ステンレス継手

ステンレス継手とは

ステンレス継手とは、ステンレス鋼管同士をつなぎ合わせるために使用されるものです。

多くの場合、SUS304のステンレス鋼です。ステンレス鋼は錆びにくいという特徴があるため、錆の混入を防止したい配管や水などの配管でよく使用されます。

また、SUS304などのオーステナイト系ステンレス鋼は、極低温でも低温脆性が発生せず、むしろ強度が上昇します。そのため、液体窒素 (-196℃) の配管などにも使用されます。

ステンレス継手の使用用途

ステンレス継手は、錆を発生させたくない配管などに使用されます。具体的な使用用途は以下の通りです。

  • 上水道配管
  • 硫酸移送配管
  • 強アルカリ液移送配管
  • 液体窒素移送配管
  • 液体酸素移送配管
  • 蒸気移送用配管

ステンレス継手の原理

ステンレス継手は前述した通り、ステンレス鋼製です。その中でも、オーステナイト系のステンレスにはクロムが含まれており、不導体被膜の形成により錆を防止します。そのため、錆が問題になる配管の継ぎ手として使用可能です。

ただし、鋭敏化には注意が必要です。鋭敏化とは、ステンレス継手を溶接する時に酸化クロムが形成されてしまい、クロムが欠乏する現象を指します。溶接時の熱管理や固容化熱処理などを行い、不導体被膜が形成されるように処理をする必要があります。

また、オーステナイト系のステンレスは、低温だとマルテンサイト系の組織になるため、引張強さが上昇します。したがって、ステンレス継手は極低温の配管にも問題無く使用可能です。

ステンレス継手の接続方法

ステンレス継手には、継手の形状によって接続する方法に種類があります。

1. ねじ込み形

ねじ込み形とは、ステンレス継手自体にねじ溝がある継手です。溶接と違って完全に固定されないため、メンテナンス性が高いという利点があります。

2. 溶接

溶接により配管と継手を接続する方法です。溶接式の継手には、先端同士を突合せて溶接する突合せ溶接 (SW) と、使用する配管を継手に差し込んで溶接する差し込み溶接 (BW) があります。

3. フランジ

配管と継手の端部のフランジを突合せて、ガスケットを間に挟んでボルトとナットで固定する接続方法です。ねじ込み形と比べると強度や作業性などの面で信頼がおけるだけでなく、メンテナンスがしやすいという利点があります。

ステンレス継手の種類

ステンレス継手は配管を接続する目的によって分類されています。

1. エルボ

曲がっていることが特徴の継手です。流れの向きを変えることが可能で、45°, 60°, 90°など曲がる角度を用途によって選択することができます。特に、L字型の90°の継手は床や天井などの直角になっている場所で使われます。

2. チーズ

チーズとはT字型の継手です。2本の配管を流れている流体を合流させたいときや、2つに分岐させたいときに使用されます。Y字型のラテラルと呼ばれる水頭損失が少ないものが使用されることもあります。

3. レジューサー

レジューサーとは配管の直径が異なるとき、2つの配管を接続したいときに使用される継手です。1つの継手で配管の直径に対応できない場合は、2つ以上のものが同時に使われる場合もあります。

4. ニップル・ソケット

ニップルとは内ネジの配管同士を接続するときに使用される継手です。一方で、ソケットとは外ネジの配管同士を接続するときに使用される継手です。それぞれ、同じ型の配管を延長したいときなどに使用されます。

参考文献
https://www.riken.co.jp/products/piping/stainless.html
https://www.kagaspring.com/keyword/item_1564.html
http://www.hkpnote.com/hk/hk06.html
https://www.monotaro.com/s/pages/productinfo/pipe2/
https://40chousennsya.com/weld54

タングステン

タングステンとは

タングステン

タングステン (元素記号:W) とは、原子量が183.85の遷移金属元素です。

タングステンは、粉末、インゴット、線、棒、板といった様々な製品形状から加工されることにより、自動車、工具、照明、家電、半導体、医療など様々な分野で使用されています。

タングステンの使用用途

タングステンの性質を生かした使用用途は、以下の通りです。

タングステンは照明用途もありますが、LEDの普及に伴い使用量は減少傾向です。その他、純度の高いタングステンは比較的柔らか金属ですが、不純物を含むことにより高い硬度を発現します。

炭素との合金であるタングステンカーバイドが代表例です。超硬合金の一つで、切削工具や鉄鋼の添加剤として使用されます。タングステンカーバイドは、高温においても柔らかくならず高硬度を維持できる上、強度も強いため、切削工具だけでなく、研磨剤としても使用されています。

タングステンの特徴

タングステンは、研磨された塊の表面は銀白色、粉末は灰色で、比重が19.3あります。金属の中では最も高い融点 (3,380℃) を持ち、沸点は5,800℃です。熱膨張率が小さいことも特徴で、るつぼや炉などの高温において使用される容器や部品の原料に使用されています。

タングステンが主成分ではありませんが、KS鋼と呼ばれるコバルト、タングステン、クロム、炭素を含む鉄の合金は、日本で開発された1917年当時においては、最強の永久磁石と呼ばれていました。

タングステン鉱石は、鉄マンガン重石 (英: wolframite/化学式: (Fe、Mn)WO4) 、鉄重石 (英: ferberite/化学式: FeWO4) 、マンガン重石 (英: hubnerite/化学式: MnWO4) 、灰重石 (英: scheelite/化学式: CaWO4) など、他の金属と混ざったものとして産出しますが、この中でも鉄マンガン重石と灰重石が重要な鉱石です。

産出国は80%以上が中国であり、その他ロシア、オーストラリア、カナダなどで産出されます。産出地が偏っている反面、重要性の高い元素であることから、国内消費量の最低60日分を備蓄することが安全保障策として定められています。

