タングステンとは
タングステン (元素記号:W) とは、原子量が183.85の遷移金属元素です。
タングステンは、粉末、インゴット、線、棒、板といった様々な製品形状から加工されることにより、自動車、工具、照明、家電、半導体、医療など様々な分野で使用されています。
タングステンの使用用途
タングステンの性質を生かした使用用途は、以下の通りです。
タングステンは照明用途もありますが、LEDの普及に伴い使用量は減少傾向です。その他、純度の高いタングステンは比較的柔らか金属ですが、不純物を含むことにより高い硬度を発現します。
炭素との合金であるタングステンカーバイドが代表例です。超硬合金の一つで、切削工具や鉄鋼の添加剤として使用されます。タングステンカーバイドは、高温においても柔らかくならず高硬度を維持できる上、強度も強いため、切削工具だけでなく、研磨剤としても使用されています。
タングステンの特徴
タングステンは、研磨された塊の表面は銀白色、粉末は灰色で、比重が19.3あります。金属の中では最も高い融点 (3,380℃) を持ち、沸点は5,800℃です。熱膨張率が小さいことも特徴で、るつぼや炉などの高温において使用される容器や部品の原料に使用されています。
タングステンが主成分ではありませんが、KS鋼と呼ばれるコバルト、タングステン、クロム、炭素を含む鉄の合金は、日本で開発された1917年当時においては、最強の永久磁石と呼ばれていました。
タングステン鉱石は、鉄マンガン重石 (英: wolframite/化学式: (Fe、Mn)WO4) 、鉄重石 (英: ferberite/化学式: FeWO4) 、マンガン重石 (英: hubnerite/化学式: MnWO4) 、灰重石 (英: scheelite/化学式: CaWO4) など、他の金属と混ざったものとして産出しますが、この中でも鉄マンガン重石と灰重石が重要な鉱石です。
産出国は80%以上が中国であり、その他ロシア、オーストラリア、カナダなどで産出されます。産出地が偏っている反面、重要性の高い元素であることから、国内消費量の最低60日分を備蓄することが安全保障策として定められています。
タングステンのその他情報
1. ダングステン合金の種類
タングステンを主成分とする合金が、数多く開発されており、バインダー相をニッケル、銅、鉄などで構成したタングステンを主とする焼結合金はヘビーアロイと呼びます。ヘビーアロイには、タングステン-ニッケル-銅 (W-Cu-Ni) 系とタングステン-ニッケル-鉄 (W-Fe-Ni) 系があります。
タングステン-ニッケル-銅系は磁性がありませんが、熱伝導性が高いです。一方で、タングステン-ニッケル-鉄系には弱い磁性があり、引張強度や伸びなど、機械物性に優れます。ヘビーアロイは、タングステンが非常に高融点であるため、粉末冶金法で製造されます。
金属粉末を均一に混合した後、高圧でプレス成形し、これを高温焼結することで製造します。製造する際に使用するタングステンの粒径、バインダー用金属の種類、量比などの調整により、合金の物性も作り分けることが可能です。
2. タングステンの毒性
タングステンの塊自体には毒性がないため、工具やアクセサリーなどの、直接接触する用途にも使用されます。一方、タングステンを加工する際に発生するタングステンの粉塵は、日本産業衛生学会の粉塵の危険性レベルの分類における、第三種粉塵に該当し、作業環境における粉塵許容量の上限が定められています。
タングステン化合物の毒性に関しては、ラットの経口摂取による半数致死量LD50 (急性毒性の指標) の値は、りんタングステン酸で3,300mg/kg、タングステン酸ナトリウムで1,190mg/kg、酸化タングステン (VI) で840mg/kgであることが報告されています。
いずれの化合物も、毒物及び劇物取締法には該当しませんが、労働安全衛生法においては、名称等の表示と通知をすべき危険物及び有害物とされています。
参考文献
https://www.allied-material.co.jp/techinfo/tungsten/features.html
https://www.allied-material.co.jp/techinfo/tungsten/use.html
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjspm1947/2/1/2_1_109/_article/-char/ja
https://www.nittan.co.jp/products/hard_metal_002_003.html
http://www.tohokinzoku.co.jp/technical/powder_phys.html
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/7440-33-7.html
http://www.kishida.co.jp/product/catalog/msds/id/13392/code/200-81542j.pdf
http://www.st.rim.or.jp/~shw/MSDS/16636130.pdf
http://www.jspf.or.jp/Journal/PDF_JSPF/jspf2020_02/jspf2020_02-77.pdf