チタンボルト

チタンボルトとは

チタンボルト

チタンボルトとは、その名の通り「チタン」という金属で作られたボルトのことです。

チタンは質量が小さい割に強度が非常に高いことが特徴で、工業用から医療用まで様々な部品に使われています。また、耐食性や耐熱性にも優れていることから、従来のボルトでは使えなかったり、頻繁に交換が必要だったりする場面でも使うことができます。

一方で、チタンは高温環境では他の元素と反応しやすく、製造にコストがかかってしまうことが欠点です。

チタンボルトの使用用途

軽量にもかかわらず強度が高い点を活かして、チタンボルトは様々な工業用製品に使われています。中でも航空機の部品に使用されることが多いです。この場合は、高温下でも強度が保たれるように、チタンに他の元素を混ぜた合金を用います。

次に耐食性が高いことから、雨風や海水にさらされるものにも使われています。具体的には、道路標識や海上にある施設等です。通常の鉄製のネジではすぐに錆びてしまう恐れがあるため、チタンボルトが適しています。

そして、人体に埋め込んでもアレルギー反応を起こしにくい点を活かして、医療分野にも使われています。具体的には、歯科治療や骨折時の固定ボルト等です。

さらに、ホビー・スポーツで使用されるものや軽量化を狙う目的でラジコン、スポーツ用自転車等に使用されるものもあります。

チタンボルトの原理

チタンボルトでも、ねじとして締結の役割を果たす原理は他の材料のねじと同じです。螺旋状の斜面を使って重たい荷物を持ち上げられる原理でねじを引っ張り、その弾性力を締結力として利用しています。ねじが緩まないのは、ねじ面の摩擦力によって、重たい荷物が斜面から滑り落ちない現象を利用しているためです。

チタンボルトは特に以下のような優れた性質を持っています。この性質が活かせる部分に、チタンボルトが使われています。

1. 軽量な割に強度が高い

チタンボルトの最大の特徴は軽量な割に強度が高い点です。身近な鉄と比べると、質量は約60%ですが強度は二倍あり、強い負荷がかかる工業用機械にも使用することができます。

2. 優れた耐食性

耐食性に優れている点も優秀です。空気中にさらされたチタンの表面には酸化チタンが生成されます。これが不動態となるため、内部のチタンが酸化して錆びるのを防げます。また、硝酸のような酸化性の酸にも強く、海水などの塩化水イオンにも強い耐性を持っているため、強酸を使う装置や海上施設での利用に適しています。

3. 高い安全性

チタンは安全性が高い金属としても知られています。金属アレルギーを起こしにくいため医療用としての使用も可能で、骨折した骨を固定するためのボルトや歯のインプラントに利用されています。なお、純チタンは金属アレルギーになりにくいのですが、チタン合金の場合、混ぜ合わさる金属によってアレルギーの安全性は異なるため注意が必要です。

チタンボルトの種類

チタンボルトはねじの作り方によって、切削ねじと転造ねじの2種類に分けることができます。

1. 切削ねじ

切削ねじは、丸棒状の粗材を刃物工具で削りねじ形状を作ります。チタンボルトの場合、材料として比較的切削しやすい純チタン (Ti2) が使われています。純チタンは強度向上を狙ったα+βチタン、βチタンほどの強度はありません。

2. 転造ねじ

切削ねじに対して転造ねじは丸棒状の粗材に、転造ダイスという製品形状を反転させた型を強く押し付け回転させることで、ねじを成形します。切削のような切粉は発生せず、また金属材料の組織が繋がっていることで、高い強度を得ることができます。ただし、転造ダイスは高価で、少量生産の場合はコストが高くなる可能性が高いです。

チタンボルトのその他情報

チタン材料の違い

一般的にチタン製品と言っても、材料には様々な種類があります。大きく分けて、純チタンとチタン合金の2種類です。

純チタンはさらにJISで、純チタン1種 (Ti1) と純チタン2種 (Ti2) に分類することができます。金属アレルギーを起こしにくいのは純チタンです。他の金属を意図的に含ませたチタン合金は、必ずしも金属アレルギーを起こしにくいわけではありません。

チタン合金は、さらに3種類に分けられます。強度アップを狙ったα+βチタン合金、βチタン合金、耐食性を狙ったチタン-パラジウム合金、形状記憶として用いられるチタン-ニッケル合金です。

参考文献
https://www.neji-concier.com/column/bolt-tsuuhan-koukyoudo.html

ダミーロード

ダミーロードとは

ダミーロードとは、主に高周波回路の設計や試験に使用される重要なツールです。

その名が示す通り、”ダミー (擬似) “の”負荷 (ロード) “を供給し、実際の装置を損傷させることなく各種設定や運用を確認ができます。この装置は、電源、アンプ、トランス、そしてもちろん、RF (Radio Frequency) 関連の電子機器など、多種多様な機器の試験に使用されます。

ダミーロードは装置が想定する最大出力を安全に吸収して、設計や試験段階での過負荷や過電流による損傷を防ぐことが可能です。また、ダミーロードは様々なインピーダンス値で提供され、特定のシステム要件に適合するものを選択できます。設計者や購買担当者は、正確な試験結果を得るために必要な特定のダミーロードを選びます。

