電磁接触器

電磁接触器とは

電磁接触器は、モータやヒーターなどの負荷を電磁石で開閉する装置です。

電磁接触器内部の電磁石によって、可動接点が固定接点と接触させて通電します。仕組みは電磁リレーと同じですが、電磁リレーよりも大電流を通電する際に利用します。

電磁接触器の使用用途

電磁接触器は主に制御盤の内部部品として使用されます。使用例を以下に挙げます。

  • マンション共用灯の点灯制御
  • ビニールハウス散水用ポンプの運転・停止制御
  • 水族館の水槽温度制御
  • 業務用冷凍庫の冷凍機運転制御

上記の通り、電磁接触器は主に自動制御のために使用されます。

電磁接触器の原理

電磁接触器は、電磁コイル、鉄心、可動接点、固定接点、戻りばね、などで構成されています。開路時には戻りばねによって可動接点が持ち上げられて、固定接点と可動接点が離れています。

閉路時は、電磁コイルに電流を流します。電磁コイルは電流が流れると磁界を発生させ、鉄心と共に可動接点を引き寄せます。

引き寄せられた可動接点が固定接点と接触し、主回路を通電します。主回路を遮断したい場合は、コイルに流れる電流を遮断すれば戻りばねによって可動接点が持ち上げられ、主回路が遮断されます。 

電磁接触器のその他情報

1. 電磁接触器と電磁開閉器の違い

電磁接触器(コンタクタ)は、電気回路の開閉を行う装置ですが、過電流保護機能はありません。

過電流保護機能を備えるため、電磁接触器と熱動形過負荷継電器(サーマルリレー)を組み合わせた機器を電磁開閉器(マグネットスイッチ)といいます。

サーマルリレーはモーターなどの負荷を保護するために、過電流時に接点出力します。サーマルリレーの出力を検知して、回路を遮断したり警報を発報したりします。

電磁接触器と電磁開閉器(マグネットスイッチ)の違いは、サーマルリレーの有無による機能の違いです。

2. 電磁接触器の寿命

電磁接触器は、機器の運転・停止を制御します。そのため、機器の始動電流に何度も耐えうる耐久性があります。電気的特性が定格以下であれば、機械的な寿命は開閉回数500万~1,000万回とされます。

3. 電磁接触器の利用時の注意点

電磁接触器には、標準型、可逆式、直流操作型など複数のタイプがあります。そのため、各性質を理解して電磁接触器を選定する必要があります。

    • 標準型
    • 電磁コイルが励磁している間のみ接点が作動します。

    • 可逆式
    • 接点の相順位を入れ替えることで、回転機器の回転方向を切り替えることが出来ます。

    • 直流操作型
    • 一般的な電磁接触器は交流で電磁コイルを作動させますが、直流操作型は

直流電源

    で電磁コイルを作動させます。

4. 電磁接触器の逆起電力への配慮

電磁接触器の電磁コイル部分には、ON-OFF時に逆起電力(サージ電圧)が発生します。電磁コイル部分は一般に制御回路で制御されます。

制御回路には耐電圧や耐電流が低い機器を接続するため、電磁コイル部分にサージキラーを接続して制御回路を保護することもあります。サージキラーには3つの種類があります。

    • バリスタ型
    • ピーク電圧を抑制することを目的として

バリスタ

    を用います。ピーク電圧の抑制は可能ですが、高周波成分は制限できません。

  • CR型
  • サージ電圧に乗っている高周波成分を制限するためのローパスフィルタです。

  • CR+バリスタ型(ハイブリッド型)
  • バリスタとCR回路を併用したタイプのサージ吸引器です。ピーク電圧と高周波成分をいずれも制限可能です。

5. 電磁接触器のうなり

良くあるトラブル事例として、電磁接触器から「うなり音」がするというものがあります。コイルが交流の場合、磁化された鉄心の吸引力が周波数と共に変化します。これに応じて鉄心は常に微小振動しており、この振動に伴う音を「うなり音」と呼んでいます。

うなり音は鉄心接極面へ異物を噛み込んでいることが原因で発生します。本来なら面接触している固定鉄心と可動鉄心が点接触して、ブザーのような音が生じてしまいます。

電磁接触器を分解し、鉄心接極面の異物を取り除けば継続使用できます。分解する際は、電源を遮断したり、可能であれば電磁接触器を取り外して実施します。

電磁接触器を制御盤から取り外せない場合、エアブローなどで噴き付け清掃するのではなく、掃除機などでの吸い込み清掃します。ブローで飛んだ異物が別箇所でショートを起こすことを防ぐためです。

参考文献
https://www.mitsubishielectric.co.jp/fa/products/lvd/lvsw/items/lvmc/index.html
http://www.tukaikata-labo.com/content/3381
https://e-sysnet.com/magnet/
https://dl.mitsubishielectric.co.jp/dl/fa/document/techsheet/lvsw/bqn-s8-9497-18/BQNS8949718A.pdf
https://dl.mitsubishielectric.co.jp/dl/fa/document/techsheet/lvsw/bqn-s8-9497-04/BQNS8949704B.pdf

圧延機

圧延機とは

圧延機

圧延機とは、鉄鋼工場で使用されており、鉄を延ばすための設備です。

圧延は、鉄を延ばすことを指します。工場で作る鉄の最終的な厚みによって、圧延機の台数が決まります。圧延機は、モーターにて駆動するロールの間で鉄をつぶすことで延ばしていき、商品ごとに異なる、厚さ (幅) を目標値に制御しながら圧延を行います。

