キサントン

キサントンとは

キサントンとは、化学式C13H8O2で表され、2つのベンゼン環がエーテルとケトンで橋渡しされた3環の構造を持つ有機化合物です。

CAS番号は90-47-1で、別名として「ゲニシド」「ベンゾフェノンオキシド」などがあります。キサントンは、サリチル酸フェニルを加熱することで合成することが可能です。また、天然にはハルンガナやガルシニアに存在することが知られています。

キサントンの使用用途

キサントンは、1939年から殺虫剤として、特にコドリンガの卵や幼虫を駆除するために使用されています。また、血液中の尿素濃度の測定に用いられるキサンチドロールの原料です。キサントンを還元することで、キサンチドロールを得られます。

キサントンの性質

キサントンの比重 (密度) は約1.1607、融点は173~177℃、沸点は349~350℃です。水にはほとんど溶けず、エタノールやエーテルに溶けにくく、クロロホルムにはよく溶けます。

常温では固体で存在しており、白色から薄い褐色または薄い紅色をしています。通常の条件では、安定性が高いです。ただし、有機化合物であるため強酸化剤と混合すると大変危険です。光によって変質する可能性も考えられるので、保存の際は遮光する必要があります。

キサントンのその他情報

1. 毒性・危険性と適用法令

経口毒性があり、GHS区分3 (LD50が50mg/kgを超え300mg/kg以下) にあたります。危険物船舶運送及び貯蔵規則、航空法では毒物類・毒物に該当し、輸送に関する国連番号はUN2811で毒性固体 (有機物) に該当しています。

一方、毒物及び劇物取締法では毒物や劇物に定められていない状況です。また、消防法上の危険物でもありません。PRTR法、輸出貿易管理令にも非該当の物質です。

2. キサントン誘導体 (キサントン類・キサントノイド)

キサントン誘導体にはマンゴスチン (α-mangostinやγ-mangostin) と呼ばれるグループがあり、抗菌活性、抗癌活性、抗酸化活性、抗炎症効果など多様な生理作用を持つことが示唆されています。これらはその名の通り、植物のマンゴスチン (mangosteen) の果皮に含まれているものです。

このように植物由来の特異な化学物質をファイトケミカルと呼びます。その他のキサントン誘導体やその配糖体にも、生理活性を持つファイトケミカルが多数知られています。これらの中にはサプリメントとして商品化されているものもあり、植物マンゴスチン由来のマンゴスチンエキスなどがその例です。

なお、簡略化した表現でこのようなキサントン構造を有するファイトケミカルをすべて含んでキサントンと称することがありますが、本来はキサントン類と呼ぶべきです (英: xanthones) 。キサントノイドと呼ぶこともあります。これらのファイトケミカルがキサントンそのものでないことに、十分な注意が必要です。

3. キサントノイドの生合成

まず安息香酸からベンゾイル補酵素Aが作られます。これは原料段階で、安息香酸由来のベンゼン環が1つの状態です。

これに3分子のマロニル補酵素Aが反応し、2,4,6-トリヒドロキシベンゾフェノンの形になります。マロニル補酵素Aの3分子を用いて新たな環が形成され、2つの環の間をケトン基がとり持っている状態です。

次いで、ベンゾフェノン-3′-ヒドロキシラーゼとシトクロームP450モノオキシゲナーゼの作用により、2,3′,4,6-テトラヒドロキシベンゾフェノンが生成します。これは水酸基が付加された状態です。

この状態からキサントンシンターゼの作用により、3つ目の環が形成されキサントン構造となります。この例のように、天然に存在するキサントノイドは水酸基を持つものがほとんどであり、純粋なキサントンはわずかです。

参考文献
https://labchem-wako.fujifilm.com/sds/W01W0124-0004JGHEJP.pdf

カリオフィレン

カリオフィレンとは

カリオフィレンとは、クローブのつぼみや花から単離された香気成分です。

他にも、ローズマリーやホップに含まれています。ハーバルかつウッディー調のもので香辛料を思わせます。大麻草にも含まれている物質であり、中枢神経系に作用を及ぼすという一面があります。その一方で、近年、カリオフィレンは、骨量を増量したり、アテローム性動脈硬化症の治療にも有効であることが明らかになりました。消防法では、危険物第四類 第三石油類 危険等級Ⅲに該当します。

