガソリンエンジンのキャブレターもピストンバルブの原理を使用しています。

その他、金管楽器(トランペットなど)もピストンバルブにより空気の流れを変化させることによって音程を変化させています。

ピストンバルブの使用用途

原理が簡単で比較的高圧の流体の制御もできるため、多くの場所で活用されていますが、身近な場所では水洗便所のフラッシュバルブ内で水の流れを制御する部品としてピストンバルブが使用されています。フラッシュバルブでの例は、高圧の水道管に直付けされても水道水を安定して制御できるピストンバルブの特徴をよく表している使用例です。

また、工場やプラントなどの流体を流す配管の開閉操作弁もピストンバルブであることがほとんどです。プラントなどでは高温、高圧の水、油、水蒸気などの流体が使用されており、少しのトラブルでも重大な事故に結びつく現場では、ピストンバルブの様に構造が比較的簡単で高温、高圧の流体を安定して制御できるピストンバルブは重要な存在です。

ピストンバルブの原理

ピストンバルブは、細いシリンダ内でピストンが上下することにより、シリンダーに空いた穴とピストンの肩の部分の重なり部分の面積が変化し、流体の流量の制御を行います。ピストンの位置によっては、シリンダーに空いた穴がすべて塞がれる状態になり、この状況では流体の流れはすべて遮断される事になります。この様な仕組みから、高圧の流体でも比較的小さな力で、流体を制御する事が可能となっています。

すでに示したようにトランペットにもピストンバルブが使用されていますが、こちらは空気の流量を変化させるわけではありません。トランペットでは指で3つのピストンバルブを操作し、バルブの開閉を行うことで空気を流路を変化させ、空気を流す管の長さを変化させることにより、音程の変化を可能としています。

一方、ピストンバルブではフィルターや各部のパッキンなどの汚れによっては正常な動作が妨げられる可能性があるため、定期的なクリーニングが必要となります。

パンチングメタル

パンチングメタルとは

パンチングメタル

パンチングメタルとは、鋼板 (ステンレス鋼板、アルミめっき鋼板など) ・アルミ板・銅板などにパンチング加工用の金型により穴をあけた金属板のことです。

パンチング加工とは、板状の材料に穴をあける方法の一種です。パンチングメタルには規則的に配列された穴を開けるため、専用の金型を用いることにより加工時間を短縮できます。

パンチングメタルは人が触れられないようにするために安全用の遮蔽材や、デザイン性を求めるオブジェや照明などに使用されます。

パンチングメタルの使用用途

パンチングメタルは板状のまま使用するだけでなく、様々な加工を行うことでより広い用途に使用可能です。使用例は下記の通りです。

1. 自動車部品

排気マフラー、エアフィルタオイルフィルタ、ラジエーターカバー、フロントグリル (自動車の正面の格子状の部分) など

2. 建築材料

建築物の外装、建築物の内装 (エレベーター・階段の手すり・サンルームの屋根など) 、天井材、排気トップ

3. プラント関係

発電所や石油・ガス・化学製品の精製などに使用するストレーナ、通気口、階段、フェンス

4. 遠心分離機

食品や化学、薬品開発などに使用する遠心分離機など

5. 電子機器

スピーカー、電子機器の収納箱、エアコンのフィルター、照明器具のカバー

6. 家具

椅子、テーブルの脚、椅子の背もたれ、ベッドのフレーム
住宅・家電製品、キッチンや浴室の排水口、電子レンジの扉 (電波漏れ防止用) 、食器洗い機の排水口

7. その他

給排水管のフィルター、自動販売機の金属棚、航空機のエンジンカバー、防音素材、空気や水の濾過材など

パンチングメタルの原理

規則正しく多数の穴が空いた金属板などを必要とする製品を中心とし、パンチングメタルは広く様々な用途に使用されています。

また、板に開ける穴は丸穴が一般的ですが、角穴や長丸穴などの加工を行うことも可能です。このため、パンチングメタルは実用品だけではなく、装飾品などにも使用されます。例えば、パンチングメタルを円筒状へ加工することや、パンチングメタルを曲げ加工し、箱型に組み立てる事も可能です。

パンチングメタルは、パンチ(凸型)及びダイ(凹型)と呼ぶ金型を使用し、これらの金型を使用して板状の金属に多数の穴などをうち抜くことで加工を行います。パンチングメタルの加工は他の加工方法と比較して、金属板に対して規則正しい配位の多数の穴を短時間で加工することが可能です。

パンチングメタルを製造するプレス機としては、タレットパンチプレスと呼ばれるプレス機を使用することが一般的で、現在では金属板の加工手順をプログラム化し自動制御することが可能となっています。

パンチングメタルの性質

パンチングメタルの性質は下記の通りです。

1. 強度

金属シートに穴が開けられた構造のため、要求される金属シートの強度を確保しながら軽量化できます。また、穴は均等に配列されているので、応力分散が均一になり、応力集中が起こりにくくなります。建築産業や自動車産業などで使用されるパンチングメタルは、強度が高く剛性があります。

