引張試験機

引張試験機とは

引張試験機

引張試験機とは、サンプルに引張荷重を加えた時の変化を測定する装置です。

引張により、応力とひずみが発生します。応力とひずみの関係から、引張応力、引張ひずみ、ヤング率、ポアソン比などが算出可能です。引張試験で得られるパラメータは機械的性質と呼ばれ、成型製品の強度や耐久性を把握するのに重要な役目を果たします。

引張試験機の使用用途

引張試験機は、主に力学的性質および機械的性質を確認するために利用されます。金属やプラスチック、ゴム、繊維などさまざまな材料試験に使用され、性能検査や品質検査を行う上で重要な試験の1つです。

また、筋肉、骨、皮膚などの生体組織の強度等を評価するために、引張試験が行われる場合があります。人工関節や人工心臓弁、ドレーンなどの医療機器の材料評価にも利用されている試験機です。

引張試験機の原理

引張試験機では、試験片に引張荷重を加え、材料が破断されるまでの結果を測定します。応力ひずみ曲線をプロットすることで、比例限度、弾性限度、降伏点、引張強度を算出可能です。

測定初期、中期、破断点による特徴的な応力とひずみの関係性は以下の通りです。

1. 測定初期

測定初期は、応力とひずみが比例します。比例関係が成り立つ限界点を、比例限度と呼びます。

2. 測定中期

比例限度から更に応力を加えると、ある点でひずみが残り続けるようになります。このとき、ひずみが残り続けない限界点を弾性限度と呼びます。

弾性限度を超えた点が降伏点です。降伏点を超えると、ひずみは残ったまま応力が下がります。

3. 破断

その後も引張を続けると応力が再度増加します。このときの最大応力を、サンプルの引張強度と呼び、最後は破断します。

ヤング率、ポアソン比などは、応力ひずみプロットを用いて計算することで得られるパラメータです。その他、得たいパラメータや用いる試験片の材料により、静的伸び計、動的伸び計、長尺伸び計などが使い分けられています。

引張試験機の種類

引張試験機にはさまざまな種類がありますが、現在市販されている試験機の多くは、油圧万能試験機と機械式万能試験機の2つです。

どちらも荷重検出にはロードセルを用い、電気出力を利用するため、伸び計から電気信号を取り出せば、荷重−伸び線図を容易に得られるという利点があります。

1. 油圧万能試験機

油圧万能試験機は、油圧により応力を調整することで、引張、圧縮、曲げなどの静的試験を行える万能試験機です。

2. 機械式万能試験機

機械式万能試験機は、サーボモータにより引張速度を定速化できることが特徴です。

引張試験機のその他情報

1. 引張試験機の単位

引張試験機は、測定値をロ―ドセルを使い応力を測定します。応力の単位はSI単位である「N」ニュートンです。ロードセルの容量によりmN、kNなどの単位が使われる場合もあります。

「N」ニュートンは、質量に重力加速度を掛け合わせた値です。 測定場所の重力加速度がわかっている場合は、ロードセルで質量 (㎏) を測定できます。

また、SI単位施行以前には「N」の代わりに「kgf」が使われていましたが、計量法の改定により1999年10月以降、日本国内では使用できなくなりました。

2. ヤング率

応力とひずみの比です。ヤング率は材料の曲げやすさ (にくさ) を示し、ヤング率が大きいほど硬くて曲げにくいことを示します。建材などで使われる鉄鋼は、ヤング率が大きい材料の1つです。

3. ポアソン比

力がかかる方向のひずみ (縦ひずみ) と力がかかる方向に対して、垂直方向のひずみ (横ひずみ) の比です。ポアソン比が0.5であれば、変形による体積変化がなくなります。ゴムのような材料では引っ張ると横幅が小さくなるので、0.5に近い値を示します。

4. JIS規格

引張試験には、材料に応じてさまざまなJIS規格があります。プラスチックの場合はJIS K 7164もしくはISO 527、ゴムの場合はJIS K 6251、金属の場合はJIS Z 2241が一般的に利用されています。

JIS規格に沿った試験を行うことで、公正な試験結果として扱うこことが可能です。

参考文献
https://www.keyence.co.jp/ss/products/recorder/testing-machine/material/tension.jsp
https://www.allied-material.co.jp/media/hard-metal/20190404
https://www.kabuku.io/guide/metal/steel/ss400/
https://www.instron.jp/ja-jp/our-company/library/glossary/p/poissons-ratio
https://info.shiga-irc.go.jp/public/data/130/102.pdf
https://www.unipulse.tokyo/techinfo/loadcetthowto/

画像寸法測定器

画像寸法測定器とは

画像寸法測定器

画像寸法測定器とは、画像センサ (カメラ) で対象物を画像として撮影し、測定することで寸法を求める測定器です。

撮影したデータとCAD図面を画面上で比較することが可能で、データと実測値の差異箇所と差分を比較できます。また、CADデータから測定プログラムも作成でき、測定作業の効率化につながります。

