押出成形機

押出成形機とは押出成形機

押出成形機とは、投入された原料を加熱により軟化し、シリンダのスクリューで押し出すことで、チューブやシートといった成型品を生産する装置です。

ペレット状やミンチ状の原料から、ダイの形状に応じて丸形や角型のパイプやチューブ、ダクト、シート状といった種々の形状へと加工します。原料はホッパーから逐次投入されているため、連続的な生産が可能です。大量生産する際に重宝されています。

押出成型はダイで形状を与え、水冷や空冷といった冷却工程で硬化させることで形状を保持します。十分硬化した状態で引き取られ、切断されることで製品となります。押出成形の歴史は長く、用途も食品加工から金属・プラスチック成型まで幅広いです。

押出成形機の使用用途

押出成形機はアルミニウムのような金属や熱可塑性のプラスチック原料を、一度加熱溶融した後にダイによって形状を与え、成型品へと加工する際に使用されます。プラスチックを原料とする合成繊維の製造を例にすると、押出機出口から得られた溶融プラスチックを冷却しながら、引き延ばすように引き取ることで、ストランド状のプラスチックが得られます。

また、押出成型機は発泡体の連続生産も可能です。溶融した樹脂に発泡剤を圧入することによって溶融させます。ダイ出口から常圧に押し出される際に、圧力差によって発泡剤が抜けていくので発泡体が得られます。

工業分野以外に、ソーセージ、パスタやビーフン、ペットフードといった食品の加工も押出成形機の用途の一つです。押出成形機では、蒸気を加えて熱することが可能で、食品中の微生物を軽減し、でんぷんの糊化も同時に行うことができます。

押出成形機の原理

押出成形機の役割は、溶解させた原料に形状を与えるというシンプルなものに見えます。しかし、安定した製品を作るためには、原料や目標とする形状に応じて、各所の条件を最適化することが重要です。

まず、ホッパーに投入された原料を目詰まりを起こさないよう重量フィーダーなどを用いて一定の速度に調節して、シリンダに原料を充填していきます。 シリンダのヒーターで原料を加熱して柔らかくし、スクリューのスピードを調節しながら、適切な圧力をかけながら押し出すことで、チューブ状や棒状といった目的の形状を得ることが可能です。

押出物は冷却装置で形状が保持できるほど十分に冷やされた後、引き取られて切断されます。重要となるのは、各工程における温度管理です。押し出した材料の温度が高すぎると、粘度が高く冷却に時間を要するため、ダイ出口で与えた形状が保持できない恐れがあります。

また、冷却工程においても、冷却速度が早すぎると、成型品にひずみが生じるため、破断の原因になりかねません。押出機の加熱はヒーターからの加熱に加えて、スクリュと材料や材料同士間で生じる摩擦熱も発生します。

そのため、設定温度と実際の温度をモニタして、装置が自動で調整した場合でも、温度の振動 (ハンチング) が生じてしまいます。

押出成形機の種類

押出成形機は、押出機の構造やダイの形状、また後処理方法によって分類されます。さらに、押出機はスクリュの本数によって、一軸方式と多軸方式にわけることができます。

原料が複数の場合、溶融だけではなく、均一な混錬が求められるため、混錬性能の高い多軸の押出機が用いられることが多いです。原料に応じて、スクリュの構成や回転方向を決める必要があります。

原料の成型品の形状は、押出機のダイと呼ばれる口金の形によって大きく決まります。そのため、押出成型の種類は、このダイの形状や後工程によって呼びわけされることが多いです。代表的な成型として、チューブ状や棒状、シート状が挙げられます。

スタンダードな形状の他にも、複雑な形状に成型したり、多層化した成型品も得たりすることができます。また、発泡剤を投入することで押出発泡品も製造可能です。

参考文献

https://www.keyence.co.jp/ss/products/sensor/plastic-molding/glossary/#die

蒸着装置

蒸着装置とは

蒸着装置

蒸着装置は、減圧下で物質を気化させて対象物上に製膜する真空蒸着 (VD) を行う装置です。

蒸着装置を用いることで、対象物上に平滑な塗膜を形成することができ、その膜厚や組成の制御をすることも可能です。

蒸着装置の使用用途

蒸着装置ではアルミニウムなどの金属材料や有機無機材料など様々な材料での成膜が可能です。

蒸着装置は下記のような用途で利用されます。

  • 光学薄膜 (レンズの反射防止膜、特殊ミラーなど)
  • 磁気テープ (オーディオテープやビデオテープなど)
  • 半導体 (有機EL、LED、太陽光電池など)
  • 電子部品 (抵抗やコンデンサ、半導体集積回路など)
  • 食品包装材 (スナック菓子などの袋に用いられているアルミ蒸着フィルムなど)
  • 分析用途 (試料調製)

蒸着装置の原理

図1-蒸着装置の原理イメージと液相成長法

図1. 蒸着装置の原理イメージと液相成長法

ロータリーポンプやターボ分子ポンプなどでチャンバー内を減圧状態にし、蒸着したい材料を気化させて、離れた位置にある対象物上に堆積させます。減圧状態にすることで、チャンバー内の不純物を取り除き、気化した物質の拡散性が向上し、密着性がよく平滑な膜を作製することができます。

物質の表面に製膜する方法としてメッキが有名ですが、メッキなどは液相から原料が供給されるのに対し、蒸着は気相から原料が供給されるという違いがあります。

蒸着装置の種類

蒸着装置に用いられる蒸着方法には、物質を気化させる方法によって、物理気相成長法 (または物理蒸着、英: Physical Vapor Deposition, PVD) と化学気相成長法 (または化学蒸着、英: Chemical Vapor Deposition, CVD) の2種類に分けられます。

1. 物理気相成長法 (PVD)

図2-物理気相成長法と主な種類

図2. 物理気相成長法と主な種類

物理気相成長法は、加熱などの物理的な方法で蒸着材料の気化や昇華などを起こし、製膜する方法です。加熱方法は電子ビーム、抵抗加熱、高周波誘導、レーザーなどがあります。