タングステンのその他情報

1. ダングステン合金の種類

タングステンを主成分とする合金が、数多く開発されており、バインダー相をニッケル、鉄などで構成したタングステンを主とする焼結合金はヘビーアロイと呼びます。ヘビーアロイには、タングステン-ニッケル-銅 (W-Cu-Ni) 系とタングステン-ニッケル-鉄 (W-Fe-Ni) 系があります。

タングステン-ニッケル-銅系は磁性がありませんが、熱伝導性が高いです。一方で、タングステン-ニッケル-鉄系には弱い磁性があり、引張強度や伸びなど、機械物性に優れます。ヘビーアロイは、タングステンが非常に高融点であるため、粉末冶金法で製造されます。

金属粉末を均一に混合した後、高圧でプレス成形し、これを高温焼結することで製造します。製造する際に使用するタングステンの粒径、バインダー用金属の種類、量比などの調整により、合金の物性も作り分けることが可能です。

2. タングステンの毒性

タングステンの塊自体には毒性がないため、工具やアクセサリーなどの、直接接触する用途にも使用されます。一方、タングステンを加工する際に発生するタングステンの粉塵は、日本産業衛生学会の粉塵の危険性レベルの分類における、第三種粉塵に該当し、作業環境における粉塵許容量の上限が定められています。

タングステン化合物の毒性に関しては、ラットの経口摂取による半数致死量LD50 (急性毒性の指標) の値は、りんタングステン酸で3,300mg/kg、タングステン酸ナトリウムで1,190mg/kg、酸化タングステン (VI) で840mg/kgであることが報告されています。

いずれの化合物も、毒物及び劇物取締法には該当しませんが、労働安全衛生法においては、名称等の表示と通知をすべき危険物及び有害物とされています。

参考文献
https://www.allied-material.co.jp/techinfo/tungsten/features.html
https://www.allied-material.co.jp/techinfo/tungsten/use.html
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjspm1947/2/1/2_1_109/_article/-char/ja
https://www.nittan.co.jp/products/hard_metal_002_003.html
http://www.tohokinzoku.co.jp/technical/powder_phys.html
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/7440-33-7.html
http://www.kishida.co.jp/product/catalog/msds/id/13392/code/200-81542j.pdf
http://www.st.rim.or.jp/~shw/MSDS/16636130.pdf
http://www.jspf.or.jp/Journal/PDF_JSPF/jspf2020_02/jspf2020_02-77.pdf

ソックスレー抽出装置

ソックスレー抽出装置とはソックスレー抽出装置

ソックスレー抽出装置とは、固体試料から溶媒に溶解する成分を抽出する際に用いられる実験装置です。

この装置は、1879年にドイツの化学者であるフランツ・フォン・ソックスレーによって発明されました。ソックスレー抽出装置は、試料から目的の成分を効率的に抽出するために使用され、化学研究、食品業界、環境分析など多くの分野で活用されています。

ソックスレー抽出装置の使用用途

ソックスレー抽出装置を使用すると、固体試料から目的成分を効率的に抽出できます。目的物質を少量の溶媒で抽出したいときに使用され、有機合成や分析試験などに用いられます。

1. 化学分析

化学物質や有機化合物の抽出に広く使用されます。特定の試料から目的の成分を取り出し、それを分離・濃縮するのが目的です。薬品の品質評価や不純物の検出など、化学分析の基本的なステップとして重要です。

2. 食品業界

食品業界では、食品試料から特定の成分 (例: 香料、油脂、色素) を抽出し、品質管理や製品開発に役立てます。ソックスレー抽出は、新しい食品の味や香りを調べたり、食品の安全性を確保したりするための手法として使用されています。

3. 環境分析

環境分析では、土壌、水、大気などの試料から有害物質や汚染物質を抽出するためにソックスレー抽出装置が使用されます。これにより、環境への影響を評価し、環境保護策を検討するのに役立ちます。

ソックスレー抽出装置の原理

ソックスレー抽出装置は下段から順にフラスコ、試料を入れる容器、冷却器の3つが接続された実験器具です。下段のフラスコには溶媒を入れ、ヒーターで加熱して、溶媒をゆっくりと蒸発させます。上段の冷却器には冷却水が循環しており、下段のフラスコから蒸発してきた溶媒を冷やし、気体から液体に戻す役割をしています。

中段にある試料を入れる容器に、適当な大きさに解砕された固体試料が、セルロース製の多孔性の容器入れられています。冷やされて液体に戻った溶媒は、中段の固体試料に滴下され、固体試料から可溶成分が少しずつ溶け出します。溶媒がある一定量まで中段の容器に蓄積すると、サイフォンの原理により下段のフラスコへ戻り、再度蒸発に使用されます。

固体から溶解した目的成分は溶媒よりも沸点が高いため蒸発せず、下段のフラスコに蓄積します。これを繰り返すことで、少量の溶媒で目的物質を効率良く抽出できます。

ソックスレー抽出装置の特徴

ソックスレー抽出装置の特徴は以下の通りです。

1. 簡便性

ソックスレー抽出は、他の抽出方法に比べて操作が簡単で、訓練を受けた専門家でなくても利用できます。研究室や工場での日常的な分析作業に適しています。

2. 高効率

ソックスレー抽出装置は、溶媒を循環させるため、比較的少量の溶媒で効率よく抽出できます。また、固体試料を損なうこともありません。

3. 汎用性

ソックスレー抽出は、多様な溶媒や試料に対応ができます。溶媒の種類や量、試料の種類や量、抽出時間などを調整して、目的に合わせた抽出が可能です。

ソックスレー抽出装置のその他情報

ソックスレー抽出装置の注意点

ソックスレー抽出装置を使用する際は、次の点に注意が必要です。

1. 溶媒の沸点
固体試料を融解しない程度の沸点の溶媒であることが重要です。固体試料の融点以下であることは必須ではありませんが、固体試料が融解すると、抽出効率が極端に低下します。

