業務用蓄電池とは
業務用蓄電池 (産業用蓄電池) とは、その名の通り、一般家庭や住宅用以外の用途で用いられる蓄電池のことです。
コンビニエンスストアや事務所などの小型の店舗やビジネスの建物から、オフィスビルや商業施設などの大型の建物などに設置されています。業務用蓄電池は非常時のバックアップ用電源として利用されます。また、平常時の電力量平準化のために活用されることも多いです。
小規模の店舗などでは10kWhに満たない容量でも十分ですが、大型の施設や産業用では500kWh以上の容量を必要とする場合もあるため、業務用蓄電池は一般住宅用の蓄電池と比べて蓄電の容量が大きくなります。さらに、蓄電池を複数統合して用いることで、使用する電力の規模に合わせて蓄電の容量を追加することもできます。
業務用蓄電池の使用用途
業務用蓄電池は、自然災害などが原因で停電が発生した場合に、電源を確保するためのバックアップとしての役割を主な用途としています。この用途で用いられる蓄電池をUPS (Uninterruptible Power Supply、無停電電源装置) と呼びます。
使用できる時間は使用用途や電池容量によって変わりますが、概ね1~10時間程度です。非常事態に備えた用途以外にも、蓄電池を使用することで電気の制限と管理が可能となるため、平常時での電気使用をコントロールできます。
太陽光発電などの自然エネルギーの活用と併用して連携することで、より省エネ効果を高まり、さらに高い効果を得ることも期待できます。
業務用蓄電池の原理
業務用蓄電池は平常時において、日中に使用量が発電量を上回る場合は、蓄電池と太陽光発電の両方から放電をすることでピークカットを行い、蓄電池残量が設定値を切ると蓄電池からの放電を停止します。使用量が発電量を下回る場合は、使用量を差し引いた余剰の発電量を蓄電池が満充電になるまで充電し、充電が完了すると発電を抑制して逆潮流が起こるのを防ぎます。
夜間は太陽光による発電ができないため、蓄電池から電力を供給します。停電時は平常時とは異なり、系統電源からの電力供給がないため、発電量と使用量の大小関係から発電システムと蓄電システムを稼働させて、蓄電と放電を行います。業務用蓄電池は太陽光発電などのシステムと併用することで、電力使用のコントロールをより効果的に発揮することが可能です。
業務用蓄電池の種類
業務用蓄電池として用いられる電池の種類は主に以下の4種類があります。
1. リチウムイオン電池
スマホやパソコンにも用いられており、現在最も普及している電池です。材料としてはCo, Mn, Niなどを含むリチウム含有金属酸化物とグラファイトなどの炭素材、有機溶剤及びリチウム塩から構成されます。
エネルギー密度が高く小型化ができること、寿命が10年程度と比較的長期間の耐用年数を有することが特長です。一方、金属酸化物やリチウム塩など使用する材料が高価であるため、価格が高くなることが欠点です。
2. 鉛蓄電池
充電して繰り返し使える二次電池として最も古い歴史がある電池です。材料としては鉛、酸化鉛、希硫酸から構成されます。
使用実績が多く信頼性が高いこと、安価であることが大きな特長です。欠点としては、エネルギー密度が小さく高重量化してしまうということが挙げられます。また、寿命は17年程度と非常に長いものの、使用回数 (充放電回数) が増えるほど性能が劣化してしまい、容量が低下するという課題もあります。
3. ニッケル水素電池
人工衛星などの宇宙開発用途で開発された電池です。現在はハイブリッドカー用などの車載用途で利用されています。代表的な材料としては水酸化ニッケル、水素を含んだ水素吸蔵合金、濃アルカリ水溶液から構成されます。
使用可能な温度範囲が広いことが特長ですが、寿命は5~7年と他の電池と比較すると短いことが欠点として挙げられます。また、水素吸蔵合金にレアアースが用いられており、原料調達面においても課題があります。
4. NAS電池
ナトリウム硫黄電池のことであり、日本ガイシが製造する電池です。材料としてナトリウム、硫黄、ファインセラミックを用います。寿命が15年程と長く、価格も低いことが特長で、大規模設備向けの大容量化にも対応できます。
また、リチウムイオン電池ほどではありませんがエネルギー密度が高いことも特長として挙げられます。欠点としては、運転時に高温(300℃)が必要となることです。
参考文献
https://www.eco-hatsu.com/battery/industryuse/
https://www2.panasonic.biz/ls/souchikuene/chikuden/
https://www.girasol-solar.jp/magazine/tikudenti/
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/npu/policy04/pdf/20120705/sanko_shiryo1.pdf