2. 通気性

多数の穴が開けられていて通気性が高く、風や空気がパンチングメタルの穴を自由に通過できるため、建築・排気システム・音響制御などに使用されています。通気性が高いため、湿度の上昇やカビの発生を抑えられます。

3. 軽量

パンチングメタルは金属シートに穴が開けられた構造を持っているため、同じ外形サイズかつ同一材料の金属シートよりも軽量です。建築産業や自動車産業では、パンチングメタルを使うことで構造物や車両の重量を軽くできます。軽量であり取り扱いが容易であるので、施工コストを削減できます。

4. 耐久性

パンチングメタルは金属製であるため、耐久性が高く屋外環境に耐えることができます。空気・水・雪などはパンチングメタルの穴を通過できるため、蓄積された雪や水によって金属シートが損傷しません。そのため建築物や屋外設備などでの使用に適しています。

5. 視認性

様々な穴のパターンや形状があるため、建築物や家具などで様々なデザインを表現できます。穴のサイズ・穴の配置・穴の形状などを工夫することで、多種多様なパターンの模様を作り出せます。

6. 熱伝導性

パンチングメタルは、金属製であるため熱伝導性が高いのが特長であり、熱交換器や加熱装置などで活用されています。熱伝導性が高いため、放熱板としても使用できます。

パンチングメタルのその他情報

1. 穴の形状

パンチングメタルの穴の形状は丸穴が一般的ですが、角穴や長丸穴に加工することも可能です。そのため実用品だけではなく、装飾品などにも使用されます。

2. 製造方法

パンチングメタルを製造する際は、パンチ (凸型) 及びダイ (凹型) と呼ぶ金型を使用し、板状の金属に多数の穴などを打ち抜きます。パンチングメタルを製造するプレス機としては、タレットパンチプレスと呼ばれるプレス機を使用することが一般的で、現在では金属板の加工手順をプログラム化し自動制御することが可能となっています。

3. タレットパンチプレス

タレットパンチプレスとは、形状の異なった金型をタレットと呼ばれる円状の金型ホルダーに固定し、NC制御によって金属板に穴をあけるプレス機のことです。NC制御は、数値制御の一種であり、コンピュータによって機械やロボットの動きを制御する技術です。NCはNumerical Controlの略称で、数値的な指示に基づいて機械を動かす方法を意味します。

電子部品洗浄剤

電子部品洗浄剤とは

電子機器などで使用する実装基板上に残ったフラックスを洗浄除去するための洗浄剤が電子部品洗浄剤です。フラックス洗浄剤とも呼ばれます。

また、自動車などのハーネスやコネクタ、センサーなどの汚れやすい電子機器の清掃を目的とした接点洗浄剤を指す事もあります。これらは、整備工場などでも手軽に使用できるようにスプレー式であることも多いです。接点復活剤とは異なり油分を含まないので、基本的にはプラスチックを侵さず、後処理も手がかからないのが特徴です。

電子部品洗浄剤の使用用途

電子機器などで使用するプリント基板へ基盤実装(電子部品をはんだ付けすること)した際に、基板上にフラックス(融剤)が残る可能性があります。基板上に残ったフラックスが電子機器に対し悪影響を与える可能性があるため、フラックスを洗浄除去する必要があり、このフラックスを除去するために使用する洗浄剤が電子部品洗浄剤です。

プリント基板や基板上に実装される電子部品は非常にデリケートなため、電子部品洗浄剤にはこれら電子部品を傷めない原料が使用されています。ただし、電子部品洗浄剤には多くの種類が存在するため、電子部品洗浄剤を使用する際には、各部品メーカーに適合する電子部品洗浄剤を確認することが必要です。

電子部品洗浄剤の原理

以前は電子部品洗浄剤として特定フロンCFC(クロロフルオロカーボン)が使用されていましたが、オゾン層を破壊する物質としてモントリオール議定書で規制の対象とされ、現在は使用が禁止されています。その後、CFCの代替として代替フロン(HCFC/HCFC)が使用されていますが、今後HCFCは使用禁止、HFCは使用量削減が予定されています。

フロン系以外の洗浄剤としては、グリコールエーテル系洗浄剤や準水系洗浄剤、非ハロゲン系洗浄剤などがあります。
準水系は引火性がなく非危険物なので安全に使用でき、水に溶けるためにすすぎが簡単なため、電子部品洗浄剤としての使用量が増えています。

一方、洗浄の必要のない無洗浄ハンダも開発されています。これら無洗浄ハンダを使用した場合は、フラックスは透明に近く非腐食性です。このため、無洗浄はんだを使用している場合には、基本的には電子部品洗浄剤を使用したフラックス除去を行う必要はありません。