カリオフィレンの使用用途

カリオフィレンは、香気成分であり、エッセンシャルオイルに配合されます。大麻草の茎や種子から抽出されたカンナビジオール (CBD) と一緒に取り入れることで、相乗効果をもたらすともいわれています。しかし、大麻草の葉自体は麻薬扱いとなるため、取り扱いには注意が必要です。

その他にも、カリオフィレンをカリオフィレンオキシドに変化させたものは、麻薬探知犬が大麻を特定する際の成分として使用されています。

参考文献
https://labchem-wako.fujifilm.com/sds/W01W0232-5307JGHEJP.pdf

オリザノール

オリザノールとは

オリザノールとは、植物ステロールまたはトリテルペンアルコールにフェルラ酸が結合した化合物の集合体です。

オリザノールは、抗酸化能の他に様々な性質を有することが知られています。オリザノールの中でも、γ-オリザノール (ガンマオリザノール) が最も有名であり、利用されるケースが最も多いです。

γ-オリザノールは自然界においてコメに多く含まれます。具体的には、玄米 (特に米ぬか) などです。体内のコレステロールを低減させる効果および自律神経の働きをサポートする効果が見込まれています。

γ-オリザノールは高い温度でも分解しにくい安定な物質であり、人体に対する安全性も高いです。

オリザノールの使用用途

オリザノールの主な使用用途は、人体への適用です。オリザノールの中でも最もよく使用されるγ-オリザノールは、人体に対して様々な性質を有します。

それら性質を利用して、主に医薬品、化粧品、食品に使用されています。医薬品における1日あたりの経口投与量は、10mgから50mgです。化粧品および食品に添加できる配合量の上限も決められています。

1. 医薬品としての用途

医薬品の分野では、更年期障害や過敏性腸症候群などの心身症の治療、または高脂質血症の治療に使用されます。心身症の治療では、脳内神経伝達物質であるノルアドレナリン量を増やしたり、消化器官を動かしたりする作用が期待されます。

したがって、不安や抑うつ、消化器症状などが改善される可能性が高いです。高脂質血症の治療では、コレステロールの吸収を抑えること等によって脂質異常症の改善が期待できます。

2. 化粧品としての用途

化粧品の分野では、主に2つの効果が見込めます。1つは紫外線を防ぐ紫外線防御効果です。紫外線には主に2種類あり、波長が長い方のUVAと波長が短い方のUVBがあります。

γ-オリザノールは、主にUVBを吸収する性質を有します。γ-オリザノールが油溶性であるため、油性成分を多く含む乳液やクリームなどの化粧品に配合されます。

化粧品の分野におけるもう1つの効果は、肌老化の原因ともなりうる活性酸素を除去して肌を守る効果、すなわち抗酸化効果です。抗酸化とは、酸化を防ぐ作用です。

酸化をわかりやすく例えるとサビることであり、紫外線などの影響によって皮膚で酸化が起こるとシワなどの原因になります。抗酸化作用を有するγ-オリザノールが肌にあると、シワの原因となる酸化を抑制できると考えられます。

3. 食品としての用途

食品の分野では、食品添加物として配合することが認められています。抗酸化剤として添加することが可能です。また、γ-オリザノールを含むサプリメントが市販されています。γ-オリザノールは健康食品の成分としても利用されています。

オリザノールの性質

γ-オリザノールの主な特徴は、水に溶解しない油溶性という点にあります。室温では白色から淡黄色の粉末状です。γ-オリザノールは主に米ぬかに含まれているため、米ぬかから取れるコメ油にもγ-オリザノールが含まれています。

オリザノールの構造

γ-オリザノールの分子構造は1つではありません。γ-オリザノールとして多種の化合物が存在します。上述したように、γ-オリザノールはフェルラ酸と植物ステロールまたはトリテルペンアルコールとがエステル結合した化合物です。