人間の手では一箇所ずつの測定になる場合でも、画像寸法測定器は複数箇所の測定を一度に測定することが可能です。測定精度のばらつきも発生しないということも特徴です。

画像寸法測定器の使用用途

画像寸法測定器はカメラを用いて非接触で測定ができます。そのため、様々なサンプルを対象物として、寸法測定や幾何公差測定、対象物の高さや深さなどを瞬時に測定できます。

測定対象の一例として、直線距離や面取り角度、ネジの外径、有効径だけでなく、非接触での測定のため、変形が生じやすい素材の製品や複雑な形状の成形品の測定も可能です。画像寸法測定器での寸法測定の具体例としては、以下のとおりです。

  • プリント基板の最大外径、穴径、穴位置、穴ピッチの測定
  • プリント基板の外観、レジスト剥がれ、シルク剥がれなどの幅・長さを測定
  • 金属部品の最大外径、穴径、穴位置、穴ピッチの測定

これにより、各種ゲージやノギス、マイクロスコープ、デプスゲージなど複数の計測機器を使用していた測定が1台で完結できます。また、人による誤差がないため、多品種・多ロットの測定にも向いています。この測定器での測定結果は、データとして保存が可能であり、このデータを使用することで報告書や検査書も作成できます。

画像寸法測定器の原理

画像寸法測定器はカメラで画像を撮影し、そこから画像処理を行うことで寸法を算出して測定するため、カメラの性能が関係します。そこで画素数と画素の大きさがポイントとなり、その中でも重要なのが「1画素の大きさ」です。例えば、1画素における縦×横を1mmとし、1つの画像を横に画素を500個並べた場合、1視野のサイズが「1ミリメートル×500個」で500mmとなります。そのため、この1画素の大きさが変われば、画像全体のサイズも変わります。

このように1つの画像において、画素数と1画素の大きさが分かれば、寸法も算出可能です。撮影した製品の画像から形状を認識して寸法を求める時は、ポイントとして「二値化処理」が挙げられます。

二値化処理とは、まず画像において、色の濃さの基準となる、しきい値を設定します。そのしきい値を超えた場合を1、超えなかった場合を0という形にすることで、画像を2つの値で表現します。それにより、画像は白黒の2色に変換され、この境界線を測定器が認識し、画像から寸法を求めることが可能です。ちなみに、画像処理に関しては光源の強弱がこの境界の二値化に影響を与えます。そのため、サンプルの種類によっては照明の当て方を変えるなどして、光源の強弱を調整する必要があります。

画像寸法測定器の選び方

画像寸法測定器を選ぶ際は、以下の点を考慮します。

1. 測定範囲

まず、画像寸法測定器の測定範囲を確認します。画像寸法測定器は画像撮影にカメラを使用する以上、測定器のカメラのレンズやイメージセンサの測定範囲が決まっています。そのため、測定対象物がその範囲内で測定可能かどうかは確認が必要です。

2. 製品の重量

次に確認しておく項目は測定する製品の重量です。この重量は実際の測定値の保証となります。そのため、この重量を超えた場合は測定できたとしても、測定値自体は保証できないことになります。その際に精度保証値も合わせて確認しておきます。

3. 分解能

最後に確認する項目は、画像寸法測定器の分解能です。分解能とは、装置が確実に測定できる最小の値を指します。一般的に製品の寸法保証には、最低でも測定する寸法の1/10の精度が求められます。例えば、1mmの寸法を保証するためには、最低でも0.1mmの分解能が必要です。また、0.1mmの寸法を保証したい場合に0.1mmの分解能の測定器で測定をしても、その寸法は保証できないことになります。それゆえ、事前に分解能を確認することで、実際に測定する製品に合致した性能かどうかを検討できます。

参考文献
https://www.keyence.co.jp/ss/products/vision/visionbasics/use/measurement.jsp

曲げ加工機

曲げ加工機とは曲げ加工機

曲げ加工機とは、金属材の薄い板金素材を曲げる用途で使用される加工機です。

曲げ加工機はブレーキプレス、ベンダー、ベンディングマシンなどさまざまな名称があります。この機械の仕組み自体はシンプルで、プレス機同様にパンチ部の金型 (上型) とダイ部の金型 (下型) を上下に可動させて圧力をかけ、金属板を折り曲げます。

上下運動の加圧と素材の硬度や厚さ、曲げ角度にあった金型を用意すると、希望の角度に曲げることが可能です。

曲げ加工機の使用用途

曲げ加工機は、切削加工では難しい形状やコストカットを目的に制作する際に用いられます。 曲げ加工機を使用して制作される製品は多岐にわたり、家電製品から自動車部品や工業製品、アルミサッシなどの建材用部品に至るまで、分野は非常に幅広いです。

この加工機を用いる製品は薄い金属材を利用するため、軽量かつ大量生産が可能となります。ほとんどの場合、薄い金属材の曲げ加工において曲げ加工機が用いられています。

曲げ加工機の原理

前述した通り、曲げ加工機の仕組み自体は単純で、プレス機同様にパンチ部の金型 (上型) とダイ部の金型 (下型) を上下に可動させることで、圧力を加えて金属板を折り曲げます。現在は、油圧式プレスブレーキが最もメジャーな加工機です。