ミリ波レーダー

ミリ波レーダーとは

ミリ波レーダー

ミリ波レーダーとは、ミリ波(波長:1mm~10mm/周波数:30GHz~300GHz)の電波を使用して、対象物の距離、位置情報、相対速度を検知できるレーダーです。

一般に距離を検知するセンサには、ミリ波レーダーの他にLiDAR、超音波、ステレオカメラなどが挙げられます。ミリ波レーダーのメリットは、150m以上の検出距離ができる。太陽光の影響を受けない、雨や霧での影響を受けないなどです。デメリットは、段ボールや発泡スチロールのように電波の反射率の低いものの検知がしづらい点です。

ミリ波レーダーの使用用途

ミリ波レーダーの使用用途は、自動車、産業機械、ドローンなどに使われています。特に安全装置として自動車に使用されることが多いです。

現在自動車で普及している安全装置が、ADAS(Advanced Driver-Assistance Systems:先進運転支援システム)です。ADASの機能のアダプティブクルーズコントロールや衝突被害軽減ブレーキには、76GHz帯域のミリ波レーダーを使い、前方の検出を行っております。より分解能の高く精度向上のために今後は79GHz帯に移行していくでしょう。

さらに、ブラインドスポットモニターでは、24GHz帯が使われています。自動運転車両が本格的に開発されると、ミリ波レーダーもさらに活用されていくはずです。

ミリ波レーダーの原理

ミリ波レーダーの構成部品は、主に送信電波を処理するシンセサイザ、電波を送信するTxアンテナ、反射電波を受信するRxアンテナ、受信信号を処理するCPUです。

ミリ波レーダーの原理は、レーダーからシンセサイザで処理をした電波をTxアンテナで送信して、対象物から反射された電波をRxアンテナで受信し、CPUで処理を行い、距離などを計測します。

距離速度の計測の方法には、主にパルス方式とFMCW方式があります。角度の計測の方法は、主に電子スキャン方式となります。

1. パルス方式

直進性の高いミリ波帯の電波をパルス状にして送信して、対象物から反射された電波が戻ってくるまでの時間より距離を算出する方式です。

2. FMCW方式

周波数を時間とともに変化させた電波を送信して、送信信号と対象物から反射された信号を干渉させて発生するビート周波数(周波数差)から距離を算出する方式です。

3. 電子スキャン方式

複数のRxアンテナを使い、各アンテナ間の位相差を検出します。その位相差から測定物の角度を算出可能です。

ミリ波レーダーのその他情報

1. ミリ波レーダーの精度

ミリ波レーダーは短い波長を周囲に拡散させるので、周辺の障害物、対象物を高い精度で検出することが出来ます。物体に対する分解能が高く、対象物がどのような形か、どのように移動したか(変化したのか)を0.1mm単位で検出することが出来ます。

物体検出できる距離に関しても、赤外線レーザーや超音波レーザーよりも優位性を持っています。赤外線レーザーや超音波レーザーの検出可能距離は20m程度、超音波レーザーは1m程度ですがミリ波レーダーは150m離れた物体も検出可能です。

ミリ波レーダーは悪環境下でも精度を高く保つことが出来ます。赤外線や超音波レーザーが周囲の温度変化などにより精度にバラツキが出る一方で、ミリ波レーダーは電波センサーであるため直進性が高く環境に左右されずに安定的に物体検出が出来ます。

2. ミリ波レーダーによる電波干渉

将来的に、車の自動運転が普及した場合、ミリ波レーダーの高密度環境での使用頻度が増え、レーダー間の電波干渉が懸念されます。

電波干渉が起きるとミリ波レーダーによるターゲットの検出に支障をきたし誤検出をしてしまう可能性があり、それは重大な交通事故になりかねません。ミリ波レーダーが高い距離分解能を発揮するには車1台に対してレーダーに割り当てられた3〜4GHzの周波数をすべて使わなければなりません。これを回避するための技術開発が不可欠です。

3. ミリ波レーダーの弱点

ミリ波レーダーが悪環境下でも安定的に対象物に対する測距が容易であることは先に述べた通りですが、一方で検出を苦手とする対象物が存在します。

それは比較的小さな物体の検知であり、ダンボールなど電波に対する反射率の低い物体の検知です。対象物までの距離で考えると、遠距離の物体の検知は得意とする一方で近距離のものを検知しにくいという特性も持っています。

ただし、ミリ波レーダーは現在も開発が進められており、今後の技術進化によっては上記の弱点を解消できるレーダーが開発される可能性があります。

4. ミリ波レーダーの今後の技術動向

自動運転に必要なセンサーとして、これまではその認識の解像度に優れたLiDAR(Light Detection and Ranging)が主役でしたが、レーダー技術の革新により、LiDARに近い認識の解像度が引き出せるようになってきています。その技術を牽引するキーワードは、半導体微細加工技術の進展、周波数帯域幅の拡大や、およびビームフォーミングなどのアンテナ技術の進化です。