しかし、植物ステロールまたはトリテルペンアルコールの構造がさまざまであるため、γ-オリザノールにも多数の種類があります。

オリザノールのその他情報

1. γ-オリザノールの発見

γ-オリザノールは、1953年に日本の研究者によって世界で初めてコメから抽出されました。コメの学名は Oryza sativa でありオリザノールという物質名の由来となっています。

2. γ-オリザノール以外のオリザノール

オリザノール、特にγ-オリザノールは米ぬかに特異的に高濃度で存在しますが、オリザノールは他の植物にも存在します。例えば、オリザノールは小麦、とうもろこし、または粟にも存在します。微量ですが昆布にもオリザノールが含まれています。

参考文献
https://www.chemicalbook.com/ChemicalProductProperty_JP_CB5758140.htm
https://www.genome.jp/entry/D01221+-ja

エチルシクロヘキサン

エチルシクロヘキサンとは

エチルシクロヘキサンとは、6つの炭素が環状に並んだシクロヘキサンにエチル基が付いた有機化合物です。

ヘキサヒドロエチルベンゼンやシクロヘキシルエタンとも呼ばれており、分子式C8H16で表されます。常温では液体で存在しており、比較的安定な化合物です。

引火性のある液体のため、消防法では「第4類引火性液体」「第一石油類非水溶性液体」に該当します。ベンゼンと水素ガスの混合物にウルトラファインバブルを導入することで生成が可能です。

エチルシクロヘキサンの使用用途

エチルシクロヘキサンの主な用途として、洗浄剤・塗料・印刷インキの溶剤が挙げられます。印刷インキの中でも、発色性と保存性に優れたインキ材料の原料として使用されていることが多いです。

また、塗料の用途には、光化学反応性の小さい溶媒として、キシレンの代わりに使用されます。安定性は高いですが、水生環境に関しては、使用期間関わらず有害性があるため、廃棄する際には都道府県知事の許可を受けた専門の廃棄物処理業者に依頼して廃棄する必要があります。

エチルシクロヘキサンの性質

エチルシクロヘキサンは、分子量112.21、CAS番号1678-91-7、無色無臭の液体 (20℃、1気圧)です。 

1. 物理的性質

融点 -113℃、沸点・初留点および沸騰範囲 132℃、引火点 35℃、自然発火温度 238℃、爆発下限界及び爆発上限界 0.9〜6.6 vol%です。熱的性質については、製造メーカーによって10〜20℃程度数値が異なるため、使用前にSDSを確認する必要があります。

動粘性率 0.787mPa・s (25℃)、蒸気圧 12.8mmHg (25℃) 、 密度 0.7879g/cm3 です

2. 化学的性質

水への溶解度は6.3mg/L、またアセトン、エタノール、トルエンと混和します。通常の取扱いにおいては安定ですが、流動・撹拌などによって静電気が発生することがあります。

強酸化剤と激しく反応し、火災や爆発の発生する危険も高いです。また、燃焼によって、一酸化炭素、二酸化炭素などの有毒ガスを発生します。

エチルシクロヘキサンのその他情報

1. エチルシクロヘキサンの安全性

引火性の高い液体および蒸気を発生させ、飲み込んだり、気道に侵入したりすると、生命に危険の恐れがあります。また、皮膚に接触すると、乾燥や発赤が生じます。

熱や火炎、火花で容易に発火するため注意が必要です。蒸気は空気と爆発性混合気体を形成します。蒸気は空気より重く、低い場所、密閉された場所 (下水道、地下、タンク) に溜まりやすいです。

保管時は、熱、火花、裸火などの着火源から離し、酸化剤から離れた場所で保管します。容器は直射日光を避け、密閉し換気のよい冷所で貯蔵します。また、保管場所は耐火構造、不燃材料で作る必要があります。

2. エチルシクロヘキサンの取扱方法

引火性液体であることから、取扱時は燃焼の3要素 (可燃物、酸素供与体、着火源) に注意して作業を行います。作業時は、引火性蒸気が発生することから、局所または全体換気設備のある場所で作業を行う必要があります。