圧延する際は、炉で温められた鉄を温度を下げないうちに延ばすことが重要です。

圧延機の使用用途

圧延機は、鉄を延ばす際に使用されています。工場によって異なりますが、圧延機の主な流れとしては、炉から出てきた厚い鉄をまず大まかに延ばしていく粗圧延機が1台~5台程度あり、その後に実際の製品厚さへと仕上げる、仕上圧延機が5~8台程度あるのが一般的です。

なお、圧延機は粗圧延機と仕上圧延機に大別できます。粗圧延機は、リバース圧延という機能が備わっているものがあり、一度圧延した鉄を圧延機前へ戻し、再度同じ圧延機で圧延する方法です。この方法によって、厚い鉄をある程度の薄さまで圧延することができます。

圧延機の原理

圧延機は、2つのロールの間で鉄を延ばしていきますが、鉄を延ばすためには、ロールを押さえつけなければなりません。その押さえつける機能を圧下と呼び、電動または油圧で駆動します。

各圧延機ごとの出側の厚みを制御するために、電動圧下ならばスクリュー等へ位置検出器等を取り付けていきます。リニアに位置を検出することで、圧下量を計算し材料厚さを決めていきます。

油圧圧下の場合は、圧下機器内部のシリンダ位置をリニアに監視することで、材料厚さを算出しています。主に粗圧延機は電動圧下だけの場合が多く、仕上圧延機は電動と油圧圧下を合わせた圧下方式が多いです。

また、仕上圧延ではX線やγ線などの厚さ計と組み合わせ、厚さフィードバックをもとに、より目標厚さとの誤差を無くす制御方式のオートギャップコントロール (AGC) といった制御方式も採用されています。AGCを行う際は圧下位置だけでなく、圧延機速度や圧延機間の張力も重要となるため、これらも複合して制御を行っています。

圧延機の種類

圧延加工に用いられる主な圧延機として、下記が挙げれらます。

1. 2段圧延機

2段圧延機とは、上下2本のロール (作業ロール) で金属を挟み込む圧延機で、一番シンプルな構造をしています。20mm~30mm程度の粗圧延や、薄板圧延などに用いられます。

2. 4段圧延機

4段圧延機とは、2段圧延機のような作業ロールに追加でさらに2本のロール (支持ロール) を付け加えた構造をしています。4本のロールで金属を圧延しているわけではなく、作業ロールを支持ロールで挟み込むような構造です。作業ロールのたわみを支持ロールでおさえこむことで、精度の良い加工が可能となります。

3. 多段圧延機

多段圧延機とは、4段圧延機よりもさらに複数の作業ロールを持った圧延機です。多段圧延機はさまざまな形状がありますが、それぞれ多くの作業ロールを持つため、高い圧力をかけて硬い金属の加工が可能です。また、ロールの軸径を小さくし加工できるため、銀箔のような極薄の圧延が可能です。

圧延機のその他情報

圧延加工の種類

圧延機で圧延加工を行う時の温度によって、熱間圧延、冷間圧延、温間圧延の3種類に分けられます。

1.熱間圧延加工
熱間圧延加工は、材料の金属を加熱しながら圧延する方法です。900℃~1,200℃の熱で加工しやすいように金属を柔らかくさせた状態で。ロールに通過させて圧延していきます。

高温により加工性が良く、粘り強い材料が得られるのが特徴です。ただし、表面が酸化することで白っぽくなります。

2. 冷間圧延加工
冷間圧延加工は、常温で圧延する方法です。熱間圧延のように加熱はしませんが、金属を圧延する過程で発生する熱で多少温度が上昇します。

熱間圧延より寸法精度が高く、表面に光沢があります。

3. 温間圧延加工
温間圧延加工は、熱間圧延と冷間圧延の中間的な圧延方法です。熱間圧延と冷間圧延のデメリットを補うような仕上がりになります。アルミホイルの生産にて使用される場合が多いです。

参考文献
https://oonoroll.co.jp/

ケーブルストリッパ

ケーブルストリッパとは

ケーブルストリッパ

ケーブルストリッパとは、電線やケーブルの絶縁保護被膜を綺麗に剥がし、中の導線を露出させるために使用される便利な工具です。

ワイヤーストリッパとも呼ばれ、ニッパーのように電線を切断するのではなく、外側の絶縁被膜のみを切断して、導線をむき出しにすることが可能です。ケーブルストリッパには、さまざまな種類があります。

手動タイプは、手で被膜を剥がせますが、技術と慣れが必要になる場合があります。一方で、自動タイプは挟むだけで簡単に被膜を剥がせるため、初心者にも扱いやすいです。

電気工事やDIYの現場で重宝されるケーブルストリッパは、絶縁被膜を破損させずに導線を露出させるため、安全で確実な接続作業に不可欠なアイテムです。適切なサイズや種類のケーブルストリッパを使うことで、効率的で正確な作業を行うことが可能となります。

ケーブルストリッパの使用用途

ケーブルストリッパは、電気工事やDIYなど、さまざまな場面で活躍する工具です。その使用用途は多岐にわたり、ケーブルの太さや露出させる箇所、作業工程によって使い分けられることが特徴です。

1. 手動タイプのケーブルストリッパ

手動タイプのケーブルストリッパは、ケーブルの先端だけを露出させる場合や、導線の露出幅を指定して作業を行いたい場合に適しています。また、多くの手動タイプのケーブルストリッパには、複数の切断刃が付いており、異なる太さのケーブルに対応可能です。

2. 自動タイプのケーブルストリッパ

自動タイプのケーブルストリッパは、簡単に挟むだけで被膜を剥がせるため、中間部分を部分的に露出させたい場合に便利です。電線の接続や修理作業がスムーズに行えます。

 

