光電スイッチ

光電スイッチとは

光電スイッチ

光電スイッチとは、光によって物体の存在有無や表面形状を検出する装置です。

光電センサーと呼ばれることもありますが、特に接点出力の製品を光電スイッチと呼ぶことが多いです。使用される光は、可視領域や赤外光が大半となっています。検出距離が長い点や検出する物質に対しての制限が少ない点が特徴です。 

光電スイッチの使用用途

光電スイッチは、産業用途で使用される製品です。光の強度に応じて、電気信号を制御することができるため、センサーや光ファイバー通信など、多岐にわたる分野で利用されています。

液体や金属など幅広い物質を検出することが可能で、それらの有無を接点出力するために使用されます。また、低反射率の物質を検出したり、色の違いを検出したりすることも可能です。以下は光電スイッチの使用用途一例です。

  • 飲料工場におけるビンや缶の検出
  • プリント基板のエッジ検出
  • 薬などの錠剤の有無検出
  • 郵便局におけるはがき検出
  • 加工工場のワーク検出

光電スイッチの原理

光電スイッチには、光透過型、回帰反射形、拡散反射形などの検出方法が存在します。

1. 透過形

透過形は、投光器の光を常時受光器で検出しており、物体が横切ることで光が遮られます。光が遮られた際の受光量が減少をセンサーが検出し、受光器が接点出力します。投光部分と受光部分が分離していることや検出距離が長いことが特徴です。

2. 回帰反射形

回帰反射形は、投光部分と受光部分が1つのユニットとなった光電スイッチです。投光部分からの光を反射板 に反射させ、投光ユニット内の受光部分で検出して接点出力します。光軸合わせが不要となることが特徴です。

3. 拡散反射形

拡散反射形は、投光部分と受光部分が1つのユニットのみで構成されていますが、回帰反射形と違って反射板がありません。投光器から発する光を物質が反射し、受光部分で検出する仕組みです。ユニットが1つで反射板も不要な点がメリットです。

光電スイッチの種類

光電スイッチには、以下のような種類があります。

1. 透過型

投光器と受光器が個別の構成体にまとめられています。検出に必要となる距離だけ話して対向設置されます。

設置する際には、投光器の投光軸と受光器の受光軸を完全に一致させる光軸調整が必要です。また、透過型は設置距離の最大値は製品によって異なるため、仕様書を確認しなければなりません。

2. 溝型・コの字型

発光源と受光素子が光軸を一致させた状態でケースに収納されています。ケースに設けられた溝の内側の光通路が検出範囲となっています。

3. 一体型

投光器と受光器が一体となった製品です。原理の項の通り、回帰反射形と拡散反射形があります。回帰反射形は反射板が必要ですが、拡散反射形は反射板が不要です。

ただし、拡散反射形は検出対象の物体が光を反射する場合にのみ使用することが可能です。金属板などの場合には使用可能ですが、丸い物体や小さい物体の検出には不向きです。また、検出精度も回帰反射形が優れています。

4. 光ファイバー型

検出部に光ファイバーを使用した製品です。光ファイバーが入る場所であれば検出できるため、狭小の場所に設置可能な点が特徴です。また、光ファイバーを介して信号を送受信するため、防水性や防爆性が求められる環境での利用が適しています。

光電スイッチの選び方

光電スイッチは、使用目的や環境条件に応じた適切な種類の選定が重要です。光源と受光素子を分離した透過型光電スイッチは、一定の距離内で物体の存在を検知することが可能なため、工場や倉庫などでの物体検知に適しています。一方、光ファイバー式の光電スイッチは防水性や防爆性が必要な場合には重宝します。

光電スイッチの性能についても重要なポイントです。信号の精度やスピード、耐久性などを比較し、目的に応じた最適なスイッチを選ぶことが大切です。さらに、電源の供給方法や配線の方法なども選択にあたっては考慮する必要があります。

製品の選択だけでなく、正しい取り扱いやメンテナンスも忘れずに行うことが、長期的な利用において重要なポイントになります。

参考文献
https://www.fa.omron.co.jp/guide/technicalguide/43/2/index.html
https://www.keyence.co.jp/ss/products/sensor/sensorbasics/sensor-type.jsp
https://www.keyence.co.jp/ss/products/sensor/sensorbasics/pe_info.jsp
https://www.fa.omron.co.jp/product/special/knowledge/pes/diffuse_reflection_type/detection_principle_characteristic.html
https://www.fa.omron.co.jp/product/special/knowledge/pes/penetration_type/detection_principl.html
http://www.mekatoro.net/mechatro_parts/vol3/pdf/P04-200.pdf

圧縮コイルばね

圧縮コイルばねとは

圧縮コイルばねは、コイルばねの一種であり、バネが圧縮する方向に荷重を受けると、反発力が発生するばねです。同じコイルばねで反対に引っ張り方向に荷重を受けた時に反発力が発生するものとして、引っ張りコイルばねがあります。

圧縮コイルばねの使用用途

圧縮コイルばねには、主に「等ピッチコイルばね」と「不等ピッチコイルばね」の2種類があり、加わる荷重や必要となる機能によって使い分けられています。
身近なものを例にすると、それぞれの圧縮コイルバネは以下のようなところで使用されています。

  • 等ピッチコイルばね
    コンピューター用のキーボード、ノック式ボールペンなど。
  • 不等ピッチコイルばね
    電池ボックスの接点部分やフットスイッチなど。

この他にも、車のサスペンションや橋の振動緩和のためのダンパなど、家庭用品から工業用品まで幅広い分野で使用されています。

圧縮コイルばねの原理

主な圧縮コイルばねの種類と特徴を以下に示します。

  • 等ピッチコイルばね
    ばね全体が完全な円柱の形をしています。ばねに加える荷重とたわみの関係は、一般的に線形の関係になります。
    荷重とたわみの関係が線形であることから、両者の関係を数式化し、グラフにして設計を行うことも容易ですが、実際のばねでは、全たわみの30%以下および70%以上の領域では計算値から外れる傾向にあるため、注意が必要です。
    これは、ばねが圧縮した際に、実際には両端部から接着が始まり、有効巻数が少しずつ変化していくために起こります。
  • 不等ピッチコイルばね
    ばね全体が完全な円柱形状ではなく、以下のように様々な形状が存在します。基本的にバネに加える荷重とたわみの関係は非線形の関係になります。