容器は密閉し、作業場は接地しアースをとり、静電気の発生を防止することが重要です。また、防爆型の電気機器、換気装置、照明機器を使用することが推奨されています。

作業者は、保護手袋、保護衣、保護眼鏡、保護面を着用して作業します。作業後は保護手袋を着用していた場合でも、よく手を洗い作業を終了します。

3. 応急措置

火災が発生した場合は、小火災の場合、粉末消火剤、二酸化炭素、一般の泡消火剤を使用します。大火災の場合は、散水、水噴霧、一般の泡消火剤を使用します。使用してはいけない消火方法は、棒状注水消火です。

身体に付着した場合は、直ちに汚染された衣類を全て脱ぎ、皮膚を水で十分に洗い流します。また、飲み込んだ場合は、直ちに医師に連絡し、無理に吐かせず医師の指示に従い行動します。

吸引した場合は、新鮮な空気のある場所に移動し、呼吸しやすい姿勢で休息させます。眼に入った場合、水で数分間注意深く洗う必要があります。

アントラキノン

アントラキノンとは

アントラキノンの基本情報

図1. アントラキノンの基本情報

アントラキノンとは、アロエなどの天然植物にも含まれる芳香族に属する有機化合物です。

IUPAC系統名では、アントラセン-9,10-ジオン (英: anthracene-9,10-dione) です。別名には、9,10-アントラセンジオン (英: 9,10-anthracenedione) 、アントラセン-9,10-キノン (英: anthracene-9,10-quinone) 、アントラジオン (英: anthradione) などがあります。果皮や葉の色素の元になっています。

アントラキノンの使用用途

アントラキノンは、主に工業分野で使用されます。一例としては、アントラキノン系の染料を製造するための、出発材料として利用可能です。アントラキノンを材料とした染料は、「日光や洗濯に強い」、「色調も豊かで鮮明」という特徴があり、高級染料に位置づけされます。

その他、下剤の製造中間体、パルプ蒸解の添加剤、過酸化水素の製造の水素キャリアなどの用途で使用されます。農業分野では、鳥の忌避剤としても使用可能です。

アントラキノンの性質

アントラキノンの融点は286°Cで、沸点は379.8°Cです。常温では、黄色の結晶の状態で存在します。日本国内で特定化学物質には、該当しない化学物質です。

アントラキノンは、ニトロベンゼンやアニリンに溶けます。ベンゼンやトルエンに熱時溶解しますが、水やアルコールには溶けません。通常の条件下でアントラキノンは、化学的に極めて安定です。

アントラキノンの構造

アントラキノンは、アントラセン (英: anthracene) の誘導体です。アントラセンの化学式はC14H10、アントラキノンの化学式はC14H8O2です。モル質量は208.21g/molで、密度は1.308g/cm3です。

1,2-アントラキノン、1,4-アントラキノン、9,10-アントラキノンの3種類の異性体が存在します。ただし普通は、9,10-アントラキノンのことを指します。

アントラキノンのその他情報

1. アントラキノンの合成法

アントラキノンは、アントラセンを酸化して得られます。

また、フリーデル・クラフツ反応 (英: Friedel–Crafts reaction) を用いても合成可能です。すなわち、塩化アルミニウムを使用して、無水フタル酸とベンゼンの縮合によって、アントラキノンが生成します。この反応では、o-ベンゾイル安息香酸が生じると自発的に環化して、アントラキノンを得ることが可能です。

さらに、1,3-ジエンやナフトキノン (英: 1,4-naphthoquinone) のディールス・アルダー反応 (英: Diels–Alder reaction) でも、アントラキノンが合成できます。

2. アントラキノンの反応

アントラキノンとグリセロールの反応

図2. アントラキノンとグリセロールの反応

アントラキノンを用いた古典的な反応の具体例として、バリー・スコール合成 (英: Bally-Scholl synthesis) が挙げられます。アントラキノンはグリセロール (英: glycerol) と反応して、ベンズアントロン (英: benzanthrone) を生成します。バリー・スコール合成では銅と硫酸の存在下で、キノンの1つのカルボニル基がメチレンになって還元されて、グリセロールが付加します。