このマシンでは、油圧シリンダが上下運動の動力構造に当たります。また、クランク部の出っ張りが少ないため、負荷や加工速度をコントロールできます。

曲げ加工は圧力を加え金属を曲げる性質上、塑性変形にて発生するスプリングバックにより、曲げ精度にばらつきが起きてしまうのが欠点です。なお、スプリングバックとは、本来の形状に戻ろうとする現象を指します。

曲げ加工機のその他情報

曲げ加工の種類

曲げ加工機の利用する際は、可能な曲げの種類を理解しておく必要があります。上下の金型の種類は多様であり、パーツの組み合わせによって複雑な折り曲げ加工を実現できます。

主に使用されている曲げ加工法は、以下の通りです。

1. V曲げ
V曲げは文字通りV字型のパンチを使用し、金属板を押し曲げる加工方法です。金型がシンプルで、さまざまな曲げ加工に使用されます。V曲げはパンチの押し具合によって以下の3つに分類されています。

  • ボトミングベンド (底突き曲げ)
    曲げをパンチの底まで押し込み90度に曲げる方法。
  • パーシャルベンディング (自由曲げ)
    V曲げをパンチの途中で止めて曲げ角度を調整する方法。
  • コイニングベンド(圧力曲げ)
    ボトミングベンドのようにパンチを底まで押し当てた状態からさらに圧力を加える方法。

一般的にV曲げは、圧力を加えるほど曲げRやスプリングバックが小さくなります。そのため、コイニングベンドは一番精密な加工が可能ですが、加圧にはボトニングベンドの5倍の圧力が必要とされており、金型の摩耗が激しいです。

2. L字曲げ
L字曲げは、金属板の上下をクランプし、飛び出している部分をパンチで押し当てることで直角に曲げる加工方法です。押さえ曲げともよばれており、板を押さえながら曲げるためV曲げと比べて、成型が安定しています。また、V曲げでは対応できない長い金属板の曲げが可能となります。

3. U曲げ
U曲げは、上からのパンチと下からのパッドと呼ばれる可動する押さえで金属板を保持したまま圧力を加え、加工する際に左右の固定台に合わせてU字に曲げる加工方法です。曲げ精度にばらつきがすくなく、1回の曲げで成型することが可能なため、曲げ加工にかかる工数を減らすことができます。

しかし、成型時の形状毎に専用の金型が必要となり、導入コストがかかります。

4. Z曲げ
Z曲げは、金属板をZ字に曲げる加工方法です。Z字に曲げる方法とし、先ほど説明のあったL字曲げを2回行う (一度曲げた金属板の裏表は反転させ再度曲げなおす) かL曲げの際に専用のパンチに底突きさせ、一度で押し曲げます。

L字曲げを2回行うより一度で成型するほうが精度はよくなりますが、当然導入コストは高くなります。

光電素子

光電素子とは

光電素子

光電素子とは、光エネルギーと電気エネルギー間の変換を司る電子素子の総称です。

大別すると、電気信号を光信号に変換する発光素子と、光信号から電気信号に変換する受光素子があります。発光素子は電流を流すと光を発する素子で、発光ダイオードがその代表例です。

電球や蛍光灯も電流を流して光を発しますが、一般的に発光素子とは半導体を利用したものに限定され、それらは含みません。また、受光素子は光を受けて電流を発生するもので、太陽電池がその一例です。

光電素子の使用用途

光電素子は、光を利用する分野で非常に多くの機器に使われています。発光素子であれば、発光ダイオードを用いた照明器具の発光部、フォトインターラプタ等のセンサーでは物体検出用の光源として、光通信の分野では半導体レーザーを信号光源等、さまざまな使用例を挙げることができます。

受光素子は、上記太陽電池の他、照度計やカメラの露出計、CDやDVDのピックアップ、撮影機器のイメージセンサ、フォトインターラプタでは物体からの反射光を検出するセンサーがその例です。

光電素子の原理

発光素子と受光素子の原理は大きく異なります。

1. 発光素子

発光素子の代表として発光ダイオードで示すと、その基本構造は、P型半導体 (キャリアとしてホールが大多数を占める) とN型半導体 (キャリアとして電子が大多数を占める) が接合されたPN接合にあります。

発光ダイオードに順方向の電圧をかけると、発光ダイオードのチップの中を電子とホールが移動し電流が流れます。移動の途中で電子とホールがぶつかると再結合しますが、その状態では電子とホールがもともと持っていたエネルギーを合わせたものより小さくなります。

この減少したエネルギーは、光に変換されて半導体の外部に放出されます。これが発光の原理です。

2. 受光素子

受光素子は、光電効果を利用したものです。光電効果は、半導体のPN接合部で発生するものを指します。フォトダイオードの両端をショートしていても、PN接合部には電界が形成され、その中では電位の傾斜が生じています。