  • 電子ビーム加熱
    耐火物などのルツボに収納した蒸着材料に、電子ビームを照射することによって気化させます。電子ビームはエネルギーが高く高融点の材料にも適用できます。
  • 抵抗加熱
    タングステンなどの抵抗に電流を流して発熱させ、その上に蒸着材料を置くことで蒸着材料が加熱されて気化します。比較的温度が上がりづらいので、融点の低い材料に向いています。
  • 高周波誘導加熱
    コイルを巻いたるつぼに蒸着材料を入れ、コイルに高周波電流を流して強力な磁界を発生させ、その磁界による電流と電熱抵抗による発熱で急速に温度を上げて膜材料を気化させます。
  • レーザー加熱
    蒸着材料にレーザーを照射することにより、高いエネルギーを供給し蒸着材料を気化させます。

また、プラズマや分子線などを利用した方法も物理気相成長法の1つです。

  • 分子線エピタキシー (MBE)
    超高真空下で真空蒸着を行うことで、気化した分子が進行方向をそろえて直進するため、膜厚や組成などのより精密な制御が可能な方法です。成長速度が遅く、高真空が必要なため装置の大型化に向かず、大量生産を苦手とします。
  • スパッタリング
    真空中にアルゴンなどの不活性ガスを注入し、 電極に電圧を加えグロー放電を起こすと、プラズマ化したアルゴンが陰極に向けて衝突し、陰極上の原子や分子などをはじき出されます。このとき、蒸着対象物を陽極上に設置しておくと、はじき出された原子が表面に堆積します。イオン化の方法として、直流電圧 (DC) 、高周波交流電圧 (RF-AC) 、マグネトロン、イオンビームなどがあります。

2. 化学気相成長法 (CVD)

図3-化学気相成長法とその種類

図3. 化学気相成長法と主な種類

化学気相成長法は、化学反応などの化学的な方法で、蒸着材料を蒸着対象物上に堆積させ製膜する方法です。代表的なものとして、熱CVD、光CVD、プラズマCVD、有機金属CVD、原子層成長 (ALD) などがあります。

  • 熱CVD
    抵抗加熱炉を使って高温を作り出し、そこに原料ガスを流して化学反応を起こし、薄膜形成を行う方法です。比較的均一な膜厚を作ることができます。
  • 光CVD
    紫外線ランプやレーザー光を用いて、低温プロセスで化学反応を起こし、薄膜形成を行う方法です。イオン発生が無いため基板へのダメージが少ないです。
  • プラズマCVD
    原料をプラズマ化することで反応性を高め、蒸着対象上で反応を起こし製膜する方法です。低温で薄膜形成するため、高品質の成膜が可能です。但し、装置が高価で、メンテナンス等に難があります。
  • 有機金属CVD
    蒸着したい金属の前駆体となる有機金属を原料に用いることで、蒸着対象上で反応により金属に変化し、金属薄膜が形成できる方法です。膜厚を精密制御しながら高速で製膜することができるため、LEDなどの大量生産に使われています。
  • 原子層成長 (ALD)
    複数種類の原料を1種類ずつ蒸着、入れ替えを行うことで、原料が決まった位置で自己制御的に反応し、制御された構造、膜厚の薄膜を形成できる方法です。

上記の他にもさまざまな方式の蒸着装置が開発、販売されています。用途に応じて適切な装置を選択をする必要があります。

参考文献
https://www.satovac.co.jp/application/deposition.html
https://www.samco.co.jp/company/primer/2011/03/post.php
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjspe/82/11/82_956/_pdf
http://www.jspf.or.jp/Journal/PDF_JSPF/jspf2000_08/2000_08-759.pdf
https://ulvac-kiko.com/support/img/deposition_catalog_Jp_2018_10.pdf
https://www.semilinks.com/sub208.htm
https://showcase.ulvac.co.jp/ja/how-to/product-knowledge02/oil-diffusion-pump.html
https://www.samco.co.jp/ir/library/
https://www.oike-kogyo.co.jp/research/column/cvd/
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jvsj2/59/7/59_16-LC-011/_pdf

走査型プローブ顕微鏡 (SPM)

走査型プローブ顕微鏡 (SPM) とは

走査型プローブ顕微鏡

走査型プローブ顕微鏡 (SPM) とは、針のように鋭いプローブで試料の表面の凹凸をナノメートルスケールで観察することができる顕微鏡です。

試料表面を清浄化するため高真空下で用いられることが多くありますが、大気中でも使用できます。最近では、液中で使用できるものも開発されています。

走査型プローブ顕微鏡の種類は様々で、走査型トンネル顕微鏡 (STM) 、原子間力顕微鏡 (AFM) などがあります。STMは原子1個1個を捉えることが可能で、ナノ構造の科学技術の進展に大いに貢献したとし、発明者は1986年度のノーベル物理学賞を受賞しました。

走査型プローブ顕微鏡 (SPM) の使用用途

走査型プローブ顕微鏡は、非常に微細なナノメートル程度の表面を観察できるため、半導体やガラス、液晶などの表面状態の観察や粗さの測定に使用されます。

具体的な観察の対象は、シリコン単結晶の原子配列や有機化合物のフェニル基などです。また、微生物や細菌、生体膜といった生体試料のDNAの観察や操作もできます。

走査型プローブ顕微鏡は1980年代に開発された新しい顕微鏡ですが、原子レベルの観察技術の発展はめざましく、摩擦や粘弾性、表面電位を測定できる機種も開発されており、どんどん用途が広がっています。液中測定は、電気化学や生化学などの分野でも使用され、より実環境に近い状態測定が可能になります。

走査型プローブ顕微鏡 (SPM) の原理

走査型プローブ顕微鏡の中でよく利用されるAFMとSTMの原理について説明します。細い針のようなプローブの先端が試料表面をスキャンすることにより、画像や位置情報を取得しています。プローブが細く、原子レベルのスキャンを行うため凹凸が大きすぎる試料の測定には向いていません。