    • 円錐コイルばね
      ばね全体の形状が円錐状になっているコイルばねです。このばねは、前述の等ピッチコイルばねとは異なり、圧縮されたときにコイル部分が干渉しないという特長があります。
    • たる形コイルばね
      ばね全体の形状が大きな「たる」のような形をしたコイルばねです。両端のスペースを小さくしたい場合などに用いられます。
    • つづみ形コイルばね
      ばね全体の形状が「つづみ」のような形をしたコイルばねです。圧縮したときに中央付近での干渉を避けることができるという利点があります。

上記に記載した以外にも、様々な形状の圧縮コイルばねが存在し、巻き数や巻き方によって、様々な特長を持たせることができるため、用途に応じた専用の圧縮コイルばねを作製することも多いです。
また、コイルばねの巻き方向については、特に指示がない場合は「右巻き」になるのが一般的です。

圧縮コイルばねの選定

圧縮コイルばねの選定に際しては、それぞれのばねが持つ諸元値を考慮する必要があります。圧縮コイルばねにおいては、ばね定数、自由長、外径が重要となります。

また圧縮コイルばねとして使用できる範囲は、自由長(両端に荷重を加えない状態の長さ)の位置から許容最大圧縮長(両端を押し付けて、最小寸法とすることが出来る最小長)までとなるため、これを考慮して選定を行う必要があります。 また圧縮コイルばねは装置に取り付けられるときにその両端を対象となる部品(圧縮コイルばねワッシャなど)に固定する必要があり、これらの部品の形状等に応じて選定を行う必要があります。

圧縮コイルばねの使用例

圧縮コイルばねには、ばねの形状に応じて等ピッチコイルばねと不等ピッチコイルばねの2種類があります。

等ピッチコイルばねは、円柱形状を有したばねであり、ガス調整弁、自動車のサスペンション、バイク用クラッチ、ノック式ボールペン、スプリングベッド、スーツケースのキーロック、自動車のサスペンションやコンピューターのキーボードなどに使用されています。

不等ピッチコイルばねは、円錐状や樽型状などの形状を有したばねであり、電池ケース内の接点ばね(マイナス側)、フットスイッチ、コックバルブ、省スペース用ばね、コーヒーフィルター用取っ手などに使用されています。

圧縮コイルばねの応力設計

圧縮コイルばねは、静荷重下で使用されることが一般的です。静荷重とは、ばねが使用される状態で荷重変動がほとんどない状態、または繰り返しの荷重変動があっても約1,000回以下の使用環境下にある状態のものをいいます。

このような静荷重で使用される場合には、ばねの許容応力は材料の弾性限度内におさまっていれば問題ありません。

線材の直径に対する許容ねじり応力の関係は材質ごとに定められており、圧縮コイルばねにおいては、ばね使用時の最大応力が定められる許容ねじり応力の80%以下となる環境下で使用されることが推奨されています。

参考文献
https://www.monotaro.com/s/pages/readingseries/kikaikiso_0304/
https://jp.misumi-ec.com/tech-info/categories/machine_design/md05/g0101.html

https://www.tokaibane.com/tech/big_coil_knowhow.html
https://www.maruho-htj.co.jp/mnet_guide/layout/stress/

超音波洗浄機

超音波洗浄機とは

超音波洗浄機

超音波洗浄機とは、超音波を利用して物体や表面の汚れを効果的に取り除く機器です。

超音波は人間の聴覚範囲を超える高周波音波であり、水や洗浄液中で発生させることができます。小さな隙間や細かい部品の表面に付着した汚れや油脂、酸化物などを効率的に洗浄することが可能です。また、物理的な摩擦を最小限に抑えるため、繊細な品物や電子部品などの洗浄にも適しています。

一方、材質や形状によっては洗浄不良が生じるものがあります。アルミニウムは金属の中で比較的柔らかく、長時間洗浄すると表面にダメージが生じる可能性があります。また、銀も柔らかく光沢がなくなるなど、不具合が生じる場合が多いです。

超音波洗浄機の使用用途

超音波洗浄機はさまざまな用途で使用されます。以下は超音波洗浄機の使用用途一例です。

1. 宝石やアクセサリーの洗浄

宝石店やジュエリー製造業者では、ダイヤモンドや貴金属などの宝石やアクセサリーを超音波洗浄機で洗浄します。超音波洗浄機は、細かい隙間や微細な部品に付着した汚れを除去し、宝石の輝きを回復させるのに効果的です。

ただし、振動や衝撃を加えて汚れを落とすため、キズや割れのある宝石類は洗浄するとキズや割れが広がる恐れがあります。装飾品の場合は、変色や装飾剥がれの原因になってしまう可能性があるため注意が必要です。

2. メガネ・レンズの洗浄

眼鏡店や光学機器業者では、眼鏡やカメラレンズなどの光学機器を超音波洗浄機で洗浄する場合も多いです。超音波洗浄は、フレームやレンズの表面に付着した指紋や油脂、ホコリなどを除去し、クリアな視界を確保します。

ただし、プラスチックレンズの眼鏡も長時間の洗浄を行うと、小さな傷が超音波振動によって広がる可能性があるため、事前に傷がないかどうかの確認が必要です。

3. 電子部品の洗浄

電子機器の製造業者や修理業者では、基板やプリントヘッドなどの電子部品を超音波洗浄機で洗浄します。超音波洗浄によって、部品の表面に付着したフラックスや汚れを効果的に除去し、動作の安定性や信頼性を確保します。

