キセノン光源

キセノン光源とは

キセノン光源

キセノン光源とは、キセノンガス中でのアーク放電による発光を利用した人工光源です。

アーク放電は、正負の電極間の気体分子が電離してプラズマ状態となり、その中を電流が流れることを指します。 その発光原理から、白熱電球のようなフィラメントを通電させるタイプの光源よりも低消費電力・長寿命であることが、キセノン光源の特徴です。他のメジャーな人工光源としてハロゲンランプがありますが、キセノン光源はハロゲンランプより強力で、より小さなエリアの照射が可能です。

キセノンランプと表現する場合もありますが、この言葉はキセノンを封入した白熱電球 (キセノン電球) と紛らわしいため、この記事ではキセノン光源という用語を用います。フィラメントに電流を流すことで発光するキセノン電球は、プラズマ化したキセノンガス中に電流を流すことで発光するキセノン光源とは全く別の物です。

キセノン光源の使用用途

キセノン光源は、白熱電球のようなフィラメントを加熱するタイプの光源ではないので、比較的寿命が長いです。 また、特殊なフィルターと組み合わせると、太陽光とほぼ同じスペクトルになるため、産業や医療などの「自然な色を再現する必要のある現場」で重宝されています。

1. ショートアークランプの用途

キセノンショートアークランプは、輝度の高い点光源として、次のような用途で利用されています。

照明
サーチライトやヘッドライトのような高輝度光源としての利用もありますが、自然な色再現性が必要な舞台照明や手術灯としての利用の多さが特徴的です。また、小型化が可能なので、内視鏡用の光源としても使われています。

試験用光源
太陽光に近い性質をもつソーラーシミュレータとして、太陽光パネルの発電効率を調べたり、太陽光による材料の褪色や劣化などの耐久テストなどを行ったりする場合に最適です。幅広い波長の光を出力できるため、 分光分析装置の光源として用いられているほか、ディスプレイや測定デバイスなどの検査を行う際の光源としても利用されています。

投影用光源
映写機、プラネタリウム投影機、大型プロジェクターなどの光源には、点光源であることに加えて、安定した出力と高い演色性が求められるので、キセノンショートアークランプが最適です。

2. ロングアークランプの用途

キセノンロングアークランプは、競技場での投光照明や空港での航空機誘導被灯など、広範囲を照らす必要のある大型光源として使われることが多いです。

3. フラッシュランプの用途

最も目にする機会の多いキセノンフラッシュランプは、写真撮影用のフラッシュランプです。写真館などで用いる大型のものや一眼レフカメラ用のフラッシュランプなどに使用されています。

その他、皮膚の血流を改善して火傷の跡やアザの治療 (再生促進) を行うキセノン光線治療器としての利用や、IPL (Intense Pulse Light) 脱毛の光源としての利用もあります。

キセノン光源の原理

図1. アーク放電

キセノン光源の基本構造は、石英ガラス管に封入されたキセノンガスと2つの電極、そしてガラス管外部から両電極に結線された点灯回路からなります。この電極に高電圧パルスを印加して絶縁破壊を発生させることで、アーク放電を開始させるのが点灯回路の役割です。一旦開始されたアーク放電は、印加電圧を下げても持続できるため、ほとんどのキセノン光源の定格電圧は15~30Vになっています。

図1は、陰極から放出された電子が高速で衝突してキセノン原子を電離させ、電離により生じた電子が次のキセノン原子を電離させる様子 (アーク放電) を示したものです。一旦アーク放電が始まれば、電離した電子がキセノンイオンと再結合して原子に戻る際に、幅広い波長の光 (連続スペクトル) が放出されます。

図2. キセノン光源と太陽光のスペクトル

また、キセノン原子内の電子の一部は電離せずに励起され、励起した電子が基底状態に戻る時に出すのは、特定の波長の光 (線スペクトル) です。 そのため、キセノン光源のスペクトルは連続スペクトルに線スペクトルが加えられた形になります。

キセノン光源の種類

キセノン光源には、大きく分けて以下の種類が存在します。

1. ショートアークランプ

図3. キセノンショートアークランプ

ショートアークランプは、電極間の距離が数mm以下と短いため、発光領域がキセノンランプの中では小さく、輝度の高い点光源を作成可能です。石英ガラス管中には常温で高圧 (5~10気圧程度) のキセノンガスが封入されています。直流放電によりキセノン原子が発光して、時間をかけずに安定した出力を得られることが特徴です。

2. ロングアークランプ

細長い石英ガラス管内に、ほぼ1気圧 (105Pa) のキセノンガスを封入したものです。非常に大きな光束が得られることが特徴で、通常は定格消費電力が1kW以上です。50kWを超えるものも存在します。

交流放電により発光させるのが一般的で、電極間の距離は5~10cmあるいはそれ以上あり、点灯時に点灯管部分が非常に高温となるため、水または空気による冷却が必要です。

3. フラッシュランプ

極めて短時間 (数μs~数ms) の発光をさせるタイプのキセノン光源です。発光時間が短いため冷却装置は不要で、全体的に小型化が可能です。

形状はさまざまで、内部に2~10kPaのキセノンガスが封入されています。始動時にパルス電圧を印加する方式と、非点灯時も常に弱い電流を流して高速点灯を可能にするシマー方式があります。

参考文献
https://www.ushio.co.jp/jp/technology/glossary/glossary_ka/xenon_lamp.html
https://www.ushio.co.jp/jp/technology/glossary/glossary_ka/xenon_flash_tube.html
https://www.ushio.co.jp/jp/technology/lightedge/200404/100314.html
https://www.ushio.co.jp/jp/technology/glossary/glossary_ka/xenon_phototherapy_device.html

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