この電界の中に光が照射されるとそのエネルギーで電子とホールが発生しますが、電位の傾斜によって直ちに電子が移動します。即ち、ショートした外部回路に電子の移動である電流が流れることになりますが、この電流は光が強い (光子の数が多い) ほど大きくなります。

なお、PN接合部に逆バイアス電圧を印加すると電界が広がるため、その分広い領域で電子とホールが発生します。また、電位の傾きも強くなるので、キャリアの移動速度が速くなり、高速な応答が期待できます。

光電素子の種類

光電素子に分類される半導体素子には、次のようなものがあります。

1. 発光素子

発光ダイオード (英: Light Emmiting Diode)
近赤外から可視領域まで発光波長が異なる発光ダイオードが多数製品化されていますが、特に青色LEDは照明器具に使われることから非常に需要が伸びています。一方、近赤外光を発する発光ダイオードは光通信用のデバイスとして利用されるものです。

半導体レーザー
通常のLEDより強く、かつコヒーレントな光を発することが可能です。身近な応用例としては、直進性を活かしたレーザーポインター、大光量かつ単波長であることを活かしたプロジェクター用光源があります。

有機EL (英: Electro Luminescence)
テレビや撮影機材のファインダーなど薄く軽量なディスプレイに用いられます。

2. 受光素子

フォトダイオード
光の強さを測定する照度計などの計測器のセンサーや光で物体を検出する際のセンサー等、さまざまな用途があります。

フォトトランジスタ
トランジスタのベース領域で光を受け、そこで発生する電流を増幅して取り出せることから、フォトダイオードより高感度なセンサーです。主にフォトインタラプタの受光部に採用されています。

イメージセンサ
フォトダイオードを平面状に多数並べて、そこに画像を投射し画像データを作成するためのセンサーです。静止画や動画を撮影するカメラの撮像部に用いられているものです。

半導体素子としては非常に大きく、高価ですが、かつて使われた撮像管や写真用フィルムからの置き換えにより、広く普及しました。

参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjspe1933/31/371/31_371_1039/_pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/sicejl1954/7/1/7_1_35/_pdf
http://www.nhao.jp/~tsumu/lecture/Welcome_files/%E7%AC%AC%EF%BC%99%E7%AB%A0.pdf
https://jsdkk.com/home/glossary/glossary-photodetector/

純水製造装置

純水製造装置とは

純水製造装置

純水製造装置とは、高度に浄化された水を生産するための装置です。

単純に純水装置と呼ばれることもあります。純水は特定の用途において高い純度が求められる場合に使用されます。純水製造装置はさまざまな技術を組み合わせて水を浄化し、不純物や微生物・溶解物質を取り除くことが可能です。

純水製造装置は定期的な水の購入や配送の必要性を排除できるため、長期的にはコスト効率が高いです。特に大量の純水が必要な業務や産業においては、コスト削減につながります。容器の使用を減らすことも可能なため、廃棄物の削減や環境への負荷軽減にも寄与します。

純水製造装置の使用用途

純水装置は以下のようなさまざまな使用用途で活躍しています。

1. 製薬産業

製薬会社では、高品質かつ安全な医薬品の製造を目指しています。純水は、製品の調製、洗浄、溶解、製剤調整などの工程で使用されることが多いです。

医薬品の原材料となる成分を溶解する際には、純度の高い純水が不可欠です。また、洗浄工程では製造装置や容器を清潔に保つために純水が利用されます。

2. 電子機器製造

電子機器の製造では微細な部品や回路が使用されます。これらの部品や回路は、微小な不純物が存在すると正常に機能しません。純水によって基板やチップを洗浄し、不純物や粉塵を取り除くために重要です。

また、電子機器は発熱する場合が多いため、熱を逃がすために純水が使用される場合も多いです。これにより、機器の適切な温度を保ちながら効率的に動作することが可能です。

3. 発電所

蒸気タービン発電所では高温高圧の蒸気を使用して発電を行います。蒸気を生成するためには高品質の給水が必要です。純水製造装置は水中の不純物や溶解物質を除去し、給水ポンプに供給するための高品質な水を提供します。

また、原子力発電所では冷却水として純水が使用されることがあります。原子炉の冷却には高品質な冷却水が必要です。そのため、原子力発電所では純水製造装置が使用され、冷却水を高品質かつ安定した状態に保つことが求められます。

純水製造装置の原理

純水製造装置は種類によって動作原理や構造が異なります。ただし、物理的な分離や化学的な吸着を使用して純水純度を向上させる点は共通です。

純水装置では、微細な孔や特殊な膜を使用して水中の不純物や微生物を物理的に隔離または分離します。これにより、水中の不純物が取り除かれ、浄化された水が得られます。

また、不純物を吸着して純水純度を高めることも多いです。イオン交換においては、イオン交換樹脂を用いて溶存イオンを除去または交換します。活性炭フィルターなどでは、不純物や有機物を吸着することで水を浄化します。

