スイッチングレギュレータ

スイッチングレギュレータとは

スイッチングレギュレータ

スイッチングレギュレータとは、電子回路などの電源ICとして用いられるDC/DCコンバータの変換方式のことです。主に電子回路内において、直流電圧の昇圧・降圧、さらには負電圧へ反転させる際に採用される変換方式を指します。

DC/DCコンバータにはスイッチングレギュレータとリニアレギュレータの2種類の変換方式が使用されています。スイッチングレギュレータは、リニアレギュレータに比べ、変換効率が高く消費電力が小さいため、発熱による問題が少ないというメリットがあります。しかし、外付け素子が多くなり設計が難しくなるというデメリットを有します。

スイッチングレギュレータの使用用途

スイッチングレギュレータは電子回路内に供給される直流電圧を昇圧、降圧、または負電圧へ反転させ、電圧を安定的に素子へ供給するために用いられます。電子回路に用いられる半導体部品の多くは直流電圧で動作します。

家庭用電源など、AC100V電源から供給される交流電圧を直流電圧に変換し、さらに半導体部品などの動作範囲内の電圧(24Vや3.3V)に降圧して供給しなければならないため、レギュレータは必要不可欠です。DC/DCコンバータの変換効率を高くし、消費電力をなるべく抑えたい時に、スイッチングレギュレータの方式が多く採用されています。

スイッチングレギュレータの原理

スイッチングレギュレータは、名前の通りスイッチ素子を用いた変換方式であり、出力をON/OFFで制御することにより電圧を変換しています。通常のスイッチングレギュレータの構成素子は、スイッチ素子としてのパワーMOSFETやショットキーバリアダイオードなどが代表例です。

平滑整流回路としてインダクタ(L)や容量(C)が用いられ、LCはノイズフィルタ用途にも使用されます。ここでは、24Vの入力電圧を5Vに降圧し出力させる動作の原理を例に解説します。

まず、電源供給時にスイッチ素子をONし、出力電圧が0Vから5Vまで上昇するのを待ちます。その後、出力電圧が5Vまで上がったら、スイッチ素子をOFFさせ、5Vより大きい電圧が出力されるのを抑制します。スイッチ素子をOFFにすると、今度は5Vから電圧値が下がるので、規定の電圧値を下回ったら再度スイッチ素子をONにして、5Vまで上昇させます。

このスイッチ素子のON/OFF動作を高速で繰り返すのが、24Vの入力電圧を5Vに変換し降圧した電圧を出力する原理です。ただし、上記のようにスイッチ素子をON/OFFし電圧を変換したものをそのまま出力させると、5V付近を上下し、少し歪んだ電圧が出力されてしまいます。

この歪みを無くすために、ON/OFF動作で得られた電圧を先程のLC平滑整流回路に通します。これにより、歪みの少ない安定した直流電圧が出力されるようになります。

スイッチングレギュレータのその他情報

1. スイッチングレギュレータの昇圧タイプと降圧タイプについて

スイッチングレギュレータは、入力電圧と出力電圧の関係から3つのタイプに分かれます。「出力電圧が入力電圧より低い降圧タイプ」「出力電圧が入力電圧より高い昇圧タイプ」「入力電圧と出力電圧の関係が高低どちらも対応で可能な昇降圧タイプ」です。

  • 降圧タイプのメリット
    損失が非常に低く、出力電圧の設定も入力電圧と出力電圧の差を大きくすることも可能。
  • 昇圧タイプのメリット
    定電圧の電源出力を高い電圧に上げることが可能。ただし、入力電圧に対して出力電圧を高く設定しすぎると、帰還の安定性を保つのが難しくなる。
  • 昇降圧タイプのメリット
    入力電圧がある程度範囲を持ってしまう場合でも、安定した出力電圧を上回ったり下回ったりしても問題がない。
    例:電池駆動などの場合、放電状態と満充電状態で入力電圧の範囲に差ができてしまう場合など

2. スイッチングレギュレータとリニアレギュレータの違い

スイッチングレギュレータとリニアレギュレータは、さまざまな点において差があります。例えば、リニアレギュレータは原理上降圧しかできないのに対し、スイッチングレギュレータは降圧・昇圧・昇降圧をすることができます。

また、電力の変換効率は、スイッチングレギュレータの方がリニアレギュレータよりも一般的に高いです。出力電力は放熱設計にもよりますが、スイッチングレギュレータのほうが大電力出力が可能です。

ノイズに関してはリニアレギュレータの方が小さく、スイッチングレギュレータはスイッチングによるノイズが発生します。それに加えて、リニアレギュレータの方が設計が簡単で部品数が少なく、スイッチングレギュレータの方が設計が複雑で部品数が多くなる場合が大半です。

スイッチングレギュレータの一番のメリットは、効率が高いことです。選定の際には、必要な仕様とメリット・デメリットを把握した上で、レギュレータの選定を行うことが重要です。

3. スイッチングレギュレータの活用事例

スマートフォン向け用途
スイッチングレギュレータは、その降圧・昇圧・昇降圧が可能で高効率動作できるメリットを活かし、現在スマートフォン向けに非常に多く用いられています。スマートフォンの電源は現在リチウムイオンバッテリーが主流です。

この電圧値の場合、充電直後は4.7Vですが、放電完了時には3V近くまで低下します。スマートフォン内部のBB(ベースバンド)やRFIC、カメラモジュールなどの様々なIC回路においては微細CMOSが用いられており1.8Vや1.2Vといった低電圧動作が標準の半導体デバイスも多いです。よって電池出力4.7Vから1.2V基準電圧への電圧変換用のPMIC内にスイッチングレギュレータは多用されています。

また電波送信用のRF(高周波)パワーアンプの電源には、送信時の消費電流を極力低減させたいために、スイッチングレギュレータ(DC-DCコンバータ)を通常用います。変調時の歪改善とパワーアンプの効率改善を両立させるべく、変調波形のエンベロープに電源電圧の波形を高速追従させるエンベロープトラッキング(ET)という手法も実用化されています。

車載向け用途
EV(電気自動車)に代表される車載向け電源用途にも、スイッチングレギュレータは多く用いられています。EVでの電源範囲は車のモーター駆動用電池の数100Vから一般の鉛蓄電池12V対応と非常に広範囲に渡るため、さまざまなスイッチングレギュレータ(DC-DCコンバータ)が使用されています。

スイッチングレギュレータの今後のトレンドとして小型・高効率化は避けて通れない課題ですが、車載ゆえの高出力(高電流)に対応したICパッケージの放熱対策や、高い信頼性を確保するための実装技術は非常に重要な項目です。

参考文献
https://www.tij.co.jp/ja-jp/power-management/non-isolated-dc-dc-switching-regulators/overview.html
https://techweb.rohm.co.jp/knowledge/dcdc/s-dcdc/02-s-dcdc/88

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