ジルコニア

ジルコニアとは

ジルコニア

ジルコニアはジルコニウムの酸化物である酸化ジルコニウムの総称です。

化学式はZrO2で、セラミックスに分類されます。融点が非常に高く、耐熱性があるので、切削工具や研磨工具、耐火物などの原料として好適です。なお、身近な例では、歯科用材料やセラミックス包丁にも使用されています。

ジルコニアの使用用途

ジルコニアは高い融点を持ち、化学浸食に対して強く、切削工具や研磨工具、るつぼや炉などの耐火物の材質として好適です。また、ジルコニアは硬さと柔軟性もあり、強度も強いため、セラミックス包丁になどにも使用されています。

ジルコニアの中でも、正方晶ジルコニアはセラミックス原料や電子部品の粉砕用ボールとして使われています。正方晶ジルコニアは、重く、摩耗性も少ないので、コンタミネーションが起こりにくいことが特長です。

また、立方晶ジルコニアは酸素イオン導電性を有しており、燃料電池の固体電解質膜として使われています。さらには、後述の部分安定化ジルコニアは歯科材料として好適です。

ジルコニアの原理

ジルコニウムは原子番号40の元素で、その酸化物である酸化ジルコニウムのことをジルコニアと呼び、セラミックスに分類されます。化学式はZrO2で、室温では最も安定な単斜晶の結晶構造を形成していますが、温度を上げていくと正方晶、立方晶へと順次変化する物質です。

ジルコニアの特性

ジルコニア (ZrO2) は、融点が約2700℃であり、低熱伝導率、耐熱性、耐食性、高強度等、多くの機能を有しています。その一方、ジルコニアは、温度変化によって結晶構造が変化し体積変化も伴うため、劣化しやすいという性質があります。

ジルコニアの安定化剤としては、酸化イットリウム (Y2O3) 、酸化カルシウム (CaO) 、酸化セリウム (CeO2) 、酸化マグネシウム (MgO) などの酸化物が好適です。これら酸化物を添加し反応させ、結晶構造中に固溶させることで、立方晶の室温での安定的な存在が可能となります。なお、室温で立方晶が安定となったジルコニアを安定化ジルコニア、もしくは部分安定化ジルコニアと呼びます。

1. 安定化ジルコニア

安定化ジルコニアは、酸素空格子を多く含むため高温で酸素イオンの良い伝導体です。また化学的に安定であるため、高濃度TRU廃棄物の固化母材としての検討が進められています。

2. 部分安定化ジルコニア

部分安定化ジルコニアは、一般的に安定化ジルコニアよりも酸化物の添加量を減らしたものです。このため、一部に単斜晶もしくは正方晶が分散した状態となります。この部分安定化ジルコニアは高強度・高靭性材料として広く知られています。

ジルコニアのその他情報

1.ジルコニアセラミックスの歯科への適用

部分安定化ジルコニアのうち、酸化イットリウムを3mol%程度添加すると常温下で正方晶がほぼ100%であるY-TZP (Tetragonal Zirconia Polycrystal) となり、歯科用材料として活用されています。ジルコニアは高硬度の物質であるため、完全に焼結させる加工性が悪くなります。

そのため,歯科用に使用されるジルコニア製品においては比較的加工が容易な半焼結の状態にあるブロック体を切削加工し、その後本焼結することにより製品化することが一般的です。

なお、ジルコニアセラミックスに限らずセラミックス材料を歯科用途で適用する場合には、JIS T 6526 (歯科用セラミック材料) およびISO 6872 (Dentistry‐Ceramicmaterials) によって規定される基本物性を満たすことが必要となります。

2. ジルコニアの製造方法

ジルコニアの製造方法は、主に湿式精製法と乾式精製法の2種類です。どちらもジルコン、ハデライトなどのジルコニウム鉱石が原料になります。湿式精製法での最初の工程は、選別した鉱石を苛性ソーダで溶融した後、塩酸で分解、濃縮する工程です。さらに、水洗、濾過などの工程を経て、得られた水酸化ジルコニウムを焼成、粉砕することでジルコニア粉末を製造します。一方の乾式精製法では、鉱石を粉砕して不純物を除去した後、選鉱を繰り返し行うことで、純粋なジルコニアを製造します。

3. ジルコニアと金属の違い

ジルコニアと金属の違いは、ジルコニアはジルコニウム金属の酸化物であり、金属結合よりも強固な共有結合によるセラミックスであることです。このことからジルコニウムは金属と比較していくつかの点で優れる特性を持っています。

  • 腐食しにくい
    金属は環境中の酸素や硫黄などの腐食性の元素と結合しやすく、比較的容易に腐食してしまいますが、ジルコニウムはほとんど腐食することがありません。
  • 高硬度で耐熱性に優れている
    ジルコニウムは金属結合よりも強い共有結合で形成されているので、非常に硬く丈夫で変形しづらく、また融点も1,855℃と高温であることからも耐熱性にも優れています。

一方、金属と違い延性がほぼなく伸びないため強い衝撃に弱く、場合にはよっては割れてしまうことがあるので注意が必要です。

4. ジルコニアとシリカ系セラミックスの違い

ジルコニアは、金属と比較しても硬さと柔軟性があり、また腐食しない性質を持つことから、前述のように近年では歯科用に広く利用されるようになってきました。これまで歯科用に利用されてきた材料としては、金属のほか、シリカ系のセラミックスがあります。しかし、シリカ系セラミックスは、本物の歯と比較した場合に硬さはあるものの、割れやすいという点が欠点でした。

ジルコニアは人口ダイアモンドと呼ばれるほど高硬度で、その硬さは従来のセラミックスの10倍程度と非常に高く、さらに耐久性にも優れています。また、色も白く審美的なので奥歯はもちろん、最近では前歯での利用も広がっており、歯以外でもインプラントやブリッジなど、高い信頼性が必要な部分にも使える材料です。

5. 歯科用途におけるジルコニアのデメリット

歯科用ジルコニアは、色が白く審美的ではありますが、シリカ系セラミックスに比べると透明性が低く、色のバリエーションが少ないことがデメリットとされてきました。しかし、最近ではバリエーションが増え、歯科用途では高い審美的さが求められる前歯にも使用されるようになってきています。

しかしながら、ジルコニアはセラミックスの10倍程度と非常に硬度が高く、噛み合わせの調節を誤ると、噛み合わせる相手の歯を削ってしまう点は改良すべきデメリットです。また、高硬度なことから、加工が難しく歯科医の手作業での整形が困難であること、基本的にはコンピュータによる機械整形となるため、セラミックスと比較すると精度が落ちることもデメリットになります。

最後に、治療費が高価になる点もデメリットとして挙げられます。これは歯科用に使用する高品質なジルコニア自体の価格が高いことと、保険適用外の自費治療になることが理由ですが、今後改良されるべきポイントです。

参考文献
https://ceramic.co.jp/about/zirconia/
https://www.yamamura-shika.com/treatment/ceramic/ceramic-and-zirconia
http://cuore-dental.jp/16042212894802
https://www.aoyama-east.com/cosmetic/zirconia/

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