使用する溶媒は主に水や有機溶媒などですが、目的によって様々な溶媒を使用できます。

2. 溶媒の種類
固体試料が溶媒によって溶けてしまう場合も、抽出効率が低下する可能性があります。目的成分をきちんと溶解し、固体試料は溶解しない溶媒であることが好ましいです。

3. 溶媒の量
溶媒の量が少なすぎると、固体試料を十分に抽出できない可能性があります。

参考文献
https://www.ibieng.co.jp/analysis-solution/x0022/
https://www.kiriyama.co.jp/dcms_media/other/11._%E6%8A%BD%E5%87%BA%E5%99%A8.pdf

サニタリー継手

サニタリー継手とは

サニタリー継手はその名の通り清浄性が求められる配管に使用される継手となります。つまり食品、医薬品及び化粧品など人体へ直接摂取したり、人体に作用する物を作る業界で多く使われている継手となります。

通常の配管継手はその継手部にたまりなどが発生しますが、大きな問題とはなりません。

しかし、清浄性が求められる業界では溜りの部分で発生するバクテリアや異物が大きな問題となるので、サニタリー継手が多く使われています。

サニタリー継手の使用用途

サニタリー継手は食品、医薬品及び化粧品などの業界で非常に多く使われています。

使われる箇所としては異物混入やバクテリアの発生が厳禁となる箇所です。そのような部分では定置洗浄(CIP)や定置殺菌(SIP)等も行いますので、苛性ソーダや次亜塩素酸ナトリウムなどの薬品、及び蒸気の高温高圧にも耐えれる継手が必要です。

そのような所でサニタリー継手は採用されています。

他にもサニタリー継手は分解しやすい構造なので、分解性を求められる箇所にも使用されています。

サニタリー継手の原理

ほぼすべてのサニタリー継手はステンレス鋼の1種であるSUS304で製作されており、SUS304よりもグレードの高いSUS316Lで製作されることもあります。

これらの材料の特長はまず錆びる事が無いので、それによる汚染や異物混入の心配がありません。また、苛性ソーダや次亜塩素酸ナトリウムなどの定置洗浄(CIP)に使用される薬品にも耐性を持っています。さらに内面を磨きあげる事で液の溜り部分を無くす事により、バクテリアの発生も極力低くしています。

継手自体は特殊なガスケットとクランプで挟み込むようになっており、そのガスケットも液溜ができないような設計になっています。

ガスケットの材質もEPDMやNBRのようなゴムやPTFEのような樹脂からエアラブ事ができ、そのすべてがポジティブリストに適合しているので直接食品などと触れても安全な素材です。

また、クランプで接続する事により分解が非常に行いやすくなっているので、配管を分解しての洗浄も非常に行いやすい構造になっています。

参考文献
https://www.osaka-sanitary.co.jp/product/fitting.html
https://www.monotaro.com/s/pages/cocomite/511/

ギアポンプ

ギアポンプとは

ギアポンプ

ギアポンプとは、ギア (歯車) のかみ合わせ部分を利用して油などの流体を移送するポンプです。

ギア1回転にごとに一定量の流体が吐出されます。圧力上昇に伴う吐出量の変化が少なく、定量性が良いことが特徴です。

使用する際はエンジンや電動モータなどの原動機にギアポンプの軸端 (シャフト) を結合させます。これらの原動機の動力でギアを駆動させて流体を押し出します。

他の回転容積式ポンプにないギアポンプの特徴として、構造上は正転・逆転を切り替えて吸引・吐出方向を切り替えられるという利点があります。製品によっては正転・逆転切り替えが可能な物もあり、液体の移し替えなどで方向を切り替える必要がある場合に便利です。

ギアポンプの使用用途

ギアポンプは産業で広く使用されるポンプです。

油圧ショベルをはじめ、フォークリフトや農業機械などの油圧系統を持つ機器に使用されます。移送対象液体は油、樹脂、塗料、接着剤、溶剤などが挙げられます。

歯車とケーシング以外で触れるところが少なく分解が比較的容易であることから、化学業界はじめ食品業界や薬品業界などにも用いられます。ある程度の固形物含有液にも使用可能です。

ギアポンプの原理

ギアポンプはギア、ケーシング、吐出口・吸込口、シール部分などで構成されます。

ギアは内歯車と外歯車で構成されます。取付箇所や個数に応じてポンプの構造が異なります。吸込口から入った液はギアとケーシングによって圧力を加えられ、吐出口から送出されます。

ギアポンプ軸部の密閉には、オイルシールもしくはメカニカルシールが使用されます。オイルシールとは、シール自身の弾性で密閉性を確保するもので、メカニカルシールとはコイルバネの力を利用して密閉性を確保するものです。

一般的には、メカニカルシールの方が漏れが少なくメンテナンスがしやすいという特徴があります。しかし、流体の種類、ポンプの仕様、使用条件を考慮して設計することでメンテナンス頻度や設備の寿命が改善されます。また、適切なクリアランスが維持されているか、漏れに変化がないか定期的な確認が必要です。

ギアポンプの種類

ギアポンプは歯車間の隙間に入った液体を送り出す機構であり、こうした一定容積を順次送り出すポンプは容積型ポンプと呼ばれます。ギアポンプは回転容積式ポンプの一種であり、同じような回転容積式にはベーンポンプネジポンプなどが挙げられます。広義には回転容積式を総称してロータリーポンプと呼ぶため、ギアポンプはロータリーポンプの一種とも言えます。

実際には用途によって呼称が異なります。特に、真空引き用の油回転ポンプのことをロータリーポンプと呼ぶ場合が多いです。油回転真空ポンプの機構はベーン式、カム式、揺動ピストン式などの種類があります。