半導体微細加工技術の進展
CMOS微細化技術の進展により、より小型かつ安価なミリ波信号処理ICを活用できるだけではありません。アナログの究極技術であるミリ波帯域の高周波回路技術とデジタル技術を駆使して高効率なビーム成型を図るデジタルビームフォーミング技術は、現在様々な企業や研究機関にて、盛んに開発されている状況です。

周波数帯域幅の拡大
これは何といっても昨今の76GHzから81GHzの5GHz帯域の確保が重要な項目です。周波数帯域幅の増加は、そのままレーダー距離の拡大に寄与できます。近い将来に周波数帯域もD-bandでの136GHz~148.5GHzの連続した12.5GHz幅がレーダーに利用できると言われていますので、ますますミリ波レーダー技術は重要になります。

アンテナ技術の進化
アンテナ技術の進展、特にアレイアンテナ技術や超小型低損失なアレイアンテナ集積モジュール技術の進化が重要です。これによりミリ波レーダーの高出力かつ高効率化が可能になるでしょう。

参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/oubutsu1932/71/3/71_3_302/_pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/bplus/12/3/12_234/_pdf/-char/ja
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https://www.hitachi-solutions-create.co.jp/column/technology/millimeter-wave-radar.html
https://www.macnica.co.jp/business/semiconductor/articles/texas_instruments/128213/
https://www.macnica.co.jp/business/semiconductor/articles/infineon/127045/

ワイヤカット放電加工機

ワイヤカット放電加工機とは

ワイヤカット放電加工機とは、精密な金属加工を可能にする革新的な機械のことです。

極細のワイヤーに電気を流し、導電性のある工作物を溶かしながら放電加工を行います。ワイヤカット放電加工機はワイヤー放電加工機とも呼ばれます。

加工可能な素材は、導電性のあるものであれば幅広く対応できますが、加工法は貫通のみに限られています。また、熱によって溶けた部分は変質層となり、特性が変わることに注意が必要です。

ワイヤカット放電加工機は、その高精度で極めて複雑な形状の加工が可能であり、自動車や航空機の部品、電子機器など幅広い分野で活用されています。従来の切削加工では難しかった部分の加工も可能にし、製品開発や研究開発の効率向上に大きく貢献しています。

ワイヤカット放電加工機の使用用途

ワイヤカット放電加工機の使用用途は、多岐にわたります。金型や歯車、治具など、高度な技術が求められる加工分野で重宝されています。ワイヤカット放電加工機、導電性のある素材であれば、鋼板やステンレス板、アルミ板、真鍮などの薄板金属から、加工が困難な薄い材質、さらには超硬素材のような硬い金属まで、幅広く対応可能です。

また、ワイヤ電極を利用して非接触加工を行うため、電極が工作物に触れることなく放電させ、切削加工では困難な金属でも容易に加工できるという利点があります。自動車や航空機の部品、精密機器の製造など、さまざまな分野で活用されています。また、従来の切削加工では対応が難しかった部分や繊細な形状の加工も可能となり、製品開発や研究開発の効率向上に貢献しています。

ワイヤカット放電加工機の原理

ワイヤカット放電加工機は、非接触かつ自動運転で高精度な金属加工が可能な点が特徴です。加工を開始するにあたって、まず工作物に穴を開けてワイヤーを通し、その後予め入力されたNCデータに従って、工作物がXY方向に平面移動し、カットされる仕組みです。

カットを行う際には、加工液と呼ばれる誘導体の液体を使用します。水や油が主に用いられていますが、取り扱いが容易で火災の心配がなく、夜間の放置運転や加工粉の除去、熱の冷却が可能なため、水を使用する機会が増えています。

水を加工液とする機械は、吹き掛け方式 (かけ流し) と浸透方式 (ドブ漬け方式) の2種類です。水が途切れずに安定して加工できる点から、浸透方式が主流となっています。

ワイヤカット放電加工機の種類

ワイヤカット放電加工機は主にマニュアルワイヤカット放電加工機、NCワイヤカット放電加工機、CNCワイヤカット放電加工機、サブマージワイヤカット放電加工機、フラッシュカット放電加工機の5種類があります。

1. マニュアルワイヤカット放電加工機

マニュアルワイヤカット放電加工機は、操作が手動で行われるタイプの機械です。主に簡単な形状の加工や、少量生産に適しています。初期投資が低く、操作もシンプルなため、小規模な工場や研究施設で利用されることが多い点が特徴です。

2. NCワイヤカット放電加工機

NCワイヤカット放電加工機は、数値制御 (NC) によって自動で加工が行われるタイプの機械です。複雑な形状や精密な加工が可能で、生産性も高いため、中・大規模な生産ラインで活用されます。

