ウォーム減速機

ウォーム減速機とは

ウォーム減速機

ウォーム減速機 (英: Worm Gear Reducer, Worm Speed Reducer) とは、減速機構にウォームギア (ウォーム歯車) を用いた減速機です。

減速機とは、モーター (電動機) などの回転動力発生機器の回転出力を回転入力とし、その回転数を低く (減速) して、トルクを高くする装置を指します。減速機構を構成するギア (歯車) は複数あり、ウォームギアその中の1種類で、ウォーム (ウォームシャフト) とウォームホイールの組み合わせです。

その他には、一般的に多い平歯車 (スパーギア) を組み合わせた減速機、歯車軸が直交した かさ歯車 (ベベルギア) で構成されたベベルギア減速機やマイタギア減速機、3種類の平歯車 (太陽歯車、遊星歯車、内歯車) を組み合わせた遊星歯車減速機などがあります。

ウォーム減速機の形状や構造は、下記図1を参照してください。

ウォーム減速機の構造

図1. ウォーム減速機の構造

ウォーム減速機の使用用途

ウォーム減速機は他の減速機と同様に、小さい力で大きい物体を動かすことが可能であるため、動力伝達を目的として工場設備や機械装置に組み込んで使用されます。

ウォーム減速機の具体的な使用用途は以下の通りです。

  • プレス、圧延機の駆動装置
  • 中低速エレベーター、エスカレーターの昇降駆動装置
  • コンベアの駆動装置

ウォーム減速機は、さまざまな産業や用途で使用されていますが、特に下記のような場合は、ウォーム減速機の使用が適しています。

  • 騒音制限が必要な場合
    ウォーム減速機の特長である低騒音を活用し、騒音制限がある場所などで使用されています。
  • 急停止が必要な場合
    セルフロック機構を活用し、正確で瞬時の停止動作が必要なエレベーターやリフトなどに使用されています。
  • 衝撃負荷がある場合
    ウォームギアは銅合金など高度の低い柔らかい材質を使用しているため、ある程度の衝撃を吸収することができます。この特性を活用して、岩石破砕機などに使用されています。
  • スペースが問題になる場合
    コンベア、包装機器など省スペースで設置でき高トルクが必要な機械に使用されています。

ウォーム減速機の原理

ウォームギアの原理

図2. ウォームギアの原理

ウォーム減速機は、ウォーム (ウォームシャフト、ウォーム軸) とウォームホイール2種類の歯車で構成された歯車機構を用いています。

ウォームギアの組み立て

図3. ウォームギア組立

ウォームはねじ歯車の1つで、ウォームを回転させると、ウォームのねじ歯がくさびを打ち込むようにウォームホイールの歯を押し回転させます。ウォームが (入力側) が1回転すると、ウォームホイール (出力側) が1歯分回転します。

この場合のウォームの条数 (歯数) を1条と言います。ウォーム2条は、ウォーム1回転でウォームホイールが2歯分回転することです。

ウォームギアの減速比は下記によって求めることができます。

ウォームギアの減速比

図4. ウォームギアの減速比

ウォームの各寸法は下記図5を参照してください。

ウォームの各寸法

図5. ウォームの寸法

ウォームギアの回転方向は、双方向 (例えば入力軸側から見て時計方法、反時計方向) 回転が可能です。これはウォームのねじれ方向を右ねじれ、左ねじれで選択することで実現できます。同じウォームの回転方法でも、ウォームホイールの回転方向は逆になります。ウォームのねじれ方向とウォームホイールの回転方向は下記図6を参照してください。

ウォームのねじれ方向とウォームホイルの回転方向

図6. ウォームのねじれ方向とウォームホイールの回転方向

ウォーム減速機の特長

ウォーム減速機の特長は大きく分けて6つあります。

1. 高い減速比

1段歯車 (1本のウォームと1枚のウォームホイールの組み合わせ) で1/60や特殊なものでは1/120と、高い減速比が可能になります。

2. 直交した回転軸

入力軸と出力軸で軸方向が直交しています。つまり、同軸方向になることはありません。

3. 任意の回転方向

ウォームのねじれ方向を左右どちらかを選択し、ウォームホイールと接続された出力軸の回転方向を変更できます。

4. 軸配置の自由度

入力・出力軸を片側・両側の4方向に設けることができます。

5. セルフロック効果

ウォーム側 (入力軸側) からウォームホイール側 (出力軸側) を回転させることはできますが、ウォームホイール側 (出力軸側) からウォーム側 (入力軸側) を回転させることはできません。これをセルフロック効果と言います。

6. 低振動と低騒音

ウォームとウォームホィールの噛み合いは、線接触で滑りが大きいために、平歯車やベベルギアなどの転がり伝達より騒音や振動が低くなります。

 

ウォーム減速機のデメリットとしては、噛み合い歯面の接触面が大きく、焼き付きを起こしやすいということがあります。そのため、ウォームには合金鋼などに熱処理を施した硬度の高い材質を、ウォームホイールには銅合金や鋳鉄など硬度の低い材質で構成し、摩擦係数を下げるといった対策を行っています。

参考文献
https://www.mikipulley.co.jp/JP/Products/SpeedChangersAndReducers/about.html
https://www.tsubakimoto.jp/power-transmission/reducer/gear-box/miter-bevel/
https://www.monotaro.com/s/pages/cocomite/215/
http://www.gensokuki.com/advantage/advantage3.html

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