3. アントラキノンの応用

アントラキノンによる過酸化水素の製造

図3. アントラキノンによる過酸化水素の製造

天然色素の多くは、アントラキノン骨格を有します。例えば、色素であるアリザリン (英: alizarin) の原料としても、アントラキノンが利用されます。

それ以外にも、工業的に誘導体の2-エチルアントラキノン (英: 2-ethylanthraquinone) は、過酸化水素の製造のために使用されます。

参考文献
https://labchem-wako.fujifilm.com/sds/W01W0101-0431JGHEJP.pdf

光学測定器

光学測定器とは

光学測定器

光学測定器は、英語名で「Optical Measuring Instruments」と呼ばれており、主に受光器を用いて測光を行う機器です。その名の通り、光の測定器であり、光波などを処理することで、画像をより見やすくしたり、その特性を分析するために利用します。

一般的に光学測定器には、照度計輝度計、放射計、積分球などがあります。機器によっては、これらを組み合わせて高精度な透過や反射などの光学特性を測定することが可能です。また、光学測定器は、三次元の測定が可能な機器も販売されています。

このような光学三次元測定器は、光学式コンパレータや測定顕微鏡と同様に、画像を使用して計測を行う非接触式の測定器です。CNC画像測定器とも呼ばれており、画像処理技術を活用して、高速で高精度な自動測定を行います。CNCは「Computer Numerical Control」の略称です。

光学測定器の使用用途

光学測定器は、さまざまな用途で使用されています。

例えば照度計は、紫外線照度計や紫外線強度計と呼ばれており、電子部品のシーリングやプリント基板の印刷などで使用されています。大部分は、各種産業における殺菌工程で使用されるランプの強度管理を目的として使用されています。

そのほかに光学測定器には、積分球がありますが、代表的な積分球としては、球形光束計が挙げられます。

球形光束計は、ランプの全光束を比較測定するために用いられ、分光測光装置に付属して分光反射率の測定に使用される小型の積分球です。ポータブル計測器としても製品化されており、持ち運びが可能です。

ただし、積分球は、大型の製品も販売されているため、導入を検討する際には注意が必要です。

主な用途として光源の全光束を測定するために使用されており、測定対象には、蛍光灯や白熱灯、モバイル機器のバックライトなどが挙げられます。

光学測定器の原理

光学測定器には、あらゆる機器や測定方法による分類があるため、記事内で解説した照度計や積分球の原理について、このトピックで解説します。

紫外線照度計

一般的に紫外線照度計は、小型な機器で持ち運びが容易です。シンプルな構造となっており、シリコンフォトダイオード前面に紫外透過フィルターと可視吸収フィルターを設置することで、可視域などを吸収して紫外線のみを取り出す仕組みです。

受光器は、交換式の製品も販売されており、受光器を差し替えることにより、紫外線の硬化用や紫外線洗浄用など、さまざまな用途で使用が可能になります。

積分球

積分球は、測定法や使用用途によって種類が多様で、主な利用形態には、ビーム測定法や全光束測定法、均一標準光源法、透過率・反射率測定法などがあります。

一般的な積分球は、光を集めて空間内で多重反射させることにより、光を均一化して、その一部を検出します。空間内は、球面となっており、内壁には、硫酸バリウムや熱可塑性樹脂、金メッキなどの反射率の高い素材が使用されています。

また、積分球は、測定光を照射する位置に穴があいており、入射した光が球内で反射されます。

しかし、光の均一化には、拡散反射を繰り返すことが必要です。このことから放射された光は、検出器に直接入射することを避けなければなりません。

そのため、光源と検出器の間には、バッフルと呼ばれる拡散用の遮光板が取り付けられています。

光学測定器の世界市場

光学測定器の世界の市場調査として、株式会社富士キメラ総研による発表とKenneth Research社による発表を参照しました。以下にそれぞれの発表内容を記載します。

  • 株式会社富士キメラ総研による発表

    株式会社富士キメラ総研は、2021年2月12日に光学関連製品の市場調査結果として「2021イメージング&センシング関連市場総調査」を発表しました。

    同発表によると、2020年における光学ユニットの世界市場は、5兆5,967億円の見込みで、前年比が107.8%でした。そして、2026年の光学ユニットにおける市場は、8兆9,781億円となる予測で、2019年比では、172.9%となる見込みです。