また、ギアポンプには外接歯車型と内接型があります。

1. 外接歯車型ギアポンプ

ポンプ内部で2つの外歯歯車が隣り合って取り付けられています。エンジンや電動モータなどの原動機が動作することでポンプの軸が回転してポンプ吸込口より流体を取り込みます。

このタイプのポンプでは、外接する歯車が回転しているときにわずかな隙間が生じます。その隙間に流体が充満してポンプの内周に沿って流れ、最終的に吐出口から流れます。

2. 内接歯車型ギアポンプ

ポンプの内部で1つの内歯歯車と1つの外歯歯車がケーシングの内部に取り付けられています。内接型は内歯歯車と歯数が1枚少ない外歯歯車から構成しており、外歯歯車を駆動軸により回転させることで、内歯歯車に沿うようにして外歯歯車が回転します。この回転により流体を吐出口から押し出します。

ギアポンプのその他情報

ギヤポンプの保全

ギヤポンプの故障原因はさまざまですが、キャビテーションやエア噛みが代表的です。

キャビテーションはケーシング内で部分的な圧力差が生じ、その圧力低下が液体の飽和蒸気圧まで低下することで発生する現象で、ギヤポンプ吐出圧力不足の原因の一つです。この現象が起こると、気泡消滅時に大きな衝撃圧力が発生します。この衝撃圧力の影響で異音が発生し、継続すると振動が発生して故障の原因となります。

キャビテーションの対策は配管内径を太くする、吸込側配管を短くする、ポンプ吸込み条件を可能な限り押し込み条件にするなどです。これらは、設備設計の段階で考慮する必要があります。

エア噛みはポンプにエアが吸い込まれて内部にエア溜まりが生じる現象で、吐出圧力や流量低下に繋がります。対策はポンプを流体液面よりも下に設置すること、配管を曲げる個数を減らすこと、配管を下り勾配にしないことなどです。設備のレイアウト変更する際には注意が必要です。

参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/tvsj/26/4/26_4_27/_pdf
http://eb-cat.ds-navi.co.jp/jpn/jtekt/tech/ej/img/no1001/1001_17.pdf
http://gearpump.co.jp/gearpump/index.html
http://gearpump.co.jp/trouble/index.html
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kakoronbunshu1953/25/2/25_2_131/_pdf

ゼオライト

ゼオライトとは

ゼオライト

ゼオライト(英語: zeolite)は結晶性のアルミノケイ酸塩です。主成分はケイ素、アルミニウム、酸素で多孔性の結晶構造を形成しています。ゼオライトの最小基本単位はSiO4四面体で、これが三次元的に組み合わさった構造をしています。ケイ素の一部はアルミニウムに置換されており、その周辺に電荷を調整するための陽イオンが存在します。

一般的にゼオライトは、その特異な結晶構造を由来とするイオン交換能や吸着能を有しています。この性質は、ガスの吸着や陽イオン交換、触媒などに応用されています。

ゼオライトの使用用途

ゼオライトには分子レベルの細孔が無数に存在しており、その構造により吸着能、イオン交換機能、触媒能といった様々な性質を持っています。

ゼオライトはモレキュラーシーブとも呼ばれており、細孔径により分子をふるい分けすることができます。この性質を利用して、気体や溶媒中の水分や不純物を取り除く目的で使用されています。また土壌改良剤や水処理剤、二酸化炭素や窒素の吸着材、石油化学製品の触媒などに使用されています。

ゼオライトの原理

ゼオライトの原理

図1. ゼオライトの原理

ゼオライト(英語: zeolite)は多孔性の有する結晶性アルミノケイ酸塩です。SiO4四面体とAlO4四面体が組み合わさってできており、アルミニウム置換部位は負に帯電していることから電荷を合わせるために、ナトリウムカリウムなどの陽イオンが結晶構造中に含まれています。

ゼオライトはSiO4四面体とAlO4四面体が組み合わせにより多岐にわたる結晶構造が存在し、現在では240種以上の構造が見つかっており、それぞれ細孔の大きさや吸着能なども大きく異なります。 

ゼオライトには大きく3種類あり、天然ゼオライト、合成ゼオライト、人工ゼオライトに分類されます。天然ゼオライトにはホウ沸石、モルデナイト、クリノプチロライトなどたくさんの種類があります。これらの多くは均一な結晶構造を持たず、石英や炭酸塩などと一緒になって産出します。合成ゼオライトは人工的に合成されたゼオライトです。天然ゼオライトよりも吸着能やイオン交換能が高いことが特長ですが、その分合成に高いコストがかかります。人工ゼオライトは合成ゼオライトの高コストを抑えて合成されたゼオライトです。石炭灰を苛性ソーダと反応させることで、合成することができます。配合や条件を変化することで、高機能を有する人工ゼオライトを合成することができます。

ゼオライトのその他情報

1. ゼオライトによる水処理

ゼオライトは分離膜用の材料として使用されてきました。ゼオライトを逆浸透膜という無機膜に加工することによって、有機溶媒の脱水、気体中の水蒸気の除去、海水中の塩分の除去など行うことができます。例えば、有機溶媒の脱水に関しては、有機溶媒分子と水分子の分子量に僅かな差があることを利用して水を除去します。エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、酢酸エチルアセトンなどの親水性有機溶媒の脱水も行うことができます。

水処理にゼオライトを用いるメリットを3つ紹介します。

1つ目は均一な細孔を有するため、高精度で分子篩作用による分離を行うことができる点です。ゼオライトは分子レベルの細孔を無数に有しており、分子レベルでふるい分けができることから分子篩と呼ばれます。