半導体部品の洗浄や、メッキ加工前の脱脂洗浄に使用されることも多いです。ただし、小さな衝撃でも大きな影響を受けてしまうような精密機器は洗浄することができません。

超音波洗浄機の原理

超音波洗浄機の原理は、超音波の発生とその波動を利用して汚れを除去することにあります。まず、超音波洗浄機には超音波を発生させるための超音波発生器が備わっています。この発生器は高周波振動を生成し、洗浄槽内の水や洗浄液に伝えます。一般的には、圧電素子や磁気振動子などの技術が使用されることが多いです。

超音波発生器から発せられる高周波振動は、洗浄液中を伝播する仕組みです。この振動が液体中の分子を圧縮・膨張させることで、超音波の波動が形成されます。波動は液体内を広がり、汚れや付着物に作用します。

波動が液体内に伝播する際に生じる現象の1つが、キャビテーション効果です。キャビテーションは液体中の空洞や気泡が急速に生成・収縮する現象であり、強力なエネルギーを発生させます。これにより、気泡の収縮や崩壊が汚れの表面で発生し、物理的な力が働いて汚れを剥がしたり、細かな隙間に浸透したりします。

超音波洗浄機のその他情報

超音波洗浄機の洗剤

超音波洗浄機に使用される洗剤は、水系、炭化水素系、溶剤系などさまざまな種類があります。

1. 水系洗浄剤
水系洗浄剤は、脱脂や切粉・ほこりの除去やスケール除去に使用されます。不燃性で比較的扱い易い点が特徴です。ただし、すすぎ回数が多く必要であり、シミも発生しやすいです。

2. 炭素水素系
炭化水素系は、脱脂やフラックスの洗浄を目的として使用されます。イソパラフィン系やノルマルパラフィン系などがあります。安価で再生使用が可能であり人体への影響も少ない点が特徴です。

3. 溶剤系
溶剤系は、脱脂や切粉・ほこりの除去を目的として使用されています。フッ素系・臭素系は溶解力や乾燥性が高く、高価ながら再生使用が可能です。アルコール系は引火性があるもの乾燥性が高く、安価に入手することが可能です。

参考文献
https://www.sankyo-chem.com/wpsankyo/969
https://www.honda-el.co.jp/industry/cleaner_genri.html
https://www.kaijo.co.jp/sansen/product/uscunderstand5m.html
https://www.honda-el.co.jp/industry/solution.html

http://www.tocho.com/faq/
https://www.kaijo.co.jp/sansen/technical/kouka.html

CAMソフト

CAMソフトとは

CAMソフトとは、図面データを読み取るソフトです。

図面の情報を工作機械用の言語に変換し、製品を作れるようにすることが可能です。CAMは (英: Computer Aided Manufacturing) の略称で、CADで制作した図面を基に工作機械を動かすためのプログラムを作成するシステムのことをCAMといいます。

ソフトウェアで作成された3Dモデルや2D図面をCAMソフトウェアに取り込むことで、製造プロセスの基盤となるデータを得ることができます。

CAMソフトの使用用途

製品設計において、CADは「設計」の場面で使用されますが、CAMは主に「製造」の場面で使用されるツールです。

1. 2DCAM

2DCAMは、加工プロセスの計画や最適化に使用されます。CADデータや図面を基に、2DCAMソフトウェアは加工プログラムを自動的に生成します。加工条件や工具パス、切削経路などを最適化し、効率的な加工プロセスを実現可能です。これにより、加工時間の短縮や生産性の向上が図られます。

レーザーカットやプラズマカットなどの加工やシートメタル加工などにおいて生産性と品質の向上、変更管理やデータ管理など、さまざまな使用用途があります。

2. 3DCAM

2軸または3軸以上の同時移動を必要とし、自由曲面を含む加工を行う工作機械のためのプログラム作成に使用されます。CADで定義できる形状をすべて扱えるため、デザイン性の高い製品の加工をする際に便利です。

2DCAMとの違いは、CAM側で工具を定義して使用するため、汎用性が低いという点です。また、自由曲面の形状を直線で近似して加工するため、精度が低下する場合があります。

CAMソフトの原理

工作機械を使って製品を作るためには、図面の情報を工作機械用の言語に変換する必要があり、この変換を担うのがCAMです。

1. 素材の設定・工具の指定

加工する素材により、適切な切削速度や厚みが異なるため、加工する素材に適した設定を行います。工作機械によっては、使用する工具の指定も必要となります。

2. データの読み込み

2DCAMの場合はCADで作った図面データを、3DCAMの場合は3次元データをCAMに読み込ませます。データをCAMに読み込ませると、CAMの画面上に読み込んだデータが表示されます。

3. 加工条件の設定

データの読み込みが完了した後は、切削工程に入りますが、どの程度の精度でどこまで削る必要があるのかなど、必要な設定を行います。条件の設定が完了したら、CAMデータを保存し、実行することで加工が開始されます。

また、切削工具の動きや加工経路を計算し、加工プログラムを自動的に生成することも可能です。

4. シミュレーション機能

CAMソフトウェアにはシミュレーション機能があります。加工プログラムを実際の加工操作に先立ち、仮想的にシミュレーションすることで、加工時の問題や衝突を事前に検出することができます。これにより、加工過程の安全性や品質を確保するだけでなく、加工時間や材料の無駄を削減することも可能です。

CAMソフトの種類

CAMソフトには、ハイエンドタイプやミッドレンジタイプ、ローエンドタイプなどの機能による違いがあります。

1. ハイエンドタイプ

ハイエンドタイプのCAMソフトは、細かな編集機能が豊富であらゆる加工に対応できる点がメリットです。ただし、ハイエンドタイプを使用する場合には、パソコンの性能にも左右されるため、パソコンの推奨性能を確認する必要があります。価格帯が高く、操作に十分な習熟が必要な点がデメリットです。

2. ミッドレンジタイプ

ミッドレンジタイプのCAMソフトは、ハイエンドタイプに近い編集機能が使える点や操作の習熟が比較的、簡単な点がメリットです。価格や機能の面からも、多く普及しているタイプのソフトウェアです。ただし、一部の機能が制限されている点がデメリットとして挙げられます。

