スピンコータ

スピンコータとは

スピンコータとは、塗料を基材表面に均一に塗布するための装置のことです。

基材の中心に塗料を滴下した後、加速度や回転数を制御しながら基材を回転させ、遠心力を利用して均一な厚みを有する薄膜を形成します。スピンコータは、平滑な基材にしか使用できない、大きな面積の塗布には不向きなどのデメリットがありますが、厚みの誤差が少なければ、さまざまな薄膜を形成することが可能です。

そのため、半導体やディスプレイの製造、光学メディアのコーティングなどに広く使用されています。スピンコータは、高い精度を必要とする産業分野において欠かせない装置の1つであり、素材科学や表面加工技術の分野でも重要な役割を担っています。

スピンコータの使用用途

スピンコータの主な使用用途は、平滑な基材の上に均一な厚みの薄膜を作製することです。

特に、スピンコータはフォトリソグラフィ分野で重要な役割を果たしています。フォトリソグラフィとは、シリコン基板などの基材上に感光剤を塗布し、紫外線などの強い光を照射することで、基材表面に微細パターンを作成する技術です。半導体やディスプレイの製造において欠かせません。

さらに、スピンコータは光学メディアの分野でも活躍しています。DVDやBlue-ray Discといった光学メディアの表面にコーティングを施す際に、均一な膜厚を確保するために利用され、レンズの調光液の塗布など、光学分野におけるさまざまな用途でスピンコータが重宝されています。

スピンコータの原理

スピンコータは、遠心力を利用して基材の表面に均一な薄膜を作製しています。別名スピナーとも呼ばれ、平らな基材に薄膜を塗布する際に適した方法であり、膜厚のムラが少ないことが特徴です。

スピンコータの使用方法は、まず基材を装置にセットし、その中心付近に塗料を滴下させます。次に、基材を回転させて塗料に遠心力をかけ、塗料が基材表面に拡散塗布されるように調節します。回転速度や加速度は装置で設定できるため、塗料の液性や膜厚等を考慮して決定することが必要です。回転が終了した後、基材を取り外し、加熱や紫外線硬化を行って塗料を乾燥させます。

スピンコータによる薄膜化のメリットは、塗料の液性や回転数などを細かく設定することで様々な厚みの薄膜を形成できることや、使用する塗料の量を節約できることです。ただし、コーティング時に塗料ロスが生じることや、塗布が小さい面積に限られることがデメリットとして挙げられます。

それでもスピンコータは、高い精度の薄膜形成に役立つため、多くの産業で重要な装置として活用しています。

スピンコーターのその他情報

1. スピンコーターの使い方

スピンコーター化合物から薄膜生成する際に使用されますが、手順は下記の通りです。

  1. スピンコーターの中央にある回転体にガラスや金属の基板をセットします。真空引きをすることで、基板を回転体 (台座) に固定可能です。真空状態にするのが好ましくない場合は、両面テープなどを使用しますが、高粘着性のものが望ましいです。
  2. 基板上にポリマーなどの化合物溶液を注ぎます。なるべく基板全体が覆われるように均一に注ぎます。
  3. 回転数と回転時間を設定してスタートボタンを押します。時間になると回転が停止し、基板上に均一な薄膜が形成されています。

同じ薄膜作成に真空蒸着装置がありますが、真空状態ではポリマーなどは分解する可能性があるため、このような場合スピンコーターが適しています。

2. スピンコーターによる塗布ムラをなくす方法

均一な薄膜生成をするスピンコータですが、塗布ムラが発生して、目に見えない凸凹ができる場合はあります。塗布ムラのできる条件として以下のようなことが挙げられます。

  • 回転速度が遅い (時間内の回転数が少ない) 
  • 化合物溶液の粘度が高い
  • 基板の角部分に溶液の盛り上が見られる

基本的にスピンコータは回転速度が遅いほど膜は厚くなり、不均一なものになりやすいです。一番簡単な解決方法は回転数を上げて、回転時間を長くすることです。時間をかけられる場合は、回転時間は固定し各回転数で薄膜を測定し、その膜厚を測定します。その中でベストな回転数と時間を定めます。

化合物溶液の粘度が高いと飛びづらくなるので、不均一な膜になりやすいです。対処方法としては、溶液濃度を薄めて粘度を小さくすることです。

基板の角部分が不均一になる場合の解消方法は、密閉式かつ自動滴下機能つきのスピンコータを使用するのが良いです。自動滴下機能は、回転中の基板に自動で化合物溶液を滴下します。滴下と同時に溶液が基板にすぐ広がるため、角部分の盛り上がりを抑制し、均一な薄膜生成が可能となります。

参考文献
https://www.iri-tokyo.jp/uploaded/attachment/2407.pdf
https://www.spincoater.biz/spincoater/
https://www.keyence.co.jp/ss/products/measure/sealing/coater-type/spin.jsp
http://www.aiden.com/03_productinfo.files/spincoater4001.htm
https://www.jstage.jst.go.jp/article/sfj/63/6/63_336/_pdf

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です