圧縮コイルばね

圧縮コイルばねとは

圧縮コイルばねは、コイルばねの一種であり、バネが圧縮する方向に荷重を受けると、反発力が発生するばねです。同じコイルばねで反対に引っ張り方向に荷重を受けた時に反発力が発生するものとして、引っ張りコイルばねがあります。

圧縮コイルばねの使用用途

圧縮コイルばねには、主に「等ピッチコイルばね」と「不等ピッチコイルばね」の2種類があり、加わる荷重や必要となる機能によって使い分けられています。
身近なものを例にすると、それぞれの圧縮コイルバネは以下のようなところで使用されています。

  • 等ピッチコイルばね
    コンピューター用のキーボード、ノック式ボールペンなど。
  • 不等ピッチコイルばね
    電池ボックスの接点部分やフットスイッチなど。

この他にも、車のサスペンションや橋の振動緩和のためのダンパなど、家庭用品から工業用品まで幅広い分野で使用されています。

圧縮コイルばねの原理

主な圧縮コイルばねの種類と特徴を以下に示します。

  • 等ピッチコイルばね
    ばね全体が完全な円柱の形をしています。ばねに加える荷重とたわみの関係は、一般的に線形の関係になります。
    荷重とたわみの関係が線形であることから、両者の関係を数式化し、グラフにして設計を行うことも容易ですが、実際のばねでは、全たわみの30%以下および70%以上の領域では計算値から外れる傾向にあるため、注意が必要です。
    これは、ばねが圧縮した際に、実際には両端部から接着が始まり、有効巻数が少しずつ変化していくために起こります。
  • 不等ピッチコイルばね
    ばね全体が完全な円柱形状ではなく、以下のように様々な形状が存在します。基本的にバネに加える荷重とたわみの関係は非線形の関係になります。

    • 円錐コイルばね
      ばね全体の形状が円錐状になっているコイルばねです。このばねは、前述の等ピッチコイルばねとは異なり、圧縮されたときにコイル部分が干渉しないという特長があります。
    • たる形コイルばね
      ばね全体の形状が大きな「たる」のような形をしたコイルばねです。両端のスペースを小さくしたい場合などに用いられます。
    • つづみ形コイルばね
      ばね全体の形状が「つづみ」のような形をしたコイルばねです。圧縮したときに中央付近での干渉を避けることができるという利点があります。

上記に記載した以外にも、様々な形状の圧縮コイルばねが存在し、巻き数や巻き方によって、様々な特長を持たせることができるため、用途に応じた専用の圧縮コイルばねを作製することも多いです。
また、コイルばねの巻き方向については、特に指示がない場合は「右巻き」になるのが一般的です。

圧縮コイルばねの選定

圧縮コイルばねの選定に際しては、それぞれのばねが持つ諸元値を考慮する必要があります。圧縮コイルばねにおいては、ばね定数、自由長、外径が重要となります。

また圧縮コイルばねとして使用できる範囲は、自由長(両端に荷重を加えない状態の長さ)の位置から許容最大圧縮長(両端を押し付けて、最小寸法とすることが出来る最小長)までとなるため、これを考慮して選定を行う必要があります。 また圧縮コイルばねは装置に取り付けられるときにその両端を対象となる部品(圧縮コイルばねワッシャなど)に固定する必要があり、これらの部品の形状等に応じて選定を行う必要があります。

圧縮コイルばねの使用例

圧縮コイルばねには、ばねの形状に応じて等ピッチコイルばねと不等ピッチコイルばねの2種類があります。

等ピッチコイルばねは、円柱形状を有したばねであり、ガス調整弁、自動車のサスペンション、バイク用クラッチ、ノック式ボールペン、スプリングベッド、スーツケースのキーロック、自動車のサスペンションやコンピューターのキーボードなどに使用されています。

不等ピッチコイルばねは、円錐状や樽型状などの形状を有したばねであり、電池ケース内の接点ばね(マイナス側)、フットスイッチ、コックバルブ、省スペース用ばね、コーヒーフィルター用取っ手などに使用されています。

圧縮コイルばねの応力設計

圧縮コイルばねは、静荷重下で使用されることが一般的です。静荷重とは、ばねが使用される状態で荷重変動がほとんどない状態、または繰り返しの荷重変動があっても約1,000回以下の使用環境下にある状態のものをいいます。

このような静荷重で使用される場合には、ばねの許容応力は材料の弾性限度内におさまっていれば問題ありません。

線材の直径に対する許容ねじり応力の関係は材質ごとに定められており、圧縮コイルばねにおいては、ばね使用時の最大応力が定められる許容ねじり応力の80%以下となる環境下で使用されることが推奨されています。

参考文献
https://www.monotaro.com/s/pages/readingseries/kikaikiso_0304/
https://jp.misumi-ec.com/tech-info/categories/machine_design/md05/g0101.html

https://www.tokaibane.com/tech/big_coil_knowhow.html
https://www.maruho-htj.co.jp/mnet_guide/layout/stress/

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です