3. CNCワイヤカット放電加工機

CNCワイヤカット放電加工機は、コンピューター数値制御 (CNC) によって加工が行われる最も一般的なタイプです。高度なプログラミングが可能で、複雑な形状や多様な素材の加工が容易に行えます。自動車や航空機の部品製造など、多くの分野で幅広く利用されています。

4. サブマージワイヤカット放電加工機

サブマージワイヤカット放電加工機は、加工液に浸透させた状態で加工を行うタイプの機械です。加工液が途切れず安定した放電加工が可能で、高い精度と仕上がり品質が得られるため、主流となっています。

5. フラッシュカット放電加工機

フラッシュカット放電加工機は、高速かつ短時間での加工が可能なタイプです。従来の放電加工に比べて加工時間が大幅に短縮されるため、生産効率を向上させることが可能です。

ただし、加工精度や仕上がり品質には若干の制約があるため、用途によって選択する必要があります。

参考文献
http://www.bk83.com/bankin/bankinf05.html

フライス加工

フライス加工とは

フライス加工

フライス加工 (英: Milling) とは、工具を回転させて対象物を削る切削加工の1つです。

複数の刃がついた円筒状のフライス工具を高速で回転させ、テーブルに固定した工作対象物 (金属、樹脂、ゴムなど) を削り、ミーリング加工とも呼ばれまていす。「フライス」はドイツ語やフランス語、オランダ語が由来で英語ではミーリングカッタ (英: Milling cutter) とも呼ばれます。

フライス盤という工作機械に、工具と削りたい工作対象物をセットし、工具とテーブルを上下左右、前後に動かすことによって加工を行います。

フライス盤とフライス工具には様々な種類があり、削り出したい形状によって使い分けることで、モノの平面・側面や溝の加工、穴開けなど、多様な加工ができるのが特徴です。

フライス加工の使用用途

図面に対して高精度で形状を削り出せることから、高い寸法精度が求められる歯車や金型、精密機械部品などに使われます。

フライス加工の種類

フライス加工は主に以下の5種類です。

1. 平面切削加工

固定した工作対象物の平面を削る加工です。正面フライス、平フライス、エンドミルを主に使います。高精度に広い面積を加工したい場合には正面フライスを、精度を求めない荒い加工や中仕上げをしたい場合には平フライスを、小さい面積の加工や複雑な加工の場合にはエンドミルが使われます。

2. 側面切削加工

テーブルに固定した工作対象物の側面を削る加工です。正面フライス、側フライス、エンドミルを主に使います。横型のフライス盤では正面フライス、側フライスを、立型のフライス盤ではエンドミルを使います。

3. 段差加工

固定した工作対象物の平面から、一段掘り下げて削る加工です。正面フライスや側フライス、エンドミルを主に使います。段差の面積が広い場合や、段差が低い場合は、正面フライスを、面積が狭い場合や、段差が高い場合は側フライスやエンドミルを主に使います。

4. 溝加工

工作対象物の平面に溝を削る加工です。指定された深さまで削り、その後テーブルを前後左右に移動させることで、溝を削り出します。溝の形状としては、ただの溝だけではなく、次のような種類があります。

  • T溝: アルファベットのTを逆にしたような溝
  • アリ溝: 台形のように底部に向かって広がった溝
  • ポケット: 平面につけた凹み
  • スリット: 細く深い溝
  • キー溝: 機械部品をはめるための溝

フライス工具としては、エンドミル、T溝フライス、アリ溝フライス、メタルソー、すり割りフライスを使います。T溝を削る際には、エンドミルと合わせてT溝フライスを、アリ溝を削る際にはアリ溝フライスを、スリットにはメタルソーやすり割りフライスを使います。

溝加工について詳しくみる 

5. 穴加工

穴加工には、ドリル工具を使って穴をあける「穴あけ加工」と、穴あけ加工でできた穴を広げる「中ぐり加工」があります。フライス盤や、エンドミルが用いられます。

穴あけ加工にはドリルやエンドミルが、中ぐり加工や精度が必要な穴あけを行う際にはエンドミルを使うのが一般的です。

フライス加工に用いる工具の種類

フライス加工に用いるフライス工具は、主に高速度鋼や超硬合金で作られており、フライス盤への取り付け方によって次の2種類に大別されます。

  • ボアタイプ:工具の中心に穴があるタイプ
  • シャンクタイプ:棒状のタイプ

フライス工具は「削る形状」や「用途」によって次の7種類に分類されます。

1. 正面フライス

正面フライス (英: Facemill) は、工具先端に円状の刃物がついたボアタイプのフライス工具です。正面フライスの特徴は、広い面積の加工が高精度かつ、効率的に行える点です。一方で、狭い面積の加工には向いていません。

主に正面フライスは主に立型のフライス盤で平面を削る際によく使われ、刃物の先端のチップを交換すれば何度も使えるのも特徴の1つです。

2. 平フライス

平フライス (英: Plane milling) は、工具先端部分の円筒の外周に刃物がついたボアタイプのフライス工具です。平フライスは主に横型のフライス盤で使われます。