いずれのタイプも、適切に使い分けることで、安全かつ効率的な作業が可能となります。ケーブルストリッパを用いることで、電気工事やDIYの現場での作業品質が向上し、より確実な接続作業が実現可能です。それぞれの用途に応じたケーブルストリッパを選ぶことで、作業の幅が広がり、快適な作業が期待できます。

ケーブルストリッパの原理

ケーブルストリッパは、ハサミのような形状をした2つの刃を利用して、絶縁被膜だけを切断し、中の導線を傷つけないように設計されています。刃には、導線の直径に合わせた穴が空いており、複数の直径の異なる穴が設けられているため、さまざまな太さのケーブルに対応可能です。

手動タイプのケーブルストリッパでは、導線を露出させたい箇所に刃を挟み、刃が閉じるまで力を入れると絶縁被膜が切断されます。その後、刃を閉じたままケーブルの先端方向にスライドさせることで、絶縁被膜が剥がれ、導線が露出されます。作業前には、導線の直径とストリッパの穴の直径が同じであるか確認することが大切です。

自動タイプのケーブルストリッパでは、被膜を剥がしたい箇所を挟むだけで、簡単に絶縁被膜から導線を露出させられます。大量のケーブルの被膜を剥がす場合には、自動タイプのケーブルストリッパを使用することで、効率的に作業を進められます。

ケーブルストリッパのその他情報

ケーブルストリッパと併用する製品

ケーブルストリッパは、電気工事やDIYで頻繁に使用される工具ですが、作業の効率化や精度向上のために、他の機械と併用されることがあります。主にクリンプ工具、ワイヤーカッター、熱収縮チューブヒーターの3つの機械と併用されます。

1. クリンプ工具
クリンプ工具は、導線を露出させた後、コネクタや端子に圧着するために使用されます。ケーブルストリッパで絶縁被膜を剥がした後、クリンプ工具を用いて導線とコネクタを確実に結合できます。

2. ワイヤーカッター
ワイヤーカッターは、電線を切断するための工具で、ケーブルストリッパと併用されることが一般的です。絶縁被膜を剥がした後、必要な長さに導線を切断する際に活用されます。

3. 熱収縮チューブヒーター
熱収縮チューブヒーターは、熱収縮チューブを加熱して収縮させるための機器です。ケーブルストリッパで導線を露出させた後、接続部分に熱収縮チューブを被せます。ヒーターで加熱することで、接続部分を保護し、絶縁性を向上できます。

油入変圧器

油入変圧器とは油入変圧器

油入り変圧器とは、絶縁材料として油を使用した変圧器です。

油には主に鉱物油が使用されます。変圧器とは、2つのコイルを利用して電圧を変換する装置です。コイルはそれぞれ一次巻線と二次巻線と呼ばれ、巻線比率で一次と二次の電圧比率が決定します。

変圧器にはさまざまな種類がありますが、電力供給用途としては油入変圧器が最も広く使用されます。

油入変圧器の使用用途

油入変圧器は、さまざまな用途・分野で使用されています。最も主要な用途は送配電です。発電所で作り出した電力は、一般的に高電圧となります。

この電力は鉄塔などによって支持しつつ、送電線路へ送り出されます。油入変圧器を使用することで、この高電圧電力を変換して低電圧の配電線路に供給することが可能です。

低電圧となった電力は、一般の家庭や工場、商業施設などの需要場所へ送電されます。この需要場所でも油入変圧器を使用し、需要に適した電圧レベルに変換します。一般家庭ではAC100VまたはAC200Vなどの電圧が使用され、工場や商業施設ではAC200VやAC400Vが使用される場合があります。

油入変圧器の原理

油入変圧器は鉄心、コイル、油タンク、絶縁油などで構成されます。

1. 鉄心

変圧器の中心部には鉄心があります。鉄心はシリコン鋼板などを積層して作られ、磁気回路を形成しています。積層構造とすることによって磁気損失を最小限に抑え、効率的な電力変換を可能にします。

2. コイル

鉄心の周りには、高電圧側と低電圧側の巻線がそれぞれあります。銅線やアルミニウム線で作られており、電流が流れることで磁界が発生します。一般的な降圧変圧器の場合、高電圧側の巻線は少ない巻数で、低電圧側は多い巻数で巻かれています。

3. 油タンク

これらの部品は鋼鉄製タンクに収められます。タンクは絶縁油で満たされており、変圧器の構造を保護しつつ内部を絶縁しています。タンクにはフィンが付いていることが多く、冷却油の循環や熱の放散を助けます。

4. 絶縁油

絶縁油としては鉱油が広く用いられます。近年では環境に配慮して、ひまわり油や菜種油を使用した変圧器なども販売されています。高価な反面、漏洩事故による環境汚染を防ぐことが可能です。

また、絶縁油内部の有機ガスの濃度を分析することで、変圧器の劣化状況を監視可能です。変圧器が過熱するとエチレンエタンなどが発生し、部分放電によってアセチレンや水素が発生します。アセチレンは変圧器内部異常に起因するガスであるため、微量でも検出されてはならない有機ガスです。

油入変圧器の種類

油入変圧器は自冷式と強制冷却式に分類されます。

1. 自冷式

自冷式は、内部の油と冷却装置を使用して自然冷却されるタイプの変圧器です。タンクに取り付けられたラジエータなどを介して熱が放散されます。油入自冷変圧器は最も一般的な変圧器の形態であり、送配電システムに広く使用されます。