3. ローエンドタイプ

ローエンドタイプのCAMソフトは、一般的に基本的な編集機能が提供されているソフトウェアです。個人利用であれば無償で提供されているソフトウェアもあります。初めてCAMソフトを操作する場合や、高精度での加工が必要ない場合などに使用されています。

ローエンドタイプは価格帯が低く、すぐに操作を覚えられる点がメリットですが、限定的な編集機能しか使用できないため注意が必要です。

CAMソフトの選び方

CAMソフトウェアを選ぶ際には、機能や対応加工方法、データ形式などの違いを充分に考慮する必要があります。たとえば、CAMソフトウェアが単独で使用される場合やCAD/CAMソフトウェアとして統合されている場合があります。

CAMソフトウェアが単独で使用される場合は、必要な加工方法や取り扱うデータ形式がソフトウェアに組み込まれているかに注意が必要です。工作機械には、2軸、3軸、4軸などの多軸加工からCNC加工、レーザー加工までさまざまな加工方法があるため、必要な加工条件によっては、CAMソフトウェアの種類も異なります。

CAMソフトウェア単独でデータを取り扱う場合には、CADソフトウェアで使用しているデータをCAMソフトウェアでも正常に読み込めるかどうかを確認します。互換性がない場合は、データの変換が必要です。

3次元CAD

3次元CADとは

3次元CAD

CADとは、製品設計をコンピューターによって支援する道具です。

「Computer Aided Design」の略称で2次元CADと3次元CADが存在します。この中で3Dの立体物を作製するCADを3次元CADと呼びます。

3次元CADの使用用途

3次元CADは大きく分けて2種類、建築用と機械用に分類されます。
その中でもハイエンドCAD、ミッドレンジCAD、ローエンドCADの3種類があり、それぞれ機能が多い順にハイエンド、ミドルレンジ、ローエンドに分かれます。使用する目的や内容に合わせそれぞれの特性を理解したうえで使用することが求められます。

1. ハイエンドCAD

主な使用用途は自動車や家電など製品の部品点数が多く複雑な設計が必要となる場面です。
代表的なソフトはCATIA、Creo Paramatoric (旧Pro/ENGINEER) 、NXです。高価ですが3Dモデリング機能だけではなくシミュレーション機能も充実しており、日本の大手メーカーの多くはこれらのCADを使用しています。

2. ミッドレンジCAD

ハイエンドCADに比べると低価格で操作が容易ですが、シミュレーション機能などは劣る部分があります。しかし、主要な3Dモデリング機能はハイエンドCADに劣らず、設計でも十分利用できるソフトです。主に大学での研究用途や、部品点数が少なめで構造がシンプルな製品設計で利用されています。代表的なソフトは、SolidWorks、Inventor、TopSolid、Solid Edge 等です。

3. ローエンドCAD

安価なものから無料で利用可能なものまで様々なものが存在します。個人レベルにて趣味程度で使用するCADとしては十分ですが、複数部品のアセンブリや複雑な形状の作製を必要とする設計用途では、機能的に不十分な部分が多いです。
一方で、「オープンソースの3Dモデルデータを開いて簡単に修正して3Dプリントする」などの用途としては問題なく機能するため、本格的に製品設計は行わないが3Dデータを取り扱いたい方には十分なものになります。代表的なソフトはInventor LT、123d design、DesignSpark、Creo Elements Direct Modeling Express等です。

3次元CADの原理

3次元CAD_metoree

様々なCADソフトが存在しますが、3Dモデルを作製する基本手順は以下となり、どのCADソフトにおいても共通です。

1. 平面を選択し、2次元のスケッチを描く。
2. 描いたスケッチを押出すことで3次元の立体を生成する。

上記手順にて作製した3Dモデルに対して同じ手順で変形したい平面を選択し、「押出し」や「切り抜き」などを繰り返すことで必要な形状を作製します。この「押出し」や「切り抜き」などのモデル作製機能については、各CADによって利用可能な機能に差があるため、用途に応じて最適な機能を持ったCADソフトを選択することが重要になります。

3次元CADのその他情報

1. 3次元CADの活用場面

3次元CADを活用する場面では、視認性に優れており2次元では表現が難しい設計や、構造の解析やクリアランスの確認を行う場面で使用されます。
また、使用するCADの種類によっては設計したパーツを組み合わせてアニメーションさせて実際の可動域や動作を確認することが出来ます。

2次元のCADは、難しい複雑な曲面のモデルも比較的容易に作成することができ、デザイン性を重視した設計を行えます。3次元CADを使用して作成したデータを利用し、組み立てや製造の指示書や仕様書を容易に作成することができます。

2. 3次元CADのメリット

3次元CADのメリットは、2次元のCADに比べ直感的にモデリングが行え、解析の情報もダイレクトに設計に反映することができます。
また、パーツ点数が多い設計を行う際も2次元のCADに比べクリアランスの確認も容易に行えます。

CAMデータや3Dプリンターを利用することにより試作品を容易に作成することができ、ランニングコストの大幅な削減を行えます。
3次元CADでモデリングした3Dモデルであれば形状を容易に把握できるため、専門の知識がない方にもわかりやすく形状を伝えることが出来ます。 大規模な設計を行う際には多人数での開発も少なくなく、他部門とのコミュニケーションも円滑に行え開発がしやすい状況を作りやすいでしょう。

3. 3次元CAD利用技術者試験

資格には、一般社団法人コンピュータ教育振興協会の定める3次元CAD利用技術者試験2級、準1級、1級の資格があります。3次元CADを使用するエンジニアの知識と技術が証明できる制度です。

参考文献
https://d-engineer.com/3dcad/cadsyurui.html
https://cad-kenkyujo.com/2020/02/28/cad-3/
https://d-engineer.com/3dcad/3dcaddekiru.html
https://www.acsp.jp/cad/3d.html

ウォーム減速機

ウォーム減速機とは

ウォーム減速機

ウォーム減速機 (英: Worm Gear Reducer, Worm Speed Reducer) とは、減速機構にウォームギア (ウォーム歯車) を用いた減速機です。