1.  走査型トンネル顕微鏡 (STM)

STMは、金属プローブの先端から試料に向けて出るトンネル電流の強さが、間にある真空という絶縁体の厚みに敏感に依存することを利用します。物質表面の原子を個別に分解して見る高い分解能 (隣りあって存在する2点を見分ける時、この2点間の最短距離) で試料面の局所的な高さを正確に測定することが可能です。また、試料面をプローブが走査することで、原子スケールでの凹凸パターンを観測できます。

プローブには、先端のとがったタングステンや白金などを用います。双方の電子雲が重なる程度の至近距離までプローブと試料を近づけ、微小なバイアス電圧 (増幅器の小信号増幅を行うために直流で動作点を定めるための電圧) を加えると、トンネル効果によりトンネル電流が流れます。

STMでは、金属のプローブを試料の表面上で水平 (X,Y) に移動させ、プローブと試料間の距離 (Z) をフィードバック制御することで、トンネル電流を常に一定にしています。通常、原子1個の大きさよりも小さい精度で距離を制御できる圧電素子で垂直方向の移動を行い、単原子同士の相互作用を検出します。このため、STMは3次元的に原子分解能を持ちます。圧電素子は、圧力を加えると電圧が発生する圧電効果という現象を利用した受動素子です。

2. 原子間力顕微鏡 (AFM)

AFMでは、プローブと試料表面の微細な原子間力 (化学結合していない原子同士に働く弱い凝集力) の違いを測定し、走査することで表面観察しています。有機物や無機物に関係なく、絶縁体や生体試料でも観察できることから、用途は幅広いです。AFMの技術を応用して摩擦力や粘弾性、誘電率、表面電位を測定する多彩な機種が開発されています。

カンチレバー (cantilever) の先端に取り付けたプローブと試料表面を、微小な力で接触させます。プローブと試料間の距離 (Z) をフィードバック制御してカンチレバーに働く力 (たわみ量) が一定になるようにしながら、水平 (X,Y) に走査して、表面形状を画像にします。

走査型プローブ顕微鏡 (SPM) のその他情報

プローブの種類

走査型プローブ顕微鏡の代表例であるAFMとSPMは、どちらもプローブを用いますが、種類が異なります。さらに、AFMだけでも、材質、長さなど多くの種類があり、測定対象に合わせて選定することが大切です。

また、AFMは原理で説明したコンタクトモード以外にタッピングモードがあり、これは壊れやすい有機試料に対して測定する際に利用され、専用のプローブを使用します。なお、プローブは消耗品なので、自身で交換する必要があります。

参考文献
https://www.hitachi-hightech.com/jp/science/technical/tech/microscopes/spm/principle/b_2_afm.html
https://imidas.jp/genre/detail/K-128-0064.html
https://www.hitachi-hightech.com/jp/science/technical/tech/microscopes/spm/principle/b_1_stm.html

振とう機

振とう機とは

振とう機

図1. 一般的な振とう機

振とう機とは、試験管やフラスコ、分液ロート等の容器に入れた試料を振とうさせて撹拌する機械のことです。

シェーカーとも呼ばれています。振とう機は、時間がかかる試料の分離や溶出、溶解、好気性微生物の培養等によく利用されます。

振とう形式は往復、旋回、8の字等があり、振とう方向にも水平方向か垂直方向かなど、機種によって様々なものがあります。また、機種によっては加熱や冷却機能がついており、振とう培養も可能です。

液体だけでなく、粉体のふるいとしてのふるい振とう機もあります。

振とう機の使用用途

振とう機は、一般的に生命科学や化学分野における実験において、長時間一定の振とうが必要な場合に使用されます。試験分野における主な用途は、各種溶出試験や試料の溶解、好気性微生物の培養等です。 

特に、環境省が定める土壌環境基準の溶出試験では、特定の条件下での振とう機による土壌中の重金属の溶出が要求されています。好気性微生物の培養では、微生物によって条件が異なります。振とう機の振とう幅や振とう速度を計算し、適切な酸素移動速度を整えることが必要です。

また、他には、野菜中のダイオキシンや残留農薬をヘキサンで溶出させる等、食品の残留農薬検査や産業廃棄物の溶出成分分析などの用途もあります。

振とう機の原理

温度調節可能な振とう機

図2. 温度調節可能な振とう機

振とう機は、振とう台の下部の台座内に動力部分が内蔵されています。動力部分は、モーターからベルトを介してプーリーに力を伝えることで、モーターの回転が振とう台の往復運動に変換されるという仕組みです。

温度調節機能がある機種の場合、台座下にヒーターや冷却装置がついています。また、恒温槽と振とう機が一体化している場合もあります。

機種によっては、振とう機の用途に応じて台座の大きさを替えることが可能です。また、それぞれの容器に合わせて使いやすくすることができるよう、台座の上に容器専用のプレートを置いてオプションで形状を変更することができるものもあります。

粉体のふるい振とう機は、電磁マグネットを利用して振動子に垂直方向の振動を発生させる仕組みです。スプリングで振れ幅を調節し、垂直方向に振とうしています。

振とう機の種類

様々な振とう機

図3. 様々な振とう機

振とう機のサイズには小型・中型・大型とバリエーションがあります。用途や容器の大きさ・形状に合わせて選択することが必要です。例えば、土壌分析の溶出試験に用いられるような振とう機には大型のものを用います。

試料が少量のインビトロ試験に用いられるような振とう機には、小型のものを選定することが適切です。特に、微生物や細胞の培養用途でインキュベーターに入れる場合には、小型の振とう機である必要があります。このタイプでは、約0~50℃の環境温度や約95%RHまでの環境湿度に対応できるよう設計されています。

