ミリ波レーダーとは
ミリ波レーダーとは、ミリ波(波長:1mm~10mm/周波数:30GHz~300GHz)の電波を使用して、対象物の距離、位置情報、相対速度を検知できるレーダーです。
一般に距離を検知するセンサには、ミリ波レーダーの他にLiDAR、超音波、ステレオカメラなどが挙げられます。ミリ波レーダーのメリットは、150m以上の検出距離ができる。太陽光の影響を受けない、雨や霧での影響を受けないなどです。デメリットは、段ボールや発泡スチロールのように電波の反射率の低いものの検知がしづらい点です。
ミリ波レーダーの使用用途
ミリ波レーダーの使用用途は、自動車、産業機械、ドローンなどに使われています。特に安全装置として自動車に使用されることが多いです。
現在自動車で普及している安全装置が、ADAS(Advanced Driver-Assistance Systems:先進運転支援システム)です。ADASの機能のアダプティブクルーズコントロールや衝突被害軽減ブレーキには、76GHz帯域のミリ波レーダーを使い、前方の検出を行っております。より分解能の高く精度向上のために今後は79GHz帯に移行していくでしょう。
さらに、ブラインドスポットモニターでは、24GHz帯が使われています。自動運転車両が本格的に開発されると、ミリ波レーダーもさらに活用されていくはずです。
ミリ波レーダーの原理
ミリ波レーダーの構成部品は、主に送信電波を処理するシンセサイザ、電波を送信するTxアンテナ、反射電波を受信するRxアンテナ、受信信号を処理するCPUです。
ミリ波レーダーの原理は、レーダーからシンセサイザで処理をした電波をTxアンテナで送信して、対象物から反射された電波をRxアンテナで受信し、CPUで処理を行い、距離などを計測します。
距離速度の計測の方法には、主にパルス方式とFMCW方式があります。角度の計測の方法は、主に電子スキャン方式となります。
1. パルス方式
直進性の高いミリ波帯の電波をパルス状にして送信して、対象物から反射された電波が戻ってくるまでの時間より距離を算出する方式です。
2. FMCW方式
周波数を時間とともに変化させた電波を送信して、送信信号と対象物から反射された信号を干渉させて発生するビート周波数(周波数差)から距離を算出する方式です。
3. 電子スキャン方式
複数のRxアンテナを使い、各アンテナ間の位相差を検出します。その位相差から測定物の角度を算出可能です。
ミリ波レーダーのその他情報
1. ミリ波レーダーの精度
ミリ波レーダーは短い波長を周囲に拡散させるので、周辺の障害物、対象物を高い精度で検出することが出来ます。物体に対する分解能が高く、対象物がどのような形か、どのように移動したか(変化したのか)を0.1mm単位で検出することが出来ます。
物体検出できる距離に関しても、赤外線レーザーや超音波レーザーよりも優位性を持っています。赤外線レーザーや超音波レーザーの検出可能距離は20m程度、超音波レーザーは1m程度ですがミリ波レーダーは150m離れた物体も検出可能です。
ミリ波レーダーは悪環境下でも精度を高く保つことが出来ます。赤外線や超音波レーザーが周囲の温度変化などにより精度にバラツキが出る一方で、ミリ波レーダーは電波センサーであるため直進性が高く環境に左右されずに安定的に物体検出が出来ます。
2. ミリ波レーダーによる電波干渉
将来的に、車の自動運転が普及した場合、ミリ波レーダーの高密度環境での使用頻度が増え、レーダー間の電波干渉が懸念されます。
電波干渉が起きるとミリ波レーダーによるターゲットの検出に支障をきたし誤検出をしてしまう可能性があり、それは重大な交通事故になりかねません。ミリ波レーダーが高い距離分解能を発揮するには車1台に対してレーダーに割り当てられた3〜4GHzの周波数をすべて使わなければなりません。これを回避するための技術開発が不可欠です。
3. ミリ波レーダーの弱点
ミリ波レーダーが悪環境下でも安定的に対象物に対する測距が容易であることは先に述べた通りですが、一方で検出を苦手とする対象物が存在します。
それは比較的小さな物体の検知であり、ダンボールなど電波に対する反射率の低い物体の検知です。対象物までの距離で考えると、遠距離の物体の検知は得意とする一方で近距離のものを検知しにくいという特性も持っています。
ただし、ミリ波レーダーは現在も開発が進められており、今後の技術進化によっては上記の弱点を解消できるレーダーが開発される可能性があります。
4. ミリ波レーダーの今後の技術動向
自動運転に必要なセンサーとして、これまではその認識の解像度に優れたLiDAR(Light Detection and Ranging)が主役でしたが、レーダー技術の革新により、LiDARに近い認識の解像度が引き出せるようになってきています。その技術を牽引するキーワードは、半導体微細加工技術の進展、周波数帯域幅の拡大や、およびビームフォーミングなどのアンテナ技術の進化です。
半導体微細加工技術の進展
CMOS微細化技術の進展により、より小型かつ安価なミリ波信号処理ICを活用できるだけではありません。アナログの究極技術であるミリ波帯域の高周波回路技術とデジタル技術を駆使して高効率なビーム成型を図るデジタルビームフォーミング技術は、現在様々な企業や研究機関にて、盛んに開発されている状況です。
周波数帯域幅の拡大
これは何といっても昨今の76GHzから81GHzの5GHz帯域の確保が重要な項目です。周波数帯域幅の増加は、そのままレーダー距離の拡大に寄与できます。近い将来に周波数帯域もD-bandでの136GHz~148.5GHzの連続した12.5GHz幅がレーダーに利用できると言われていますので、ますますミリ波レーダー技術は重要になります。
アンテナ技術の進化
アンテナ技術の進展、特にアレイアンテナ技術や超小型低損失なアレイアンテナ集積モジュール技術の進化が重要です。これによりミリ波レーダーの高出力かつ高効率化が可能になるでしょう。
参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/oubutsu1932/71/3/71_3_302/_pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/bplus/12/3/12_234/_pdf/-char/ja
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https://www.hitachi-solutions-create.co.jp/column/technology/millimeter-wave-radar.html
https://www.macnica.co.jp/business/semiconductor/articles/texas_instruments/128213/
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