正面切削の効率が良く、正面フライスよりも作業スピードが早いのが特徴です。一方で、正面フライスに比べて加工精度が落ちるので、精度を求めない荒い加工や中仕上げなどでよく使います。

3. エンドミル

エンドミル (英: Endmill) は細長いドリルのような、シャンクタイプのフライス工具です。エンドミルは唯一フライス加工全てに対応できる万能さが特徴ですが、切削効率が悪いため切削面積が小さい場合や複雑な加工を行う際によく使われます。

刃先の枚数や、刃物の形状の違いにより、次のように様々な種類があります。

  • 2枚刃エンドミル
  • 3枚刃エンドミル
  • 多刃エンドミル
  • テーパーエンドミル
  • ボールエンドミル
  • スクエアエンドミル

4. 側フライス

側フライス (英: Side milling cutter) は、工具先端部分の円盤の外周と側面に刃物がついたボアタイプのフライス工具です。刃物の種類としては「普通刃」「荒刃」「千鳥刃」などがあり、用途によって使い分けます。主に溝加工や側面切削加工によく使われます。

5. 角フライス

角フライス (英: Angle milling) は、工具先端部分の円盤の外周に角度のついた刃物を持つ、ボアタイプのフライス工具です。横型フライス盤ではV溝加工に、立型フライス盤ではアリ溝加工によく使われます。

6. ドリル

ドリル (英: Drill) は、工具先端に刃物がついた、シャンクタイプのフライス工具です。エンドミルとよく似た形状ですが、エンドミルと違ってドリル側面に刃物がなく、側面で加工することができません。穴開け加工に特化しているのが特徴です。

7. 溝フライス

溝フライス (英: Slotting milling cutter) は、工具先端部の外周に刃物がついたボアタイプのフライス工具です。溝加工に特化しているのが特徴です。次のように溝の形状によって、様々な種類の工具を使い分けます。

  • 溝、ポケット: エンドミル、側フライス
  • T溝加工: T溝フライス
  • アリ溝加工: アリ溝フライス
  • ヘリカル加工: エンドミル
  • キー溝加工: エンドミル、溝フライス
  • 半月キー溝加工: 半月キー溝フライス
  • スリット加工: メタルソー、すり割りフライス

フライス加工に用いるフライス盤の種類

フライス加工に用いるフライス盤には、次の6種類があります。「工具を取り付ける向き」と、「移動方向の向き」「制御方法」がそれぞれ違う点です。

1. 立型フライス盤

地面に対して工具が垂直に取り付いているタイプのフライス盤です。平面加工やR面加工などに使うことが多いです。工具とテーブルがどう移動するかによって、次の3種類に分類されます。

  • ベッド型:テーブルと工具が両方動くタイプ
  • ヒザ型:テーブルだけがタイプ
  • ラム型:ベッド型のフライス盤の中で、工具が前後に動くタイプ

ヒザ型は目線の高さで加工できる視認性の良さが特徴で、軽い素材の加工や、加工と測定を何度も行う場合などに適しています。一方で、ベッド型は何度も使用することによる寸法変化が起きにくく、大量にモノを生産するのに適しています。

2. 横型フライス盤

地面に対して工具が水平に取り付いているタイプのフライス盤です。フライス加工時の切くずがそのまま下に落ちやすい構造になっているので、切削効率が良いのが特徴です。溝加工や、深い穴あけ加工、板状の素材の側面加工、切断加工などによく使われます。

3. 万能フライス盤

テーブルが水平方向に回転でき、立型と横型に機能を備えたタイプのフライス盤です。立型と横型両方の加工が1台で行える他、歯車やドリルなどの複雑な加工が可能なのが特徴です。

4. 卓上フライス盤

卓上サイズの小さいフライス盤です。家庭でDIYなどによく使われ、ほとんどの機種が立型です。

5. NCフライス盤・CNCフライス盤

数値制御により自動で加工が行えるフライス盤です。

工具やテーブルの動きを数値化して制御し、加工を行うため、精度のバラつきが少ないのが特徴です。NCフライス盤にコンピューター制御がプラスされ、コンピューターとプログラムによって加工を制御できるCNCフライス盤というものもあります。自動で加工できるので、作業者が常に見てなくても良いというメリットもありますが、操作方法の習得やプログラムの開発に時間がかかるのがデメリットです。

NCフライス盤とCNCフライス盤には、次のような種類があります。

  • 立型NCフライス盤
  • 横型NCフライス盤
  • 卓上NCフライス盤

6. マシニングセンタ

NC・CNCフライス盤に自動で工具を交換する機能がプラスされたのが、マシニングセンタです。縦横上下だけではなく、回転などを加えた5軸で位置制御できるマシニングセンタもあり、より複雑な形状を削り出すことが可能です。