卓上で使用できる小型の振とう機の大きさは、幅約200~300mm×奥行き約180~250mm×高さ約100~170mmの範囲に収まるものがほとんどです。許容負荷重量の上限は、殆どの機種で2kg程度です。振とう形式には、往復や旋回、シーソー、水平偏芯、8の字などがあり、方向も水平と垂直があります。機種によっては、手動で切り替えが可能な、複数の振とう方式が組み込まれています。

振とう速度は、凡そ20~200rpmの範囲で変更可能です。段階式か無段階式かは製品によって異なりますが、タイマー内蔵型の機種も多数あります。

参考文献
https://www.yamato-net.co.jp/word/31
https://taitec.net/type/%E6%8C%AF%E3%81%A8%E3%81%86%E6%A9%9F/
https://san-web.co-sansyo.co.jp/SanOutWeb/detail/n_detail_45-1038.html
https://www.wakenyaku.co.jp/ctg/ls.php?i=318

スパッタリング装置

スパッタリング装置とは

スパッタリング装置はごく薄い膜を対象物の表面に均一に作製するスパッタリングを行う装置です。

スパッタリングとは、真空蒸着やイオンプレーティングと同じく物理気相成長法 (PVD法) の一つです。主に半導体や液晶の成膜をはじめとしたさまざまな分野で活用いられています。また、対象物の表面を清浄化する際に用いられることもあります。

スパッタリング装置の使用用途

スパッタリング装置は、半導体、液晶、プラズマディスプレイなどの薄膜作製に利用されています。また、他のPVD法の蒸着装置と比較して、スパッタリング装置は高融点の金属や合金の成膜が可能であるため、用途が広い特徴があります。

最近では、プラスチックやガラス、フィルムの表面に金属を成膜して導電性を持たせ、透明電極やタッチパネルの配線としても利用されており、スパッタリング装置の用途の幅はさらに広がっています。

他に、光触媒作用のある酸化チタンを表面にコーティングし、抗菌作用を持たせた医療器具や雑貨等も販売されています。また、走査型電子顕微鏡 (SEM) の試料調製など分析用途でも利用されています。

スパッタリング装置の構造

図1-スパッタリング装置の構造

図1. スパッタリング装置の構造

スパッタリング装置は、主に下記のもので構成されています。

真空チャンバー内に基板を保持する試料台とスパッタ材料を供給するスパッタターゲットがあり、真空ポンプとガスの供給系がチャンバーにつながっています。

スパッタリング装置の原理

図2-スパッタリングの原理

図2. スパッタリングの原理

スパッタリング装置の原理は、真空下で高電圧をかけ、膜材料の原子をはじきとばして対象物表面に成膜するものです。まず、ポンプによってチャンバー内を十分な減圧状態にした後、アルゴンなどの不活性ガスを一定圧力で装置内に充填します。

薄膜の材料となるターゲットに高い陰電圧をかけグロー放電を起こすと、あらかじめ装置内に充填されていたアルゴンがプラズマ化され、陰極上のターゲットに衝突し、ターゲット上の原子や分子がはじき出されます。はじき出されたターゲット原子が、陽電圧をかけた対象物の表面に堆積し、薄膜を作製することができます。

スパッタリング装置の種類

スパッタリングの方式には、様々な種類があります。

図3-スパッタリング装置の種類

図3. 主なスパッタリング装置の種類

1. DC方式

直流電圧を電極間にかける方法です。構造が単純などの様々な利点がありますが、試料が高温のプラズマによる損傷を受ける可能性があり、スパッタリングターゲットが絶縁体の場合、製膜が正常に行えないなどの欠点があります。

2. RF方式

高周波の交流電圧電極間にかける方法です。DC方式では製膜できないようなセラミックスやシリカなどの酸化物や金属酸化物、窒化物などの物質でも製膜することができます。

3. マグネトロン方式

ターゲット側に磁石で磁界をつくり、プラズマをターゲット付近にとどめる方法です。試料のプラズマによる損傷が減少するだけでなく、プラズマの生成速度が向上するため、製膜速度が速くなります。直流、交流、高周波交流など様々な電源方式で利用できます。一方で、ターゲットの減り方にムラができ、利用効率が低い傾向にあります。

4. イオンビーム方式

イオンをターゲットや試料と別の場所でつくり、ターゲットに加速してあてる方法です。チャンバー内で放電を行わない方法なので、試料への影響が最小限で済むだけでなく、不純物の付着やターゲットの導電性などを考慮する必要がありません。

上記以外にも電子サイクロトロン (ECR) など様々な種類のスパッタリング装置があり、用途や予算に応じて適切に選択する必要があります。

スパッタリング装置のその他情報

スパッタリング装置の特徴

スパッタリング装置による成膜は、膜厚を均一にすることができ、かつ電気的性質を利用しているので、膜の強度を高くすることができます。他のPVD法では難しい、高融点金属や合金材料の膜が作製できます。また、アルゴンなどの不活性ガスの代わりに酸素を充填し、酸化物の成膜を行う方法もあります。

一方で、成膜にかかる時間が他のPVD法と比較して長いことや、発生したプラズマによるスパッタ対象を損傷するリスクなどのデメリットもあります。

参考文献

https://www.oike-kogyo.co.jp/research/column/sputtering/
http://www.sanyu-electron.co.jp/c/index.php?cID=172
https://plastics-japan.com/archives/2015

三次元測定機

三次元測定機とは

三次元測定機

三次元測定機とは、部品のさまざまな形状情報を三次元の位置情報として捉え、立体的に把握することができる測定機です。

部品の形状を互いに直行するX軸、Y 軸、Z軸について、ある基準点の位置からの距離で表すことで、立体的に測定します。例えば、金型の隅R形状といったノギス等では測れない形状でも測定可能です。

寸法以外にも三次元の位置情報をソフトウェアで解析することによって、異なる部位の位置関係や、輪郭形状、幾何公差を求められます。測定によって形状を三次元情報としてデジタル化すれば、後処理で様々な解析をすることができます。

三次元測定機による測定は一般的に、精密測定の範疇に属します。精密測定では温度の膨張による誤差を避けるため、一定の温度に管理された部屋で行われます。一般的には20℃に管理されている場合が多いです。