このように、ダミーロードは高周波技術の不可欠な部分であり、装置の設計、製造、メンテナンスの各段階で重要な役割を果たすツールです。

ダミーロードの使用用途

ダミーロードの役割は、高周波技術の幅広い分野で活用されています。以下に、その使用例をいくつか具体的にご紹介します。

1. 電子機器の性能評価

ダミーロードは、電源ユニット、アンプ、トランス等の電子機器が指定された出力を正確に生成するかを評価するための道具として使われます。出力を安全に吸収する能力により、機器が指定された負荷を扱えるか、またはそれ以上の負荷がかかった時にどの程度のパフォーマンスを発揮するかを確認ができます。

2. RF機器の調整とテスト

ダミーロードは、無線通信機器のアンテナやトランスミッターのテストと調整に欠かせません。実際の通信環境を模擬し、機器の送信能力と信号品質を評価が可能になります。

3. 過負荷保護のためのシミュレーション

ダミーロードは、システムが極端な条件や過負荷に適応する能力をテストするためにも使用されます。これにより、システムが過負荷状態に遭遇した時の振る舞いを理解し、必要な保護策を講じることができます。

ダミーロードの原理

ダミーロードの主要な機能は、エネルギー、特に電力を吸収し、大部分を熱エネルギーへの変換です。その基本的な構造は極めてシンプルで、電流が流れるための導体とそのエネルギーを吸収し、一部を熱として放出するための抵抗素材から成っています。

主要な要素である抵抗体は、特定の抵抗値を有し、電流が通過するときに特定の電圧降下を生じます。これはオームの法則 (電圧は電流と抵抗の積である) に従います。この抵抗体は特定の熱容量を持ち、電力を熱エネルギーに変換する能力があります。

このようなダミーロードの設計により、電子機器が供給するエネルギーは熱エネルギーに変換され、その結果システムの他の部分への損傷を防ぐことが可能です。一方、その放熱能力は装置が冷却されなければならない程度のエネルギーを吸収できるかどうかを決定します。

ダミーロードの種類

ダミーロードは様々な形態や特性を持つものがあり、それぞれ異なる用途に適用されます。以下に、一般的に利用される主な種類を詳しく説明します。

1. 固定抵抗型ダミーロード

これは最も一般的なタイプのダミーロードで、固定された抵抗値を持つ特性があります。そのため、装置が想定する特定の負荷を正確に模擬ができます。これらは、シンプルなテストや調整、および定格出力の検証によく使われます。

2. 可変抵抗型ダミーロード

可変抵抗型ダミーロードは抵抗値を手動で調整可能で、異なる負荷状況の模擬ができます。これにより、機器がさまざまな状況でどのように動作するかをテストできます。

3. 電子制御型ダミーロード

電子制御型ダミーロードは最も高度なタイプで、コンピュータ制御により抵抗値を変化させることができます。これは自動テスト設備や高度な診断で使用され、システムがさまざまな負荷状態にどのように対応するかを確認できます。

4. 液冷式ダミーロード

大量の電力を吸収する必要がある場合、ダミーロードが生成する熱を効率的に排出するために、液冷式ダミーロードが用いられます。これらは通常、RF送信機や大規模なパワーアンプなど、高出力のアプリケーションで使用されます。

各タイプのダミーロードは、エンジニアがテストや診断を進める際に、システムや機器が適切に機能していることを確認するために不可欠なツールです。それぞれの種類は特定の使用目的やテスト環境に適しており、適切な選択と使用により、効率的かつ正確な結果が得られます。

スパイラルダクト

スパイラルダクトとは

スパイラルダクト

スパイラルダクトは薄い金属のフレキシブルな特徴を利用して帯状の金属板を螺旋状に巻いて作られた安価なダクトです。スパイラルダクト薄く軽量ですのでビルや工場の様々な箇所に使用されており最もありふれたタイプのダクトです。

その他のダクトにはベローズタイプのフレキシブルダクトや塩化ビニルなどのプラスチックで作ったダクトなどもありますが、軽さと価格を考慮するととりわけ事情がない限りはエアダクトなどにはスパイラルダクトが使用されています。

スパイラルダクトの使用用途

空調のための冷たい、もしくは暖かい空気を部屋に送る際にはこのスパイラルダクトを通して送られます。他にも集塵や排煙のためのエアダクトにも使用されており、ビルや工場の天井や壁などによく見られます。

一般的には亜鉛鋼板がよく用いられており一般空調用として使用されていますが、耐腐食性や耐候性、さらには耐熱性を要求される場所にはステンレス板で作られたスパイラルダクトが用いられています。

他にも鋼板の両面を塩化ビニルで被覆した塩ビ鋼板で作られたスパイラルダクトなどもあり、酸性の雰囲気など金属では耐食性に不安がある箇所のダクトとして使用されています。

スパイラルダクトの原理

スパイラルダクトは螺旋状に丸めた金属板の両端をハゼ折に重ねて作られています。また、このハゼ折の構造が補強効果を生み出していますので、肉厚の薄いダクトでも高い強度が得られているという特徴があります。

