非球面レンズとは
非球面レンズとは、球面ではない複雑なカーブを有するレンズです。
一般的な球面レンズはボールを切り取ったような単純な球面形状です。この形状は製造が容易である一方、レンズの中心を通る光と周辺を通る光が一点に集まらず、像がぼやけたり歪んだりする「収差」という現象が起こりやすい欠点がありました。特に、明るいレンズや広角レンズなどでは収差が顕著に現れます。
それに対して非球面レンズは、カーブの曲がり具合を場所によって変化させた、理想に近い複雑な形状のレンズです。これにより、球面レンズで発生していた収差を1枚で効果的に補正することが可能です。結果として、製品全体の小型化や軽量化、そして高画質化に貢献します。製造には高い技術力が必要ですが、その優れた性能から様々な光学製品に欠かせない部品です。
非球面レンズの使用用途
非球面レンズは以下の用途で使用されます。
1. カメラ・スマートフォン
スマートフォンやデジタルカメラの高画質化において、非球面レンズは不可欠です。非球面レンズを採用することで、画像の隅々までシャープでクリアな描写が可能になります。また、高倍率のズームレンズをコンパクトに設計できる点も、非球面レンズの大きな利点です。カメラユニットの小型化と軽量化を実現し、持ち運びやすさを向上させています。
2. 眼鏡
眼鏡においても、非球面レンズには大きなメリットがあります。従来の球面レンズでは度数が強い場合、レンズの周辺部で物が歪んで見えることがありました。非球面レンズを用いると、この歪みが大幅に軽減され、自然で快適な視界を得ることが可能です。さらに、同じ度数であれば球面レンズよりも薄く作ることができるため、重量も軽くなります。
3. 産業用・医療用光学機器
DVDやBlu-ray Discなどの光ディスクから情報を読み取るためのレンズにも非球面レンズが使われています。レーザー光をミクロン単位の微小な記録面に正確に集光させる上で、非球面レンズの高い性能が必要です。その他にも、顕微鏡の対物レンズや内視鏡などの医療機器といった、専門的な光学機器にも広く採用されます。