減速機とは、モーター (電動機) などの回転動力発生機器の回転出力を回転入力とし、その回転数を低く (減速) して、トルクを高くする装置を指します。減速機構を構成するギア (歯車) は複数あり、ウォームギアその中の1種類で、ウォーム (ウォームシャフト) とウォームホイールの組み合わせです。

その他には、一般的に多い平歯車 (スパーギア) を組み合わせた減速機、歯車軸が直交した かさ歯車 (ベベルギア) で構成されたベベルギア減速機やマイタギア減速機、3種類の平歯車 (太陽歯車、遊星歯車、内歯車) を組み合わせた遊星歯車減速機などがあります。

ウォーム減速機の形状や構造は、下記図1を参照してください。

ウォーム減速機の構造

図1. ウォーム減速機の構造

ウォーム減速機の使用用途

ウォーム減速機は他の減速機と同様に、小さい力で大きい物体を動かすことが可能であるため、動力伝達を目的として工場設備や機械装置に組み込んで使用されます。

ウォーム減速機の具体的な使用用途は以下の通りです。

  • プレス、圧延機の駆動装置
  • 中低速エレベーター、エスカレーターの昇降駆動装置
  • コンベアの駆動装置

ウォーム減速機は、さまざまな産業や用途で使用されていますが、特に下記のような場合は、ウォーム減速機の使用が適しています。

  • 騒音制限が必要な場合
    ウォーム減速機の特長である低騒音を活用し、騒音制限がある場所などで使用されています。
  • 急停止が必要な場合
    セルフロック機構を活用し、正確で瞬時の停止動作が必要なエレベーターやリフトなどに使用されています。
  • 衝撃負荷がある場合
    ウォームギアは銅合金など高度の低い柔らかい材質を使用しているため、ある程度の衝撃を吸収することができます。この特性を活用して、岩石破砕機などに使用されています。
  • スペースが問題になる場合
    コンベア、包装機器など省スペースで設置でき高トルクが必要な機械に使用されています。

ウォーム減速機の原理

ウォームギアの原理

図2. ウォームギアの原理

ウォーム減速機は、ウォーム (ウォームシャフト、ウォーム軸) とウォームホイール2種類の歯車で構成された歯車機構を用いています。

ウォームギアの組み立て

図3. ウォームギア組立

ウォームはねじ歯車の1つで、ウォームを回転させると、ウォームのねじ歯がくさびを打ち込むようにウォームホイールの歯を押し回転させます。ウォームが (入力側) が1回転すると、ウォームホイール (出力側) が1歯分回転します。

この場合のウォームの条数 (歯数) を1条と言います。ウォーム2条は、ウォーム1回転でウォームホイールが2歯分回転することです。

ウォームギアの減速比は下記によって求めることができます。

ウォームギアの減速比

図4. ウォームギアの減速比

ウォームの各寸法は下記図5を参照してください。

ウォームの各寸法

図5. ウォームの寸法

ウォームギアの回転方向は、双方向 (例えば入力軸側から見て時計方法、反時計方向) 回転が可能です。これはウォームのねじれ方向を右ねじれ、左ねじれで選択することで実現できます。同じウォームの回転方法でも、ウォームホイールの回転方向は逆になります。ウォームのねじれ方向とウォームホイールの回転方向は下記図6を参照してください。

ウォームのねじれ方向とウォームホイルの回転方向

図6. ウォームのねじれ方向とウォームホイールの回転方向

ウォーム減速機の特長

ウォーム減速機の特長は大きく分けて6つあります。

1. 高い減速比

1段歯車 (1本のウォームと1枚のウォームホイールの組み合わせ) で1/60や特殊なものでは1/120と、高い減速比が可能になります。

2. 直交した回転軸

入力軸と出力軸で軸方向が直交しています。つまり、同軸方向になることはありません。

3. 任意の回転方向

ウォームのねじれ方向を左右どちらかを選択し、ウォームホイールと接続された出力軸の回転方向を変更できます。

4. 軸配置の自由度

入力・出力軸を片側・両側の4方向に設けることができます。

5. セルフロック効果

ウォーム側 (入力軸側) からウォームホイール側 (出力軸側) を回転させることはできますが、ウォームホイール側 (出力軸側) からウォーム側 (入力軸側) を回転させることはできません。これをセルフロック効果と言います。

6. 低振動と低騒音

ウォームとウォームホィールの噛み合いは、線接触で滑りが大きいために、平歯車やベベルギアなどの転がり伝達より騒音や振動が低くなります。

 

ウォーム減速機のデメリットとしては、噛み合い歯面の接触面が大きく、焼き付きを起こしやすいということがあります。そのため、ウォームには合金鋼などに熱処理を施した硬度の高い材質を、ウォームホイールには銅合金や鋳鉄など硬度の低い材質で構成し、摩擦係数を下げるといった対策を行っています。

参考文献
https://www.mikipulley.co.jp/JP/Products/SpeedChangersAndReducers/about.html
https://www.tsubakimoto.jp/power-transmission/reducer/gear-box/miter-bevel/
https://www.monotaro.com/s/pages/cocomite/215/
http://www.gensokuki.com/advantage/advantage3.html

グローブバルブ

グローブバルブとは

グローブバルブ

グローブバルブ (英: Globe Valve) とは、プロセス配管で用いるバルブの1つです。

流路の全開・全閉と、流量・圧力を調整する場合に用いられています。そもそもプロセス配管とは、化学製品などのプロセス流体を輸送するための配管を指します。場合によっては特別な配慮が必要なため、流体機械などの作動流体を輸送するための配管と区別されています。

グローブバルブは、弁箱 (ボディ) 部分が丸みを帯びていて、内部の流路は曲線を描いているのが特徴です。弁箱の形状が玉形をしていることから、玉型弁やグローブ弁とも呼ばれています。

