タクタイルスイッチ

タクタイルスイッチとは

タクタイルスイッチ

タクタイルスイッチとは、ボタンを押すと短時間だけ接点が閉じる電子部品です。

一般的には、小型で薄いプラスチック製のボタンを持ち、基板上にはんだ付けされた接点を有します。瞬間接触スイッチなどとも呼ばれます。

タクタイルスイッチは小型で薄い設計となっており、コンパクトなデバイスに組み込むことができます。これにより、デバイスの設計においてスペースの節約が可能です。

比較的低コストで入手できます。そのため、大量生産される電子機器や家電製品において、経済的な選択肢として利用されます。

タクタイルスイッチの使用用途

タクタイルスイッチはさまざまな分野・用途で使用される電子機器です。

1. OA機器

最も身近な例はOA機器です。コンピュータキーボードやマウスなどのデジタルデバイスにおいて、各種ボタンや操作スイッチとして使用されます。また、スマートフォンやポータブルオーディオプレーヤーなどの携帯型電子機器では、音量調整のためのタクタイルスイッチが利用されます。

2. 家電製品

家電製品にも多く使用される部品です。具体的な例は、テレビリモコンやオーディオ機器です。チャンネル切り替えや再生/停止などの機能を制御するためのボタンとして使われます。

3. 医療機器・計測器

医療機器や計測器においても使用されることがあります。操作ボタンやパラメーターの調整などのインターフェイス用途です。血圧計や体温計などでの操作に利用されます。

タクタイルスイッチの原理

タクタイルスイッチはボタンキャップ、接点、ピン、プラスチックケース、などで構成されます。

1. ボタンキャップ

タクタイルスイッチの上部に位置し、ユーザーが押す部分です。プラスチック製の場合が多く、押しやすさや操作感を向上させるためにデザインされます。また、 ボタンキャップには操作する機能や目的に対応するマークやシンボルが印刷されることがあります。

2. 接点

ボタンを押した時に一時的に接続される電気回路部分です。通常は、金属のスプリングまたは触媒メタルによって形成されます。

電気抵抗を低減する目的で、接点には銀合金や金が使用されます。銀合金は電気抵抗も低いため、広く使用されます。金は銀合金よりも酸化しにくい特徴を有しますが、融点が低く高価なため微少負荷向けです。

可動接点が物理的に駆動する構造ですが、一般的に10万~1,000万回の使用に耐えられるような高い耐久性を有します。

3. ピン

タクタイルスイッチは、基板に取り付けられるために使用されるはんだ付けピンです。これらのピンは基板上の専用のパッドにはんだ付けされ、電気信号を伝えます。

4. プラスチックケース

ピン以外の上記部品は、一般的にプラスチックのケースに収められています。このケースによって各種部品を機械的に保護しつつ、基板へ強固に固定します。

タクタイルスイッチの種類

タクタイルスイッチは、スルーホールタイプと表面実装タイプに大分されます。

1. スルーホールタイプ

基板上に開口された穴に直接はんだ付けするタイプです。基板に取り付けられた穴をスルーホールと呼びます。

基板上の穴に直接はんだ付けされるため、物理的な接続が非常に堅牢です。これにより、信頼性の高い操作を提供します。また、衝撃や振動にも耐えることも可能です。

基板上の穴にはんだ付けされるため、比較的大きな電流や高電圧にも対応できます。これにより、大容量の電気回路や用途に使用することが可能です。

2. 表面実装タイプ

基板の表面に直接はんだ付けされるタイプです。板の表面に直接はんだ付けされるため、非常にコンパクトな設計が可能です。基板上のスペースを最小限に抑えることができ、小型デバイスや高集積の回路に適しています。

また、基板上の短いトレースやパッドと直接接触するため、信号の品質が高くなります。信号の損失やノイズの影響を最小限に抑えることが可能です。

自動的なはんだ付け機で効率的にはんだ付けできるため、高速な生産性を実現します。大量生産に適しており、製造コストを削減することが可能です。

参考文献
https://ac-blog.panasonic.co.jp/20160701
https://xtech.nikkei.com/

フィルターチップ

フィルターチップとはフィルターチップ

フィルターチップとは、内部にフィルターがついているピペットチップです。

ピペットは、液体試料を量り取るための器具です。ピペットチップは、ピペット本体に取り付けて実際に液体を取り込む先端部分で、通常使い捨てとなります。フィルターチップは液体を吸いすぎた場合に、ピペット本体内部にサンプルの液体や蒸気が入ることを防いで、2種類の試料が混ざってしまう「クロスコンタミネーション」を防止します。

フィルターは、空気は通しますが、液体は通しません。ピペットの機能を損なうことなく、液体の吸引・吐出が可能です。

フィルターチップの使用用途

フィルターチップは、ピペットを汚染する恐れのあるサンプルを扱う場合や、クロスコンタミネーションの影響を受けやすいアッセイを行う場合に用います。クロスコンタミネーションの影響を受けやすい例としては、放射性同位元素を使用する場合やPCRなどDNA、RNAを用いる場合などが挙げられます。

ピペットを汚染する恐れのあるサンプルとは、揮発性物質、放射性物質、腐食性物質、バイオハザード (病原性微生物や遺伝子組み換え体) などです。

フィルターチップの特徴

フィルターチップに使われるフィルターは、一般にポリエチレン製で疎水性があります。メーカーや製品により、高密度ポリエチレン、疎水性ポリプロエチレン、超高分子ポリエチレン多孔質シート、特殊疎水性多孔質フィルター、超高分子量ポリスチレンメンブレンなどが使用される場合も多いです。