測定する製品も、十分に長い時間をかけて測定温度にする必要があります。三次元おいて正しい結果を得るためには、専門的な技術が要求されることもあります。

三次元測定機の使用用途

三次元測定機は主に、自動車部品等の形状測定に使用されています。さらに製品だけでなく、製品を作るための金型の寸法測定にも使用されています。

三次元測定機は、3DCAD等で設計された形状と、実際製作された部品を三次元測定機で計測した形状とを比較することによって、設計図面通りにできているか確認することも可能です。この調査方法は、リバースエンジニアリングと呼ばれています。他にも、図面がない他社製品等の部品形状を、三次元モデルとしてデジタルデータ化することもできます。

単純な長さだけでなく、角度や幾何公差を求めることも可能です。さらに丸く加工されている隅R形状など、ノギスやマイクロメータなどでは測れない形状の測定にも、三次元測定機が活躍します。

従来は接触型の三次元測定機が主流でしたが、近年は非接触型が多く開発されています。接触式は測定精度と信頼性が高い反面、高度な技術が必要であったり幾つかの制約がありました。この点については下記で解説します。

三次元測定機の原理

三次元測定機には、「接触型」と「非接触型」がありますが、それぞれ原理が大きく異なります。

1. 接触型三次元測定機

接触型三次元測定機では、スタイラスと呼ばれる測定子を直接測定対象に接触させて、点の座標位置情報を記録します。長く用いられてきた方法であり、正しい作業をすれば信頼性の高い測定が可能です。スタイラスには温度による熱膨張がほとんどない、セラミックやルビーなどが使用されています。

スタイラスを接触させるため、測定対象物がゴムなどの柔らかい製品の場合には、接触力で変形を生じることがあります。接触を伴うので、接触面に傷をつける可能性もあります。また、スタイラスの先端径より小さなR形状については、正しく測定することはできません。

2. 非接触型三次元測定機

非接触型三次元測定機は大まかに言うと、測定対象物にレーザーなどを当てることによって、測定物の三次元座形状を記録します。非接触型なので測定部が傷つくことはありません。また、短時間で測定できるため、近年需要が伸びてきています。

接触式では測定ポイントを一つずつ、スタイラスを接触させて三次元の位置情報を記録していくため、測定時間が長いことが欠点の一つでした。一般的には、接触型の測定の方が非接触式の測定よりも精度や信頼性が高いと言われています。

しかし、技術の進歩により、非接触型でも接触型と変わらないくらいの精度や信頼性が確保できるようになりつつあります。比較的高度な技術を必要とした接触式に比べ、非接触式は熟練を要することなく測定することが可能です。測定の目的に応じて使い分ける必要があります。

 

接触型、非接触型ともに高度な画像処理技術が用いられることによって、様々な解析ができるようになりました。解析結果の表示も、立体的なモデルなどで視覚的に理解しやすい出力が可能になっています。

三次元測定機のその他情報

1. 三次元測定機のメリット

三次元測定機のメリットは、ノギスやマイクロメータといった計測器では測れない複雑な形状や輪郭、幾何公差を測定できることです。大型の部品でも測定できます。特に接触式の場合は取り扱いに習熟が必要ですが、プログラム測定により夜間に自動測定させておくことも可能です。

2. 三次元測定機のデメリット

三次元測定機のデメリットは、装置が大型で広い設置スペースが必要なこと、他の測定器と比較すると扱いに技術が必要になることです。非接触式は比較的扱いやすい反面、測定物が鏡面であったり、メッキなどの光沢があったりすると、測定できないこともあります。また、装置の価格がかなり高額になることも、導入の際には考慮しなければなりません。

参考文献

https://www.keyence.co.jp/ss/3dprofiler/keijou/3d/info/

ナットランナ

ナットランナとはナットランナ

ナットランナとは、ナットの締め付けを自動で行うことができる電動工具のことです。

ナットだけでなくソケットを替えることで、ねじやボルトに対応できる機種もあります。手で持って使用するハンディタイプが多いですが、全自動で締め付けを行う機種もあります。ナットランナは締め付け強度を設定することができるため、均質で高精度な締め付けが可能です。

ナットランナを使用することで、作業が簡便になるのはもちろん、高精度で信頼性の高い締め付けが可能となるため、信頼性が必要な締め付け箇所に幅広く使用されています。

ナットランナの使用用途

ナットランナによる締め付けは均質で高精度であるため、自動車部品やバイク、造船といった安全面で保証が必要な箇所に多く使用されています。他にも、ガソリンスタンドや化学工場といったより高精度な締め付けが要求される設備点検や、ビル等の鉄骨の組み立てを行う工事現場でも使用されることが多いです。

また、完全に自動化された自動組み立て装置に、ナットランナが組み込まれている場合もあります。ナットランナを選択する際は、使用するナットやボルトのトルク範囲を確認する必要があります。

ナットランナの原理

ナットランナは、大きく分けて「電動モータによる駆動」と「空気圧による駆動」のものがあります。基本的には、モータによりトルクを回転させ、締め付けが完了すると自動で止まる設定になっています。

1. 電動モータによる駆動

電動モータによりトルクや角度を電気的に制御しているので、空気圧駆動に比べて精度が高く、かつ作業履歴やデータを残すことができます。コードレスタイプもあり、近年メジャーになつつあります。

発熱しやすく、感電の危険性がある場合は、絶縁タイプか空気圧稼働のナットランナを選ぶことが大切です。また、増し締めができないので、再度締め直す場合は一度ナットを緩める必要があります。

2. 空気圧による駆動

エアーコンプレッサーを必要とし、圧縮空気を利用してエアーモータを回しトルクを制御しています。感電の危険性がないのがメリットですが、エアーコンプレッサーを使用するため電気代がかさむというデメリットもあります。電動モータ駆動より発熱が少なく済み、長時間の使用に向いていて昔から使用されてきたタイプです。