スパイラルダクトの原理

図1. スパイラルダクトの原理

スパイラルダクトは金属板を丸めて作るので高い真円性が得られ、なおかつ内部が滑らかですのでダクト内を通る空気の摩擦が小さく、効率的な送風を行うことができます。

スパイラルダクトの直管同士は継手を用いることで繋ぎ合わせることも可能であり、分岐を用いることで複数方向にも分岐させることも可能です。太さの異なるスパイラルダクトも専用の継手を用いることで接続できるため、送風圧を制御したい場合に使用できます。もちろん、レギュレーターを設置することでも送風量は制御できます。

接続方式には差込方式とフランジ方式の二つがあります。差込方式は差込継手により接続を行い、ビスで固定、アルミテープなどでシールを行います。このため、現場で直接施工が可能であり、固定と角度修正が容易です。一方、フランジ方式は接続が安定しており脱着した後も再現性があります。このため、フランジ方式は高圧用や部材交換が多いところに適しております。

スパイラルダクトの接続方式

図2. スパイラルダクトの接続方式

スパイラルダクトは薄い金属板で高い強度があるため重量は軽く、天井に設置しても簡単に固定できます。このため、建物の形状に合わせて臨機応変に形状を作ることができ工期が速くなります。

このように安価で使いやすいため、スパイラルダクトは様々な場所で使用されています。

スイベルジョイント

スイベルジョイントとはスイベルジョイント

スイベルジョイント (英語:swivel joint) とは、回転運動や上下・左右・前後方向の直線運動をする機械部に、水や空気、油などの流体を供給するための配管用継手です。

これとよく似た機構で、ロータリージョイントと呼ばれる回転継手があります。一般的に、ロータリージョイントは連続回転に対応するための継手であり、工作機械の主軸のように高速で回転する機械部の配管に使われます。

一方、スイベルジョイントは、旋回できる角度の上限が決まっているものが多く、決められた範囲内の角度で旋回運動をする機械部に取付けられます。

スイベルジョイントの使用用途

スイベルジョイントは、工作機械や建設機械などによく使用される部品です。例えば、機械装置内にあるX・Y・Zの3方向に直線移動するスライド部に低圧または高圧の流体を供給する場合、スイベルジョイントが使用されます。移動に合わせてジョイントの角度が変化し、スライド部のスムーズな動きを阻害することがなくなります。

可動パイプラインは、複数のスイベルジョイントとパイプを組み合わせて構成します。可動範囲を定めて使用し、製鉄圧延装置・ホットプレス・タイヤプレス・ダイカストマシン・射出成形機などの用途があります。

ホースリールには、手動で回転させる程度の低回転に対応できるスイベルジョイントが使われます。また、自動車では、スピードメーター・タンクローリー・クレーン車などに使用することが多いです。機械装置だけでなく、免震構造を持った建造物の配管にも使用されることがあります。

スイベルジョイントの原理

回転機構として、スイベルジョイントの軸部には鋼球またはベアリングが内蔵されています。滑らかな回転を維持できるように、グリースニップルから一定量のグリースを定期的に補給するタイプが一般的です。

また、軸部と本体の間は、流体の漏れを防ぐため、パッキンでシールされています。高圧の流体で使用する場合はより高いシール性が必要となるため、ダブルシール方式を採用したタイプが主流となっています。

スイベルジョイントのメリットは、回転機構があることで配管の自在な動きを可能にすることです。一方で、軸部と本体に分かれた分割構造となっていることから、継手自体の強度が弱くなるデメリットもあります。回転部にはスラスト・ラジアル荷重やモーメント荷重がかかるので、充分な強度を持つ設計が必要です。

スイベルジョイントのその他情報

1. クレーンに使用されるスイベルジョイント

可動部の送液ラインに使用されるスイベルジョイントは、クレーンなどの重機にも使われます。クレーンなどの重機は移動するキャタピラなどの下部と旋回する上部に分かれます。この上部と下部を繋いでいるのがスイベルジョイントです。

スイベルジョイントの機構を用いることで、クレーンなどの重機の動きが可能となります。同様の機構であるロータリージョイントを使用する場合もあります。

2. スイベルジョイントのシール

高圧のラインに使用されるスイベルジョイントには、軸部のシールとしてOリングなどが使用されます。一般的にOリングは1 本もしくは2 本です。高圧用には、ラビリンス用に複数本のOリングが使用されます。

さらに、サンフロンリングと呼ばれるものと組み合わせて使用することで、シール性を向上させます。組付けは、プレス機や油圧ジャッキなどを使用します。

3. スイベルジョイント方式による配管施工法

可動部に使用するスイベルジョイントの仕組みを利用した、配管の施工方法があります。配管に流れる流体が高温の場合、配管が温められ熱伸びが発生します。この熱伸びを吸収するため、スイベルジョイントを複数個使用する施工方法です。

90度のスイベルジョイントを複数個使用してUベンドのように配管形状にすることで、各スイベルジョイントが可動して熱伸びを吸収します。ステンレス系の配管の場合、鉄系に比べ熱伸びが大きいため、この方式が多く使用されます。また、保温材を使用する場合の施工法があり、ローラー・ゴムバンドで配管を支持することも行われます。

参考文献
http://www.sgk-p.co.jp/products/swiveljoint/use/
https://www.yanmar.com/jp/construction/tips/column/basis_02.html
https://www.benkan.co.jp/value/construction/737.html