  • Kenneth Research社による発表

    Kenneth Research社による市場調査では、世界の光学イメージング機器市場が2022年に23億米ドルに達し、2030年度末までに61億米ドルに達すると予測しています。

    また、2022年から2030年の予測期間のあいだに年平均成長率(CAGR)が約15%ほど、拡大すると見込んでいます。

遮熱シート

監修: 株式会社エステック21

遮熱シートとは

遮熱シート

遮熱とは、放射熱(輻射熱)をカットすることです。

同じ気温でも日向から日陰に移動すると涼しく感じます。これは、太陽からの電磁波(放射熱/輻射熱)の一部がカットされるからです。

熱の伝わり方には3種類(放射・伝導・対流)あります。遮熱シートは、そのうち放射熱をほぼ全てカットすることで、夏は超日陰で快適に、冬は室内の熱を逃がさず暖かくなります。

高温設備に適用すると

  • 外壁から熱が逃げないので、投入エネルギー削減、立ち上がりが早い=省エネ、生産性向上
  • 体感温度が下がり快適環境=熱中症対策、空調費削減

遮熱シートの使用用途

遮熱シートの具体的施工例は、建屋では屋根、壁、テントなど。工場設備では工業用の各種炉、高温配管、制御盤、エアコン室外機などがあります。

  • 建物への適用
    建物を移動する熱の割合は、圧倒的に放射熱が多いです。

※ペンシルバニア州立大学、オークリッジ国立研究所の見解として報告されております。

また、人が寒暖を感じる要素は「放射熱40%、気温30%、湿度20%」と言われており、放射熱を抑えることが重要です。

屋内については、 体感温度=(部屋気温+周囲表面温度)÷2のような見方もあります。

建物事例

暑熱対策、空調費削減、保管製品劣化防止等のメリットがあります。

工場内設備事例

暑熱対策、空調費削減、生産性向上等のメリットがあります。

  • 非鉄金属製造炉
  • 大型塗装乾燥炉(都市ガス)
  • 食品焼成炉

夏に直射日光が当たる設備や、高温設備付近の制御盤の盤内温度上昇を防止するメリットがあります。

その他

学校、幼稚園、保育園、老齢者施設、公共施設、店舗、ビル、倉庫、仮設テント、植物工場、牛舎、豚舎、養鶏場、キノコ栽培など…アイデア次第で様々な用途に使用できます。

遮熱シートの原理

断熱材との違い

遮熱シートは、熱を跳ね返す性質を持ち、室内の気温上昇が抑えられます。結果、エアコンの稼働を抑えられます。
一方、断熱材は熱を蓄え室内の気温上昇を防ぎます。ただ、断熱材に溜まった熱がじわりと室内に入ってしまうため、エアコンを使って温度を下げる結果になります。

遮熱効果(技術的説明)

一般に、屋内設置で表面温度が70℃の炉における炉壁からの放熱ロスは、対流と放射とほぼ同等になります。その設備に遮熱シートを施工すると、放射熱ロスをカットし、ロスを低減できます。

遮熱シートの動画例

Youtube動画 よくわかる!遮熱シートの原理 – YouTube

 

本記事は遮熱シートを製造・販売する株式会社エステック21様に監修を頂きました。

被膜剤

被膜剤とは

被膜剤

被膜剤とは、対象物の表面に被膜を形成して外界からの影響を低減する機能を持つ薬剤です。

大きく分けて主に医療分野で皮膚を保護する目的の被膜剤と、工業分野で金属材料などの表面を保護する目的の被膜剤の2種類があります。この記事では、工業分野で使用する被膜剤を解説します。

被膜剤は対象物同士の潤滑性を高める目的でも使用されており、挿入や結合の際の摩擦を低減するのに効果的です。例えば、自動車の等速ジョイントなどに使用されています。

被膜剤の使用用途

被膜剤は、対象物の表面に被膜を形成し、外界からの影響を低減する機能を持っています。一番身近な例は、水の影響を低減する撥水機能を持つ被膜剤です。また、被膜剤は対象物の表面を保護する対象物同士が接触する場合の摩擦を減らす目的でも使用されています。この用途の最もメジャーなのは、自動車の分野です。