空気は通しますが、液体は通さないので、液体試料を吸い込みすぎても (オーバーピペッティング) ピペット本体内に入ることがありません。また、エアロゾルがチップコーン (ピペットの下部パーツの1つ) に入り込むことを阻止します。

エアロゾルとは、気体中に浮遊する微小な液体または固体の粒子と周囲の気体の混合体です。液体がフィルターに接触するとフィルターがブロックされるセルフシーリングバリアタイプとセルフシーリングではないタイプがあり、どちらもクロスコンタミネーションを防止することができます。

液体がフィルターに達しても湿潤によるブロックが起こらないフィルターでは、試料の回収が可能です。

フィルターチップの選び方

1. 使用目的

まずは、フィルターチップを使用する具体的な目的を明確にします。サンプルの濃縮、分析、浄化、粒子除去など、特定の処理が必要な場面に合致するチップを選びます。複数の使用用途がある場合は、同じものを使用できるかどうか検討することが大切です。

2. サンプルの性質

サンプルの性質に応じて選択肢を絞ります。サンプルが液体か気体か、粒子のサイズや形状、粘度、酸性・アルカリ性などの特性を考慮します。

3. チップの材料

フィルターチップの材料も重要です。一般的な材料にはポリプロピレン、セルロース、PTFE (テフロン) 、ナイロンなどがあります。サンプルの相性に合った材料を選ぶことが大切です。

4. チップサイズと孔サイズ

チップのサイズとフィルター孔のサイズが、通過する粒子や分子のサイズに合致しているかどうかを確認します。粒子が孔より大きい場合、分離が効果的に行われます。

5. 流量と処理能力

サンプルの流量や処理能力に応じて、適切なチップを選択します。大容量の処理が必要な場合、適切なチップサイズを選びます。

6. メンテナンスとコスト効率

フィルターチップのメンテナンス要件も考慮し、清掃や交換が容易かどうかを確認します。長期的な利用を考える際に便益があるため、イニシャルコストだけでなくランニングコストも考慮することが大切です。高性能なチップは高価ですが、目的に応じてコストと性能のバランスを検討します。

7. 規制と安全性

特定の業界やアプリケーションには、安全性や品質の基準が存在することがあるため、適切な規制に準拠することを確認します。特にメーカーとしてモノづくりを行う場合は品質問題にも関わるため、非常に重要な点です。

参考文献
https://www.thermofisher.com/blog/learning-at-the-bench/pipetting-guide3/
https://kotobank.jp/
https://www.jaast.jp/new/about_aerosol.html
https://www.watson.co.jp/product/pipette/filtertip.html 

スピンコータ

スピンコータとは

スピンコータとは、塗料を基材表面に均一に塗布するための装置のことです。

基材の中心に塗料を滴下した後、加速度や回転数を制御しながら基材を回転させ、遠心力を利用して均一な厚みを有する薄膜を形成します。スピンコータは、平滑な基材にしか使用できない、大きな面積の塗布には不向きなどのデメリットがありますが、厚みの誤差が少なければ、さまざまな薄膜を形成することが可能です。

そのため、半導体やディスプレイの製造、光学メディアのコーティングなどに広く使用されています。スピンコータは、高い精度を必要とする産業分野において欠かせない装置の1つであり、素材科学や表面加工技術の分野でも重要な役割を担っています。

スピンコータの使用用途

スピンコータの主な使用用途は、平滑な基材の上に均一な厚みの薄膜を作製することです。

特に、スピンコータはフォトリソグラフィ分野で重要な役割を果たしています。フォトリソグラフィとは、シリコン基板などの基材上に感光剤を塗布し、紫外線などの強い光を照射することで、基材表面に微細パターンを作成する技術です。半導体やディスプレイの製造において欠かせません。

さらに、スピンコータは光学メディアの分野でも活躍しています。DVDやBlue-ray Discといった光学メディアの表面にコーティングを施す際に、均一な膜厚を確保するために利用され、レンズの調光液の塗布など、光学分野におけるさまざまな用途でスピンコータが重宝されています。

スピンコータの原理

スピンコータは、遠心力を利用して基材の表面に均一な薄膜を作製しています。別名スピナーとも呼ばれ、平らな基材に薄膜を塗布する際に適した方法であり、膜厚のムラが少ないことが特徴です。

スピンコータの使用方法は、まず基材を装置にセットし、その中心付近に塗料を滴下させます。次に、基材を回転させて塗料に遠心力をかけ、塗料が基材表面に拡散塗布されるように調節します。回転速度や加速度は装置で設定できるため、塗料の液性や膜厚等を考慮して決定することが必要です。回転が終了した後、基材を取り外し、加熱や紫外線硬化を行って塗料を乾燥させます。

スピンコータによる薄膜化のメリットは、塗料の液性や回転数などを細かく設定することで様々な厚みの薄膜を形成できることや、使用する塗料の量を節約できることです。ただし、コーティング時に塗料ロスが生じることや、塗布が小さい面積に限られることがデメリットとして挙げられます。

それでもスピンコータは、高い精度の薄膜形成に役立つため、多くの産業で重要な装置として活用しています。

スピンコーターのその他情報

1. スピンコーターの使い方

スピンコーター化合物から薄膜生成する際に使用されますが、手順は下記の通りです。

  1. スピンコーターの中央にある回転体にガラスや金属の基板をセットします。真空引きをすることで、基板を回転体 (台座) に固定可能です。真空状態にするのが好ましくない場合は、両面テープなどを使用しますが、高粘着性のものが望ましいです。
  2. 基板上にポリマーなどの化合物溶液を注ぎます。なるべく基板全体が覆われるように均一に注ぎます。
  3. 回転数と回転時間を設定してスタートボタンを押します。時間になると回転が停止し、基板上に均一な薄膜が形成されています。