2. 強制冷却式

強制冷却式は、冷却装置によって強制的に油を循環させる変圧器です。強制循環により、冷却効果を増強することが可能です。ポンプやファンによって油を循環させることが多く、高負荷や高温環境での使用に適しています。

油入変圧器のその他情報

1. 油入変圧器の許容温度

油入変圧器が過熱してしまうと、絶縁油の強制劣化による絶縁不良が発生する危険性があります。最悪の場合は火災となる恐れもあります。したがって、使用温度を許容値以下に保つことは管理上重要な項目です。

一般に広く使われている油入変圧器の最高許容温度は105℃です。ただし、外部気温や温度差にも左右されるため、95℃以下程度で管理されます。

2. 油入変圧器の消防法での扱い

油入変圧器に使われる鉱油は、一般に第3石油類です。大型の油入変圧器内絶縁油は2,000Lを超えるため、油のみであれば消防法上危険物に該当します。ただし、変圧器が電路に繋げられた状態では電気事業法としての管理が適用され、危険物として扱われなくなります。

古い変圧器を解体して電路から切り離した場合は、危険物として扱われます。具体的にはさまざまなケースが想定されるため、消防署などに確認して対応する必要があります。

参考文献
https://www.asia-souken.co.jp/
https://www.daihen.co.jp/products/electric/faq/other/q01.html
http://fa-faq.mitsubishielectric.co.jp/faq/show/18389?site_domain=defaul

断路端子台

断路端子台とは

断路端子台は、通常の端子台と同様の、端子が圧着されているケーブルとケーブルを電気的に接続する機能に加え、断路機能を有しているため端子を外すことなく機構部を手で引っ張る等の動作を行うだけで、簡単に電気的に縁を切ることのできる端子台です。

断路する際にビスを緩める必要がないため、通電中であっても充電部に触れる必要がなく感電のリスクがありません。また端子と端子台はビスを用いて接続されています。断路端子台のことを別名でジスターということもあります。

断路端子台の使用用途

断路端子台は主に制御盤や中継盤内で多く使用されています。その多くが24Vから220V程度の低電圧範囲で使用されています。

具体的な使用方法としては、センサーや計装機器への電源供給の途中に組み込まれてあり、該当センサーの故障等でセンサーを不使用にしたい時などに断路端子操作で簡単に不使用にすることができるため使用されています。

また、センサーの補修などを行う際も断路端子を抜くだけで良いため、上位MCBを開放する必要がなくセンサーを個別で補修することが可能となります。

断路端子台の原理

基本的な端子台は、向かい合わせとなっている端子台部へ、それぞれ端子が圧着されたケーブルをビスで取り付けることで、内部で銅などの導体を通じて電流が流れ、電気的に2つのケーブルを接続することができます。

断路端子台は、断路機構部へも導体が取り付けてあり、通電時はこの断路部の導体を通じて2つのケーブルを接続しています。通電を遮断する際は断路部を引っ張ることで、それぞれの端子部をつなぐ中間の導体が無くなるため電路を遮断することができます(基本的に断路操作は無電圧時に行います)。

電圧が高い部分へ使用すると通電状態からの遮断時に、アークが発生し感電や焼損の恐れがあるため適していません。また、端子台はセパレーターと呼ばれる絶縁物が取り付けてあり、隣り合う端子同士に電流が流れないように、絶縁することで短絡を防いでいます。セパレーターも高電圧(高電流)の回路で使用すると焼損し、絶縁破壊を起こす危険性があります。

参考文献
https://www.toho.yoshida-elec.com/products/78

整流器

整流器とは

整流器

整流器とは半導体素子などで整流する機器です。

整流とは交流電流を直流電流に変換することで、ダイオードなどが電流を一方向のみに流す性質を利用して製作されます。

整流器の使用用途

整流器は直流電源を供給するために広く使用されます。

身近な例では、PCやスマートフォン給電用のACアダプタです。産業用途では、大型モータ制御や電気分解に使用されます。サイリスタなどの整流器は、古くからモーター制御に使用されてきました。

電車は直流モーターを動力源とし、整流器を用いて給電してきた代表的な機械です。近年では交流モーターの速度制御が一般的となり、新幹線路線などでは交流モーターを動力源とした電車が普及しています。交流モーターを速度制御するインバータでは、バイポーラトランジスタIGBTと呼ばれる半導体が使用されます。

整流器の原理

整流器は、半導体によって交流電源を直流電源へ変換します。半導体には様々な種類があり、一方向のみ電流を流すダイオードや、ゲートに信号が来た時のみ電流を流すサイリスタなどがあります。

これらの半導体はいずれもp型半導体とn型半導体を組み合わせたpn接合によって作られ、半導体のエネルギー準位差異を利用しています。

整流器のその他情報

1. 整流器に使用される半導体

ダイオードはp型半導体とn型半導体から構成されます。n型に比べp型はエネルギー準位が高いため、p型の正孔はn型へ流れやすい反面、n型の電子はp型へは流れづらくなります。これにより、p側の電位が高い場合は電流が流れ、n側の電位が高い場合は電流が流れません。

p側端子はアノード、n側端子はカソードです。サイリスタはp、n、p、nの順に半導体が積層され、中間のp部分からゲート端子を取り出します。このゲート部からカソード側へ電圧を掛けることで、アノードからカソードへ電流を流せるようになります。