グローブバルブ_図1

図1. グローブバルブの構造

グローブバルブの使用用途

グローブバルブは、流体の遮断と流量・圧力調整に優れているため、流体を漏洩なく遮断したい場合に止弁として使用されます。ただし、圧力損失が大きいため、「常時開」で使用する場合は圧力損失の小さいゲートバルブ (仕切弁) 、ボールバルブバタフライバルブが使用されることがあります。

グローブバルブは、一般産業において工場や発電所のユーティリティ関係の水・蒸気・空気配管で用いられ、配管が敷設されている設備や機器で使用される機会が多いです。また、家庭の水道メーターやガスメーター、給湯器周辺の配管などでも使用されています。

高温・高圧・大口径用など多くの用途に対応しているため、使用用途は非常に幅広いです。ただし、小径配管で流量を微量調節する場合には、ニードルバルブの使用が最適と言えます。弁体がテーパで針状になっていて、微量の流量を調整することが可能です。針状の弁体を上下させ開閉させため、基本的な構造はグローブバルブと変わりません。

グローブバルブの原理

グローブバルブの弁箱内 (ボディ) の弁体 (ディスク) は、弁軸 (ステム) に取り付けられたハンドルやアクチュエータ (駆動装置) により回転し上下動します。これによって弁体が弁座 (バルブシート) に密着し、流体を遮断します。

ハンドルやアクチュエータを回転させる程度で、弁体と弁座の距離が変わり、流路の断面積が変化するため、流量・圧力調整を行うことが可能です。流量・圧力調整が必要な蒸気、冷却水、温水、圧縮空気、真空ラインなど、ユーティリティの量を調整する弁として用いられます。

弁箱が玉形をしていて、入口から弁座部を通過し出口へ向かう流路は、S字状になっています。弁体内で、流れ方向が変更され、流路が急拡大・急縮小するため、非常に圧力損失が大きくなります。

ただし、バルブを閉弁するときは、弁体を上から弁座に押し付ける構造となっているため、漏洩が少なく高い遮断性能を発揮します。また、弁体位置を細かく調整できるため、流量の微調整が可能です。

グローブバルブのその他情報

1. グローブバルブの開閉方法

グローブバルブの開閉操作方法は、手動操作式と自動操作式の2通りです。

手動操作式
手動操作式は、一般的に丸形ハンドルを回転させ弁軸を上下動させ、バルブを開閉します。

自動操作式

グローブバルブ_図2

図2. 自動操作式グローブバルブ

自動操作式の場合、アクチュエータ (駆動装置) に電気作動式と空気作動式があります。電気作動式は電動機 (モーター) と減速機の組み合わせで、弁軸を上下動させ、バルブを開閉します。

一方で、空気作動式はエアシリンダの上下に圧縮空気を投入し、シリンダーと弁軸を上下動させ、バルブを開閉します。

2. 他型式バルブとの比較

グローブバルブ_表

図3. バルブの特徴比較

ボールバルブ
ボールバルブは、中間開度で使用すると流量調整は可能です。しかし、中間開度で使用すると弁座 (ボールシート) とボールの間に流体が溜り、漏洩や弁座が損傷する可能性があります。

したがって、ボールバルブは全開・全閉の用途で使用します。特にボールバルブは、ハンドルを回すだけで簡単に全開・全閉操作が可能です。ただし、メーカによっては中間開度で使用できるボールバルブも販売されています。

一般的に、遮断と流量調整の両機能が必要な場合はグローブバルブ、遮断が主な用途で簡単に全開・全閉する場合は、ボールバルブを使用します。

ゲートバルブ
ゲートバルブは、中間開度でも使用できますが、弁体が振動することがあるため、全開・全閉で使用します。一般的にボールバルブと同様、遮断と流量調整の両機能が必要な場合はグローブバルブ、遮断が主な用途で簡単に全開・全閉する場合は、ゲートバルブを使用します。

バタフライバルブ
バタフライバルブは、中間開度で使用すると流量調整は可能です。バタフライバルブは、グローブバルブよりも圧力損失は小さいですが、弁体が板状をしていることから不平衡トルクやウォーターハンマーが生じやすいことがデメリットです。

弁箱が小さく面間寸法 (流体入口から出口間の距離) が短く、遮断性能に優れています。一般的に、遮断と流量調整の両機能が必要な場合で、全開・全閉時間に余裕がある場合はグローブバルブ、全開・全閉時間を短時間で行い、面間を短くしたい場合は、バタフライバルブを使用します。

なお、それぞれの構造は以下の図4をご参照ください。

グローブバルブ_図3

図4. 各バルブ型式の構造

2. グローブバルブの長所・短所

グローブバルブの長所・短所を簡単にまとめると下記のようになります。

長所

  • 漏洩が少なく遮断性能に優れている。 
  • 流量調整に優れている。

短所

  • 全閉~全開のためハンドルやアクチュエータを何回も回す必要があり、時間がかかる。
  • 弁箱内の圧力損失が大きくなる。

参考文献
https://j-valve.or.jp/valve/letslearn/
https://www.kitz-valvesearch.com/kiso/type_index.html
https://www.kitz-valvesearch.com/kiso/type_globevalve.html
https://www.fujikin.co.jp/support/basic/standard.html

三相モーター

三相モーターとは三相モーター

三相モーターとは、三相交流電源で駆動する電動機のことです。

産業用設備や機械の動力源として広く利用されています。三相誘導電動機 (インダクションモーター) とも呼ばれ、AC200Vの三相交流電源を電源として用いるのが一般的です。

三相モーターはステーター、ローター、出力シャフト、フランジブラケット、ボールベアリングなどから構成されています。 

三相モーターの使用用途

交流電源は単相と三相で分類されます。単相は主に一般家庭で用いられる交流電源となります。一方三相は主に産業分野で用いられる交流電源となります。

三相モーターの具体的な仕様用途は、次のようなものがあります。

三相モーターの使用用途は幅広く、上記で挙げたもの以外にも多くの産業機械に用いられています。

また、三相モーターの中でも、ステッピングモーターサーボモーターなどと呼ばれる正確に回転を制御するためのモーターも存在します。これらは産業用の多関節ロボットなどの自動機械を使用する際に用いられます。