2つ目は耐熱性、耐薬品性があるので、高温条件下での使用や様々な物質に適用することができる点です。特に化学プラントや塗料工場などで使用される、人体に有害な化学物質にも対応することができます。

3つ目はゼオライト自体の種類が豊富で、それぞれ様々な組成、孔径を有している点です。これにより、処理する対象や用途に合わせて素材選定を行うことができるので、処理工程の自由度が格段に増します。

ゼオライトの組成が変わると、水処理の性質も変化します。例えば、ゼオライトにはケイ素(Si)やアルミニウム(Al)が多く含まれていますが、Si/Al比を低くした場合は親水性が増し、高い水吸着性を示すため、溶媒などの脱水に適しています。逆に、Si/Al比を高くした場合は疎水性が増し、酸などに対する耐薬品性が高いことから、酸性が強い薬品の処理に用いられます。

2. vゼオライトによる環境保全

ゼオライトはその吸着能やイオン交換能から農業や環境保全への利用が注目されています。

ゼオライトを池・沼や土壌に投入することで重金属や富栄養化のもととなる成分を吸着し、水質・土壌の環境を保全することができます。また、脱臭や自動車排ガスの有毒成分の分解など、ゼオライトは大気・水質・土壌のあらゆる環境を正常に保つために非常に優れた材料であります。

加えて、ゼオライトは農業や園芸用途にも使用されています。ゼオライトには規則的な孔があるので、適度な通気性を得ることができます。土とゼオライトを混ぜることで、根にも充分に酸素が供給される土ができ、植物の生育が良くなります。また、様々な物質を吸着することができるので、肥料成分の一部を保持しつつ、適度な量を植物に供給することができます。土壌に含まれる不純物を吸着して、土壌を浄化することもできます。ゼオライトから溶け出したミネラルが植物の栄養として使用される効果もあります。園芸分野での使用例として、鉢植えや花瓶、水耕栽培などがあります。

3. エネルギー・石油化学分野への応用

ゼオライトは石油化学分野においてなくてはならない触媒材料の一つです。ゼオライトは炭化水素類を異性化、分解、芳香族化などに使用されたり、メタノールからガソリンなどの燃料油生成に使用されています。特に代表的なものとして、流動床式接触分解(FCC : Fluid Catalytic Cracking)があげられます。これは、原油の上流から得られる成分をより炭素数の少ない分子に分解する反応で、ガソリンなどのより付加価値の高い成分を製造する手法であり、現在の私たちの生活にはなくてはならないものです。

また、近年では環境負荷の少ないエネルギー源として注目されているバイオガス・天然ガス・石炭ガス化複合発電等からの二酸化炭素を除去するためにゼオライトを用いた分離膜の開発も行われており、エネルギー・環境分野においてもゼオライトは非常に重要な存在であるといえる。

サニタリーポンプ

サニタリーポンプとはサニタリーポンプ

サニタリーポンプとは、品質と衛生を確保するために使用される特殊なポンプです。

食品、医薬品、化粧品、生物工学などの幅広い産業分野で使用されています。食品や医薬品などの製造過程で微小な汚染や異物の混入があると、製品の安全性や品質に悪影響を及ぼす可能性があるためです。

サニタリーポンプの使用用途

1. 食品産業

食品の生産ラインでは、高い衛生基準が要求されます。サニタリーポンプは、食品の搬送や加工の際に使用され、食品の品質を保ちつつ、汚染や異物混入を防ぎます。液体の移送からペースト状の素材の転送まで、さまざまな食品加工において使用が可能です。

2. 医薬品産業

医薬品の製造プロセスでは、高い品質基準と衛生基準が求められます。サニタリーポンプは、薬液の混合、転送、充填などに使用され、製品の安全性と品質を確保します。

3. 化粧品産業

化粧品の製造においても、製品の品質と衛生は非常に重要です。サニタリーポンプは、化粧品の原料の混合や充填に使用され、製品の均一性と衛生性を確保します。

4. 生物工学

バイオテクノロジーや生物工学の分野では、微生物や細胞の培養、分離、濃縮などが行われます。サニタリーポンプは、これらのプロセスにおいて微細な操作を可能にし、高い品質の生産を支援します。

5. 清涼飲料水産業

清涼飲料水の製造においても、製品の品質と安全性が求められます。サニタリーポンプは、原料の混合や転送、ボトリングラインでの充填作業などに使用されます。

6. 乳製品産業

乳製品の製造では、高い衛生基準が要求されます。サニタリーポンプは、乳製品の加工や充填作業に使用され、製品の鮮度と品質を保ちます。

サニタリーポンプの原理

1. 設計と材料

サニタリーポンプは、高い衛生基準を満たすために特別に設計されています。内部の隙間や溝を最小限に抑えることで、微生物や異物の付着を防ぐことが可能です。また、食品や医薬品といった製品の衛生性を保つために、適切な材料が使用されます。耐薬品性や耐摩耗性、耐熱性などが重要な要素です。

2. 吸引と排出

サニタリーポンプは、吸引側と排出側の2つの接続口を持ち、ポンプの動作により、吸引側から液体が吸い上げられ、ポンプ内部で圧縮されて排出側へと送られます。この動作には回転運動を利用する場合が一般的で、回転部分にはシールや軸受けが備わっています。

3. 閉じたシステム

サニタリーポンプは、液体を閉じたシステム内で転送するため、外部からの汚染や異物混入を防ぎます。これは製品の品質維持や衛生確保のために重要です。ポンプ内部の隙間やクリーニングのしやすさも考慮された設計が行われます。

4. 清掃と保守

サニタリーポンプは衛生基準を保つために、定期的な清掃と保守が必要です。ポンプ内部に残留物がたまることなく、効果的な清掃が行えるような設計がされています。分解や組み立てが容易であることも重要なポイントです。