同じ薄膜作成に真空蒸着装置がありますが、真空状態ではポリマーなどは分解する可能性があるため、このような場合スピンコーターが適しています。

2. スピンコーターによる塗布ムラをなくす方法

均一な薄膜生成をするスピンコータですが、塗布ムラが発生して、目に見えない凸凹ができる場合はあります。塗布ムラのできる条件として以下のようなことが挙げられます。

  • 回転速度が遅い (時間内の回転数が少ない) 
  • 化合物溶液の粘度が高い
  • 基板の角部分に溶液の盛り上が見られる

基本的にスピンコータは回転速度が遅いほど膜は厚くなり、不均一なものになりやすいです。一番簡単な解決方法は回転数を上げて、回転時間を長くすることです。時間をかけられる場合は、回転時間は固定し各回転数で薄膜を測定し、その膜厚を測定します。その中でベストな回転数と時間を定めます。

化合物溶液の粘度が高いと飛びづらくなるので、不均一な膜になりやすいです。対処方法としては、溶液濃度を薄めて粘度を小さくすることです。

基板の角部分が不均一になる場合の解消方法は、密閉式かつ自動滴下機能つきのスピンコータを使用するのが良いです。自動滴下機能は、回転中の基板に自動で化合物溶液を滴下します。滴下と同時に溶液が基板にすぐ広がるため、角部分の盛り上がりを抑制し、均一な薄膜生成が可能となります。

参考文献
https://www.iri-tokyo.jp/uploaded/attachment/2407.pdf
https://www.spincoater.biz/spincoater/
https://www.keyence.co.jp/ss/products/measure/sealing/coater-type/spin.jsp
http://www.aiden.com/03_productinfo.files/spincoater4001.htm
https://www.jstage.jst.go.jp/article/sfj/63/6/63_336/_pdf

キセノン光源

キセノン光源とは

キセノン光源

キセノン光源とは、キセノンガス中でのアーク放電による発光を利用した人工光源です。

アーク放電は、正負の電極間の気体分子が電離してプラズマ状態となり、その中を電流が流れることを指します。 その発光原理から、白熱電球のようなフィラメントを通電させるタイプの光源よりも低消費電力・長寿命であることが、キセノン光源の特徴です。他のメジャーな人工光源としてハロゲンランプがありますが、キセノン光源はハロゲンランプより強力で、より小さなエリアの照射が可能です。

キセノンランプと表現する場合もありますが、この言葉はキセノンを封入した白熱電球 (キセノン電球) と紛らわしいため、この記事ではキセノン光源という用語を用います。フィラメントに電流を流すことで発光するキセノン電球は、プラズマ化したキセノンガス中に電流を流すことで発光するキセノン光源とは全く別の物です。

キセノン光源の使用用途

キセノン光源は、白熱電球のようなフィラメントを加熱するタイプの光源ではないので、比較的寿命が長いです。 また、特殊なフィルターと組み合わせると、太陽光とほぼ同じスペクトルになるため、産業や医療などの「自然な色を再現する必要のある現場」で重宝されています。

1. ショートアークランプの用途

キセノンショートアークランプは、輝度の高い点光源として、次のような用途で利用されています。

照明
サーチライトやヘッドライトのような高輝度光源としての利用もありますが、自然な色再現性が必要な舞台照明や手術灯としての利用の多さが特徴的です。また、小型化が可能なので、内視鏡用の光源としても使われています。

試験用光源
太陽光に近い性質をもつソーラーシミュレータとして、太陽光パネルの発電効率を調べたり、太陽光による材料の褪色や劣化などの耐久テストなどを行ったりする場合に最適です。幅広い波長の光を出力できるため、 分光分析装置の光源として用いられているほか、ディスプレイや測定デバイスなどの検査を行う際の光源としても利用されています。

投影用光源
映写機、プラネタリウム投影機、大型プロジェクターなどの光源には、点光源であることに加えて、安定した出力と高い演色性が求められるので、キセノンショートアークランプが最適です。

2. ロングアークランプの用途

キセノンロングアークランプは、競技場での投光照明や空港での航空機誘導被灯など、広範囲を照らす必要のある大型光源として使われることが多いです。

3. フラッシュランプの用途

最も目にする機会の多いキセノンフラッシュランプは、写真撮影用のフラッシュランプです。写真館などで用いる大型のものや一眼レフカメラ用のフラッシュランプなどに使用されています。

その他、皮膚の血流を改善して火傷の跡やアザの治療 (再生促進) を行うキセノン光線治療器としての利用や、IPL (Intense Pulse Light) 脱毛の光源としての利用もあります。

キセノン光源の原理

図1. アーク放電

キセノン光源の基本構造は、石英ガラス管に封入されたキセノンガスと2つの電極、そしてガラス管外部から両電極に結線された点灯回路からなります。この電極に高電圧パルスを印加して絶縁破壊を発生させることで、アーク放電を開始させるのが点灯回路の役割です。一旦開始されたアーク放電は、印加電圧を下げても持続できるため、ほとんどのキセノン光源の定格電圧は15~30Vになっています。

図1は、陰極から放出された電子が高速で衝突してキセノン原子を電離させ、電離により生じた電子が次のキセノン原子を電離させる様子 (アーク放電) を示したものです。一旦アーク放電が始まれば、電離した電子がキセノンイオンと再結合して原子に戻る際に、幅広い波長の光 (連続スペクトル) が放出されます。