これをターンオンと言います。ターンオンしたサイリスタをターンオフさせたい場合は、カソード側の電圧をアノード以上にすることで元の状態へ戻すことができます。

2. 整流器の工業や家庭での役割

整流器は工場や家庭で古くから使用されています。家庭用固定電話に使われる電気は、整流器で直流変換された直流電圧です。パソコンやスマートフォンの充電にも用いられるACアダプタにも整流器が内蔵します。家庭用エアコンは温度調整をインバータで行っており、インバータ電子回路内部には整流器が必ず用いられます。

工業にも現代まで広く使用されています。電車も整流器による直流給電線路が多数現存します。アルミメッキを行う工場では、整流器を用いて電解精製することでメッキを施しています。一部のアーク炉などでは直流電流を使用しており、電源に整流器が用いられます。

将来的にも、整流器の需要は向上すると予想されます。電気自動車は長距離走行に耐えるために、電池を多く積載しています。電池の充電は交流電源では行うことができず、整流器を用いて整流しなければなりません。このように、整流器は重要な役割を果たしているため、今後も広く使用されます。

3. 整流器の電圧

整流器によって整流された電源電圧は、供給元に合わせて変化させることができます。ダイオードで整流された電圧は、コンデンサやリアクトル、抵抗を用いて変化させます。ただし、抵抗を用いて変化させた場合は熱損失を発生させます。

電圧を変化させる場合、現在はサイリスタやIGBTを用いた整流器が広く用いられます。点弧角を変化させるだけで電圧を連続的に変化させることができるためです。

4. 整流器の容量

整流器も電気部品の一部であるため、電流の許容値が存在します。許容電流によって容量も決定されます。

配線や接触器接点などと同様に、大型化することで整流器の容量は大きくなります。整流器の容量は個々の部品が耐えうる電流値や電圧値で決まり、最も電気的に弱い部品が許容値を決定します。一般的に、平滑化するコンデンサの容量によって整流器全体の容量が決まる場合が多いです。

参考文献
https://electric-facilities.jp/denki7/se/004.html

単相変圧器

単相変圧器とは

単相変圧器

単相変圧器とは、一次側巻線または二次側巻線が単相の変圧器です。

主に単相交流電力の変換に使用されます。単相変圧器は、1つの入力巻線1つ以上の出力巻線から構成されます。単相変圧器は、比較的簡単な構造を持ちます。

一次巻線と二次巻線からなるシンプルな設計であり、製造と保守が容易です。そのため、比較的低コストで入手できる点が特徴として挙げられます。

また、一般的に小型でコンパクトな設計が可能です。これにより、スペースの制約のある場所や移動式機器にも適しています。三相変圧器と比較して軽量なため、取り扱いや設置が容易です。

単相変圧器の使用用途

単相変圧器は主に商業施設や産業施設などで使用され、電力の配電や制御に広く使われています。主な目的は電力を送電用の高電圧から、低電圧の使用電圧に変換することです。

電力ネットワークの送配電線は、AC6.6kV以上の高電圧で電力を配っています。電圧が高いほど電圧降下などのロスを起こしにくいため、送配電業者としては都合が良いためです。ただし、一般的な家電はAC100VやAC200Vで駆動する機器がほとんどで、このままの電圧では使用できません。

そこで、単相変圧器などによって電圧を低下させます。送配電網は銅線使用量を必要最小限にするために、3相電源として配電するのが一般的です。3相のうち1相を使用し、単相で電気を分配する場合があります。

鉄道車両においても、単相変圧器が使用されることもあります。高電圧の交流電力を変換して、列車や地下鉄、路面電車などの照明電源や空調電源として利用されます。

単相変圧器の原理

単相変圧器の原理は、電磁誘導の法則に基づいています。単相変圧器は、一次巻線と二次巻線からなる磁気回路で構成されます。一次巻線には入力電圧が供給され、二次巻線からは出力電圧が取り出されます。

一次巻線に入力される交流電圧は、変圧器の二次巻線に流れる電流によって磁界が生成されます。発生した磁界は鉄心 (磁気回路) を通じて、二次巻線に伝達されます。鉄心は磁束の経路として機能し、磁束の漏れを最小限に抑える役割を果たします。

二次巻線には、一次巻線の磁界によって誘導された電圧が生じます。二次巻線の巻き数に応じて、入力電圧とは異なる出力電圧が生成されます。巻線のタップ位置を変えることで、出力電圧の調整も可能です。

変圧比は、一次巻線の巻数と二次巻線の巻数の比によって決まります。変圧比は出力電圧と入力電圧の比として表され、二次巻線の巻き数が多い場合には降圧変圧器、一次巻線の巻き数が多い場合には昇圧変圧器となります。

単相変圧器の種類

単相変圧器には大きく分けて2種類の構造があり、単相複巻変圧器と単相単巻変圧器と呼ばれる構造があります。

1. 単相複巻変圧器

単相複巻変圧器は、一次巻線と二次巻線が別々の巻線として物理的に絶縁された変圧器です。一次巻線には入力電圧が供給され、二次巻線からは出力電圧が取り出されます。一次巻線と二次巻線は絶縁物質や鉄心によって絶縁されており、絶縁性が保たれます。

2. 単相単巻変圧器

単相単巻変圧器は、1つの巻線が入力側と出力側の両方で使用される変圧器です。入力電圧と出力電圧を共有するため、一次巻線と二次巻線は同じ巻線です。単相複巻変圧器よりもコンパクトで軽量な設計が可能ですが、絶縁が必要な場合には適さないことがあります。

一般的に単相単巻変圧器は材料や製造コストが単相複巻変圧器に比べて低くなるため、コストを抑えたい場合には単相単巻変圧器が適しています。

小型設計が可能であり、天井クレーン上部などのスペースが制限されている場所や携帯製品に適しています。ただし、単相複巻変圧器における絶縁性の観点から、現在広く使用されているのは単相複巻変圧器です。