シートパッキン

シートパッキンとは

シートパッキン_図0

シートパッキン (英: Sheet Packing) とは、機器や構造物、配管などにおいて、内部の流体などが流出しないように使用するシート (板) 状の部品・材料です。

同様の使用目的ではガスケットがありますが、シートパッキンは非金属ガスケット中のシートガスケットの1種で、呼び方は違いますが基本的には同じものになります。一般的に封止する目的で、ガスケットとパッキンがあり、ガスケットは主に 「動きのない」「動かない」部分に使用します。

それに対してバッキンは、主に 「動きのある」「動く」部分に使用するものを示します。しかし、この場合のシートパッキンは、ガスケットと同様に「動きのない」「動かない」部分に使用するものを示します。なお、シートパッキンに関して規定された、JISもしくはその他の規格はありません。

シートパッキンの使用用途

シートパッキン_図1 図1. 管フランジ用シートパッキン

シートパッキンは、気密・密閉性を維持し封止するために使用されます。パッキンのメーカー製品は大判のシート状で出荷され、加工業者やユーザーで目的に応じて、必要な寸法に切断や穴あけ加工したうえで使用するのが一般的です。

シートパッキンの原理

ゴム製のOリングがパッキンとして有名ですが、Oリングは柔らかいので締め付けを行い加圧することで、その形状が変化して密着性を高め隙間を無くしリークを抑えます。ただし、ゴム製ですので加圧しすぎると破損したり、耐久性に難があったり、高温で使用できなかったりなど欠点があります。この欠点を補うパッキンがシートパッキンです。

スリーシートは、加圧によりシート材は押しつぶされますが、接着剤により密着性を高めてリークを抑えます。シート材の変形ではなく接着剤を使用しているので、漏洩防止効果が持続します。一方で、使い捨てであるため、一度使用すると再利用できません。

また、接合部には接着剤が残るので、次に使用する際は接着剤を綺麗に除去する必要があります。そのほか、接合部が並行でなく少しでも傾いていると、接着剤が付かずにシールできないことも欠点です。

そのOリングとスリーシートの中間的な役割を持ったのが、ジョイントシートです。ジョイントシートは形状変化でシールする上に高耐久性を持ちますが、こちらもシート状なので接合部が少しでも傾いているとシールできません。シーリング材も多種多様で、状況に合わせて適切に選択する必要があります。

シートパッキンの種類

シートパッキンの種類は、スリーシートパッキンとジョイントシートがあります。

1.  スリーシートパッキン

シートパッキン_図2

図2. スリーシートパッキン

スリーシートパッキンは、スリーボンド社製のシート状のパッキンです。このパッキンは、固形パッキンと液状パッキンを融合させたことが特徴です。強度の高い繊維素材のシートに特殊な粘性体を含侵させ、接合面に挟み込み締め付けられることで、内部に含侵させた粘性体が表面ににじみ出て、接合面の微細な凹凸隙間を埋めることで密閉性が高まります。

したがって、低い締め付け面圧で漏洩を防止できます。繊維素材のシートに粘性体を含侵させていることで、毛細血管現象による浸透漏れが発生しません。粘性体を含侵されているため柔軟性が高く、接合面のなじみが良好です。

一般的なシート状のパッキンやガスケットとは異なり、接合面の隙間が減少し液体の漏洩が少なくなります。特に、油類に対しての耐性に優れていています。スリーシートパッキンは、接合面に挟み込み締め付け後に厚みの減少が少ないため、ゆるみの発生が少なく、良好な締め付けが維持できます。

型番などによって異なりますが、使用温度範囲と締め付け面圧は下記のような範囲になります。

  • 使用温度範囲: -40~180 ℃
  • 締め付け面圧: 2.94~65 MPa (30~180 kg/cm2)

スリーシートパッキンの寸法は、厚さが0.1~1.15 mmで1,000×25,000 mmのサイズでロール状になっています。これをフランジ形状などに合わせて切断加工して使用します。

2.  ジョイントシートパッキン

シートパッキン_図3

図3. ジョイントシートパッキン

ジョイントシートパッキンは、一般的にジョイントシートガスケットと呼ばれることが多くありますが、基本的に同じものを示しています。ジョイントシートパッキンは、繊維シート材に耐熱・耐油性に優れたゴムをバインダーとして添加し、圧延および加硫して、円滑なシート状に成形したパッキンです。

従来は石綿 (アスベスト) を含んだ繊維が使用されていましたが、法改正後には非石綿 (ノンアスベスト) 繊維や、炭素繊維などが使用されています。ジョイントシートパッキンは、汎用性が高く加工性に優れているため、フランジや機械接合面などに幅広く使用されています。

メーカーや型番、使用流体などによって異なりますが、一例として使用温度範囲と締め付け面圧は下記のような範囲になります。

  • 使用温度範囲: -50~200 ℃
  • 締め付け面圧: 20.0~0 MPa (204~408 kg/cm2)

ジョイントシートパッキンの寸法は、厚さが0.41~3.0 mmで1,270×1,270 mm~3,048×3,810 mmのサイズで大判シート状になっています。これをフランジ形状などに合わせて切断加工して使用します。

参考文献
https://www.monotaro.com/s/c-112238/
https://yanasess.com/01sozai/threesheet.html