図2. キセノン光源と太陽光のスペクトル

また、キセノン原子内の電子の一部は電離せずに励起され、励起した電子が基底状態に戻る時に出すのは、特定の波長の光 (線スペクトル) です。 そのため、キセノン光源のスペクトルは連続スペクトルに線スペクトルが加えられた形になります。

キセノン光源の種類

キセノン光源には、大きく分けて以下の種類が存在します。

1. ショートアークランプ

図3. キセノンショートアークランプ

ショートアークランプは、電極間の距離が数mm以下と短いため、発光領域がキセノンランプの中では小さく、輝度の高い点光源を作成可能です。石英ガラス管中には常温で高圧 (5~10気圧程度) のキセノンガスが封入されています。直流放電によりキセノン原子が発光して、時間をかけずに安定した出力を得られることが特徴です。

2. ロングアークランプ

細長い石英ガラス管内に、ほぼ1気圧 (105Pa) のキセノンガスを封入したものです。非常に大きな光束が得られることが特徴で、通常は定格消費電力が1kW以上です。50kWを超えるものも存在します。

交流放電により発光させるのが一般的で、電極間の距離は5~10cmあるいはそれ以上あり、点灯時に点灯管部分が非常に高温となるため、水または空気による冷却が必要です。

3. フラッシュランプ

極めて短時間 (数μs~数ms) の発光をさせるタイプのキセノン光源です。発光時間が短いため冷却装置は不要で、全体的に小型化が可能です。

形状はさまざまで、内部に2~10kPaのキセノンガスが封入されています。始動時にパルス電圧を印加する方式と、非点灯時も常に弱い電流を流して高速点灯を可能にするシマー方式があります。

参考文献
https://www.ushio.co.jp/jp/technology/glossary/glossary_ka/xenon_lamp.html
https://www.ushio.co.jp/jp/technology/glossary/glossary_ka/xenon_flash_tube.html
https://www.ushio.co.jp/jp/technology/lightedge/200404/100314.html
https://www.ushio.co.jp/jp/technology/glossary/glossary_ka/xenon_phototherapy_device.html

非破壊検査装置

非破壊検査装置とは

非破壊検査装置

非破壊検査装置とは、検査対象物を破壊したり傷を付けずに内部或いは表面を検査する装置です。

検査の目的は検査対象物の内部や表面に存在する傷や不良、クラック、ボイド (気泡) 等の有無を確認する事などです。この検査によって製造した製品を破壊せずに検査出来たり、製品の信頼性、保証を付与する事が出来る様になります。

非破壊検査装置には複数の原理に基づく多くのタイプがあり、検査対象の特性や検査目的などによって使い分けられます。また、非破壊検査装置を使いこなし、6種類の検査カテゴリー毎に検査技術を規定通り満たしているかを判断する非破壊試験技術者資格試験があります。

非破壊検査装置の使用用途

溶接部内部の溶け込みや溶接不良の有無や、素材内部のひびや割れ、ボイド等の欠陥、不良の有無、素材表面にある目視では識別できない傷や割れなどの判断に用います。

非破壊検査には装置を必要としない手法 (目視検査や浸透探傷検査など) もありますが、装置を要する場面も多く存在します。例えば、ビル・橋梁・トンネル・高架橋などのコンクリート内部にある鉄骨の経年変化検査、鋼管・アルミ管の生産工程中検査、飛行機の機体検査、原子力発電所内の容器や配管の検査などに活用されています。人の身体を検査するX線撮像やCTスキャン、磁気共鳴撮像も非破壊検査装置の仲間です。

非破壊検査装置の原理

非破壊検査には多数の原理に則った検査法がありますが、ここでは装置を必要とする検査法と原理について説明します。

1. 超音波探傷検査装置

超音波探傷検査装置の原理

図1. 超音波探傷検査装置の原理

超音波探傷検査装置は、超音波探触子から高電圧の超音波を発振させ、検査対象物表面や内部に伝播・透過する振動が内部欠陥や表面傷に反射した際のエコーを受信し、内部欠陥や表面傷の場所や大きさ等を特定する装置です。

超音波探傷検査装置の種類

図2. 超音波探傷検査装置の種類

超音波探傷検査にはパルス反射法、透過法、共振法の3つがあり、検査対象の形状等で使い分けられます。

2. 磁粉探傷検査装置

磁粉探傷検査装置の原理

図3. 磁粉探傷検査装置の原理

磁粉探傷検査装置は、表面傷部に生じる磁束の乱れを利用した手法です。

磁性を持った検査対象物に強い磁場を印加すると、表面傷のある箇所に磁束の乱れが生じます。検査対象に着色された鉄粉や蛍光磁粉を散布すると、表面傷部の磁束の漏れた形状に鉄粉や蛍光磁粉が整列するため、それらが模様や光の集合として目視できるようになります。

通常、この手法は装置を用いない目視での検査が主流ですが、画像認識装置を搭載した自動磁粉探傷装置も用いられます。

3. 渦流探傷装置

渦流探傷検査装置の原理

図4. 渦流探傷装置の原理

渦流探傷装置は、銅線を巻いたコイルが埋め込まれたプローブに交流電流を流して検査対象物表面に近接させ、対象物表面に生じる過電流の乱れを測定することで傷の有無を判断します。

傷の判別精度や感度は検査対象物に見合ったコイル形状が必要な為、同じ形状の検査対象を多数検査する場合によく利用されます。

4. 放射線透過試験装置

放射線透過試験装置の原理

図5. 放射線透過試験装置の原理

放射線の中でも透過性能が高く、高エネルギーなX線を用いて検査対象物へ放射線をあて、透過した放射線を検出器で受信し、その信号を描画もしくは画像認識装置によって検査対象内部の欠陥を検出します。