単相変圧器の選び方

単相変圧器を選ぶ際には、電圧や容量、負荷の特性などを考慮して選定します。

1. 電圧

必要な入力電圧と出力電圧を確認します。変圧器は入力電圧を出力電圧に変換するために使用するため、要件に合った変圧器を選ぶ必要があります。

2. 容量

必要な電力容量を考慮して変圧器を選ぶことも必要です。電力容量は変圧器が供給する電力の最大量を示し、負荷に対して十分な電力を供給できるように選定する必要があります。

3. 負荷の特性

接続する負荷の特性も考慮します。負荷の種類や動作条件に応じて、適切な変圧器を選択する必要があります。モーターなど負荷を接続する場合、起動時の負荷特性を考慮して適切な変圧器容量を選定することが大切です。

参考文献
https://www.daihen.co.jp/technologygeeks/cat01/cat01_01/29/

パルストランス

パルストランスとは

パルストランスとは、電力を伝送する目的ではなく、パルス波形上の交流信号を伝送するためのトランスです。

主に電子機器内の通信回路内に搭載されています。パルストランスは、磁性体コアと巻線で構成されており、磁性体コアに2つの巻線、1次巻線と2次巻線が巻き付けられた構造をしています。 パルストランスは、可動部分や経年劣化要素部品がほとんどなく、高寿命かつ信頼性の高い電子部品です。

入力信号源と出力信号の絶縁を確保した状態で、信号を伝送する際に用いられます。変圧比は1:1のものが用いられるのが主流です。パルストランスは、電源トランスのように電力を伝送する目的ではないため部品を小型にすることができます。

パルストランスの使用用途

パルストランスは、電子機器内の通信回路に搭載され、 通信用信号の送受信を行うための伝送媒体として用いられます。 主にLAN通信やEthernet通信等の長距離のケーブルを用いて通信を行う電子機器内の通信回路で使用されることが多いです。

通信用に長距離のケーブルを使用する場合、外部からのノイズの影響を受けやすくなるため、通信の入力側と出力側を絶縁する用途でパルストランスが使用されます。

小型化が可能な部品なので通信用コネクタに内蔵されているケースも多いですが、通信用コネクタに内蔵されていない単品のパルストランスを使用する場合は、基板上にある通信用コネクタの近くにパルストランスを配置します。

パルストランスの原理

パルストランスのは、大まかには電圧を変換するためのトランス (変圧器)と同様です。一次側と二次側にコイルがあり、1つの環状の鉄心に一次側、二次側のコイルが巻き付けられた構造を成します。

パルストランスへ入力される信号、すなわち電流が一次側のコイルに流れる時、電磁誘導により鉄心に磁界が生じます。その磁界が鉄心を通じて二次側へ伝搬され、それにより二次側に電磁誘導が起こり二次側から電流が出力される原理です。

一般に用いられる電圧を変圧するためのトランスは一次側にVin端子・GND端子、二次側にVout端子・GND端子を持つ4端子構成ですが、 パルストランスの場合は4端子以上のものがよく使用されます。 通信には送信と受信があり、一次側から二次側へ信号を送ったり、 二次側から一次側へ信号を送ったりする必要があります。

双方の信号を一つのトランスで伝送することは不可能なため、パルストランスでは送信用端子と受信用端子を備えているものがあります。 実際には、1つの素子の中に送信用のトランスと受信用のトランスが存在する構成です。

パルストランスのその他情報

1. ノイズ対策

パルストランスは信号の入力側と出力側で絶縁されているため、出力側から送る通信信号に外来ノイズが乗った際、パルストランスが外来ノイズを遮断し、通信に必要な信号のみを入力側へ伝送する働きをします。パルストランスは、パルス信号を伝送すると同時に、静電気や外来ノイズの影響を少なくし、電子機器の内部を守る役割もあります。

2. 通信回路故障時の保護

電子機器内の通信回路が故障し、通信回路から異常な電圧が出力された場合、パルストランスが異常な電圧を送信先の通信機器に流入することを防ぐ働きも持っています。 パルストランスを用いると各電子機器の通信回路が絶縁されるため、1つの電子機器が故障してもその他の電子機器が故障する可能性が低くなります。

3. 使用上の注意事項

パルストランスを使用した場合のデメリットは、巻線の材質、特性によっては、パルス信号波形に歪みが生じる事で信号品質が悪くなったり、パルス信号波形の電圧が減衰する場合があることです。パルストランスを使用する場合は、オシロスコープ等の計測器で実際のパルス信号波形を観測し、 電子機器が採用する通信仕様や使用する通信ICの電気仕様と整合しているかを波形評価で確認する必要があります。

参考文献
https://emb.macnica.co.jp/articles/10211/

スイッチングレギュレータ

スイッチングレギュレータとは

スイッチングレギュレータ

スイッチングレギュレータとは、電子回路などの電源ICとして用いられるDC/DCコンバータの変換方式のことです。主に電子回路内において、直流電圧の昇圧・降圧、さらには負電圧へ反転させる際に採用される変換方式を指します。

DC/DCコンバータにはスイッチングレギュレータとリニアレギュレータの2種類の変換方式が使用されています。スイッチングレギュレータは、リニアレギュレータに比べ、変換効率が高く消費電力が小さいため、発熱による問題が少ないというメリットがあります。しかし、外付け素子が多くなり設計が難しくなるというデメリットを有します。