シンセサイザ

シンセサイザとはシンセサイザ

シンセサイザとは、電子回路によって音を発生させる装置のことです。

一般的に知られるシンセサイザはキーボード状のもので、楽器として用いられます。しかしながら、キーボードないものやパソコン上で使うソフト・シンセサイザもあります。

これらは作曲用機器としても使用されます。シンセサイザは人工的にさまざまな音色を作りだして合成できるため、音作りに最適な機械です。

シンセサイザの使用用途

シンセサイザは、楽器や作曲用ソフトウェアとして広く使用されます。シンセサイザで発生する音は電子的であることから、電子音楽で用いられることが多いです。また、シンセサイザの一部は無線通信分野において発信回路として使用されます。

シンセサイザの原理

シンセサイザは電子回路によって音声を合成する装置です。したがって、内部は電子回路によって構成されます。

まず、マイクによって拾い出した音をフィルタによって上限・下限周波数を取り除きます。取り除く周波数は任意に設定可能です。

フィルタリングした音は、必要に応じて倍音加算やディレイなどのエフェクトを追加します。エフェクトを追加した音はスピーカによって増幅されて出力されます。

シンセサイザにはアナログ回路とソフトウェアによる製品があります。ソフトウェアの場合は、上記をコンピュータ基板上で処理します。

シンセサイザのその他情報

1. 周波数シンセサイザ

一般的には音楽に用いられるシンセサイザですが、周波数シンセサイザは特徴的な使い方をします。周波数シンセサイザは、周波数の合成によって通信機器の発振装置として用いられることが特徴です。

発振装置とは、ある周波数の振動を持続的に発生させる装置です。特定の周波数を取り除くためのフィルタとしても使用されます。周波数シンセサイザは、様々な周波数に対応することが可能で、通信分野において広く利用される技術です。

周波数シンセサイザはその原理の違いから、主に2つの種類に分けられます。

PLLシンセサイザ
周波数シンセサイザの中でも主流の方式で、位相同期ループ回路 (PLL回路) を用います。入力された信号は位相比較器、ローパスフィルタ、電圧制御発振器などを通って出力され、一つの水晶発振器で安定性の高い周波数を発生させることが可能です。

DDSシンセサイザ
DDSシンセサイザはデジタル直接合成発振器とも呼ばれます。アナログ信号をデジタルデータに書き換え、再びアナログ信号として出力するシンセサイザです。加算機とラッチに通すことで設定した周波数値を累積させデジタルデータを作ります。これをD/A変換することで直接波形を取り出します。

デジタル方式でアナログ波形を取り出すため、高精度で低コストです。また、周波数や位相を即座に変更可能なためPLLの代替使用も検討されています。

2. シンセサイザの歴史

シンセサイザは100年以上前から存在しており、改良を繰り返して現在の姿になりました。

  • 1930年代
    シンプルな電子楽器が誕生しました。シンセサイザの原点です。
  • 1937年
    ドイツのハラルト・ポーデがポリフォニック・シンセサイザを発明し、アナログシンセサイザの発展に大きな影響を与えました。
  • 1950年
    世界で初めてコンピュータ音楽が演奏され、デジタル信号を処理するプログラムも開発されました。
  • 1956年
    シンセサイザという言葉が歴史上初めて登場しました。
  • 1960年代
    アナログシンセサイザが世界中に普及しました。
  • 1970年代
    エレクトロニクスが発展し、コンピュータを使用したデジタルシンセサイザが誕生しました。
  • 1980年代
    一般ユーザでもデジタル楽器を手に入るようになり、MIDI規格も誕生して違うメーカー同士で接続可能になりました。
  • 1990年代
    ソフトウェア音源が一般的に利用されるようになリました。

現代に至るまで高性能化や低価格化など、さらに進化が続いています。

3. シンセサイザと電子オルガンの違い

シンセサイザと電子オルガンはどちらも鍵盤を複数列有します。多種多様な音が出るので、見た目も中身も共通点がありますが、違いもあります。

電子オルガンは一人で演奏することが目的です。上下の鍵盤は約70鍵、ペダルは1〜2オクターブ分の鍵盤があります。この鍵盤でも足りない場合、機械で音の高さを変化します。また、電子オルガンは制御がしやすいので、一人でも迫力のある演奏が可能です。

一方で、シンセサイザはパラメータを操作して様々な音を合成することが目的です。電子オルガンは出力音は一定ですが、シンセサイザは波形を操作することで様々な音色を作ることができます。

参考文献
https://www.cqpub.co.jp/hanbai/books/33/33451/33451.pdf
http://www.nfcorp.co.jp/techinfo/dictionary/008.html
https://recreation.pintoru.com/synthesizer/history/
http://kenbanto.com/2018/02/10/post-239/

ショア硬度計

ショア硬度計とは

ショア硬度計とは、「ショア硬さ」と呼ばれる硬さを測定するための測定器具です。

ショア硬さは、主に金属材料の硬さを表します。硬さは、物質が外部からの力に対して抵抗できる性質のことです。日常生活では鉄が硬く、ゴムが柔らかいなどの感覚で理解されます。ショア硬度計を使うことによって、物質の硬さが数値化され「HS+数値」のように表記されます。この数値が高いほど物質は硬いと言えます。