純水製造装置の種類

純水製造装置にはさまざまな種類が存在します。以下は純水製造装置の種類一例です。

1. 逆浸透装置

逆浸透装置は、RO膜 (逆浸透膜) を使用して水を浄化する装置です。RO装置は一般的に浄水フィルターや活性炭フィルター、紫外線殺菌装置などと組み合わせて使用されます。広範な用途に適しており、製薬、電子機器製造、化学分析などで使用されることが多いです。

2. 蒸留装置

蒸留装置は、水を蒸発させて再凝縮させることで水を浄化する装置です。水中の不純物を取り除き、高品質の純水を生産します。蒸留装置は比較的古くから使用されており、実験室や一部の産業で使用されています。

揮発性の不純物は初蒸留分を廃棄することで除去可能です。ただし、水と沸点が近い不純物の分離は困難です。

3. イオン交換装置

イオン交換装置とは、イオン交換樹脂を使用して水中の溶存不純物を除去する装置です。陽イオン交換樹脂と陰イオン交換樹脂を混合して使用することが多いです。無機物の不要不純物を除去するのに適しています。

ただし、イオン交換樹脂の吸着容量には限界があるため、徐々に不純物除去能力が低下します。したがって、使用時間、水量などの記録は重要です。塩酸や苛性ソーダを使用することで、イオン交換樹脂を再生させることが可能な製品もあります。

参考文献
https://doi.org/10.20665/kakyoshi.57.6_272
https://doi.org/10.14894/faruawpsj.28.1_17

静電アクチュエータ

静電アクチュエータとは

静電アクチュエータとは、静電気力で発生するエネルギーを動力に変換し、物体を動かす働きをもつ装置です。

静電アクチュエータで主に使われているのは光学分野です。使われている部品としては可変焦点レンズ、シャッター、ディスプレイなどがあります。

特徴としては軽量、柔軟、薄型、透明が挙げられます。特徴を生かして、光学分野以外にも人間への適用が期待されています。

研究例としてはロボットの人工筋肉、義手、義足などがあります。実際の人間のパーツに近い動きができるようにするための開発が進んでいます。

静電アクチュエータの使用用途

MEMS

MEMSの駆動装置として、静電アクチュエータはよく利用されています。

MEMSとは微小な電気機械システムという英語の略称であり、半導体、電子回路などをまとめた総称を指します。

MEMSも半導体を含んでいますが、可動部がある点が一般の半導体と異なります。

半導体が用いられる部品は小型化が求められているため、薄膜化できる静電アクチュエータが必要になります。

人工筋肉

介護ロボット、義足、義手など人間の動きをサポートする装置は柔軟かつ複雑な動きが求められます。そこで人工筋肉の検討が行われており、その駆動力に静電アクチュエータが用いられています。

静電アクチュエータの原理

静電アクチュエータの原理は、平行平板型のコンデンサです。コンデンサは電気を蓄えたり放出したりする働きがあります。この時静電気力が発生し、駆動力に変わります。

発生する静電気力は平板の面積に比例し、平板間距離の2乗に反比例します。このことからできるだけ薄膜化すると静電気力が増加し、大きな駆動力を得ることができます。

静電アクチュエータは微小なため、発生する駆動力の絶対値が小さいという短所があります。短所を改善するため、薄膜化以外にも並列に並べて面積を増やし、駆動力を大きくする方法がとられています。

静電アクチュエータ以外にも利用する力により、下記のアクチュエータが存在します。
それぞれ長所と短所があるため、使いわけることが重要です。

熱アクチュエータ

長所は製作が容易なことです。短所は材料の異方性により、使う場所で駆動力が変わってしまうことです。

電磁アクチュエータ

液中でも使えるので用途の幅が広くなります。短所は小型化が困難です。

圧電アクチュエータ

長所は駆動力が大きいことです。短所はヒステリシスロスが起き、与えたエネルギーより駆動力が弱くなる場合があることです。

 

参考文献
http://journal.vrsj.org/13-2/s8-12.pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/gomu/90/2/90_36/_pdf/-char/ja
http://toshi.iis.u-tokyo.ac.jp/toshilab/?en/What%20is%20MEMS%3F/Microactuator

静電気試験機

静電気試験機とは

静電気試験機は一般的に「静電気」と呼ばれる放電現象、つまり帯電したヒトやモノなどが電子機器に放電した際に生じる電気のエネルギーを評価するために使用する試験機です。静電気試験はイミュニティと言われるノイズ耐性を評価するIEC規格(国際標準電気規格)のEMC試験の中でも重要な1試験項目であり、ESD(静電気放電)試験とも呼ばれています。実際の試験機の出力電圧は装置によって異なり、製品に応じた各種規格に準拠した試験に適した試験機を選定します。

静電気試験機の使用用途

日本においては静電気放電試験の規格は特にありません。しかしIEC国際規格では「静電気放電に対するイミュニティ試験法」があり、欧州のEMCでも規格番号EN55014-2やEN61000-4-2における試験条件に静電気放電試験が含まれており、本試験は国際標準規格として重要な項目です。

静電気試験の国際規格では機器が静電気に耐えられる程度を複数のレベルで区分しており、接触放電による静電気試験では、最初のレベルが2kV印加、 次のレベルが4kV印加、その次が6kV印加、さらに上が8kV印加と区分が規定されています。この試験で使用される試験機が静電気試験機です。