スイッチングレギュレータの使用用途

スイッチングレギュレータは電子回路内に供給される直流電圧を昇圧、降圧、または負電圧へ反転させ、電圧を安定的に素子へ供給するために用いられます。電子回路に用いられる半導体部品の多くは直流電圧で動作します。

家庭用電源など、AC100V電源から供給される交流電圧を直流電圧に変換し、さらに半導体部品などの動作範囲内の電圧(24Vや3.3V)に降圧して供給しなければならないため、レギュレータは必要不可欠です。DC/DCコンバータの変換効率を高くし、消費電力をなるべく抑えたい時に、スイッチングレギュレータの方式が多く採用されています。

スイッチングレギュレータの原理

スイッチングレギュレータは、名前の通りスイッチ素子を用いた変換方式であり、出力をON/OFFで制御することにより電圧を変換しています。通常のスイッチングレギュレータの構成素子は、スイッチ素子としてのパワーMOSFETやショットキーバリアダイオードなどが代表例です。

平滑整流回路としてインダクタ(L)や容量(C)が用いられ、LCはノイズフィルタ用途にも使用されます。ここでは、24Vの入力電圧を5Vに降圧し出力させる動作の原理を例に解説します。

まず、電源供給時にスイッチ素子をONし、出力電圧が0Vから5Vまで上昇するのを待ちます。その後、出力電圧が5Vまで上がったら、スイッチ素子をOFFさせ、5Vより大きい電圧が出力されるのを抑制します。スイッチ素子をOFFにすると、今度は5Vから電圧値が下がるので、規定の電圧値を下回ったら再度スイッチ素子をONにして、5Vまで上昇させます。

このスイッチ素子のON/OFF動作を高速で繰り返すのが、24Vの入力電圧を5Vに変換し降圧した電圧を出力する原理です。ただし、上記のようにスイッチ素子をON/OFFし電圧を変換したものをそのまま出力させると、5V付近を上下し、少し歪んだ電圧が出力されてしまいます。

この歪みを無くすために、ON/OFF動作で得られた電圧を先程のLC平滑整流回路に通します。これにより、歪みの少ない安定した直流電圧が出力されるようになります。

スイッチングレギュレータのその他情報

1. スイッチングレギュレータの昇圧タイプと降圧タイプについて

スイッチングレギュレータは、入力電圧と出力電圧の関係から3つのタイプに分かれます。「出力電圧が入力電圧より低い降圧タイプ」「出力電圧が入力電圧より高い昇圧タイプ」「入力電圧と出力電圧の関係が高低どちらも対応で可能な昇降圧タイプ」です。

  • 降圧タイプのメリット
    損失が非常に低く、出力電圧の設定も入力電圧と出力電圧の差を大きくすることも可能。
  • 昇圧タイプのメリット
    定電圧の電源出力を高い電圧に上げることが可能。ただし、入力電圧に対して出力電圧を高く設定しすぎると、帰還の安定性を保つのが難しくなる。
  • 昇降圧タイプのメリット
    入力電圧がある程度範囲を持ってしまう場合でも、安定した出力電圧を上回ったり下回ったりしても問題がない。
    例:電池駆動などの場合、放電状態と満充電状態で入力電圧の範囲に差ができてしまう場合など

2. スイッチングレギュレータとリニアレギュレータの違い

スイッチングレギュレータとリニアレギュレータは、さまざまな点において差があります。例えば、リニアレギュレータは原理上降圧しかできないのに対し、スイッチングレギュレータは降圧・昇圧・昇降圧をすることができます。

また、電力の変換効率は、スイッチングレギュレータの方がリニアレギュレータよりも一般的に高いです。出力電力は放熱設計にもよりますが、スイッチングレギュレータのほうが大電力出力が可能です。

ノイズに関してはリニアレギュレータの方が小さく、スイッチングレギュレータはスイッチングによるノイズが発生します。それに加えて、リニアレギュレータの方が設計が簡単で部品数が少なく、スイッチングレギュレータの方が設計が複雑で部品数が多くなる場合が大半です。

スイッチングレギュレータの一番のメリットは、効率が高いことです。選定の際には、必要な仕様とメリット・デメリットを把握した上で、レギュレータの選定を行うことが重要です。

3. スイッチングレギュレータの活用事例

スマートフォン向け用途
スイッチングレギュレータは、その降圧・昇圧・昇降圧が可能で高効率動作できるメリットを活かし、現在スマートフォン向けに非常に多く用いられています。スマートフォンの電源は現在リチウムイオンバッテリーが主流です。

この電圧値の場合、充電直後は4.7Vですが、放電完了時には3V近くまで低下します。スマートフォン内部のBB(ベースバンド)やRFIC、カメラモジュールなどの様々なIC回路においては微細CMOSが用いられており1.8Vや1.2Vといった低電圧動作が標準の半導体デバイスも多いです。よって電池出力4.7Vから1.2V基準電圧への電圧変換用のPMIC内にスイッチングレギュレータは多用されています。

また電波送信用のRF(高周波)パワーアンプの電源には、送信時の消費電流を極力低減させたいために、スイッチングレギュレータ(DC-DCコンバータ)を通常用います。変調時の歪改善とパワーアンプの効率改善を両立させるべく、変調波形のエンベロープに電源電圧の波形を高速追従させるエンベロープトラッキング(ET)という手法も実用化されています。

車載向け用途
EV(電気自動車)に代表される車載向け電源用途にも、スイッチングレギュレータは多く用いられています。EVでの電源範囲は車のモーター駆動用電池の数100Vから一般の鉛蓄電池12V対応と非常に広範囲に渡るため、さまざまなスイッチングレギュレータ(DC-DCコンバータ)が使用されています。