他の硬さ測定方法と比べて、測定時間も短く、測定器の持ち運びができる手軽さも特徴です。そのため、様々な製造現場で使用されています。

ショア硬度計の使用用途

ショア硬度計は、さまざまな業界で使用されます。例えば、自動車や航空機の部品を作る際に、適切な硬さの材料を選ぶために使用されます。また、靴やタイヤなどのゴム製品の品質を確認する際にも有用です。

そのほか、研究開発の分野で新しい材料を開発する際にも欠かせません。新しい素材の性能を評価するために、硬さを測定して他の材料と比較します。また、製品の品質管理や故障の原因を調査する際にも、ショア硬度計が役立ちます。

ただし、ヨーロッパではあまり使用されなくなっており、より正確な硬さを測定できるビッカース硬度計などの方が好まれる傾向にあります。一方で、日本のJIS規格では、ショア硬度をビッカース硬さに換算する方法が採用されています。このことが、日本でショア硬度計が製造現場で広く受け入れられている理由の1つです。

ショア硬度計の原理

ショア硬度計は、ある一定の高さからダイヤモンド製の半球を取り付けたハンマーを試料にぶつけ、衝突後に圧子が跳ね上がった高さを測定してショア硬さを決定します。跳ね上がりの高さが高いものほど、ショア硬度は高くなります。

ショア硬度計は、主に圧子の運動エネルギーの大きさを測定対象にしているため、試料が小さすぎると運動エネルギーをエネルギーの一部が振動エネルギーに消費されて正確な測定ができない場合があります。試料の質量が及ぼす影響は「質量効果」といい、ショア硬度計は質量効果の大きい測定方法です。

また、圧子を試料に対して垂直に落とす必要があることや、圧子に接する面は水平でなくてはならないなど、測定誤差となる要素が多いのはショア硬度計のデメリットです。しかし、このような特徴を理解したうえで、できる限り正確な測定ができるようになれば、硬さを手軽に測れるショア硬度計は、様々な現場で役に立つツールとなります。

ショア硬度計の種類

ショア硬度計には、C型とD型などのさまざまな種類があります。これらの種類はそれぞれ異なる特性を持ち、使用する状況に応じて適切な計測器を選ぶ必要があります。

1. C型

C型のショア硬度計は、内径が約6mmのガラス管を使用し、目盛りが付いています。ハンマーは先端が球状のダイヤモンド圧子であり、長さは約20mmです。ハンマーがガラス管内を落下し、跳ね上がった高さを目視で読み取ることができます。

C型のショア硬度計は、D型と比較してハンマーの質量が小さく、試料の質量による硬さの変動が少ないという特徴があります。ただし、読み取りは目視で行う必要があり、経験を積んだ技術が必要です。

2. D型

D型のショア硬度計では、鋼製の円筒形ハンマーにダイヤモンド圧子が取り付けられています。試料にハンマーが衝突し、跳ね上がってダイヤルゲージのスピンドルを押し上げ、ダイヤルゲージの指針がハンマーの跳ね上がった高さを示します。D型のショア硬度計は、取り扱いが簡単であり、C型に比べて利用率が非常に高いです。

ショア硬度計のその他情報

硬度の種類

1. 押し込み硬度
試料に圧子を押し込む際にできる窪みの深さや大きさを顕微鏡で測定し、硬さを測ります。ロックウェル硬度やビッカース硬度などが代表的なものです。

2. 反発硬度
圧子を試料に衝突させた際に、試料にできたくぼみの様子や反発後の圧子の運動を観察し、硬さを定量的に定義するものです。ショア硬度はこの反発硬さにあたります。

参考文献
https://monozukuri.sqcd-aid.com/
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjspe/75/10/75_10_1183/_pdf/-char/ja

コレット

コレットとは

コレット

コレットとは、ドリルやフライス盤などの回転する工具に取り付けるカップ状の部品です。

シャフト状の工具を固定するために使用されますが、主にCNC旋盤や搬送用ローダーなどで使用されることが多いです。

本体のコレットチャックはチャックユニットとコレットに分かれており、実際に工作物を把握するのはコレットの方です。工作物を3点で把握する3つ爪のスクロールチャックと異なり、コレットは工作物のほぼ全周を覆うように把握します。

工具の先端部分にある刃や刃物を精度良く位置決めするため、非常に重要な役割を果たします。また、サイズが異なる工具にも対応できるよう、さまざまなサイズが用意されています。工具の精度や安定性を向上させるため、工作機械に欠かせない部品の一つです。

コレットの使用用途

コレットは、工作機械や加工に用いられる部品の1つです。以下はコレットの使用用途の一例です。

  • CNC旋盤などの工作機械
  • 搬送用ローダー
  • ドリルやフライス盤
  • ルーターや彫刻機

芯振れ精度で比較すると、全体的にコレットはスクロールチャックよりも優れた性能を持つため、振れや同軸度などの幾何公差が厳しい工作物の加工に適しています。

一方で、コレットはスクロールチャックよりも開き代が小さい傾向にあります。これにより、アンクランプ状態の口径が狭すぎて工作物の受け渡しが上手くできないという場合もあるため、自動運転で搬送機からの受け渡しがある時は、注意が必要です。

