エアチャックとは
エアチャックとは、空気圧システムで使用されるアクチュエータと類似ではありますが、被加工物をチャック (爪) でつかみ固定する機械装置のことです。
一般的に、空気圧で動作する装置を総してエアチャックと呼びます。装置構造は従来の機械式チャックと同様で、空気圧を用いて被加工物を挟む動作が自動化されます。
エアチャックの使用用途
エアチャックは、切削加工機やロボットマテハンへ製品を保持するために、空気圧を用いて被加工物を挟む目的で使用されています。被加工物をマシニングセンタやNC旋盤へ固定するために活用したり、ロボットハンド先端に取り付けチャックを開閉することで被加工物を保持し、搬送手段で活用したりする場合もあります。
ただし、機械式チャッキングと異なり、被加工物の保持力は空気システム内のコンプレッサ能力で決まるため、エアチャックは製品重量と被加工部へ発生する応力や大きさを考慮した上での選定が必要です。
一般的にエアチャック大きさは、シリンダ内のチューブ内径 (φ6~φ63mm程度) です。その他、チャックの稼働範囲が被加工物をつかむことができるか否かを事前検討する必要があります。チャック保持力はエア圧とリンク等の変換機構で発生しますが、選択時には保持力や動作だけでなく保持点位置や搬送時モーメントを考慮します。
エアチャックの原理
エアチャックの基本原理は機械式とほとんど変わりませんが、チャック開閉に空気圧弁システムを用いて空気漏れを防ぎ、かつ開閉動作をセンサーで制御する点に特徴があります。開閉運動の方法によって、直線動作方式、回転動作方式、保持動作方式の3つに分類できます。
1. 直線動作方式
エアシリンダに類似しており、チャックを平行移動させて被加工物を保持します。汎用性が高いため、幅広い業界の空気圧機器のチャックとして採用されており、各種産業用ロボットに対応しています。
特に、小規模サブアッシーラインへの導入が簡易であるため使いやすいモデルです。被加工物に対し平行に取り付けるチャックなので、高い把持力が求められている作業や、2次元スカラーロボット等の平行回転運動を伴う機器への設置で活躍します。
2. 回転動作方式
エアモーターと揺動動作をするロータリアクチュエータがあり、いずれも円運動をする場合に使用します。円運動の場合は被加工物を保持して、回転させながらある程度の距離を移動させたり、他の加工を行ったりするため、構造が複雑になりがちです。被加工物が円形である場合や、平行チャックでは保持力が担保できない場合には、ロータリーアクチュエータを活用するケースが増えてきます。
エアチャックの種類
エアチャックは、平行開閉チャック、支点開閉チャック、幅広開閉チャックがあり、チャック爪数によって2ツ爪、3ツ爪、4ツ爪に分類されます。
1. 平行開閉チャック
平行開閉チャックは、フィンガ (爪) が平行移動するタイプで、開閉動作はリニアガイドやすべりガイド等の機構によって規制されます。基本的には被加工物の大きさ以下で使いますが、上限値設定で被加工物を挟むと保持力の低下が懸念されるため、ある程度の余裕をもって、開閉設定値を決める必要があります。
2. 支点開閉チャック
支点開閉チャックは、空気シリンダ直線運動をリンクやカムで動作変換を行います。ガイド機構が不要でコンパクトになりますが、チャック爪の設計と保持方法により、被加工部の保持力が変化する点に注意が必要です。
平行及び支点開閉チャックの両タイプともに、フィンガ開閉動作は複動シリンダタイプと単動シリンダタイプがあり、単動シリンダタイプは常時開形と常時閉形があります。
3. 幅広開閉チャック
幅広開閉チャックは、フィンガストロークが広い場合に使用します。シリンダ動作でダイレクトにフィンガを駆動しラック&ピニオン機構で左右フィンガの同期をとります。シリンダロッドとガイドロッドはすべり軸受でガイドされます。
この製品も基本的には被加工物の大きさ以下で使いますが、平行開閉チャック同様に保持力の低下が懸念される場面が想定されるため、ある程度の余裕をもった開閉設定値の設定が必要です。
参考文献
https://www.smcworld.com/products/subject/ja-jp/machine/door/chack.html
https://official.koganei.co.jp/image/02040000