スイッチングレギュレータの今後のトレンドとして小型・高効率化は避けて通れない課題ですが、車載ゆえの高出力(高電流)に対応したICパッケージの放熱対策や、高い信頼性を確保するための実装技術は非常に重要な項目です。

参考文献
https://www.tij.co.jp/ja-jp/power-management/non-isolated-dc-dc-switching-regulators/overview.html
https://techweb.rohm.co.jp/knowledge/dcdc/s-dcdc/02-s-dcdc/88

ACモーター

ACモーターとは

ACモーター

ACモーターとは、交流電源で駆動する電動機のことです。

ACとはalternating currentの略で、時間とともにプラスとマイナスが入れ替わる周波数を持つ電流のことを指します。このような電流を出力する電源を交流電源 (AC電源) といいます。

ACモーターは、大きくステーターとローターで構成されています。

  • ステーター : 電磁鋼板にコイルを巻線したものです。
  • ローター (回転子) : 電磁鋼板で構成されるローターコアに、アルミやコイルの巻線で導体をかご状に構成したものです。

直流電源で駆動する電動機を直流モーター、またはDCモーター (英: direct current motor) といいます。

ACモーターの使用用途

ACモーターはポンプなどの機器や、工場内の搬送用のコンベアやローラー、ファンなどを回転させるために用いられています。回転させたい設備とローターの出力軸をカップリングと呼ばれる機器などでつなぎ合わせ使用します。

ACモーターは、直流電源にて駆動するDCモーターに比べブラシと呼ばれる消耗部がないといった点でメンテナンス性に優れ、幅広く使用されています。

元々は速度制御で運転するにはDCモーターの方が扱いやすいとされていましたが、ACモーターでも速度制御が一般的にできるようになったため、より一層使用用途が高まっています。

ACモーターの原理

回転磁界

図1. 回転磁界の発生原理

 

ACモーターは120度ずつ位相のずれた3相交流電源を固定子のコイルに与え、コイルに流れる電流により電磁鋼板が電磁石となり、電動機内に磁界を形成します (右ねじの法則により電磁石の極性が決まります) 。

交流電源は時間とともに位相がずれるため、時間に応じて磁界の向きが回転します。

図1に回転磁界の発生原理を示します。3相交流電源のU相、V相、W相の位相が変わるにつれ、ステーターの磁界の向きが変わる (図1では、回転磁界は反時計回りに回転する) ことがわかります。

磁界が回転することで回転子へ渦電流が生じ、渦電流と磁界により回転力が生じ、回転子が回転します。回転力は、フレミングの左手の法則により方向が決まります。

この回転原理はアラゴの円盤の原理と同じものです。

また、固定子の数を極数 (ポール数) といい2ポールや4ポールなどと表します。回転磁界Nsの速度はこのポール数pと電源の周波数fとで定まりNs=120f/pで求めることができます。

回転子の速度Nは後述するACモーターの種類によっても異なりますが、誘導モーターは回転磁界よりも少し遅い速度で回ります。回転磁界と回転子の速度差を「すべり」と呼ぶパラメーターsを使って、N=120f(1-s)/pで表します。

ACモーターの種類

ACモーターの種類

図2. ACモーターの種類

 

AC モーターは、主に図2のように分類されています。

大きく同期モーター、誘導モーターに分かれますが、AC電源の種類によって分類することもできます。

  • 単相交流モーター
    家庭に配電されているようなAC100Vを電源とします。洗濯機用モーターなど、家電に使われるモーターがこの分類になります。
  • 三相交流モーター
    工場等に配電されているような三相電源で動くポンプ用、コンベヤ用のモーターがこの分類になります。日本ではAC200Vが主流です。

また、直流電源からACモーターを駆動することもできます。この場合、直流を三相交流に変換するインバーターを合わせて利用します。

1. 同期モーター

同期モーターは、回転磁界とローターとの回転速度にすべりが生じない (同期する) モーターのことで、モーターの極数 (ポール数) と電源の周波数によって回転速度が決まります。

同期モーターは、ローターの構造によって様々な種類に分かれていますが、ここでは比較的よく使われる永久磁石型について説明します。

永久磁石型の同期モーターは、ローターコアに磁石を配置し、磁石の磁界が電源の回転磁界と同期することで回転します。

磁石をローターコア表面に固定したものを表面磁石型 (Surface Permanent Magnet, SPM) 、ローターコア内部に埋め込んだものを埋め込み磁石型 (Interior Permanent Magnet, IPM) と呼びます。

2. 誘導モーター

誘導モーターのローター構造

図3. 誘導モーターのローター構造

 

誘導モーターは、インダクションモーターとも、非同期モーターとも呼ばれています。

誘導モーターはローターの回転速度が同期速度よりも若干遅い (電源の回転数とローターの回転数が非同期である) という特徴があります。

図3に誘導モーターのローター構造を示しました。誘導モーターは、図のようにアルミなどの導体をかご型に構成するのが一般的です。

交流電源からの回転磁界によって、電磁誘導の原理からかご型の導体に誘導電流が発生し、フレミングの法則から電流と磁界の作用で力が発生します。この力によって、ACモーターは回転し、出力軸につながる機械を動かすことができます。

参考文献
https://www.orientalmotor.co.jp/tech/reference/ac_motor01/
https://www.nidec.com/jp/technology/motor/basic/00006/
https://www.orientalmotor.co.jp/tech/webseminar/ac_kiso_1_6/
https://www.nidec.com/jp/technology/motor/basic/00026/