従来は人体のレントゲン検査と同じ様に放射線でフィルムを感光させて欠陥の有無を目視で判断していましたが、現在では画像認識で自動判別する装置が増えています。

非破壊検査装置のその他の情報

1. 非破壊検査装置のデメリット

非破壊検査装置は非常に便利ですが、各測定原理にはデメリットもあることを把握しておく必要があります。

超音波探傷検査
球状の傷や空洞に対してはエコーが四方八方に反射してしまうため、検出が困難です。また、複雑な形状の検査や粗粒材にも適していません。それぞれの組織の境界で生じる微小なエコーが乱雑に広がり、検出すべきエコーにノイズとして重畳されるからです。

磁粉探傷検査
非磁性材質の検査には適用できません。

渦流探傷検査
不導体の検査や、内部のきずを検出することが難しいです。また、形状が複雑な対象も不得手です。

放射線透過試験
厚みのある対象の検査には非常に高いエネルギーを持つ放射線が必要となるため、特殊な装置が必要です。また、表面のきずや密着した割れなどを検出することが苦手です。何よりも放射線の安全管理には十分な注意が必要です。

2. 非破壊検査装置の市場規模

日本での非破壊検査の市場規模は、機器の販売に検査サービス市場を加えると2,000~3,000億円といわれています。

メーカーが自社内で検査するだけでなく、検査会社に依頼している事例が多くなってきています。都市や産業の高度化に伴って、安全・安心・品質管理が重要視され、非破壊検査が担う役割も大きくなりつつあります。安全性や自然環境への配慮という観点からも、非破壊検査の市場規模は今後一層の成長が期待されています。

建設産業
建築・土木産業では、コンクリート構造物の非破壊検査・診断の市場規模が今後ますます拡大していくと思われます。これはコンクリート建造物の長寿命化が重要視されるようになってきたことと、劣化が顕著になるまえに、予防保全を行わなければならないという側面からくるものです。

その他の産業
エネルギー産業や重工業分野でも非破壊検査が拡大していくと想定され、今後の成長期待市場と言われています。

参考文献
http://www.tetras.uitec.jeed.or.jp

電解液

電解液とは

電解液

電解液とは、電解質を溶解させた液体のことです。

電解液中の電解質は陽イオンや陰イオンとなって溶解しており、これらが電荷を運ぶことができるため、電解液はイオン伝導性を有しています。電解液は主に電池などの蓄電デイバイや、めっきなどの分野で使用されています。

また、電解液はプロトン性の水系溶媒が使用されることが多いですが、リチウムイオン電池用電解液では非プロトン性溶媒が一般的です。

電解液の使用用途

電池用の用途としては、1次電池や充放電が可能な2次電池用問わず、幅広い電池に用いられています。具体的には、鉛蓄電池、アルカリマンガン電池、、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池、リチウム一次電池、リチウムイオン二次電池アルミ電解コンデンサ電気二重層キャパシタリチウムイオンキャパシタなどに活用されています。

電解液は電池を構成する材料の1つであり、電池は電極での化学反応によって起電力を得ることができます。また、電気分解では電極で酸化還元反応を生じさせるために必要不可欠な材料です。めっきにおいては、めっきする金属の供給源となります。

電解液の原理

電解液の原理

図1. 電解液の原理

電解液は、電池や電気分解などに用いる電解質が溶解した溶液です。電解質は溶液中で陽イオンと陰イオンに電離しており、これらのイオンが電荷のキャリアとして働きます。電解液の組成は用途によってさまざまで、より優れた性質を持つ電解液の開発が日々行われています。

一般的に電解液とは、電池用のことです。電池用の電解液にはいくつか種類があり、電池の種類によってその組成は大きく異なります。

電解液の種類

電解液は、電池などの正極と負極の間で電荷を運ぶ役割を持つ重要な材料です。以下、各用途毎の電解液について説明します。

1. 鉛蓄電池用電解液

鉛蓄電池は30~35%の希硫酸を電解液として使用しています。鉛蓄電池は、​二酸化鉛を正極に、​海綿状の鉛を負極に使用し、​​​充電時に正極に電流を流すことで二酸化鉛に変換され、​負極に電流を流すことで鉛に変換されます。

​放電時には、​正極から二酸化鉛が、​負極から鉛が希硫酸に溶解され、​電気を生み出します。鉛蓄電池は自動車やUPS (無停電電源装置) などで使用され、安価で製造が容易なため広く普及しています。

2. アルカリ電池用電解液

アルカリ電池用電解液は、​水酸化カリウムを主成分とする強アルカリ性の水溶液です。​アルカリ電池は、​電解液が水溶液であるため、​使用時でなくても自己放電が起こります。

​液漏れした場合や肌についたり目に入った場合は、​直ぐに大量のきれいな水で洗い流して、​医師の診断を受けるようにしてください。アルカリ電池は一次電池として広く使用され、長期間の保管にも適しています。

3. ニッケル水素電池用電解液

ニッケル水素電池用電解液には、​濃水酸化カリウム水溶液が用いられます。​ニッケル水素電池は、​陽極にニッケル酸化化合物、​陰極に水素吸蔵合金が用いられています。ニッケル水素電池は充放電サイクル性能が高く、ハイブリッドカーや家電などに使用されます。

4. リチウムイオン電池用電解液

リチウムイオン電池では、LiBF4 (テトラフルオロホウ酸リチウム) 、LiPF6 (ヘキサフルオロリン酸リチウム) 、LiFSI (リチウムビスフルオロスルホニルイミド) などのリチウム塩が溶解した有機系電解液が使用されています。電池用の電解液の場合、充放電時に分解しない、熱を加えても変性しない、熱により発火しないなどの性質が求められます。