5. 衛生基準への適合

サニタリーポンプは、国際的な衛生基準に適合するよう設計されています。食品や医薬品などの産業分野で使用されるため、GMP (Good Manufacturing Practice) などの基準に準拠し、製品の品質と衛生を確保します。

サニタリーポンプの種類

1. ドラムポンプ

ドラムポンプは、小容量の液体を効率的に転送するために使用されます。食品や化学物質の移送などに適しており、小型で取り扱いが容易です。ポンプヘッドの形状や材質が異なるモデルがあります。

2. ディアフラムポンプ

ディアフラムポンプは、液体がポンプ本体と直接接触せず、膜 (ディアフラム) を介して転送される方式です。衛生性を重視する分野で広く用いられます。食品や医薬品の転送に適しており、異なる素材の膜が選択可能です。

3. シリンジポンプ

シリンジポンプは、微量の液体を正確に転送するために使用されます。液体をシリンジ (注射器のような部分) に吸い上げ、精密な制御で排出します。生物工学や医療の分野で広く利用されるポンプです。

4. ロータリーローブポンプ

ロータリーローブポンプは、高い効率で液体を転送するためのポンプです。食品や化粧品の移送に使用され、液体が滑らかに送られる特性を持ちます。複数のローブが回転し、液体を吸引・排出します。

5. セントリフューガルポンプ

セントリフューガルポンプは、高速の回転によって液体を外側に遠心力で送り出すポンプです。食品や医薬品のほか、清涼飲料水などの分野で使用されます。異なる流量と圧力に対応するモデルがあります。

参考文献
https://www.tacmina.co.jp/library/glossary/sanitary_pump/

ガルバノスタット

ガルバノスタットとは

ガルバノスタットとは、電気化学における装置の1つです。

この装置はサンプルに電圧を加えることで化学反応を引き起こしたり、化学反応によって生じる物理量の変化を検出します。ガルバノスタットは、同じく電気化学における測定装置であるポテンショスタットとセットで利用するのが一般的です。

これら2つの装置は試料極と対極、参照極の3種類の電極を含むセルを制御します。ポテンショスタットとガルバノスタットで制御するものは異なり、前者は電圧を、後者は電流を制御しています。

ガルバノスタットの使用用途

ガルバノスタットは、クロノポテンショメトリーや電池の放充電試験で用いられます。

1. クロノポテンショメトリー

電位の時間変化を追跡してデータを測定する方法です。一般的には試料極に一定の電流を流し、試料極と電解液の間に流れがない状態で電気化学反応に関するパラメータを取得します。

得られるパラメータには酸化還元反応に関係する物質の濃度や、拡散係数があります。電解液中に存在する成分の酸化還元反応を扱うため、本測定の電極には溶けてイオンになりにくい白金が用いられます。

2. 電池の放充電

電池には一次電池と二次電池が存在します。一次電池は使い切りの電池であり放電のみ可能です。一方で二次電池は放電と充電が可能で繰り返し使うことが可能な電池です。

放充電の性能を評価するために、ガルバノスタットが用いられます。放充電可能な電池として、リチウムイオン電池が挙げられます。リチウムイオン電池は、スマホやハイブリッド車の電池として用いられています。

ガルバノスタットの原理

ガルバノスタットは、測定対象物はもちろんのこと信号発信機やPCも測定で必要です。信号発信機には周波数応答アナライザ (FRA) が使われます。FRAは周波数が一定のサインカーブを加えます。FRAから出力されたサインカーブが、ガルバノスタットに入力されて電圧が生じます。そして、ガルバノスタット内で発生した電圧によって測定対象物に電流が流れ、サンプルから発信された応答信号がガルバノスタットに入力され仕組みです。

ガルバノスタットに入力された信号は波に変換され、FRAに入力されます。この時入力したsin波から位相がω (オメガ) だけずれたsin (ω) 波が生じます。なお、位相のずれは測定対象物により異なります。

sin (ω) 波はFRA内でフーリエ変換され、測定周波数の成分だけが取り出されます。最後に、フーリエ変換で抜き出したデータがPCに送られます。この値をモニタリングすると、パラメータを定量的に評価することが可能になります。

ガルバノスタットのその他情報

1. FRAの原理

FRA (Frequency Response Analyzer) は周波数特性分析器とも呼ばれ、正弦波信号を被測定物に与えてその周波数応答を見る装置です。FRAはインピーダンスを求める手法として単一正弦波測定法 (SSC: Single Sine Correlation) と呼ばれるデジタル相関法を採用しています。

基本振幅精度0.1%、基本位相精度0.1度と非常に高精度での測定が可能であり、FRAは電気化学測定用途では最も使用される測定法です。測定対象物から返ってくる応答信号は入力信号周波数のみならず、他の周波数成分も含んだ信号です。

FRAは入力信号周波数のみの周波数を取得するために入力信号と同位相のSin波及び位相を90度ずらしたSine波を応答信号に掛け合わせています。実数成分と虚数成分に分けることで応答信号中の入力信号と同一周波数成分の取得が可能です。

2. FRAの特徴

FRAの特徴の1つに、ノイズ除去機能に優れている点が挙げられます。FRAは単一正弦相関法一回の測定で高周波成分を-60dB以下にすることが可能で、積分回数を増やすことでさらなるノイズ成分の除去ができます。分析したい信号がノイズ以下の振幅であっても抽出することが可能です。

計測できる周波数範囲が (10uHz〜1MHz) と広い範囲を有する点もメリットです。内部の発振器の出力も含めてデジタル処理しているため、波形歪がありません。

参考文献
https://www.seika-di.com/measurement/material/potentiostat.html
https://www.jstage.jst.go.jp/article/sfj/68/5/68_270/_pdf/-char/ja
https://www.basj.com/glossary.html
https://www.jstage.jst.go.jp/article/electrochemistry/67/11/67_1084/_pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/electrochemistry/80/1/80_1_57/_pdf
https://www.infuse-net.com/articles/articles003.html

