ゼオライト

ゼオライトとは

ゼオライト

ゼオライト(英語: zeolite)は結晶性のアルミノケイ酸塩です。主成分はケイ素、アルミニウム、酸素で多孔性の結晶構造を形成しています。ゼオライトの最小基本単位はSiO4四面体で、これが三次元的に組み合わさった構造をしています。ケイ素の一部はアルミニウムに置換されており、その周辺に電荷を調整するための陽イオンが存在します。

一般的にゼオライトは、その特異な結晶構造を由来とするイオン交換能や吸着能を有しています。この性質は、ガスの吸着や陽イオン交換、触媒などに応用されています。

ゼオライトの使用用途

ゼオライトには分子レベルの細孔が無数に存在しており、その構造により吸着能、イオン交換機能、触媒能といった様々な性質を持っています。

ゼオライトはモレキュラーシーブとも呼ばれており、細孔径により分子をふるい分けすることができます。この性質を利用して、気体や溶媒中の水分や不純物を取り除く目的で使用されています。また土壌改良剤や水処理剤、二酸化炭素や窒素の吸着材、石油化学製品の触媒などに使用されています。

ゼオライトの原理

ゼオライトの原理

図1. ゼオライトの原理

ゼオライト(英語: zeolite)は多孔性の有する結晶性アルミノケイ酸塩です。SiO4四面体とAlO4四面体が組み合わさってできており、アルミニウム置換部位は負に帯電していることから電荷を合わせるために、ナトリウムカリウムなどの陽イオンが結晶構造中に含まれています。

ゼオライトはSiO4四面体とAlO4四面体が組み合わせにより多岐にわたる結晶構造が存在し、現在では240種以上の構造が見つかっており、それぞれ細孔の大きさや吸着能なども大きく異なります。 

ゼオライトには大きく3種類あり、天然ゼオライト、合成ゼオライト、人工ゼオライトに分類されます。天然ゼオライトにはホウ沸石、モルデナイト、クリノプチロライトなどたくさんの種類があります。これらの多くは均一な結晶構造を持たず、石英や炭酸塩などと一緒になって産出します。合成ゼオライトは人工的に合成されたゼオライトです。天然ゼオライトよりも吸着能やイオン交換能が高いことが特長ですが、その分合成に高いコストがかかります。人工ゼオライトは合成ゼオライトの高コストを抑えて合成されたゼオライトです。石炭灰を苛性ソーダと反応させることで、合成することができます。配合や条件を変化することで、高機能を有する人工ゼオライトを合成することができます。

ゼオライトのその他情報

1. ゼオライトによる水処理

ゼオライトは分離膜用の材料として使用されてきました。ゼオライトを逆浸透膜という無機膜に加工することによって、有機溶媒の脱水、気体中の水蒸気の除去、海水中の塩分の除去など行うことができます。例えば、有機溶媒の脱水に関しては、有機溶媒分子と水分子の分子量に僅かな差があることを利用して水を除去します。エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、酢酸エチルアセトンなどの親水性有機溶媒の脱水も行うことができます。

水処理にゼオライトを用いるメリットを3つ紹介します。

1つ目は均一な細孔を有するため、高精度で分子篩作用による分離を行うことができる点です。ゼオライトは分子レベルの細孔を無数に有しており、分子レベルでふるい分けができることから分子篩と呼ばれます。

2つ目は耐熱性、耐薬品性があるので、高温条件下での使用や様々な物質に適用することができる点です。特に化学プラントや塗料工場などで使用される、人体に有害な化学物質にも対応することができます。

3つ目はゼオライト自体の種類が豊富で、それぞれ様々な組成、孔径を有している点です。これにより、処理する対象や用途に合わせて素材選定を行うことができるので、処理工程の自由度が格段に増します。

ゼオライトの組成が変わると、水処理の性質も変化します。例えば、ゼオライトにはケイ素(Si)やアルミニウム(Al)が多く含まれていますが、Si/Al比を低くした場合は親水性が増し、高い水吸着性を示すため、溶媒などの脱水に適しています。逆に、Si/Al比を高くした場合は疎水性が増し、酸などに対する耐薬品性が高いことから、酸性が強い薬品の処理に用いられます。

2. vゼオライトによる環境保全

ゼオライトはその吸着能やイオン交換能から農業や環境保全への利用が注目されています。

ゼオライトを池・沼や土壌に投入することで重金属や富栄養化のもととなる成分を吸着し、水質・土壌の環境を保全することができます。また、脱臭や自動車排ガスの有毒成分の分解など、ゼオライトは大気・水質・土壌のあらゆる環境を正常に保つために非常に優れた材料であります。

加えて、ゼオライトは農業や園芸用途にも使用されています。ゼオライトには規則的な孔があるので、適度な通気性を得ることができます。土とゼオライトを混ぜることで、根にも充分に酸素が供給される土ができ、植物の生育が良くなります。また、様々な物質を吸着することができるので、肥料成分の一部を保持しつつ、適度な量を植物に供給することができます。土壌に含まれる不純物を吸着して、土壌を浄化することもできます。ゼオライトから溶け出したミネラルが植物の栄養として使用される効果もあります。園芸分野での使用例として、鉢植えや花瓶、水耕栽培などがあります。

3. エネルギー・石油化学分野への応用

ゼオライトは石油化学分野においてなくてはならない触媒材料の一つです。ゼオライトは炭化水素類を異性化、分解、芳香族化などに使用されたり、メタノールからガソリンなどの燃料油生成に使用されています。特に代表的なものとして、流動床式接触分解(FCC : Fluid Catalytic Cracking)があげられます。これは、原油の上流から得られる成分をより炭素数の少ない分子に分解する反応で、ガソリンなどのより付加価値の高い成分を製造する手法であり、現在の私たちの生活にはなくてはならないものです。

また、近年では環境負荷の少ないエネルギー源として注目されているバイオガス・天然ガス・石炭ガス化複合発電等からの二酸化炭素を除去するためにゼオライトを用いた分離膜の開発も行われており、エネルギー・環境分野においてもゼオライトは非常に重要な存在であるといえる。

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