リチウムイオン電池は軽量・高出力・長寿命であり、スマートフォンや電気自動車、家庭用蓄電池などに使用されます。

5. アルミ電解コンデンサ用電解液

アルミ電解コンデンサ用電解液は、3級アミンやアミジンとカルボン酸との塩を、ラクトンやグリコールなどの溶媒に溶解させたものが用いられています。アルミ電解コンデンサは、価格も安価であるため、自動車分野、家電分野、産業機器分野など広い分野で、電子基板をもつさまざまな製品に使用されています。

6. 電気二重層キャパシタ用電解液

電気二重層キャパシタ用電解液としては、4級アンモニウム塩、イミダゾリウム塩などの電解質を有機溶媒に溶解させたものが用いられています。正極と負極の活物質に活性炭を使用したコンデンサであり、多くのエネルギーを必要とする用途では二次電池が適しています。急速充放電が必要とされ、耐久性が要求される箇所では、電気二重層キャパシタが選択されています

参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kakyoshi/65/12/65_616/_pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kakyoshi/54/3/54_KJ00007744618/_pdf

超硬合金

超硬合金とは

超硬合金

超硬合金とは、周期表4〜6族の金属に鉄系金属を加えて作製した複合合金の総称です。

特に、タングステンカーバイドにコバルトを結合させたWC-Co系合金が一般的です。非常に硬く、高温でも常温時の硬度を維持できます。また、強度もあり、曲げなどの外力に強いです。

超硬合金の使用用途

超硬合金は、耐摩耗性が求められる分野で使用されています。具体的には、ガラス、プラスチック、金属加工用の切削工具や研磨工具に使用されています。また、岩石やコンクリートに穴をあけるドリル、工業製品用ノズル、電極用パイプ、ドットプリンタ用ピン、パンチピンなどの用途にも好適です。

超硬合金はダイヤモンドの次に硬い性質を持っており、高温でも硬さが維持されます。また、強度が強く、荷重がかかっても曲がりにくいのが特徴です。これらの特徴を活かせる分野で使用されています。

超硬合金の原理

超硬合金は前述した通り、周期表4〜6族に属する金属の金属酸化物を鉄系金属で結合 (焼結) して作られた複合合金です。

周期表4〜6族に属する金属としては、以下の9種類が挙げられます。

鉄系金属として代表的なものは以下の通りです。

中でも、炭化タングステンに結合剤としてコバルトを加えて作製したWC-Co系合金が代表的です。

超硬合金の製造方法

超硬合金は、粉末冶金法という特殊な方法により製造されます。超硬合金の主な材料である炭化タングステンの融点が2,900℃と高く、鉄のように熔解して製造することは困難なためです。

粉末冶金法とは、金属粉末をプレスしたあと、焼き固めるという製造方法です。超硬合金は、炭化タングステンの金属粉末と結合剤であるコバルトなどの金属粉末を混合し、これを押し固めたうえで、1,300℃~1,500℃の高温で焼結して製造されます。

このとき、金属粉の配合を用途に合わせて変化させることで、様々な複合合金が製造できます。現在では、「WC-Co系」の他に「WC-TiC-Co系」、「WC-TaC-Co系」、「WC-TiC-TaC-Co系」など、開発された種類は多いです。

超硬合金の加工方法

超硬合金は非常に硬いので、通常の方法では加工することができません。そのため、超硬合金よりも硬いダイヤモンドを利用した方法、パルス電源の放電を使った方法のどちらかで加工します。

1. ダイヤモンドを利用した加工

ダイヤモンドは非常に高価なので、ダイヤモンド砥粒をホイールに着けて切削研磨することになります。切削をおこなうダイヤモンド部分が少なく、少しずつ切削することとなり、加工に時間がかかるのがデメリットです。このため、最近では、切削工具自体をダイヤモンドの被膜でコーティングした工具も開発されています。

2. 放電加工

放電加工には、ワイヤー加工や形堀り加工などの加工法があります。ワイヤー加工は、材料の上下にワイヤーを張り、ワイヤーから放電しながら切断する方法です。形堀り加工は液体の中に材料を入れて、電極を放電させながら近づけ、金属を溶かしていく方法を指します。

超硬合金のその他情報

超硬合金に関する規格

超硬合金に関する規格の一例としては、日本産業規格の「JIS B 4053 (2013) : 切削用超硬質工具材料の使用分類及び呼び記号の付け方」が挙げられます。超硬合金はHW-P20のように、切削工具の材質による分類 (HW部分) と被削材料による分類 (P20部分) を掛け合わせた表記です。

これにより、どのような材質で、どのような被切削物に対応できるかがわかります。なお、炭化タングステンを主成分とする超硬合金は、粒子径により、HW、HFに分類されています。HWは、粒子径の平均が1μm以上のもので、HFは、粒子径の平均が1μm未満のものです。

当該規格には、HT、HCの2種類も超硬合金として記載されています。HTはサーメットを示し、主にチタン、タンタル、ニオブの炭化物や窒化物からできており、炭化タングステンの含有量が少ないものを示します。HCは、被覆超硬合金を示す記号で、超硬合金の表面に炭化物、窒化物、酸化物、ダイヤモンドなどを1層以上被覆させたものです。

参考文献
https://sei.co.jp/technology/tr/bn188/pdf/sei10871.pdf
https://www.nittan.co.jp/products/hard_metal_002_003.html
https://www.allied-material.co.jp/products/hard-metal/carbide-blade.html
https://kikakurui.com/b4/B4053-2013-01.html
https://www.micro-and-precision-products.com/knowledge/choukou/ https://xtech.nikkei.com/dm/article/COLUMN/20140109/326540/

