耐雷トランス

耐雷トランスとは

耐雷トランスとは落雷による大電流の流入 (雷サージ) や送電線事故などによる異常電圧から精密電気機器や人体を守るための装置です。

同じく異常電圧から機器を守るものとして、避雷器 (SPD) と呼ばれるものもあります。避雷器は雷サージを地面に放電して電気機器を保護しますが、耐雷トランスは雷サージを地面に放電しつつトランスで絶縁して機器を雷サージから保護します。

耐雷トランスの使用用途

耐雷トランスは様々な場所で使用されています。以下が使用用途の一例です。

  • 無線中継所や変電所などで使用される電源装置
  • コンピュータおよびテレメータの電源
  • 監視カメラなどのセキュリティシステム
  • 鉄道や航空機および道路などの交通通信機器や制御機器

雷多発地区などでは、特に精密機器を異常電圧から保護するために重要な機器です。耐雷トランスは電源線と被保護装置の間に設置され、保護対象機器を異常電圧から保護します。

耐雷トランスの原理

耐雷トランスには大きく分けて「絶縁型」と「接地分離型」の2種類が存在し、それぞれ原理が異なります。

1. 絶縁型耐雷トランス

絶縁型耐雷トランスは、電源側から進入した雷サージによる異常電圧を避雷器によって大地へ逃がしつつ、対地間の電圧差を絶縁トランスによって低減させます。

2. 接地分離型耐雷トランス

接地分離型耐雷トランスは、複数の避雷器によって線間および対地間の雷サージ流入を低減しつつ、絶縁トランスによって高絶縁化して更に機器を保護します。なお、接地分離型はサージシェルターとも呼ばれます。

いずれも被保護装置側は雷サージに対して耐電トランスで完全に絶縁され、雷サージが流入しません。耐雷トランスによってサージ移行率は100分の1から10,000分の1にまで低減されるので、避雷器のみの設置よりも効果的です。また、異常電圧への耐電圧は数十キロボルトと非常に高く、優れた保護機能を備えています。

耐雷トランスのその他情報

1. 耐雷トランスと避雷器の違い

耐雷トランスと避雷器は、どちらも雷サージから装置を保護するための機器です。ただし、耐雷トランスと避雷器には構造上の違いがあります。

避雷器は、保護対象装置と並列接続され、避雷器自体は接地されます。通常時に避雷器は絶縁物として動作しますが、雷などのサージ電圧が発生した際に、避雷器が導電性となって大地へとサージ電圧を逃がす構造です。避雷器の材料としては、ZnO (酸化亜鉛) がよく使用されます。

耐雷トランスも同様に、電源側をZnOによって接地します。ただし、耐雷トランスは変圧器によって1次側と2次側を絶縁する構造です。したがって、制限電圧を著しく低減することが可能です。上記構造の違いから、雷サージに対しては耐雷トランスの方が優れています。

2. 耐雷トランスのデメリット

耐雷トランスは雷保護の観点から、避雷器よりも優れています。ただし、以下3点ほどのデメリットも存在します。

  • 避雷器と比較して部品点数が増加する
    部品点数が増加すると、故障のリスクが増加するのみならず、メンテナンスコストも増加する傾向にあります。設置スペースも大きくなり、導入コストもかかります。
  • 変圧器によって上位力率が低下する
    変圧器は誘導性負荷のため、無効電流が大きくなります。対策として電力用コンデンサを並列接続することは可能ですが、やはりコストが増加します。
  • 接地極を負荷と別にとる必要がある
    大抵の負荷には筐体等に接地をとらなければなりませんが、耐雷トランスは雷サージ用に更に1つ接地極が必要です。雷サージ用接地極と負荷側接地極を一緒にすると、雷サージ時に負荷電線と対地間の電位も上昇してしまいます。接地極を分けると、接地埋設作業が増える上に、系統も煩雑になるというデメリットがあります。

上記メリットとデメリットを踏まえて、避雷器を使用するか、耐雷トランスを使用するかを決定します。

参考文献
https://www.fujielectric.co.jp/technica/faq/thunder/03.html
https://www.m-system.co.jp/mstoday/backnum/2013/01/mame/index.html
https://www.otowadenki.co.jp/basic5/

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