コレットの原理

基本的なコレットの形状は円筒状で、中心から放射線状にすり割りが入っています。チャックユニットに挿入すると外側のテーパ部がフランジに引っかかり、シリンダなどでその部分を押し込むことで口径部が開閉します。

コレットは把握による圧力が均等に分散されるため、工作物を傷つけにくいうえに強力に固定できます。アルミニウムなどの柔らかい材質や、パイプ材のように肉が薄いものでも把握できる点はメリットです。

コレットは工具を簡単に取り外すことができるため、異なるサイズのシャフト状工具に対応可能です。工具を取り外す際にはコレットを緩めて工具を引き抜きます。コレットは摩擦力を利用して、工具を正確に固定することができる優れた部品です。

ただし、注意すべきはコレットが消耗品であるということです。口径部は繰り返し開閉動作を行うことで徐々にスプリング性が無くなってきます。また、加工を繰り返すことで工作物と接する面も徐々に摩耗し、本来持つ芯振れ精度をオーバーします。加工精度を高く維持するためにも、一定の使用量を超えたら必ず交換が必要です。

コレットの種類

コレットにはさまざまな種類があります。以下はコレットの種類の一例です。

1. スタンダードコレット

最も一般的なコレットで、ドリルやフライス盤などの工具に使用されます。一般的にシャフト径に応じたサイズが用意されています。

2. ERコレット

精密な加工作業に使用される高精度のコレットです。ERとはElastic Rigidの略で、柔軟性と剛性のバランスを意味しています。加工機器のスピンドルに取り付けることが可能で、クランプナットを使用して簡単に交換することができるため、作業効率が向上します。

3. MTコレット

ボーリングマシンなどに使用されるモーリステーパー (MT) 規格の工具に適したコレットです。MTシャンクに合わせた内部の円錐形に工具を挿入し、コレットを締め込むことで工具を固定します。

4. ポータブルコレット

手持ちの電動工具に使用されるコレットです。電動ドリルやルーターなどに取り付けることができます。ポータブルコレットはサイズが異なる工具に対応できるよう、複数のサイズが用意されています。

5. スプリングコレット

本体にスプリングが内蔵されているコレットです。工具を強く締め付けず、弾性的な力で固定するために使用されます。工具を締め付けるためのハンドルがなく、工具を挿入するだけで簡単に固定することができます。

参考文献
http://www.okutani-cc.co.jp/homepage/html/collet_setsumei.htm
https://www.yukiwa.co.jp/products/sc/about_sc.php

ケミカルタンク

ケミカルタンクとは

ケミカルタンク

ケミカルタンクとは、薬液を保管するための容器です。

薬品を保管するには容器が必要ですが、液体は固体に比べて反応性が高く、隙間があると漏れてしまうので、保存の際には専用のタンクの使用が必要です。また、薬品ごとに反応する素材が異なるため、すべての薬液に共通して使用できるケミカルタンクは無く、薬品の性質に応じて使い分けます。

ケミカルタンクの材質は、ポリエチレン、硬質塩化ビニール、ガラス繊維強化プラスチック、高耐食性ポリエステル樹脂、フッ素樹脂と耐蝕FRPの複合、鋼製又はステンレス鋼タンクにフッ素樹脂ライニングしたものなどです。

ケミカルタンクの使用用途

薬液は、実験室などでは専用の保管庫に保管したり、エタノールなど洗浄などでよく使用して人体にも大した影響のない薬液は使用しやすいように小さなケミカルボトルに入れて保管します。薬液の生産工場や輸送の場合には大量に保管するため、大きなケミカルタンクが必要になり、破損して液漏れが起こらないように高い強度が必要です。

工場では、薬液の保管の他にも薬品の混合などで使用されます。研究室レベルでは、薬品の保管以外に廃液処理用としても用いられています。

使用の事例

  • 化学工業における薬品の貯槽
  • 各種、水処理装置の反応槽や薬品槽
  • 食品関係の原料貯
  • その他、各種産業分野における液体貯蔵タンク

ケミカルタンクの原理

1. ケミカルタンクの材質

薬液には大きく分けて酸、アルカリ、有機溶剤があります。金属性のケミカルタンクは強度が高く破損しにくいのですが、酸に弱いので、例えば塩酸などの保管には向きません。有機溶剤には高い耐性を示しますが、有機溶剤の中でも例えば酢酸など酸性の液体では腐食が進行します。

一般的によく使用される材料が、安価で耐薬品性及び耐衝撃性に優れたポリエチレンです。酸からアルカリ、有機溶剤、フッ素まで幅広く使用できるので、大容量のケミカルタンクが製造可能です。食品から化学工場まで幅広い業界で多く使用されています。しかし、アセトンなどには耐性が弱く使用できないので、万能という訳ではありません。

2. タンクの形状

タンクの形状は、大きく分けて丸形と角形があります。丸形は、比較的大型のものが多く、鋼製又はステンレス製のタンクに樹脂をライニングしたものが多く使われます。角形は樹脂の成型品が主であり、特徴は、ポンプやセンサー類の装着が容易である点です。

ケミカルタンクの特徴

1. 高耐化学物質特性

ケミカルタンクは、種々の化学物質に耐えうる特性があります。酸・アルカリなど広範囲の薬品に対応が可能です。腐食性の物質や有害な化合物に対して、タンク内部からの漏れや汚染を抑えてリスクを最小限にできます。したがって、安全な貯蔵環境を確保し、人や環境へのリスクを軽減します。