静電気試験機の原理

静電気試験機は大気中でヒトの体に帯電した電気が放電する現象とは異なり、安定した放電が出来るため接触タイプの放電方式を採用しています。

接触タイプの装置ではエネルギー蓄積用コンデンサの電荷を使って事前に被試験機に接触させた放電電極に、放電抵抗を介して静電気試験機の銃(ガン)内部にある高電圧リレーを印加します。この接触タイプの放電は気中で花火の様に放電する気中タイプの放電方式に比べて、高圧で封じ込めた不活性ガスの中に備えられた高電圧型のリレーを使った機械式接点を介しており、精度の高い放電が可能になります。

現在主流の静電気試験機は接触放電方式を採用しています。接触型の放電は空気中で放電する気中タイプと比べて高精度な放電になることは前述しました。IEC規格ではこの信頼性の高い放電となる接触型の放電における放電時に印加する電流波形が規定されています。この放電時の印加電流波形はオシロスコープ等を用いて抵抗の電圧降下(電流)という形で測定可能なので、試験前に波形確認をすることで規定に準拠した測定が可能です。

接地抵抗計

接地抵抗計とは

接地抵抗計

接地抵抗計とは、電気機器と大地間の電気抵抗を測定する機器です。電気工事士や電気関係実務者にとって身近な機器の一つです。接地とは、大地と電気機器を接続することを指します。

電気機器に異常が発生した際に、人が触れると感電する恐れがあります。電気機器を接地することで、異常発生時にも大地へ電流を逃がすことが可能です。電気機器の安全上、確実に接地されていることは非常に重要です。確実に接地されている状態を「アースを取れている」と言います。

接地抵抗計の使用用途

接地抵抗計は、接地工事や電気機器点検において使用されます。接地工事とは、金属等の導電体を地下深くに埋める工事を言います。電気工事士にとって重要な工事の一つで、接地の使用用途に応じてA~Dまで4種類に区分されます。

高圧機器用の接地極はA種接地と呼ばれ、抵抗10Ω以下に保つ必要があります。100~200V程度の低電圧機器用の接地極はD種接地と呼ばれ、抵抗100Ω以下と規定されています。

接地工事の際には接地抵抗計を用いて接地抵抗を確認します。電気工事士や電気主任技術者は接地抵抗計を日常的に使います。

接地抵抗計の原理

接地抵抗計の測定原理はオームの法則です。接地抵抗計によって測定対象極と比較対象極の間に交流電圧を印加します。電圧印可後に両極間を流れる電流を測定し、印可電圧から電流を割り算することで接地抵抗を計算します。

上記のようにすれば接地抵抗の計算が可能ですが、この手法では測定対象極と比較対象極を足した接地抵抗を測定してしまいます。そこで、電圧測定専用の接地極を別に設けることで測定対象極のみの接地抵抗を測定します。

なお、接地抵抗測定計に直流電圧を用いた場合、電気分解が発生して電流値が定まらなくなります。そのため、接地抵抗計では交流電源を用いることが多いです。交流電源は周波数が高くなるとリード線の静電容量の影響を受けるため、周波数が1kHz以下の電源が採用されています。

接地抵抗計の使い方

接地抵抗計には、「アナログ表示方式」「デジタル表示方式」「目盛り針が”0”表示時の目盛値を読む方式」などがあります。例として、以下にアナログ表示形式の使用手順を示します。

接地抵抗計には補助接地極と呼ばれる金属棒が付属し、接地抵抗測定時に地面に埋め込んで使用します。

  • 測定手順1:測定をしたい接地極(以下接地極E)から10m程度離れた箇所に1つ目の補助接地極Pを埋め込みます。
  • 測定手順2:接地極Eと接地棒Pを結ぶ直線延長上の更に10m程度離れた箇所に、補助接地極Cを埋め込みます。
  • 測定手順3:各接地極を接地抵抗計の各端子に接続します。
  • 測定手順4:電池容量が問題ないことを確認し、E-P間の電圧が許容値以下であることを確認します。
  • 測定手順5:測定ボタンを押し、表示された値が接地抵抗の値です。

他の設置抵抗計も基本的にアナログ表示方式と手順は変わりませんが、「目盛り針が”0”表示時の目盛値を読む方式」は目盛針が0表示時の目盛値を読みます。また、接地抵抗計に付属する緑色・赤色・黄色の三色電線は、各接地極と接地抵抗計本体にある端子とを接続するために使用する電線です。

この他にも、接地線をクランプすることで接地抵抗を測定するクランプ式接地抵抗計も存在します。補助極を地面に埋める必要がないため簡単に測定できますが、多重接地の場合などにしか利用できません。

接地抵抗計のその他情報

接地抵抗計と絶縁抵抗計の違い

絶縁抵抗計と接地抵抗計は測定項目や測定対象が異なります。絶縁抵抗計は電気回路を測定して絶縁状態を確認するのに対し、接地抵抗計は接地極を測定して接地抵抗を確認します。

