オリザノールとは
オリザノールとは、植物ステロールまたはトリテルペンアルコールにフェルラ酸が結合した化合物の集合体です。
オリザノールは、抗酸化能の他に様々な性質を有することが知られています。オリザノールの中でも、γ-オリザノール (ガンマオリザノール) が最も有名であり、利用されるケースが最も多いです。
γ-オリザノールは自然界においてコメに多く含まれます。具体的には、玄米 (特に米ぬか) などです。体内のコレステロールを低減させる効果および自律神経の働きをサポートする効果が見込まれています。
γ-オリザノールは高い温度でも分解しにくい安定な物質であり、人体に対する安全性も高いです。
オリザノールの使用用途
オリザノールの主な使用用途は、人体への適用です。オリザノールの中でも最もよく使用されるγ-オリザノールは、人体に対して様々な性質を有します。
それら性質を利用して、主に医薬品、化粧品、食品に使用されています。医薬品における1日あたりの経口投与量は、10mgから50mgです。化粧品および食品に添加できる配合量の上限も決められています。
1. 医薬品としての用途
医薬品の分野では、更年期障害や過敏性腸症候群などの心身症の治療、または高脂質血症の治療に使用されます。心身症の治療では、脳内神経伝達物質であるノルアドレナリン量を増やしたり、消化器官を動かしたりする作用が期待されます。
したがって、不安や抑うつ、消化器症状などが改善される可能性が高いです。高脂質血症の治療では、コレステロールの吸収を抑えること等によって脂質異常症の改善が期待できます。
2. 化粧品としての用途
化粧品の分野では、主に2つの効果が見込めます。1つは紫外線を防ぐ紫外線防御効果です。紫外線には主に2種類あり、波長が長い方のUVAと波長が短い方のUVBがあります。
γ-オリザノールは、主にUVBを吸収する性質を有します。γ-オリザノールが油溶性であるため、油性成分を多く含む乳液やクリームなどの化粧品に配合されます。
化粧品の分野におけるもう1つの効果は、肌老化の原因ともなりうる活性酸素を除去して肌を守る効果、すなわち抗酸化効果です。抗酸化とは、酸化を防ぐ作用です。
酸化をわかりやすく例えるとサビることであり、紫外線などの影響によって皮膚で酸化が起こるとシワなどの原因になります。抗酸化作用を有するγ-オリザノールが肌にあると、シワの原因となる酸化を抑制できると考えられます。
3. 食品としての用途
食品の分野では、食品添加物として配合することが認められています。抗酸化剤として添加することが可能です。また、γ-オリザノールを含むサプリメントが市販されています。γ-オリザノールは健康食品の成分としても利用されています。
オリザノールの性質
γ-オリザノールの主な特徴は、水に溶解しない油溶性という点にあります。室温では白色から淡黄色の粉末状です。γ-オリザノールは主に米ぬかに含まれているため、米ぬかから取れるコメ油にもγ-オリザノールが含まれています。
オリザノールの構造
γ-オリザノールの分子構造は1つではありません。γ-オリザノールとして多種の化合物が存在します。上述したように、γ-オリザノールはフェルラ酸と植物ステロールまたはトリテルペンアルコールとがエステル結合した化合物です。
しかし、植物ステロールまたはトリテルペンアルコールの構造がさまざまであるため、γ-オリザノールにも多数の種類があります。
オリザノールのその他情報
1. γ-オリザノールの発見
γ-オリザノールは、1953年に日本の研究者によって世界で初めてコメから抽出されました。コメの学名は Oryza sativa でありオリザノールという物質名の由来となっています。
2. γ-オリザノール以外のオリザノール
オリザノール、特にγ-オリザノールは米ぬかに特異的に高濃度で存在しますが、オリザノールは他の植物にも存在します。例えば、オリザノールは小麦、とうもろこし、または粟にも存在します。微量ですが昆布にもオリザノールが含まれています。
参考文献
https://www.chemicalbook.com/ChemicalProductProperty_JP_CB5758140.htm
https://www.genome.jp/entry/D01221+-ja