三相モーターの原理

三相モーターは120度ずつ位相のずれた三相交流電源をステーターのコイルに印加し、コイル~電磁鋼板が電磁石となり、電動機内に磁界を形成します。コイルに流れる電流の向きと右ねじの法則により電磁石の極性が決まります。

交流電源は時間とともに位相がずれるため、時間に応じて磁界の向きが回転します。

図1に回転磁界の発生原理を示します。三相交流電源のU相、V相、W相の位相が変わるにつれ、ステーターの磁界の向きが変わる(図1では、回転磁界は反時計回りに回転する)ことがわかります。

三相モーターの原理

図1. 回転磁界の発生原理

磁界が回転することで回転子へ渦電流が生じ、渦電流と磁界により回転子に力が発生します。その結果、モーターの回転軸に動力が発生します。モーターの回転力は、フレミングの左手の法則により方向が決まります。

ローターが回転する時の回転磁界の速度を同期回転速度と呼びます。同期回転速度は電源の周波数とステーターの極数から算出できます。

実際のローターの回転速度は、同期回転速度より少し遅くなります。これは磁束がローターの導体を横切ることで初めて誘導電流が発生し、それによってローターが回転するからです。

同期回転速度と実際の回転速度との差を「すべり」と呼びます。すべりは負荷トルクが大きくなるほど大きくなります。またモーターの出力(W数) は定格回転速度と定格トルクから算出することができます。

三相モーターのその他情報

1. 三相モーターの配線

三相モーターは始動方式によって、配線方法が異なります。ここでは、4種類の始動方式を紹介します。

直入れ始動
三相モーターの端子に電磁接触器を介して直接三相交流電源を印加して始動する方法です。配線が容易ですが、始動時にモーターに流れる電流 (始動電流) が定格電流の数倍と大きいです。

指導電流が小さい小容量の電動機で使用されることが多いです。

スターデルタ始動
スター結線で始動し、その後デルタ結線に切り替える始動方式です。

モーターの結線にはスター結線とデルタ結線があります (図2) 。スター結線はデルタ結線と比べて始動電流が1/3と少なくて済むので、定格電流の大きい三相モーターで使用される始動方法です。

スター結線とデルタ結線

図2. スター結線とデルタ結線

スターデルタ始動方式のモーターの端子箱にはU・V・WとX・Y・Zの6つの端子があり、UVWとXYZにそれぞれ三相電源を接続します。ステーターの巻線の外には電磁接触器とタイマーを組み合わせた回路があり、スター結線とデルタ結線を自動で切り替えます。

リアクトル始動
始動時に三相モーターと電源の間にリアクトルを接続し、始動してしばらくした後に電磁接触器とタイマーでリアクトルの回路を切り離す方法です。

インバータ始動
インバーターは、三相モーターの回転数を制御する電気機器です (図3) 。三相交流電源の出力や周波数を自在に変えることができます。

インバーターを導入することで、数Hz程度の低い周波数からモーターを始動でき、始動電流を小さくすることができます。

三相モーターとインバーター

図3. 三相モーターとインバーター

2. 三相モーターの回転数

回転数の計算式は、120×交流電源の周波数÷極数となります。

例えば、4極モーターで50Hz電源の場合、回転数は120×50÷4=1500 rpmとなります。

ただし、三相モーターは電源周波数より少し遅れて回転します。この遅れをすべり率で表現します。すべり率が5%であれば、回転数は1500× (1-0.05) = 1425 rpmになります。

三相モーターの速度を制御するためには、周波数か極数を制御する必要がありますが、極数はモーターの構造なので、変えることができません。よって、周波数を変更して速度を制御することになります。現在では、三相モーターの速度制御にはインバーターを用いるのが主流になっています。

参考文献
https://www.orientalmotor.co.jp/om/knowledge/uroko_ac/ac02.html
https://www.nidec.com/jp/technology/motor/basic/00026/
https://jp.aspina-group.com/ja/learning-zone/columns/what-is/005/
https://t-denso.com/archives/511
https://elec-tech.info/motor-tech1/

シーケンサ

シーケンサとは

シーケンサ

シーケンサとは、プログラムで定められた条件や順序に従って機械の動作を制御する装置です。PLC(プログラマブルロジックコントローラー)とも呼ばれます。

シーケンサの語源は英語の「Sequence」で、これは順序や連続という意味の言葉です。機械を順序通り動かすものという意味で命名されました。近年のシーケンサは、圧力などのアナログ信号を制御したり、装置間の情報伝達を行ったりすることも可能です。

シーケンサの使用用途

シーケンサは主に産業で使用されます。使用用途は枚挙に暇がなく、発電所やごみ処理場などの重工業巨大インフラからマイクロチップを作る加工工場まで、多くの場面で目にします。シーケンサは主に機械装置を自動化したい場合に用いられます。シーケンサを用いることで機械が自動で反復動作を行うため、省力化が可能です。

洗濯機などの家電もシーケンス制御を行いますが、制御装置にはマイクロコンピュータが使用されます。量産される機械には、マイクロコンピュータを用いた方が経済的だからです。シーケンサは一品物の産業装置などに用いられることが多く、日常生活においては電車の運転席内で目にすることがあります。

シーケンサの原理

シーケンサは電源部、基板部、入力部、出力部、メモリ、演算部(CPU)で構成されます。シーケンサの内部駆動電源は直流微弱電圧です。AC100V~240V程度の商用電源を、電源部で直流微弱電圧へ変換します。

電源部から供給された電源を、基板部によって各部位に分配します。基板部には入出力信号を演算部から入出力部へ電送する役割もあります。センサーや押ボタン接点などからの入力信号がシーケンサの入力部へ電送されます。入力部の種類に応じて、接点デジタル信号や電圧アナログ信号などを入力可能です。