1. 撥水効果のある被膜剤

撥水効果のある被膜剤は雨具の撥水性を高めるのに使用されており、製品として製造する過程でも使用されていますが、撥水効果が薄れてきた場合に使う一般用としても販売されています。一般販売されている撥水性を持たせる被膜剤は撥水スプレーなどとして流通しており、だれでも入手可能です。

2. 自動車関連の表面保護および摩擦低減する被膜剤

表面保護および摩擦低減する被膜剤は、自動車の等速ジョイントの保護に好適です。等速ジョイントは、エンジンからの動力をタイヤに伝える仕組みを有しており、摩擦だけではなく、焼付きなどによる耐荷重能も考慮しなければなりません。そのため、耐荷重能も有している被膜剤であるモリブデングリースなどを使用して、性能を保持しています。

また、この特性を持つ被膜剤は、褪色したモールや樹脂部分などの補修にも好適です。自動車のサイドミラーやドアバイザー、ワイパーアーム、レンズ・モールなどは、樹脂を加工して成形されているため、経年劣化により傷や褪色が発生します。被膜剤は、表面の傷に入り込むため、褪色した表面に光沢を与え、美観を向上するだけではなく、新しく生じる小さな傷を保護する性能も有しています。

3. その他の分野で表面保護および摩擦低減する被膜剤

表面保護および摩擦低減をする被膜剤は、耐火物のスポーリング防止にも好適です。高温下で使用される耐火レンガやキャスタブル耐火物などは、熱伝導率が大きくないため、急熱急冷が生ずると、内外の温度差により破壊されてしまいます (スポーリング現象) 。こうした問題を防ぐために被膜剤を塗布することで、耐熱性の向上や膨張の抑制、急冷の防止などの効果を得ることが可能です。

最後に、被膜剤を伸線加工の前処理工程で使用する場合を解説します。伸線加工は金属の延性や展性を利用することで、被加工材を棒や線、もしくは管状に引き抜く加工方法です。伸線加工では、線材表面の反応性を高めるために脱スケールが必須です。

しかし、その際に塩酸硫酸などを使用して、酸洗いが必要となり、スラッジが生じたり、錆が発生するなどの問題が発生します。伸線加工時の被膜剤は、主にダイスを通して伸線される際に、潤滑剤を引き込みやすくする目的で使用されますが、上記に挙げた問題を解決するために新しい被膜剤の開発も進められています。

被膜剤の原理

被膜剤は液体や固体、粉体の形状を有している製品が一般的です。被膜剤は、スプレーやビンなどの容器に充填されて販売されており、製品ごとに撥水や保護、耐熱、潤滑などの機能が表示されています。

その原理は、対象物の表面を保護する観点では表面被覆の原理とほぼ同様です。表面被覆は、対象物表面に膜を形成して表面から侵入してくる劣化因子を遮断して対象物を保護する仕組みです。被膜剤も同様の原理で対象物を保護しています。なお、劣化因子には、水や酸素、塩分、炭酸ガスなどが挙げられます。

被膜剤のその他情報

被膜剤の活用

被膜剤は、「被膜剤の使用用途」で述べた撥水加工や自動車分野以外の分野で使用される以外に、耐火物のスポーリング防止や伸線加工の前処理工程にも使用されています。順番に解説します。

1. 耐火物分野での使用
高温下で使用される耐火レンガは、熱伝導率が大きくありません。そのため、急熱急冷が生ずると内外の温度差により破壊されるスポーリング現象が生じます。被膜剤を塗布すれば、耐熱性の向上や膨張の抑制、急冷の防止などが可能です。

2. 延線加工分野での使用
伸線加工は金属の延性や展性を利用して、被加工材を棒や線、もしくは管状に引き抜く加工方法です。伸線加工では、線材表面の反応性を高めるために脱スケールを行っています。

しかし、その際に塩酸や硫酸などを使用した酸洗いを行うため、錆が発生する問題が生じます。この際、被膜剤を利用すれば、表面の錆の発生を防止可能です。

被膜剤はもともと、主にダイスを通して伸線する際にダイスに引き込みやすくするために使用されていました。しかし、上記のような効果も期待できることから、両方の効果に優れた新しい被膜剤の開発も進められています。

