球面軸受とは
球面軸受とは、内輪と外輪を球面で接触させた軸受です。
主として揺動運動、傾斜運動及び低速回転運動用に使用されます。滑り部の形状を球面にして、大きいラジアル荷重と両方向のアキシアル荷重を同時に支えることができる自動調心形の軸受です。
大きく分けて、接触する滑り部の球面に給油が必要な給油式と不要な無給油式があります。耐摩耗性に優れ、産業機械や建設機械などの関節部分など、荷重が大きく運動する箇所に使用されています。
無給油式は、メンテナンスフリーで、食品機械などの油を嫌う分野や機械類の給油不可能な部分に最適です。
球面軸受の使用用途
給油式の球面軸受は摩耗に対する耐性に優れており、負荷できる荷重が大きいベアリングであるため、衝撃など大きな荷重が働く場合などに用いられます。具体的には、産業機械や建機などの用途です。
無給油式の球面軸受は、圧縮された荷重を支える際のクリープ変形が小さく、摩耗に対する耐性に優れています。また、給油が不要でメンテナンスの必要がないことが特徴です。
無給油式は、一方向のアキシャル荷重を支えるときに向いており、食品などをはじめ油を用いることが懸念される分野や、給油のメンテナンスが難しい箇所での使用に用いられます。
球面軸受の原理
1. 給油式軸受
給油式の球面軸受は、内外輪とも高炭素クロム軸受鋼を使用し、滑り面はりん酸塩皮膜処理をするのが一般的です。さらに、多くは二硫化モリブデンの乾燥皮膜で覆います。低トルクで作動し、耐摩耗性に優れた負荷容量の大きな軸受です。
内輪と外輪との滑り部は、球面で接触することと、内輪を組み込むのに必要な溝をもたないことが特徴であり、負荷できる荷重が大きく、衝撃や交番荷重が働く箇所に用いることができます。内輪と外輪が接触する滑り面に潤滑不良が起きると、発熱などの不具合が生じるため、給油式では、正しい間隔ごとに潤滑油を充填して、潤滑不良を起こさないようにする必要があります。
2. 無給油式軸受
無給油式の球面軸受の一例は、外輪のすべり面に銅合金で補強された特殊PTFEライナーを固着し、内輪のすべり面に硬質クロームメッキで加工した組み合わせです。滑り面自体に高い潤滑性を付加しています。
無給油でも、摩耗に対する耐性に優れた物質を固着する加工などを施すことで、大荷重の支持が可能です。
球面軸受のその他情報
1. 球面軸受の固定方法
球面軸受を使用する際、球面軸受を取り付けるハウジングと、球面軸受に差し込む軸には、使用用途に合わせた寸法公差が適用されます。また、ハウジングには十分な肉厚を持たせ、荷重による変形が無いように注意が必要です。
ハウジングへの取付時には、外輪のみを押し込むようにして、内輪に力がかからないようにします。軸も同様に内輪のみを押し込み、外輪に力がかからないようにすることも重要です。取付方法が悪い場合、軸受けの変形などにより、負荷が不均一になり、寿命が短くなったり、ガタツキが発生したりすることがあります。
球面軸受のハウジングと軸の寸法公差を決める際の使用条件は、内輪回転荷重と外輪回転荷重、普通荷重と重荷重の組み合わせで4通りあります。
無給油式の寸法公差
内輪回転荷重の場合、普通荷重での軸の公差はk6、重荷重ではm6が推奨されています。ハウジングはどちらも同じで、鋼製ではH7、軽合金ではJ7が推奨されます。
外輪回転荷重の場合、軸の寸法公差は普通荷重、重荷重ともにh6、ハウジングは普通荷重の場合、鋼製でK7、軽合金でM7となっており、重荷重では鋼製でM7、軽合金は規定されていません。
給油式の寸法公差
給油タイプでは寸法公差に若干違いがあるので、メーカーの技術資料を確認してから寸法公差を決める必要があります。
2. 球面軸受の使用例
球面軸受は幅広い範囲に使用されており、多く用いられているのは、大型機器です。軸カップリングの使い方では、2つの球面軸受を持ったカップリングで軸を連結します。これにより、2つの軸の偏心と偏角を吸収することができます。
パワーショベルなどの工事用重機での使用例は、各関節に使用される油圧シリンダのロッドエンドです。その他、クレーンの連結部や、トラックのサスペンション部分などにも使用されており、振動や衝撃を伴う重荷重での用途が多くなっています。
参考文献
https://www.ikont.co.jp/product/needle/ndl09.html
https://www.ntn.co.jp/japan/products/catalog/pdf/5301.pdf
https://www.thk.com/?q=jp/node/6730
http://www.hephaist.co.jp/products/bearing_srj.html
https://www.ntn.co.jp/japan/products/catalog/pdf/5301.pdf