ナットランナの構造

電動タイプはACサーボ、DCブラシレスなど回転数の制御が可能なモータを使用し、エアー駆動式は空圧によるエアーモータにより回転します。制御を行うユニットは内蔵もしくは別置きで付属します。それらの回転は遊星歯車用いた減速機を介して駆動軸へ伝えられます。

トルク検出機能があり、トルクによる回転の制御を行える高機能なタイプでは、位置、姿勢を検出するアームなどを装備できる物があります。

ナットランナのその他情報

1. ナットランナと電動ドライバ

ナットランナは名前の由来であるナット締め工具ですが、回転して締結するネジ、ボルトにも使用することができます。電動ドライバーインパクトレンチとの違いは、締付トルクの管理が正確にできることです。

電動ドライバー、インパクトレンチでは規定トルクに達すると軸が空転する構造ですが、電動ナットランナは規定のトルク値に近づくにつれてモーターの回転が減速し、正確なトルク値に止める機能を持っていて、近年ではより精度の高い締付ができる電動ナットランナが主流になってきています。

ナットランナは締付時のトルク値に合わせて、回転速度やトルクを制御しながら締付を行います。回転速度は電動ドライバーやインパクトレンチに劣りますが、締め付け後のトルク値の誤差が少なく、動作時の騒音が少ないことも特徴です。

2. ナットランナのトルク管理

近年のナットランナは、締付時のトルクと角度の変化をモニタリングしながら、締付の良否を判断し、ボルトを斜めに差し込んでしまう斜め締めや、ワッシャの入れ忘れ、2枚入れなどを検出できます。それらのデータはナットランナ自体で記憶したり、ワイヤレスでPCなどへ転送し、組み立て時のデータとして記録することが可能です。

また、高機能な機種では、ナットランナの姿勢や位置を検出することもできます。ネジ締めをする穴の位置を判断して、締め付けているネジやボルトが指定されたものに合致しているかどうか判断したり、ネジやボルトの違いをネジ穴位置から判断して締付トルクを自ら変更したりします。

参考文献
http://ith.co.jp/product/NutRunner

クリーンルーム

クリーンルームとは

クリーンルーム

クリーンルーム (英: clean room) とは、空気の清浄度が管理されている部屋のことです。

空気中に浮遊する微粒子や微生物が、限定された清浄度レベル以下に管理されている空間を指します。供給される材料、薬品、水などについても要求清浄度が保持され、必要に応じて温度、湿度、圧力などの環境条件についても管理されます。

空気の清浄度は、その空気の微粒子の大きさと数を、パーティクルセンサーでカウントすることで確認が可能です。ほこりや微粒子の付着が大きな問題となる製品の製造には、クリーンルームが利用されています。なお、クリーンルームは、防塵室、滅菌室、バイオクリーンルームなど、用途によってさまざまな呼び名があります。

クリーンルームの使用用途

クリーンルームは半導体や液晶、電子部品などの工業製品の製造に使用されています。小さなほこりが製品の品質に大きな影響を及ぼすためです。

特に半導体の前工程では、最も清浄度の高い米国連邦規格クラス1~10、ISO規格ではクラス3~4のクリーンルームが利用されます。電子部品や光学機械などの精密機器を製造する工場や、薬品や食品を取り扱う工場では、ISOクラス5~7程度のクリーンルームが必要です。

その他、印刷や塗料、レンズやフィルムなどの業界でも、幅広くクリーンルームは活用されます。

クリーンルームの原理

1. 人間からの微粒子防止

クリーンルームは、内部に入る人間由来の微粒子を抑え、かつ高性能なフィルターで微粒子をとらえることにより、清浄度を維持しています。クリーンルームの清浄度を保つためには、まず人間から出る汗、髪の毛といったゴミやほこり、細菌などの減少が必要です。

要求される清浄度にもよりますが、クリーンルーム内では専用の白い防塵服や靴に着替え、手袋をして髪の毛が出ないようキャップをかぶります。さらに安全メガネやマスクを使用する場合もあります。そして、クリーンルームに入る時に、空気によるエアーシャワーで全身のゴミを流します。

2. 室内空気の浄化

クリーンルーム内の吸い込み口から取り込まれた空気は、循環して吹き出し口に設置されたHEPAフィルタと呼ばれる高性能なフィルターによって、微粒子等が浄化されます。クリーンルーム内の清浄度は、パーティクルセンサーによってモニタリングが可能です。

また、クリーンルームは気密になっており、部屋の空気の圧力を調整することで、外部から余計な微粒子が入らないように設計されています。

クリーンルームの種類

クリーンルームは、精密機器の製造用途、あるいは食品製造や医療・生命科学研究用途の2種類に大別されます。医療機関や生命科学研究機関で用いられるクリーンルームは、特にバイオクリーンルームあるいは無菌室と呼ばれます。

工業用途では、空気中の塵埃を排除することが想定されますが、バイオクリーンルームでは、これに加えて細菌などの微生物やウイルスの混入の防止が必要です。

クリーンルームのその他情報

1. クリーンルームの規格

クリーンルームは、空気中に単位体積あたり何個の微粒子が含まれているかによって、更にクラス分けされます。日本では、このクラス分けに米国連邦規格 (FED) ・ISO規格・JIS規格の3種類が使われています。

米国連邦空気清浄度基準FED209E
米国連邦空気清浄度基準FED209Eは、すでに2001年に廃止され、ISO規格14644-1に移行していますが、業界では、広く慣用されているFEDを使用する場合が多い状況です。

FED
FEDでは、クラス1からクラス100,000まで6分類され、クラスの数字は、単位体積あたりに含まれる微粒子の数を表しています。つまりクラスの数字が小さいほど、清浄度が高いことを表します。

ISO規格

ISO規格 (JISに準拠) は、FED規格に相当する6種類に加え、更に細分化してクラス1からクラス9までの9種類 (ISO) 、または8種類 (JIS) に分類されます。

