測温抵抗体とは
測温抵抗体とは、化学プラントなどでプロセス流体 (液体、気体) の温度を測定する際に使用される機器のことです。
温度を測定する機器として熱電対も挙げられますが、測温抵抗体は熱電対よりも測定誤差が少なく、特に低温の方では精度が高いのが特徴です。そのため、低温を重視する場合や高温をそれほど測定しない場合によく使用されます。
また、保護管を使用すれば多種多様な流体に対して使用可能であるため、化学プラントにおける温度測定でも幅広く使用されています。
測温抵抗体の使用用途
測温抵抗体は、配管内やタンク内を流れていたり、保管されたりしているプロセス流体 (液体、気体) の温度を測定するために使用されています。特に温度を表示し、かつ制御やコントロールする場合などに使用される場合が多いです。
例えば、熱交換器の入口と出口の冷却水の温度を測定し、熱交換量に応じて冷却水量を調整したり、オリフィス流量計の流量を測定する際に気体の温度を測定して、温度補正をかけたりする場合などが挙げられます。
図1. 測温抵抗体を熱交換器に設置した実験例
測温抵抗体は温度の誤差が少なく高精度であるため、それほど温度が高くない場所のコントロールや温度が低い不凍液などの制御やコントロールにも使用可能です。
測温抵抗体の原理
測温抵抗体は金属の抵抗値が温度によって変化する特性を利用して、温度変化を測定しています。一般的に、金属は温度が上がると抵抗値が上昇するので、その特性を利用していますが、白金を使用するケースが多いです。
そのため、日本ではPt100と呼ばれる白金で製作された測温抵抗体が幅広く用いられています。また、工業プロセスで温度を制御やコントロールするには4-20mAの電流により制御するのが一般的なので、測温抵抗体の端子箱内に変換機を内蔵して、4-20mA出力を可能にした製品もあります。このような製品を使用すると、制御盤内で変換機が不要となるため、非常に便利です。
測温抵抗体はその等級も規定されており、JIS C1604では主に2種類の規格で定められています。高精度で正確な温度測定が可能な機器ですが、必要な精度は使用するプロセス流体 (液体、気体) によって異なるため検討が必要です。ただし、熱対応が遅いと、使用するプロセス流体 (液体、気体) の物性によってはうまく使えない場合もあるため、精密な制御やコントロールなどをする際は注意が必要です。
測温抵抗体の配線方法
測温抵抗体の配線方法には、2線式、3線式、4線式の3通りがあります。2線式は測温抵抗体の両端に1本ずつ配線したもので、最も簡単な方法ですが、配線の抵抗値がそのまま加算される点がデメリットです。配線の抵抗値をあらかじめ測定し、補正をかけておく必要があるため、実用的ではありません。
3線式は最も一般的な結線方法で、測温抵抗体の片端に2本、もう片端に1本配線します。3本の線の電気抵抗が等しい場合、配線の抵抗値を無視することができます。4線式は測温抵抗体の両端に2本配線します。高価ですが、配線の抵抗値を完全に無視することが可能です。
測温抵抗体のその他情報
測温抵抗体と熱電対の比較
測温抵抗体と熱電対は、両者とも温度を測定する機器ですが、温度測定範囲や測定精度に違いがあります。
1. 主な材質と測定温度範囲
測温抵抗体
「白金」「銅」「ニッケル」「白金・コバルト」があり、それぞれ温度測定範囲が異なりますが、最大600℃程度です。
熱電対
「白金・ロジウム合金」「ニッケル・クロム合金」「鉄」「銅」などが使用され、温度測定範囲が異なります。使用される材質と素材構成によって「B」「R」「K」などの呼び記号があります。B熱電対の過熱使用温度は1,700℃となっています。高温を測定する場合は熱電対が使用されます。
2. 測定精度
測温抵抗体
図2. 測温抵抗体JIS C1604規格の許容差
測温抵抗体の測定精度等級はAとBがあり、JIS規格の許容差を下表に示します。クラスA測温抵抗体の最大測定温度である450℃のときの許容差を比較すると、クラスAで±1.05 ℃、クラスBで±2.55 ℃となります。
熱電対
図3. 熱電対温度許容差
熱電対の測定精度等級はクラス1~3があり、各測定温度範囲で規定されています。熱電対 (K) が450℃の時、クラス1で許容差は±1.8℃、クラス2で±3.375℃、クラス3では450℃は規定されていません。許容差から、測温抵抗体は熱電対よりも測定精度が高いといえ、高精度であることが求められる測定に使用されます。
参考文献
https://www.keyence.co.jp/ss/products/recorder/lab/thermometry/resistance_bulb.jsp
https://www.watanabe-electric.co.jp/sensor/products/sokuon_sentei.html
https://www.watanabe-electric.co.jp/sensor/faq/sokuon/01.html
https://www.keyence.co.jp/ss/products/recorder/lab/thermometry/resistance_bulb.jsp