2.自由度が高い設計

ケミカルタンクは、小規模な貯蔵から大規模な貯蔵まで、ニーズに合わせて大きさを選択できます。そのため、種々のオプションが豊富にあり、必要な量の化学物質を低コストで保管できます。また、自由な形状に製造が可能です。

3. 規制遵守

ケミカルタンクは、法的規制や各種規格類に適合しています。化学物質の取り扱いには厳しい規制があり、安全な貯蔵と取り扱いが必要です。ケミカルタンクは各種規制に適合しており、適切な設計と安全機能を備えています。

4. 軽量・高強度

ポリエチレンは、比重が0.925~0.94であり、水より軽い素材です。成形性に優れるため割れの心配がなく、残留ひずみも小さい特性があり、特に耐衝撃性が優れています。また、耐熱・耐寒性があり、70℃から-50℃程度の環境で使用可能です。

5. 汚れに強い

ケミカルタンクは、汚れにくく洗浄性に優れており、いつも清潔で美しさを保ちます。したがって、高い衛生度が必要な食品関係での使用に最適です。特に、フッ素樹脂でライニングしたタンクは、清潔で高耐食性であり、膜厚を厚くできるので、耐久性が優れています。

参考文献
https://axel.as-1.co.jp/contents/ks/cr_list

キャピラリーレオメーター

キャピラリーレオメーターとは

キャピラリーレオメーターとは、流動性を持つ物質のせん断応力や粘性率の評価に用いられる測定装置です。

高温に加熱された試料も測定可能であり、常温では固体のプラスチック材料などの物性評価に用いられます。キャピラリーレオメーターでは、材料の粘度や圧力と温度を加えたときの流動性に関係するレオロジー物性の評価が可能です。

レオロジー物性とは、試料に外力を与えた際の反応に関する物性のことです。プラスチックなどの固体サンプルは、装置内で液体になるまで加熱されます。加熱されたサンプルはキャピラリと呼ばれる細い管に送られ、様々な速度で押し出されます。

この押し出した速度に対する溶融粘度を測定するのがキャピラリーレオメーターです。なお、キャピラリーは毛細管のことであり、細い通路を押し出すことによって物性を評価するため、キャピラリーレオメーターと呼ばれています。

キャピラリーレオメーターの使用用途

キャピラリーレオメーターは、熱可塑性のプラスチック材料の加工、射出整形における吐出条件の設定などに利用されます。一般的にプラスチックを加工するためには、高温で高い圧力を加える必要があります。

また、材質によっては、外から加える大きさに対して粘度が非線形に変化する (粘度が急激に下がったり、急激に上がる) 非ニュートン液体と呼ばれる性質を示すものがあるため、最適な加工、吐出条件を設計するには圧力、温度に対するサンプルの粘度を調べなければなりません。キャピラリーレオメーターは、プラスチックなどの高分子材料、複合材料に対する製造プロセスの最適な条件を設定するために使用されます。

キャピラリーレオメーターの原理

キャピラリーレオメーターの原理は、ちょうど注射器から液体を押し出す際の押し出し力と、押し出すスピードを測定するイメージのものです。熱可塑性のプラスチック材料を加熱し流動性を持たせた後に、シリンダーからキャピラリーダイという細い通路へと押し出します。

試料を押し出す際の圧力と、押出す速度から、試験温度における材料のせん断応力や粘性率を求めます。装置によってはダイスウェル測定、溶融聴力 (メルトテンション) 、伸長粘度測定なども可能です。

キャピラリーレオメーターの構造

キャピラリーレオメーターはシリンダの一端にキャピラリーダイと呼ばれる細い通路、シリンダーのもう一端に加熱された試料を押し出すプランジャがあります。試料が押し出される際のシリンダ内の圧力を測定する圧力計と、プランジャが試料を押し出す際の移動速度が計測できる構造になっています。

キャピラリーレオメーターの特徴

1. レオロジー評価に有効

キャピラリーレオメーターの特徴は、高温、大きな力 (高せん断) での測定が可能であるということです。装置によって上限は異なりますが、最大で400度以上まで加熱することが可能であるため、溶融させたプラスチックの粘性評価に有効です。また、せん断力も最大で1,000,000/秒と非常に高く、大きな力を加えたときのサンプルの流動性を調べることが可能となります。プラスチックの加工では吐出時に非常に大きな力が加わることも多いため、このような高せん断が加わったときのサンプルの挙動を調べることは重要です。

2. 高せん断が加わる製品の評価に有効

プラスチック材料以外にも、ケチャップやマヨネーズなどの食品や、ゲル状の化粧品なども容器から押し出されるときに大きなせん断が加わる製品の評価にも用いられます。キャピラリーレオメーターは室温でも利用可能な装置であり、サンプルに加えるせん断力の範囲が広く精度も高いので、流動性のある食品や、化粧品の容器からの吐出挙動を調べることも可能です。

また、キャピラリーレオメーターは、せん断速度を変えながら粘度を測定することも可能であるため、実際の測定において試料は、せん断速度に対する溶融粘度の曲線を描いて評価されます。