2. クリーンルームの方式

クリーンルームの方式

図1. クリーンルームの方式

クリーンルームは空気の循環させ方、すなわち気流の作り方によって一方向流方式と乱流方式の2種類があります。

一方向流方式
一方向流方式は、吹き出し口と吸い込み口が向かい合って設置されており、均一な気流を作る方式です。天井に吹き出し口、床に吸い込み口を設置すれば、垂直方向に均一な気流を作ることが可能で、ある壁面に吹き出し口、向かいの壁面に吸い込み口を設置すれば、水平方向に均一な気流を作ることができます。

一方向流方式は、気流は絶えず循環しているため、高い清浄度を保つことができます。

乱流方式
乱流方式は、天井に吹き出し口、壁面に吸い込み口を設置する方式です。気流の滞留が起こる箇所があるため、一方向流方式に比べて清浄度は劣りますが、比較的低コストで導入・運用できることがメリットです。

参考文献
https://www.comany.co.jp/cleanroom/firstvisitor/what.html
http://www.airtech.co.jp/products/cleanroom/120/

漏液センサー

漏液センサーとは

漏液センサー (英: liquid spill sensor) とは、薬液や水などの漏れを検出するセンサーです。

生産設備などで取り扱う薬液の貯蔵タンクで漏れが生じた場合、大量の薬液流出に伴う薬害を初期段階の漏れで防ぐ安全対策として利用されます。また、集合住宅や大型ビルなどの給水漏れや汚水漏れの早期検知にも有用です。

近年では検出技術の向上により、液体の導電性を利用する従来の検出方式以外に、ファイバセンサー使用した光電式の検出方法が確立されるなど、さまざまな薬液を含む液体に対して対応できるようになっています。

漏液センサーの使用用途

薬液や純水などの液体を使用する生産設備や機械の配管や配管継手、液体の貯蔵タンクや送液ポンプ、冷却配管に生じる結露、ドラフトチャンバなどの周辺に漏液センサーを設置します。これにより、早期の液漏れ検出が可能です。

1. 半導体製造装置の結露・液漏れ検出

装置の周辺に漏液センサーを設置し、洗浄装置内の結露や周辺への液漏れを検出します。

2. 薬液タンクのパイプ継手部の漏液検出

パイプの継手部など漏液の可能性のある部位に漏液センサーを巻き付けて液漏れを検出します。

3. CMP装置の計量槽の漏液検出

ウェーハ表面を研磨して平坦にするCMP装置のドレインパンへの液漏れを漏液センサーで検出し、装置の破損やウエハの洗浄不良を防止します

4. 防爆エリアにおけるオイル漏洩検知

防爆エリア内の生産設備や機器が使用する油圧シリンダなどの油圧駆動機器のオイル漏洩を漏洩センサーで検知します。

5. 大規模集合住宅やオフィスビルの漏水検出

大規模建築物における給水設備・給水管・汚水管など漏水を漏液センサーによりリモートで検出して、早期処置を行います。

漏液センサーの原理

漏液センサーは、主に液体の導電性を利用して検出する接触式検出方式と、ファイバセンサーなどの反射と透過を利用して検出する光電式に大別されます。

1. 導電式

漏液センサーの2本の電極に液体が接触すると、液体を通して電流が流れ、液体が漏れていることを検知します。液体の導電性を利用する接触式で、電極間抵抗を検知する方式です。

この検出方式を用いた漏液センサーは、センサー部の形状が線状のため、長距離検出や往復させて広域検出、更に巻き付けて検出することも可能です。

2. 光電式

光電式は光源の光を光ファイバにより対象物に投射し、反射や透過する光量を検出する方式の漏液センサーです。センサー部に赤外線やLEDなどの投受光機構を内蔵し、液体が検知部に触れると、光の反射率や透過率が変わり光量が減ることで検知します。非接触式のセンサーもあります。

漏液センサーの選び方

漏液センサーは、検出部の形状、液体、使用環境、機能、用途などにより、多くの種類があります。

1. 検出部の形状

特定のポイントの漏液を検出するもの、長い線状のもの、帯状のもの、光ファイバーを使うものなどが使われます。屈曲性が良いものは、配管や対象物に巻いたりして、広い範囲の検知が可能です。

2. 対象液体・使用環境

漏液センサーは、センサー部は液体の種類により、選択可能です。フッ素樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂などに覆われており、水、純水、酸、アルカリ溶液などに対応しています。

また、使用環境の検討が必要です。温度範囲、雰囲気、振動、風雨などに長時間耐えられる製品を選定します。必要に応じて防爆仕様にします。

3. 機能・用途

検出部、回路部・制御部、警報場所間の接続が有線か無線か、電源の要否、警報のみか制御するのかなどを検討して、漏液センサーを選びます。

漏液センサーのその他情報

バッテリーレス・ワイヤレス漏水センサー

漏水検知に限定されますが、電源が不要の漏水センサーがあります。メンテナンスが不要な点が大きな特徴です。

センサー部はリボン状で、無線タグが付いています。漏水により、センサリボンに織り込まれた金属電極が反応し、微弱な電力を発電します。その微弱な電力を無線タグで蓄電、昇圧することによってBluetoothモジュールを駆動し、無線発信で漏水を連絡します。

センサリボンが濡れている間は、蓄電・昇圧・発信が繰り返されます。なお、漏水センサーが使用される所は、住宅・マンション・オフィスビル、商業施設・ショッピングモール、サーバー室・制御室・機械室、工場、駅や空港などの公共インフラ施設などです。

参考文献
https://www.fa.omron.co.jp/data_pdf/commentary/leakagesensor_tg_j_1_1.pdf
https://www.fa.omron.co.jp/guide/technicalguide/48/182/index.html

カテゴリー
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塗布装置

塗布装置とは

塗布装置の種類

図1. 塗布装置の種類

塗布装置とは、製品や材料に薬品などを塗布するための装置です。

一般的な塗布装置は、塗布する対象物の形状や塗布する薬品と塗布の目的によって塗布方法が異なるため、さまざまな用途に応じてロールコータスピンコータディップコーター、スプレー塗布やディスペンス塗布など、さまざまな塗布方法が用いられています。