プログラムさえ組めば作業者が一切触れることなく自動で加工できる一方で、コストの高さや、操作方法の習得とプログラム開発に時間がかかる点がデメリットと言えます。

マシニングセンタには、次のような種類があります。

フライス加工と旋盤加工の違い

切削加工において、フライス加工と混同されがちなのが旋盤加工です。どちらも回転を利用して工作対象物を削る切削加工ですが、その違いは「回転するもの」と、「加工の断続性」にあります。

旋盤加工は、工作対象物を回転させ、固定した工具に当てることで削りますが、フライス加工は工具を回転させ、固定した工作対象物に当てることで削ります。旋盤加工では工作対象物と固定した工具は常に接触 (連続切削) していますが、フライス加工では固定した工作対象物と工具が接触と非接触を繰り返す点 (断続切削) が特徴です。

参考文献
https://www.keyence.co.jp/ss/products/measure-sys/machining/cutting/type.jsp
https://monoist.atmarkit.co.jp/mn/articles/2002/25/news005.html
https://www.kousakukikai.tech/milling-work/
https://d-engineer.com/kikaikakou/sessakukakou.html
https://www.weblio.jp/content/

超硬リーマ

超硬リーマとは

超硬リーマとは、リーマ加工という高い精度が求められる穴加工をする際に使用する工具のことです。

通常のリーマ加工では、あらかじめドリルによって開けておいた下穴に対してリーマで仕上げ加工を行い、必要となる寸法精度や加工面の面粗度を得ます。リーマ加工した穴には、高い内径寸法が確保されたリーマボルトを用いて、締結する部品同士の位置合わせなどに使用します。また、超硬リーマは高い加工精度だけでなく、加工の速さが速いことも特徴です。

超硬リーマの使用用途

超硬リーマは、高い精度が求められる加工で使われます。具体的には、穴の内径寸法、加工した穴の面粗度、真円度です。穴内径の加工精度はH7~H9の等級、加工面の面粗さは3.2S~12.5S程度が一般的です。

これらの精度は、バニシングシーマよりも高い精度の穴を仕上げることができます。高い内径精度や粗さが小さい面粗度が求められる加工穴には、機械の本体となるケーシング部品同士の位置合わせや回転軸を支持する穴などが挙げられます。これらの穴を加工する際に必要になるのが、超硬リーマです。

超硬リーマの原理

超硬リーマは高い精度が求められる穴加工を仕上げるための工具として、高い硬度の材料が用いられています。加工工具には硬さとじん性と呼ばれる「ねばり強さ」が求められますが、両者は相反する特性です。硬度が高ければ摩耗に強く、切れ味もよくなりますが、ねばりが弱いために、ピッチングと呼ばれる工具の欠けが発生しやすくなってしまいます。

超硬リーマでは、硬い材料が使われています。具体的には、PVDコーティング、コバルトハイス、サーメット、ダイヤモンド、ハイス、粉末ハイスなどです。硬さが高い反面じん性は低いので、扱いには注意が必要です。また、超硬リーマは高い加工精度を得るために、外周溝を浅くして、高いウェブ厚を確保しています。ウェブ厚とは、工具中心から溝の底までの外径であり、工具の剛性を確保する上で必要です。

下穴を開けるドリルでは、一度に多くの材料を削るために比較的大きな外周溝が設けられます。しかし、大きな外径溝はウェブ厚を低くし、工具の剛性も下がってしまいます。超硬リーマでは、高いウェブ厚によって工具剛性を高め、良好な加工精度を得ることが可能です。

超硬リーマの種類

超硬リーマには大きく6種類の工具があります。それぞれ目的にによって使い分けられます。

1. ストレートリーマ

加工現場の中で最も使われているリーマ加工の工具です。

2. スパイラルリーマ

スパイラルリーマは、刃の部分がネジ先端のようにねじれているリーマです。刃がねじれていることによって、切削抵抗の低減と、切りくずが穴から排出しやすくなります。

3. 不等分割リーマ

不等分割リーマは、刃の間隔が等分割にされていないリーマです。刃が等分割されていないことにより、加工の際に起きてしまうびびりと呼ばれる振動の発生が抑制されるので、より精度の高い加工が行えます。特に高い真円度を得るのに適した工具です。

4. 段付リーマ

段付きリーマは、工程削減として用いられるリーマです。リーマ加工は複数の工程で行われることが一般的ですが、段付きリーマなら、複数の工程を一つの工具によって一工程として行えます。工具費の低減だけでなく、段取り時間や切削加工時間を短くすることも可能です。

5. 3枚刃リーマ

3枚刃リーマは、3枚の刃が螺旋状に連なっているリーマです。偶数刃の工具よりも、精度の良い穴あけ加工が可能です。株式会社ソリッドツールの3枚刃リーマは、下穴加工が適切に管理されれば、2μmの真円度をもつ仕上げが可能とされています。