また、絶縁抵抗計は直流電圧を印可しますが、接地抵抗計は交流を印可します。機器自体の見た目や名称が似ていますが、それぞれ上記のような違いがあるため、あらかじめ把握しておくことが大切です。

参考文献
https://www.kew-ltd.co.jp/support/knowledge/technical/earth
https://eleking.net/k21/k21h/k21h-grounding.html

銅とは

銅

銅とは、元素記号Cuで表される原子番号29の元素です。

非常に優れた導電性や熱伝導性を持つことから、電気配線や電子部品、発電機、太陽電池、冷却器などの材料として広く使用されています。また銅は比較的融点が低く、溶かした後に金型に流し込むことで様々な形状に成形できます。

錆びにくく化学的に安定しているため、耐久性が高い材料です。よって建築材料や船舶、自動車部品、水道管、加熱器、冷却器など、耐久性が求められる分野でも広く利用されています。

銅の表面には酸化銅が形成されて細菌やウイルスを殺菌できるため、食品加工や医療機器などでも銅を利用しています。

銅の使用用途

以下は銅の代表的な使用用途の一部です。

  1. 電気・電子機器
    配線や回路板、モーターやトランスのコイルなど
  2. 建築・建設材料
    外壁や屋根材、建物内装、ドアノブや手すりなど
  3. 自動車・船舶部品
    エンジン部品や冷却システムのパイプ、船舶のプロペラや電気配線など
  4. 医療機器
    手術用具や医療機器の表面加工など
  5. 食品加工・調理器具
    鍋やフライパン、オーブン皿など
  6. 製造業
    銅板や機械部品、パイプや配管、建築材料など

銅の種類

銅には合金を含め,様々な種類があります。以下はその一部です。

1. 無酸素銅

酸素を除去することで純度を高めた銅です。酸素は銅の導電性を損なうため、銅を電気配線や電子部品の材料として使用する場合には高い導電性を持つ無酸素銅が好まれます。

2. タフピッチ銅

微量な不純物を含むことで強度を高めた銅です。この不純物は酸化銅や銅鉄などの微粒子で構成されており、銅を微細な結晶粒子で構成することで強度を高めます。

3. りん酸銅

りん酸を添加することで酸素を除去し、高い導電性と耐腐食性を持った銅です。りん酸は銅に溶け込むことができ、酸化銅や酸化鉄などの不純物を固めて取り除く作用があります

4. その他

上記の他にも青銅白銅洋白黄銅アルミニウム青銅チタン銅クロム銅などがあります。

銅の性質

1. 熱伝導性

銅は優れた熱伝導性を持つ金属の1つです。銅は熱エネルギーを迅速かつ均等に伝達できるため、熱の発生源から迅速に伝熱され、熱の偏りや温度の格差を抑制できます。電子機器や冷却装置の熱を均一に分散させて効率的に冷却できます。

2. 電気伝導性

銅は電流をよく通すため、電気信号や電力を効率的に伝えられますが、これは電子機器や電力配線などの電気回路において重要な性質です。銅は電気伝導性が優れているため、電気信号や電力の損失が少なくなります。

3. 非磁性

純粋な銅は非磁性を示し、磁石に引き寄せられることはありません。この性質は銅の原子構造や電子の配置によるものです。

ただし銅合金などの銅の結晶構造が変化した場合や不純物が存在する場合には、銅の磁性が変化することがあります。例えば銅ニッケル合金や銅マンガン合金では、銅にニッケルマンガンの不純物が加わることで磁性を示すようになります。

4. 耐食性

銅は耐食性が高く、多くの環境条件下で酸化や腐食に対して抵抗力を示します。これは銅の表面に形成される酸化被膜によるものです。

銅の表面は通常、酸化被膜 (銅酸化物) の薄い層で覆われていて、この酸化被膜は自己修復性を持っているため、新たな酸化被膜が再生されることで銅の表面を保護します。酸化被膜は銅の内部にある銅イオンと外部の酸素や湿気との反応によって形成されます。

5. 可鍛性と展性

銅は可鍛性 (鍛造性) と展性がある金属です。これらの性質は、銅の結晶構造や原子間の結合の特性によって生じます。

可鍛性とは、銅が加熱されると結晶構造が変化して柔らかくなる性質のことです。銅は通常、室温では比較的硬い状態ですが、高温で加熱すると結晶間の隙間が増えて銅は柔らかくなり、容易に形状変更できるようになります。この特性を利用して、容易に銅を鍛造したり圧延したりできます。

展性とは引っ張られると細長く延びる性質のことです。銅は結晶構造が滑らかで密に詰まっているため、引っ張る力が加わると結晶間の原子が滑りやすくなります。このため銅に引張力が加えると容易に延びます。

6. 可溶性

銅は他の金属との溶け合いやすさ (可溶性) の高い特性を持っているため、銅は他の金属との合金化や接合が容易であり、様々な銅合金が作られています。

例えば真鍮は、銅と亜鉛の主成分からなる合金であり、最も一般的な銅合金の一つです。真鍮は銅と亜鉛の比率によって特性が変化し、真鍮の導電性や熱伝導性、耐食性、切削性が利用されています。