近年では、半導体製造分野やFPD (フラットパネルディスプレイ) 製造分野、太陽電池や二次電池製造分野などの工業分野においては、精密な塗布精度が求められるため、塗布技術の向上と共に塗布装置が飛躍的に進化しています。

塗布装置の使用用途

塗布装置は、半導体分野や二次電池など様々な製造工程で対象物に塗液を塗布する用途で使用されています。パソコン、液晶テレビ、スマートフォン、タブレットなど、特に薄型で高機能・高密度化が求められる半導体製造分野やFPD (フラットパネルディスプレイ) 製造分野におけるフォトリソグラフィ工程で、フォトレジストを塗布するスピン塗布装置を利用する場合が多いです。

二次電池や太陽電池、自動車部品から住宅建材・繊維・医療などで使用される機能性フィルムやシート状製品に対しては、シール材接着剤、電極材をなどの薬品を塗布するロール塗布装置やスプレー塗布装置、ディスペンス塗布装置などが利用されています。

塗布装置の原理

図2 塗布装置の特徴

図2. 塗布装置の特徴

塗布装置は、さまざまな生産品材料への対応や薬液などの材料を塗布する装置です。主にロール状塗布、スピン塗布、スプレー塗布、ディスペンス塗布に大別できます。

1. ロール状塗布装置

ロール状塗布装置は、一般的にフィルムやシートなど比較的薄く平面材料に対する塗布に用いられます。

塗布する薬液の液溜まりに接するローラーの回転とフィルムやシートなどの材料の巻取り回転を利用して塗布するグラビアコーター、リバースコーターなどを塗布する薬液の性質や粘度、塗布する膜厚に応じてさまざまな塗布方法が用いられます。

ロールtoロールでの塗布が可能で、最も高速塗布にむいた方法です。これらの方法の特徴は、塗布液と被塗布対象物の間で、ビードを形成し被塗布対象物、または被塗布対象物とロールの両方が移動したり回転したりすることで塗液にせん断力をかけ薄く塗布することです。

このビードを安定化させることが、高品質な塗布に欠かせません。

2. スピン塗布装置

スピン塗布装置は、半導体製造分野やFPD (フラットパネルディスプレイ) 製造分野におけるフォトリソグラフィ工程で使用するフォトレジストを回転するテーブル上の生産品に吐出後、テーブルが回転する遠心力により薬液の広がる作用を利用して薄膜を形成する塗布方式を採用する装置です。

最も薄く塗布できる手法ですが、複数枚の塗布や連続生産ができないため大量生産には不向きです。

3.  スプレー塗布装置

スプレー塗布装置は、自動車や外壁建材などの塗装に対して薬液をスプレーで微細粒子に変換して塗布し、塗布対象物が大型の場合、ロボットの広域可動範囲を利用することで高精度且つ広範囲の塗布方式を採用する装置です。

空気、電気、超音波の3種類の粒状噴霧を生成する方式が存在します。

4. ディップ塗布装置

ディップ塗布装置は、対象物の形状は問わず、ディップコート液に浸けて引き上げる方式です。均一な薄膜を形成することが可能で、光学レンズ、医療系や電子デバイスなどに用いられています。

対象物の形状は問わず、塗布液のロスが少なく均一な薄膜を形成することができる点がディップ塗布装置の特徴です。

5. ディスペンス塗布装置

ディスペンス塗布装置は、比較的精密な線状塗布が求められる状況で使用されます。塗布量のコントロールが可能なディスペンスー機構を備え、更に精密な塗布が要求される場合には、ロボットを用いることで塗布量の精度と正確性を兼ね備えた塗布方式を採用する装置です。 もちろん塗布速度などは劣りますが、細かいところへのスポット塗布や複雑な形状の塗膜が形成可能です。

塗布装置のその他情報

塗布欠陥と塗布装置

図3 塗布欠陥と塗布装置

図3. 塗布欠落と塗布装置

どんなに高性能な塗布装置にて塗布を行ったとしても、粘度のあわない塗液や塗布速度などの塗布条件によっては綺麗な塗布面が得られないことがあります。コーティングの欠陥の種類とその対処法は、下記の通りです。

1. 塗布によって発生する欠陥

欠陥 原因 対処法
空気同伴 被塗布物に塗液を塗布する際に、空気が逃げ切れないことで発生。 塗布速度を低下させることで解決。
リブスジ 塗布部に塗布方向に対して逆圧力勾配ができることで発生。 塗液の粘度や塗布速度を低下させることで解決。
気泡混入によるスジやホール 塗液中に泡があることで発生。 泡抜き対策を施す。
横ダン状のムラ 主にリバースグラビア方式などで発生。 被塗布物の振動抑制やグラビアの回転速度を変えることで解決。
ムラ 塗液が塗膜内で流動をおこすことで発生。 塗液を改善することで対応する。
異物 塗液が凝集したり、ゲル状になることで発生。 フィルターを導入するなどで対応する。
はじき 塗液の表面張力が高いことで発生。 界面活性剤などを添加することで対応する。

 

2. 乾燥によって発生する欠陥

欠陥 原因 対処法
ゆず肌 (塗面がゆず皮のように凹凸になる) 乾燥速度が早すぎることで発生。 乾燥速度を弱くしたり界面活性剤を添加することで対応。
風紋 熱風乾燥で発生。 吹き付ける熱風の速度を弱めることで対応する。
割れ 塗膜の収縮によって発生。 厚塗りをやめることなどによって対応する。

 

コーティングは塗布装置と乾燥と塗液をそれぞれ適切に選択することで、成立する技術です。使いたい塗液の条件や乾燥炉のスペックなども考慮して、適切な塗布装置を選択することが大切です。

参考文献

https://www.keyence.co.jp/ss/products/measure/sealing/coater-type/