6. ロウ付けリーマ

加工の径が大きくなると、すべてを超硬リーマで加工しようとすると加工費が多額になってしまいます。そこで加工費を抑えたいときに使われるのがロウ付けリーマです。ロウ付けリーマの母材はSCM440などですが、加工が必要な部位のみに超硬材料がロー付されています。超硬材料を減らすことによって、工具の価格を低減させることが可能です。ろう付けリーマは具体的には、φ20以上の加工穴に対して使われます。

参考文献
http://www.fptools.com/reamer.html
https://www.monotaro.com/s/c-69707/
https://www.sandvik.coromant.com/ja-jp/knowledge/reaming/pages/how-to-ream-a-hole.aspx
https://solidtool.co.jp/carbide-tool/reamer/
https://kakou-consul.com/faq/pilot-hole-processing/

六角穴付ボルト

六角穴付ボルトとは

六角穴付ボルト

六角穴付ボルトとは、頭部に六角形の穴が開いているボルトのことです。

「キャップスクリュー」や「ソケットスクリュー」とも呼ばれ、一般的なボルトはナットと組み合わせて使用しますが、六角穴付ボルトはナットと組み合わせずに単体で使用されます。

また、通常ボルトを締め付けるために使用されるレンチなどは締め付けを行う際にある程度の広さが必要とされますが、六角穴付ボルトを締める六角レンチは通常のレンチと比べて小さいため、作業スペースが狭くても締めやすいメリットがあります。

六角穴付ボルトの使用用途

六角穴付ボルトは、主に省スペースでの作業や細かい装置などの取り付けで使われます。テレビ台やゲーミングチェアなどの身近なものにもよく使われています。

六角穴付ボルトを使うと少ない力で高い締め付け力が得られ、ナットを使う必要がないためDIY初心者でも簡単に作業できます。

六角穴付ボルトの原理

六角穴付ボルトの原理は「六角レンチを回すことでねじが締まる」というシンプルな仕組みです。

通常の六角ボルトは六角形のうち二辺だけに力を加えた状態で締めるため力が必要ですが、六角穴付ボルトは「六角形全ての辺に力が加わる」という仕組みのため通常の六角ボルトより易しく締めることができます。

六角穴付ボルトのその他情報

1. 六角穴付ボルトの主な材質と主な表面処理

六角穴付ボルトの材質は、鉄もしくはステンレスが多いです。鉄製のボルトは強度が高く、コストがかからないことがメリットですが、サビやすいため、空気や水などに触れる箇所で使う場合は表面処理を行う必要があります。表面処理方法は様々ですが、主に使われているのが「黒染め」と呼ばれる「酸化鉄被膜」です。

一方のステンレス製は、コストがかかりますが鉄に比べて強度が高くサビにくいです。これらの性質を理解し、適切な材質の六角穴付ボルトを選ぶ必要があります。

2. 使用時の注意点

六角穴付ボルトを使用する際は、六角レンチのサイズとボルトを締める方向が合っているかを確認します。これらを間違えると、ネジ穴潰れや組み立てた製品や機器の破損に繋がります。未然に防ぐためには下記の点を守ることが大切です。

  1. 六角穴付ボルトとナットまたはねじ穴が壊れないよう、締め付ける力が許容範囲内であること。
  2. 六角穴付ボルトとナットまたはねじ穴に加わる、振動などによる繰り返しの力が、許容範囲内であること。
  3. 六角穴付ボルトの座面 (工具が触れる面ではなくお互いに接触する側の面) に加わる圧力で、締め付ける金属や木材などの対象物を陥没させないこと。
  4. 六角穴付ボルトとナットを締め付けることで対象物を壊さないこと。

3. ゆるみ止めの方法

六角穴付ボルトは正しく使っていても少しずつ緩んできます。場合によっては人命にかかわる大事故に発展する可能性があるため、対策することが重要です。ゆるみの発生原因は、主に以下の2つです。

  • 六角穴付ボルトに伝わる振動
  • 外気温または固定するもの自体から六角穴付ボルトに加わる熱

ゆるみ止めの原理は摩擦で時間が経つと緩むため、徹底的な導入前テストや定期的な締め直しが大切ですが、対策としては下記の方法が挙げられます。

  • ナットを力強く締める (締めすぎないように注意)
  • ゆるみ止め用接着剤を使う
  • ゆるみ止め付きのボルトに買い替える

参考文献
https://www.urk.co.jp/contents/elements/element13.html
https://www.tsurugacorp.co.jp/dictionary/bolt/bolt_cap.html
https://wilco.jp/products/F/FC.html
https://www.monotaro.com/s/pages/readingseries/nejikisokouza_0206/
http://www.alpsseiko.co.jp/data/bolt%20no%20tukaikata%20p4-5.pdf
https://www.akaneohm.com/column/denshoku2/
https://www.nbk1560.com/resources/specialscrew/article/nedzicom-topics-13-galvanic-corrosion/?SelectedLanguage=ja-JP