製図CAD

製図CADとは

製図CADとは、機械や建築の図面作成を行う際に使用するソフトウェアのことです。

以前はすべて手書きで図面を作成しており、膨大な作業時間が生じていました。現在では製図CADで図面のデジタル化が可能になり、作図にかかる時間を大幅に減少しています。

また、製図CADを大きく分けると、2Dと3Dの2種類があります。従来は点と線で作図する2Dが主流でしたが、近年では3Dを採用する企業が増えています。3D機能を持つCADで作成した立体図は、平面図に展開したり、あらゆる角度から確認が可能です。実際に製造業や建設業の現場では、CADで作成した図面を元に製造が行われています。

3D機能を持つCADは販売されているソフトウェアによって得意分野が異なります。構造系の作図をするのに向いているソリッドタイプ、デザイン系の作図をするのに向いているサーフェスタイプに分けられ、使用用途に合わせて選択します。

製図CADの使用用途

製図CADの使用用途は、作成した図面の利用目的によって異なります。2D CADで作成した平面図は、製造物の寸法管理で利用されますが、一方で3D CADで作成した立体図は、製造物の形状を把握するために利用されています。

2D CADでは、手書きの図面をデジタル化できますが、視覚的に空間認識ができません。また、3D CADでは、完成後のイメージがしやすい反面、必要な作業時間とコストが膨らみます。設計を行う企業では、2D CADと3D CADを並行して製品開発を行うため、製図CADの使用用途を分けながら作図が行われます。

製図CADの原理

2D CADにおける2次元上の線分データは直線・円などの形状パラメータと、始点・終点・中心点などの位置パラメータをもとに構成されます。線分に色や線の種類、線の太さなどの情報も付加させることで様々な形状を表現することが可能です。

1. ソリッド系の3D CAD

指定した平面上に描いた形状を3次元に移動させることでその軌跡を元に立体化します。例えば平面上に四角形を描き、面に対して垂直に四角形を移動させると直方体ができます。加工のイメージが浮かびやすい機構設計などでよく用いられます。

2. サーファイス系の3D CAD

線分と線分を結ぶことで平面を作成し、その平面と平面をつなぎ合わせると立体が作られます。段ボール箱のように外側だけを形作ると立体として認識されます。

このCADソフトでは曲線と曲線を結ぶことで滑らかな曲面を描くことができ、曲面の中間の線分を編集するとさらに多様な曲面が作成可能です。車の外装などのデザインなどで使用されています。

製図CADのその他情報

製図CADに関する資格

機械設計、電気設計、建築設計など、CADはあらゆる分野で利用されている設計手法です。CAD資格の一例を以下に示します。

1. CAD利用技術者試験
国内最大規模のCAD認定試験です。トレース1級、建築1級、機械1級・2級、基礎試験といったように目的別に試験が細分化されています。合格率は基礎試験が80%程度、その他の等級が30−40%程度です。

2. 建築CAD検定試験
建築系の試験で最大規模だといわれています。准1級、2級、3級、4級といった等級に分類されており、等級が上がるほど合格率も低くなっていきます。合格率が10%程度の准1級では、与えられた課題図面をトレースする試験が行われます。図面の分量と密度は1級建築士試験の設計製図試験とほぼ同じものなので、高いレベルの技術力が求められます。

3. CAD実務キャリア認定制度
実務遂行上必要な技術、技能、モラルなどを評価判定するもので、企業の研修などで利用されることもあります。

4. オートデスク認定資格プログラム
有名CADソフトAutoCADが主催する認定資格ですAutoCADの技能力を証明するのに適した試験です。

5. 機械・プラント製図技能士
製図に関する国家資格です。手書き・CADでコースが分かれています。受験資格に実務経験期間に関する条件もあり、国が技能を保証するため信頼性の高い試験であるといえます。

参考文献
https://cad-kenkyujo.com/2020/02/29/seizusoft/
https://www.act.co.jp/column/category_cad/1808/
https://www.acsp.jp/cad/
http://www.aacl.gr.jp/06shiken-point01.html

パワーLED

パワーLEDとは

パワーLEDとは、出力電力が大きなLEDを指します。LEDとは「Light-Emitting Diode」の略で、通電することで発光するダイオードのことです。発光効率が良いことから、現在は照明器具として主流の部品となっています。

パワーLEDはLED素子を複数個並列した構造を持ちます。駆動に大電流が必要な反面、高輝度を有します。一般的なLEDと比べて内蔵部品などは変わらず、放熱構造を持っていることが大きな特徴です。

パワーLEDの使用用途

パワーLEDは照明や表示灯として用いられる場合がほとんどです。代表的な使用用途は下記の通りです。

  • 自動車のヘッドライト
  • 屋外競技場の巨大投光器
  • 工場天井灯や住宅用シーリングライト
  • 漁船の集魚灯

上記のように、産業用から民生品まで幅広く用いられています。我々の生活に、パワーLEDは不可欠な存在です。

パワーLEDの原理

LEDはP型半導体とN型半導体を繋ぎ合わせた構造のダイオードです。このダイオードに電流を流すと接合面が発光するため、発光ダイオードと呼ばれています。パワーLEDは、LEDを並列に複数素子繋ぎ合わせることで大出力にしています。

パワーLEDは高輝度を保持するために大電流が必要であり、発熱量も大きくなります。一般にLEDの効率は30%程度と言われており、残りの70%は熱として放出されます。そのため、冷却によって耐熱温度を下回るように設計されます。

