パルストランス

パルストランスとは

パルストランスとは、電力を伝送する目的ではなく、パルス波形上の交流信号を伝送するためのトランスです。

主に電子機器内の通信回路内に搭載されています。パルストランスは、磁性体コアと巻線で構成されており、磁性体コアに2つの巻線、1次巻線と2次巻線が巻き付けられた構造をしています。 パルストランスは、可動部分や経年劣化要素部品がほとんどなく、高寿命かつ信頼性の高い電子部品です。

入力信号源と出力信号の絶縁を確保した状態で、信号を伝送する際に用いられます。変圧比は1:1のものが用いられるのが主流です。パルストランスは、電源トランスのように電力を伝送する目的ではないため部品を小型にすることができます。

パルストランスの使用用途

パルストランスは、電子機器内の通信回路に搭載され、 通信用信号の送受信を行うための伝送媒体として用いられます。 主にLAN通信やEthernet通信等の長距離のケーブルを用いて通信を行う電子機器内の通信回路で使用されることが多いです。

通信用に長距離のケーブルを使用する場合、外部からのノイズの影響を受けやすくなるため、通信の入力側と出力側を絶縁する用途でパルストランスが使用されます。

小型化が可能な部品なので通信用コネクタに内蔵されているケースも多いですが、通信用コネクタに内蔵されていない単品のパルストランスを使用する場合は、基板上にある通信用コネクタの近くにパルストランスを配置します。

パルストランスの原理

パルストランスのは、大まかには電圧を変換するためのトランス (変圧器)と同様です。一次側と二次側にコイルがあり、1つの環状の鉄心に一次側、二次側のコイルが巻き付けられた構造を成します。

パルストランスへ入力される信号、すなわち電流が一次側のコイルに流れる時、電磁誘導により鉄心に磁界が生じます。その磁界が鉄心を通じて二次側へ伝搬され、それにより二次側に電磁誘導が起こり二次側から電流が出力される原理です。

一般に用いられる電圧を変圧するためのトランスは一次側にVin端子・GND端子、二次側にVout端子・GND端子を持つ4端子構成ですが、 パルストランスの場合は4端子以上のものがよく使用されます。 通信には送信と受信があり、一次側から二次側へ信号を送ったり、 二次側から一次側へ信号を送ったりする必要があります。

双方の信号を一つのトランスで伝送することは不可能なため、パルストランスでは送信用端子と受信用端子を備えているものがあります。 実際には、1つの素子の中に送信用のトランスと受信用のトランスが存在する構成です。

パルストランスのその他情報

1. ノイズ対策

パルストランスは信号の入力側と出力側で絶縁されているため、出力側から送る通信信号に外来ノイズが乗った際、パルストランスが外来ノイズを遮断し、通信に必要な信号のみを入力側へ伝送する働きをします。パルストランスは、パルス信号を伝送すると同時に、静電気や外来ノイズの影響を少なくし、電子機器の内部を守る役割もあります。

2. 通信回路故障時の保護

電子機器内の通信回路が故障し、通信回路から異常な電圧が出力された場合、パルストランスが異常な電圧を送信先の通信機器に流入することを防ぐ働きも持っています。 パルストランスを用いると各電子機器の通信回路が絶縁されるため、1つの電子機器が故障してもその他の電子機器が故障する可能性が低くなります。

3. 使用上の注意事項

パルストランスを使用した場合のデメリットは、巻線の材質、特性によっては、パルス信号波形に歪みが生じる事で信号品質が悪くなったり、パルス信号波形の電圧が減衰する場合があることです。パルストランスを使用する場合は、オシロスコープ等の計測器で実際のパルス信号波形を観測し、 電子機器が採用する通信仕様や使用する通信ICの電気仕様と整合しているかを波形評価で確認する必要があります。

参考文献
https://emb.macnica.co.jp/articles/10211/

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