シーケンサ内では、演算部によってあらかじめ書き込まれたプログラムに基づき判断が行われます。演算部では、常にプログラムのスキャンが超高速で行われます。プログラムによって出力判断が出された場合、シーケンサの出力部から出力信号を発信します。

出力信号に応じて、モーターやランプなど機器を動作させます。出力信号も入力同様にアナログ出力やデジタル出力の発信が可能です。プログラムや入出力機器のオン・オフ情報に関しては、シーケンサのメモリに一時格納されます。プログラムはシーケンス回路をロジック化しているラダー図方式が頻繁に用いられます。

各社の機器ごとにプログラミングツールが存在し、それらを用いて編集します。シーケンサ内部では、アナログ信号もデジタル信号として扱われます。デジタル信号とは0と1のみで表されるデータを指し、アナログ信号とは1と0だけでなく連続したデータを表します。アナログデータの例としては、温度計圧力計などの計測機器が該当します。

シーケンサのその他情報

シーケンサを使用するメリット

シーケンサを用いる最大のメリットは、制御用配線の省力化です。デジタル入出力のみの場合、シーケンサを用いずにリレー回路で再現できます。ただし、複雑な制御でリレー回路を用いると、配線が複雑化して製作や保守に膨大な時間がかかります。複雑な制御においては、手間やコスト面からシーケンサを利用することが多いです。

近年では、自動データ収集や複雑な信号処理などもシーケンサで実現可能となりました。インターネットとEthernetポートで通信したり、PCと無線通信できる機器もあります。 電源や演算部の二重化なども可能となり、シーケンサの信頼性も一段と高くなっています。現在においてシーケンサは、産業場面に必要不可欠な存在です。

参考文献
https://www.fa.omron.co.jp/guide/technicalguide/26/283/index.html

温度調整器

温度調整器とは

温度調整器

温度調整器とは、温度を制御したい空間内に設置された温度センサからの信号と目標の温度を比較し、温度が目標値になるようにヒーターなどを制御する装置のことです。

温度を制御するものとして、サーモスタット が挙げられます。サーモスタットは目標値が固定されていたり、ダイヤルなどで変更できたりするものもありますが、いずれも温度調整をする対象環境内に直接、設置しなければなりません。

サーモスタットよりも高度な温度制御ができる温度調整器には、温度センサからの情報で制御する電子式で、デジタル調節計とも呼ばれます。温度調整器では制御機器に目標温度を設定する機能があり、温度調整をする対象環境内に温度センサーを設けて調整するシステムです。

温度調整方法には、P動作 (比例動作) 、I動作 (積分動作) 、D動作 (微分動作) 、PID制御、2自由度PID制御があります。

温度調整器の使用用途

温度調整器は一般家庭から産業用まで、多岐にわたって使用されます。 一般家庭では機械式のものが多く、使用例は身近なところで挙げると、トースターやこたつなど、比較的安価な家電です。エアコン・ファンヒーターなど緻密な制御が必要なところで用いられているのは、電子式の温度調整器です。

産業用では空調関係はもちろん、製造設備内の庫内温度や製造工程で使用する水や薬液の温度制御などに使用されます。大型のものでは、ごみ焼却場などの燃焼温度やセラミックの焼成などに使われる窯の温度調整などが挙げられます。

温度調整器の原理

サーモスタット (機械式温度調整器) は、内部にバイメタルと電気接点が設られています。 バイメタルは温度の変化によって、金属が膨張する性質を利用したものです。膨張率が異なる2つの金属を張り合わせ、温度が変化したときにバイメタルが変形することによって、電気接点のON/OFFを切り替えています。

電子式の温度調整器は、制御対象の温度を検知する温度センサ、温度を制御するためのヒータに指令を出す操作部と組み合わせれた制御システムの構成機械です。温度センサの出力と温度調整器に設定された温度とを比較し、両者の差がなくなるように制御部への指令を出力します。

温度センサは熱電対、白金測温抵抗体、サーミスタなどです。いずれも制御対象の温度に応じて電圧や電気抵抗値などの物理量を温度調整器に出力します。温度調整器では通常、フィードバック制御系が組み込まれています。フィードバック制御は設定した温度になるべく早く到達し、また制御対象の温度が変化した際にも、温度変化を極力少なくするために必要です。

温度調整器のその他情報

温度調整器の制御方法

1. ON/OFF動作
制御対象の温度が目標値よりも低いときにはヒータをONし、目標値より高い時にはヒータをOFFにする制御です。温度は目標値の近辺で上下を繰り返しながら制御されます。ヒータが0%と100%の2つの値だけで動作することから、2位置動作と呼ばれることもあります。

2. P動作 (比例動作)
測定値と目標値との差を少なくするために、両者の差の大きさに比例した制御出力をする方法です。つまり、測定値と目標値が大きい時には大きな制御を行い、両者の差が少ないときには、小さな出力で制御します。ON/OFF動作よりも滑らから制御か可能です。

3. I動作 (積分動作) 
P動作では測定値と目標値との差異だけで出力の大きさを決定していますが、I動作は差異の大きさと経過時間に応じた出力を行います。仮に測定値と目標値との差が少なくても、その状態が長く続いている場合は、大きな出力で制御を行うため、より素早い制御が可能になります。

4. D動作 (微分動作)
D動作は外乱等による温度の急変があった場合に、大きな出力で制御をする制御です。変化量の大きさから制御量を決定するため、微分動作とも呼ばれます。

5. PID制御
PID制御はここまでに説明したP動作、I動作、D動作を組み合わせた制御方式です。温度を滑らかに、素早く、そして外乱に対しても素早く対応することができます。

6. 2自由度PID制御
2自由度PID制御は、PID制御での欠点を補う制御方式です。PID制御では外乱応答を重視すると、目標値が振動的になったり、逆に目標値を重視すると外乱に対して制御が遅れたりする欠点があります。

2自由度PID制御は、外乱に対しても目標値の維持に対しても、良好な応答をすることが可能です。

参考文献
https://www.fa.omron.co.jp/guide/technicalguide/53/103/index.html