ジルコニア

ジルコニアとは

ジルコニア

ジルコニアはジルコニウムの酸化物である酸化ジルコニウムの総称です。

化学式はZrO2で、セラミックスに分類されます。融点が非常に高く、耐熱性があるので、切削工具や研磨工具、耐火物などの原料として好適です。なお、身近な例では、歯科用材料やセラミックス包丁にも使用されています。

ジルコニアの使用用途

ジルコニアは高い融点を持ち、化学浸食に対して強く、切削工具や研磨工具、るつぼや炉などの耐火物の材質として好適です。また、ジルコニアは硬さと柔軟性もあり、強度も強いため、セラミックス包丁になどにも使用されています。

ジルコニアの中でも、正方晶ジルコニアはセラミックス原料や電子部品の粉砕用ボールとして使われています。正方晶ジルコニアは、重く、摩耗性も少ないので、コンタミネーションが起こりにくいことが特長です。

また、立方晶ジルコニアは酸素イオン導電性を有しており、燃料電池の固体電解質膜として使われています。さらには、後述の部分安定化ジルコニアは歯科材料として好適です。

ジルコニアの原理

ジルコニウムは原子番号40の元素で、その酸化物である酸化ジルコニウムのことをジルコニアと呼び、セラミックスに分類されます。化学式はZrO2で、室温では最も安定な単斜晶の結晶構造を形成していますが、温度を上げていくと正方晶、立方晶へと順次変化する物質です。

ジルコニアの特性

ジルコニア (ZrO2) は、融点が約2700℃であり、低熱伝導率、耐熱性、耐食性、高強度等、多くの機能を有しています。その一方、ジルコニアは、温度変化によって結晶構造が変化し体積変化も伴うため、劣化しやすいという性質があります。

ジルコニアの安定化剤としては、酸化イットリウム (Y2O3) 、酸化カルシウム (CaO) 、酸化セリウム (CeO2) 、酸化マグネシウム (MgO) などの酸化物が好適です。これら酸化物を添加し反応させ、結晶構造中に固溶させることで、立方晶の室温での安定的な存在が可能となります。なお、室温で立方晶が安定となったジルコニアを安定化ジルコニア、もしくは部分安定化ジルコニアと呼びます。

1. 安定化ジルコニア

安定化ジルコニアは、酸素空格子を多く含むため高温で酸素イオンの良い伝導体です。また化学的に安定であるため、高濃度TRU廃棄物の固化母材としての検討が進められています。

2. 部分安定化ジルコニア

部分安定化ジルコニアは、一般的に安定化ジルコニアよりも酸化物の添加量を減らしたものです。このため、一部に単斜晶もしくは正方晶が分散した状態となります。この部分安定化ジルコニアは高強度・高靭性材料として広く知られています。

ジルコニアのその他情報

1.ジルコニアセラミックスの歯科への適用

部分安定化ジルコニアのうち、酸化イットリウムを3mol%程度添加すると常温下で正方晶がほぼ100%であるY-TZP (Tetragonal Zirconia Polycrystal) となり、歯科用材料として活用されています。ジルコニアは高硬度の物質であるため、完全に焼結させる加工性が悪くなります。

そのため,歯科用に使用されるジルコニア製品においては比較的加工が容易な半焼結の状態にあるブロック体を切削加工し、その後本焼結することにより製品化することが一般的です。

なお、ジルコニアセラミックスに限らずセラミックス材料を歯科用途で適用する場合には、JIS T 6526 (歯科用セラミック材料) およびISO 6872 (Dentistry‐Ceramicmaterials) によって規定される基本物性を満たすことが必要となります。

2. ジルコニアの製造方法

ジルコニアの製造方法は、主に湿式精製法と乾式精製法の2種類です。どちらもジルコン、ハデライトなどのジルコニウム鉱石が原料になります。湿式精製法での最初の工程は、選別した鉱石を苛性ソーダで溶融した後、塩酸で分解、濃縮する工程です。さらに、水洗、濾過などの工程を経て、得られた水酸化ジルコニウムを焼成、粉砕することでジルコニア粉末を製造します。一方の乾式精製法では、鉱石を粉砕して不純物を除去した後、選鉱を繰り返し行うことで、純粋なジルコニアを製造します。

3. ジルコニアと金属の違い

ジルコニアと金属の違いは、ジルコニアはジルコニウム金属の酸化物であり、金属結合よりも強固な共有結合によるセラミックスであることです。このことからジルコニウムは金属と比較していくつかの点で優れる特性を持っています。

  • 腐食しにくい
    金属は環境中の酸素や硫黄などの腐食性の元素と結合しやすく、比較的容易に腐食してしまいますが、ジルコニウムはほとんど腐食することがありません。
  • 高硬度で耐熱性に優れている
    ジルコニウムは金属結合よりも強い共有結合で形成されているので、非常に硬く丈夫で変形しづらく、また融点も1,855℃と高温であることからも耐熱性にも優れています。

一方、金属と違い延性がほぼなく伸びないため強い衝撃に弱く、場合にはよっては割れてしまうことがあるので注意が必要です。

4. ジルコニアとシリカ系セラミックスの違い

ジルコニアは、金属と比較しても硬さと柔軟性があり、また腐食しない性質を持つことから、前述のように近年では歯科用に広く利用されるようになってきました。これまで歯科用に利用されてきた材料としては、金属のほか、シリカ系のセラミックスがあります。しかし、シリカ系セラミックスは、本物の歯と比較した場合に硬さはあるものの、割れやすいという点が欠点でした。