冷却構造は、放熱用基板への実装やヒートシンクを用いて設計されます。また、放熱器形状をスター型にするなどの工夫により、熱を逃がすように設計します。

パワーLEDのその他情報

1. パワーLEDと通常LEDの違い

パワーLEDと通常LEDの違いは出力にあります。厳密な決まりはありませんが、一般的に1W以上の出力電力のLEDをパワーLEDと呼びます。内蔵されているLEDチップは同じです。ただし、パワーLEDには発熱対策として放熱構造を取る必要があります。

2. パワーLEDの駆動方式

パワーLEDの駆動に単純な電流制限抵抗を使用すると、消費電力が多くなり発熱量が増加します。発熱によってLEDの発光効率が低下し、点灯時間に応じて暗くなってしまうため、パワーLEDを駆動する際は定電流回路での駆動がおすすめです。

例えば、FETオペアンプを使用する方法があります。この2つを用いて回路を構築することで、定電流発光が可能です。また、放熱設計も重要です。熱は基板側へ伝達しやすいため、基板の放熱設計がパワーLEDを安定駆動させるのに欠かせないポイントと言えます。

3. パワーLEDのパッケージ

LEDには様々な形状が存在します。代表的な形状は以下の3つです。

  • 表面実装型
    表面実装型は他のパッケージと比較して自由度が高いので、後段の光学レンズ等を設計する機会があれば利用します。
  • COB(Chip On Board)
    COBはパワーLEDとして良く使われる形状で、基板とLEDチップがセットになっています。基板を配置・配線するだけで、放熱を気にせず使うことが可能です。
  • 砲弾型
    砲弾型は、そのレンズによってLEDの指向性を高めた設計となっています。上記2種のLEDが全方位へ明るいのに対し、砲弾型は一方向に特化して明るくなります。発光範囲を絞りたい場合は砲弾型を使います。

参考文献
https://www.marutsu.co.jp/contents/shop/marutsu/mame/194.html
https://toragi.cqpub.co.jp/Portals/0/backnumber/2006/02/p136-137.pdf
http://www.my-craft.jp/html/aboutled/led_package.html
https://www.marutsu.co.jp/contents/shop/marutsu/mame/194.html

表面粗さ計

表面粗さ計とは

表面粗さ計

表面粗さ計とは、加工物の表面の微細な凹凸状態を数値として評価するための計測器です。

表面の粗さはかつて検査担当者が目視や指や爪で触れる主観的な評価をしていました。表面粗さ計を使うことにより、加工面を定量値によって望ましい状態で管理することが可能になりました。

表面粗さ計の使用用途

表面粗さ計は主に金属製品の加工面仕上がり確認など、表面の微小な凹凸の解析に使用されています。表面の粗さは金属製品の中でも特に他の部品と接する部分で重要になるため、トライボロジーという摩擦や摩耗を専門に取り扱う分野ではとても大切な要素です。

表面粗さの評価は機械部品の摺動面、回転軸ベアリングの転動面の評価として多く使われます。その他には医療介護、研究開発、生産現場など幅広い分野で用いられています。

表面粗さ計の原理

表面粗さ計は一般的に、以下の2種類の方式に大別されます。それぞれ得意とする形状や素材に大きな違いがあるため、目的に応じた適切な運用が必要となります。

1. 接触式

接触式はスタイラスと呼ばれる触針で測定物に直接触れながら測定を行う方式です。表面形状そのものの測定結果を得られますが、触針の直径よりも小さな形状や触針が入らないような狭い部分など、物理的に触れることができない箇所は測定できません。

また、直接接触を伴うことから触針を定期的に交換する必要があり、測定対象に傷が付く可能性もあります。特に金属などの硬いものを対象に測定を行う場合は、誤って必要以上の力で触針を押し付けて触針が破損してしまう可能性もあります。取り扱いには注意が必要です。

2. 非接触式

非接触式は触針の代わりに光を使用して測定を行う方式です。代表的なものとしては照射した光の反射光を読み取って測定する共焦点方式と、白色光を照射した際に測定物とミラーの反射光を合成してできる干渉縞によって測定を行う白色干渉方式があります。

非接触式は短時間で測定できるのが特徴ですが、光の届かない箇所や反射が正常に得られない形状である場合は上手く測定することができません。測定物によって置き方を変えて複数方向から測定したり、光が届くように部品の一部をカットするなどの工夫が必要です。

表面粗さ計のその他情報

1. 表面粗さの定義とパラメータ

表面粗さの評価には、非常に多くの定義とパラメータがありますが、よく知られているのは算術平均粗さで記号はRaと表記されます。凹凸形状の平均値を算出するイメージなので多く使われます。軸受などオイル溜まりになる溝の深さや大きさが部品機能に影響する場合には、算術平均粗さ以外のパラメータが望ましい場合もあります。

その他のパラメータとしては、最大高さ粗さ:Rzや、十点平均粗さ:Ryなどが知られています。粗さパラメータはISOやJISで定義されていますが、これまでに何度か改正されているため古い図面を見る時は注意が必要です。

2. 触針のトラブル

一般的に接触式の表面粗さ計の触針は摩耗してしまうため定期的な交換が必要です。触針の先端に欠けが発生していると正しく測定できないため、拡大鏡を使って定期的にチェックすることが大切です。

触針に使用されている材質はダイヤモンドやサフィアなどですが、それらは非常に硬い物質であるため測定対象物の表面を傷付けてしまう恐れがあります。特に同一箇所の測定を繰り返し行ったり、触針を高速で動かす場合には注意が必要です。

参考文献
https://www.keyence.co.jp/ss/3dprofiler/keijou/roughness/info/
https://www.keyence.co.jp/ss/3dprofiler/keijou/roughness/surface/
https://www.keyence.co.jp/ss/3dprofiler/keijou/roughness/info/