尿素SCRシステム

尿素SCRシステムとは

尿素SCRシステム

SCRとは「選択接触触媒還元脱硝法:Selective Catalytic Reduction」と「シリコン制御整流素子:Silicon Controlled Rectifier」を総称します。

主に尿素SCRは、前述した選択接触触媒還元脱硝法のことを指します。選択接触触媒還元脱硝法は、ディーゼル機関が排出する窒素酸化物(NOx)を浄化する仕組みです。2022年現在、この方法は、主に尿素水溶液を使用しており、尿素SCR、もしくは尿素SCRシステムと呼びます。

シリコン制御整流素子は、スイッチング特性があり、3端子の4層構造を有しており、電力制御回路に使用されています。

以下のトピックより、選択接触触媒還元脱硝法は、SCR法と略称して表記します。

尿素SCRシステムの使用用途

2022年において尿素SCRは、自動車や船舶、火力発電所などの排気ガス処理で使用されています。しかし、1989年ごろは、ディーゼル車において、まだ研究段階であり、この方法をディーゼル車へ適用する試みが、辻村氏・他3名により「日本機械学会論文集, NO.890-50 (1989-10), p.348」にて行われました。また、1992年には、ディーゼルエンジン用の後処理システムに対する研究動向を酒井氏が「日本機械学会誌, 95巻, 882号, 1992年, p.405-409」にて報告しています。

2004年までは、自動車での実用化は、行われていませんでした。同年に、株式会社日産ディーゼル工業(現:UDトラックス株式会社)が、世界で初めて尿素SCRシステム(名称:FLENDS)を自動車に組み込み、実用化しています。

2003年10月1日(2006年4月1日より新基準による規制)より開始したディーゼル車の排出ガス規制もあり、尿素SCRの需要は、これからも拡大していくことが予想されます。

尿素SCRシステムの原理

尿素SCRシステムは、まず、排気ガスを酸化触媒に通すことで、NOからNO2に変化させます。ここでCOやHCの低減が行われます。次に、SCR触媒の前段階の排気ガスに対して、尿素水を噴射制御ユニットから噴射し、尿素が加水分解したことで生じたNH3を還元剤として利用します。そして、SCR触媒上で、NH3が、NOxと反応することで、NOxを無害なN2に変化させます。最後に、酸化触媒を通過して、NH3が低減されます。酸化触媒は、アンモニアスリップ用として活用されます。アンモニアスリップとは、排ガスが低温時にアンモニアが残存する、もしくは外気中に排出されてしまう現象です。

尿素SCRは、高品位な尿素水溶液が必要不可欠です。なぜなら、不純物が混在している場合に、堆積物の原因や正常な還元の妨げになるためです。高品位尿素水としては 「AdBlue:アドブルー」が、一例として挙げられます。AdBlueは、ドイツ自動車工業会(VDA)が、商標として登録している製品です。日本国内においても多く利用されています。しかし、AdBlueは、さまざまな要因が重なり、2021年12月に日本国内において品薄の状態に陥りました。一般的なディーゼル車は、尿素水の供給が断たれてしまうと再始動ができないため、物流業界などが大きな影響を受けました。

また、尿素水を製造するためには、原料である尿素が必要です。尿素は、一般的にガス状態のアンモニアと二酸化炭素を高温高圧の条件下におくことで合成しています。そして、このほかの方法として、2020年、東京工業大学が、排水中などに含まれるアンモニア(炭酸塩類)から尿素の合成に成功したことを発表しました。近年は、個体で安定的な水素キャリアとしても注目を集めています。この研究は、2020年2月18日にネイチャーリサーチ社の科学雑誌「Scientific Reports」において「論文タイトル:Organic bases catalyze the synthesis of urea from ammonium salts derived from recovered environmental ammonia」として公開されています。

以上のことから、尿素SCRは、今後の課題として尿素水の安定的な供給を検討する必要があります。しかし、さまざまな研究と開発が行われているため、インフラが整備されるのも時間の問題ではないでしょうか?

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