また銅ニッケル合金は、銅とニッケルの主成分からなる合金です。ニッケルの含有量によって特性が変化し、銅ニッケル合金は耐食性の良さや磁気特性、強度の高さなどの様々な特性を持ちます。

銅のその他情報

銅のその他の特性

銅には以下のような特性も持っています。

溶接性
他の金属との接合において優れた溶接特性を示し、溶接作業に適しています。

耐摩耗性
銅は耐摩耗性があり、摩擦や摩耗に対して強い耐性を持ちます。

低摩擦特性
銅は摩擦抵抗が比較的低い特性を持ちつため、潤滑油やグリースの使用が少なくて済む場合があります。

耐熱性
銅は高温に対して耐性を持ち、高温環境下での使用や高温処理が必要な場面においても安定した性能を発揮します。

抗菌性
銅の表面には細菌やウイルスの成長を抑制する効果があります。

リサイクル性
廃棄物や使用済み製品として回収された銅は再利用されます。

美観性
銅は鮮やかな赤みがかった色合いを持ち、美しい外観を持つ金属です。

磁場透磁率
銅は磁場透磁率が高い特性を持つ金属の一つです。磁場透磁率は、物質が磁場を通過する際にどれだけ磁束を透過させるかを示す指標です。一般的に、金属は磁場を妨げる特性を持ちますが、銅は磁場透磁率が非常に高いため、磁束を比較的容易に透過させられます。

銅は磁場透磁率が高いため、例えば電磁石やトランスコイルなどの磁気デバイスや磁場センサーに使用されたり、電磁インダクタやトランスのコア材料としても使用されたりする素材です。ただし銅の磁場透磁率は他の磁性材料 (例:鉄やコバルトなど) と比較すると低いため、高い透磁率が求められる場合には、銅よりも磁性材料が適している場合があります。

電磁界解析ソフト

電磁界解析ソフトとは

電磁界解析ソフトとは、マクスウェル方程式をPC上で解くことにより、対象物にかかる電場や磁界を数値的に解明するソフトです。

ソフトには無料で使えるフリーソフトとライセンス料を払う商用ソフトがあります。電磁界解析で代表的なソフトは、商用ソフトであるJMAGです。

自動車用ワイヤハーネスの電磁環境両立性(EMC)、モーター、5G関連の高周波解析など、電磁場解析の需要は様々な分野であります。

また電磁場単体ではなく、振動解析などと組み合わせて複合的に解析する、連成解析も行われています。

電磁界解析ソフトの使用用途

電磁場解析の代表例として、EMC解析があります。

EMCとは電磁環境両立性のことで、他の機器に対して電磁的な妨害を与えない性能と、他の危機から与えられる電磁波に影響されない性能、両方のことを指します。

EMCが達成できていないと機器の動作が遅くなったり、逆に誤作動を起こしてしまったりするので、場合によっては重大な被害を及ぼすことがあります。

EMCの達成度合を確認するため測定が行われていますが、測定条件によりEMCの精度が変わってしまう問題があります。他にも測定に時間がかかることがデメリットです。

解析では理想条件を設定することができるため、精度の問題を気にせず、また実測よりも短時間ですむというメリットがあります。

電磁界解析ソフトの原理

電磁場解析の元になっているマクスウェル方程式は、4つの法則から成り立っています。

1つ目の法則は、ガウスの法則です。ある空間の電場から出る電気力線の本数は、空間内に存在する電荷を、真空の誘電率で割ったものと等しくなります。

2つ目の法則は、磁場に対してガウスの法則を適用したものです。電荷は存在するが、磁荷は存在しないことを意味し、磁界は常にN極とS極がセットになって存在します。

3つ目の法則は、ファラデーの法則です。この法則は、変化する磁場から電界が発生することを意味します。

4つ目の法則は、アンペールの法則です。電流が流れる時、磁場が右ねじの進む方向に発生することを意味します。

低周波と高周波の時でマクスウェル方程式の解き方が変わります。高周波では電場と磁場に相互作用が発生するため、両方を解く必要があります。一方で低周波では式を近似して、電場成分と磁場成分に分解することができます。高周波は両方解く必要があるので、低周波よりも複雑な現象になります。

参考文献
https://www.terrabyte.co.jp/soft/sol-ele.htm
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jiep1998/4/5/4_5_354/_pdf/-char/ja
https://sei.co.jp/technology/tr/bn175/pdf/sei10584.pdf
https://www.oeg.co.jp/emc/emc.html
https://www.emc-ohtama.jp/emc/doc/emc-introduction.pdf
https://www.panasonic.com/jp/corporate/technology-design/ptj/pdf/v5601/p0207.pdf
https://ednjapan.com/edn/articles/1011/01/news116_3.html
http://www-het.phys.sci.osaka-u.ac.jp/~tanaka/emIge/2011/section5_1.pdf
http://www.toei-si.jp/yshimada/shimada_note_01.html