ジルコニアは人口ダイアモンドと呼ばれるほど高硬度で、その硬さは従来のセラミックスの10倍程度と非常に高く、さらに耐久性にも優れています。また、色も白く審美的なので奥歯はもちろん、最近では前歯での利用も広がっており、歯以外でもインプラントやブリッジなど、高い信頼性が必要な部分にも使える材料です。

5. 歯科用途におけるジルコニアのデメリット

歯科用ジルコニアは、色が白く審美的ではありますが、シリカ系セラミックスに比べると透明性が低く、色のバリエーションが少ないことがデメリットとされてきました。しかし、最近ではバリエーションが増え、歯科用途では高い審美的さが求められる前歯にも使用されるようになってきています。

しかしながら、ジルコニアはセラミックスの10倍程度と非常に硬度が高く、噛み合わせの調節を誤ると、噛み合わせる相手の歯を削ってしまう点は改良すべきデメリットです。また、高硬度なことから、加工が難しく歯科医の手作業での整形が困難であること、基本的にはコンピュータによる機械整形となるため、セラミックスと比較すると精度が落ちることもデメリットになります。

最後に、治療費が高価になる点もデメリットとして挙げられます。これは歯科用に使用する高品質なジルコニア自体の価格が高いことと、保険適用外の自費治療になることが理由ですが、今後改良されるべきポイントです。

参考文献
https://ceramic.co.jp/about/zirconia/
https://www.yamamura-shika.com/treatment/ceramic/ceramic-and-zirconia
http://cuore-dental.jp/16042212894802
https://www.aoyama-east.com/cosmetic/zirconia/

ゴム手袋

ゴム手袋とは

ゴム手袋

ゴム手袋とは、水仕事や油脂掃除の際に装着する手袋のことです。

ゴム手袋には、天然ゴムを用いた「ラテックス手袋」と、合成ゴムを用いた「ニトリル手袋」があります。

他の業務用の手袋には、食料品を取り扱う際に用いるポリエチレン手袋や食品に直接触れられないものの、油や薬品に強いPVC (塩化ビニル) 手袋があります。

ゴム手袋の使用用途

天然ゴムを用いたラテックス手袋は家庭用から産業用まで幅広く使用されます。具体的な使用用途は以下の通りです。

  • 水仕事や洗車
  • ガーデニングやごみ処理などの衛生作業
  • 少し尖ったものを扱う作業

ただし、薬品や油を使用しないことが条件となります。

2. ニトリル手袋

合成ゴムを用いたニトリル手袋は薬品や油に強い性質があります。具体的な使用用途は以下の通りです。

  • 機械を扱う作業
  • 油や灯油を扱う作業
  • ペンキ・スプレー塗装
  • 化学実験
  • 食品加工作業
  • 医療作業や清掃作業

ゴム手袋の原理

前述した通り、ゴム手袋は「ラテックス手袋」と「ニトリル手袋」に大別され、それぞれ原理は異なります。

1. ラテックス手袋

ラテックス手袋は天然ゴムを成形して製作します。滑りにくく柔軟性の高いことが特徴です。手に馴染みやすく丈夫なため、長時間作業も可能です。

ただし、油や薬剤や溶剤に弱いという欠点があります。また、天然ゴム中に含まれるたんぱく質等が原因で、アレルギー性接触皮膚炎を生じる場合もあるため注意が必要です。

2. ニトリル手袋

ニトリル手袋の材料は合成ゴムです。油や薬品に強く、強度もあるのが特徴です。対突差し特性に優れ、手にフィットするため素手感覚で使えますが、柔軟性にはやや劣ります。ニトリル手袋も、ゴム及び塩化ビニル樹脂の添加剤が関与するアレルギーが生じる場合もあるため注意が必要です。

ゴム手袋のその他情報

1. ゴム手袋によるアレルギー

ゴム手袋の中には天然ゴム製製品があり、繰り返し接触することでアレルギーを引き起こす可能性があります。これをラテックスアレルギーと呼び、接触部位や全身の蕁麻疹、喘息発作、アナフィラキシーショックなどの即時型アレルギー反応が起こります。ゴム手袋を頻繁に使う場合やアトピー体質の場合は、特に注意が必要です。

原料であるパラゴムの木の白い樹液 (ラテックス) に1.5%程度含まれているラテックスたんぱく質がアレルゲンであり、それが皮膚や粘膜から入ることが原因です。予防策は天然ゴム製品を回避するしかありません。

日本では1999年にラテックスアレルギーの注意表示が義務化されました。そのため、購入の際にラテックスフリーであるか確認し、ラテックスフリーを選択することが推奨されます。

2. ニトリルゴム手袋とは

ニトリルゴム手袋とは、ニトリルゴムという合成ゴムでできている手袋です。したがって、天然ゴムを使用しないラテックスフリーゴム手袋の一つです。

油・薬品に強く、丈夫であるという特徴があります。また、手に隙間なくフィットするため素手の感覚に近く、細かい作業に最適な手袋です。医療や介護現場でよく使用されます。

2020年の春以降、ニトリルゴム手袋は新型コロナウイルスの感染拡大により、品薄状態や価格高騰が発生しました。ニトリルゴムはマレーシアが世界の生産の約3分の2を占めており、現在の値段はコロナ禍以前の数倍です。

参考文献
https://bihin.shop/?mode=f17
https://www.nihon-glove.com/kindAndFeature.html
https://www.askul.co.jp/f/special/product_column/rubbergloves/
https://allergyportal.jp/provision/latex-allergy/
http://latex.kenkyuukai.jp/special/?id=1270
https://www.medius.co.jp/asourcenavi/latex/
https://www.medius.co.jp/asourcenavi/choice/
https://bihin.shop/?mode=f17
https://www.foodomejapan.com/user_data/slct/cleanclean/gloves.php
https://www.tokyo-np.co.jp/article/54242