非破壊検査装置

非破壊検査装置とは

非破壊検査装置

非破壊検査装置とは、検査対象物を破壊したり傷を付けずに内部或いは表面を検査する装置です。

検査の目的は検査対象物の内部や表面に存在する傷や不良、クラック、ボイド (気泡) 等の有無を確認する事などです。この検査によって製造した製品を破壊せずに検査出来たり、製品の信頼性、保証を付与する事が出来る様になります。

非破壊検査装置には複数の原理に基づく多くのタイプがあり、検査対象の特性や検査目的などによって使い分けられます。また、非破壊検査装置を使いこなし、6種類の検査カテゴリー毎に検査技術を規定通り満たしているかを判断する非破壊試験技術者資格試験があります。

非破壊検査装置の使用用途

溶接部内部の溶け込みや溶接不良の有無や、素材内部のひびや割れ、ボイド等の欠陥、不良の有無、素材表面にある目視では識別できない傷や割れなどの判断に用います。

非破壊検査には装置を必要としない手法 (目視検査や浸透探傷検査など) もありますが、装置を要する場面も多く存在します。例えば、ビル・橋梁・トンネル・高架橋などのコンクリート内部にある鉄骨の経年変化検査、鋼管・アルミ管の生産工程中検査、飛行機の機体検査、原子力発電所内の容器や配管の検査などに活用されています。人の身体を検査するX線撮像やCTスキャン、磁気共鳴撮像も非破壊検査装置の仲間です。

非破壊検査装置の原理

非破壊検査には多数の原理に則った検査法がありますが、ここでは装置を必要とする検査法と原理について説明します。

1. 超音波探傷検査装置

超音波探傷検査装置の原理

図1. 超音波探傷検査装置の原理

超音波探傷検査装置は、超音波探触子から高電圧の超音波を発振させ、検査対象物表面や内部に伝播・透過する振動が内部欠陥や表面傷に反射した際のエコーを受信し、内部欠陥や表面傷の場所や大きさ等を特定する装置です。

超音波探傷検査装置の種類

図2. 超音波探傷検査装置の種類

超音波探傷検査にはパルス反射法、透過法、共振法の3つがあり、検査対象の形状等で使い分けられます。

2. 磁粉探傷検査装置

磁粉探傷検査装置の原理

図3. 磁粉探傷検査装置の原理

磁粉探傷検査装置は、表面傷部に生じる磁束の乱れを利用した手法です。

磁性を持った検査対象物に強い磁場を印加すると、表面傷のある箇所に磁束の乱れが生じます。検査対象に着色された鉄粉や蛍光磁粉を散布すると、表面傷部の磁束の漏れた形状に鉄粉や蛍光磁粉が整列するため、それらが模様や光の集合として目視できるようになります。

通常、この手法は装置を用いない目視での検査が主流ですが、画像認識装置を搭載した自動磁粉探傷装置も用いられます。

3. 渦流探傷装置

渦流探傷検査装置の原理

図4. 渦流探傷装置の原理

渦流探傷装置は、銅線を巻いたコイルが埋め込まれたプローブに交流電流を流して検査対象物表面に近接させ、対象物表面に生じる過電流の乱れを測定することで傷の有無を判断します。

傷の判別精度や感度は検査対象物に見合ったコイル形状が必要な為、同じ形状の検査対象を多数検査する場合によく利用されます。

4. 放射線透過試験装置

放射線透過試験装置の原理

図5. 放射線透過試験装置の原理

放射線の中でも透過性能が高く、高エネルギーなX線を用いて検査対象物へ放射線をあて、透過した放射線を検出器で受信し、その信号を描画もしくは画像認識装置によって検査対象内部の欠陥を検出します。

従来は人体のレントゲン検査と同じ様に放射線でフィルムを感光させて欠陥の有無を目視で判断していましたが、現在では画像認識で自動判別する装置が増えています。

非破壊検査装置のその他の情報

1. 非破壊検査装置のデメリット

非破壊検査装置は非常に便利ですが、各測定原理にはデメリットもあることを把握しておく必要があります。

超音波探傷検査
球状の傷や空洞に対してはエコーが四方八方に反射してしまうため、検出が困難です。また、複雑な形状の検査や粗粒材にも適していません。それぞれの組織の境界で生じる微小なエコーが乱雑に広がり、検出すべきエコーにノイズとして重畳されるからです。

磁粉探傷検査
非磁性材質の検査には適用できません。

渦流探傷検査
不導体の検査や、内部のきずを検出することが難しいです。また、形状が複雑な対象も不得手です。

放射線透過試験
厚みのある対象の検査には非常に高いエネルギーを持つ放射線が必要となるため、特殊な装置が必要です。また、表面のきずや密着した割れなどを検出することが苦手です。何よりも放射線の安全管理には十分な注意が必要です。

2. 非破壊検査装置の市場規模

日本での非破壊検査の市場規模は、機器の販売に検査サービス市場を加えると2,000~3,000億円といわれています。

メーカーが自社内で検査するだけでなく、検査会社に依頼している事例が多くなってきています。都市や産業の高度化に伴って、安全・安心・品質管理が重要視され、非破壊検査が担う役割も大きくなりつつあります。安全性や自然環境への配慮という観点からも、非破壊検査の市場規模は今後一層の成長が期待されています。

建設産業
建築・土木産業では、コンクリート構造物の非破壊検査・診断の市場規模が今後ますます拡大していくと思われます。これはコンクリート建造物の長寿命化が重要視されるようになってきたことと、劣化が顕著になるまえに、予防保全を行わなければならないという側面からくるものです。

その他の産業
エネルギー産業や重工業分野でも非破壊検査が拡大していくと想定され、今後の成長期待市場と言われています。

参考文献
http://www.tetras.uitec.jeed.or.jp

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