真空断熱材

真空断熱材とは真空断熱材

真空断熱材とは、断熱材の内部を減圧して真空にした断熱材のことです。

具体的には、グラスウールなどの断熱性を持つ材料をラミネートフィルムで被覆し、さらに内部を減圧することで真空状態にしたものを指します。

真空断熱材の使用用途

真空断熱材は、熱を逃がさず内部温度を保持できるため、家庭用冷蔵庫や電気ポット、自動販売機、輸送用保冷ボックスなどに使用されています。2018年に省エネ法が改正されたことに伴い、各種機器の熱的な効率向上を目的として、各社において真空断熱材の導入が積極的に検討されています。

また、真空断熱材は断熱材部分を真空にしており、その厚さは極めて薄いもので狭い箇所にも配置できる点もメリットです。このため、サイズが小さい製品から大きな製品まで様々な製品に対応できます。

真空断熱材の原理

物体から物体に熱が伝わる熱伝導においては、熱を伝える媒質 (気体や液体、固体) が必要です。これらの物質が熱を持った時、媒質内部の分子が振動することによって、それを隣の分子へと伝播していきます。

熱の伝播しやすさを表すのが熱伝導率です。この熱伝導率が小さければ、熱は伝わりにくいということになります。つまり、媒質の熱伝導率が小さいと熱が伝わりにくく、断熱性が高いということです。一般的な断熱では、断熱効果を持つ材質として、グラスウールやポリスチレンなどが使用されています。これら材質自体の熱伝導率は比較的小さい値ですが、内部に空気を含有することから、空気による熱伝導も生じています。

真空断熱材においては、芯材として従来から使用されているグラスウールなどを使用し、これをラミネートフィルムで被覆したうえで内部の空気を抜いており、空気による熱伝導がほとんど生じません。したがって、真空断熱材は一般的なグラスウールを使用した断熱材よりも熱伝導が起こりにくく、断熱性が極めて高くなります。

ただし、真空断熱材のラミネートフィルムに穴が開くと、空気が内部に侵入するため、断熱材としての性能は急激に失われます。また、経年劣化により真空の破れが生じる可能性もあるため、長期使用する際には注意が必要です。

真空断熱材のその他情報

1. 真空断熱材における耐熱性および耐久性の向上

近年、地球温暖化に対する対策やエネルギー問題への対応に注目が集まる中、真空断熱材においても耐熱性や耐久性に優れた製品が生み出されています。例えば、内部をグラスウールからなる芯材とし、外包材としてステンレス箔を採用した構造の真空断熱材です。

ステンレス箔の耐熱性は300℃以上であることから、外包材として樹脂ラミネートフィルムを使用した従来の真空断熱材と比較すると、耐熱性能は大幅に向上しています。また、従来の真空断熱材においては、樹脂ラミネートフィルムがガスを僅かに透過するため、断熱部分となるグラスウール内部に侵入したガスの熱伝導により、断熱性能が低下するという課題がありました。

しかし、外包材をステンレス箔にすることで、ガス透過性も改善され真空断熱材の耐久性も大幅に向上しています。

2. 住宅用途での真空断熱材

住宅でも真空断熱材使用されています。例えば、内部をグラスウールからなる芯材とし、ラミネートフィルムで外包するとともに、その内部が真空の多孔質構造を有するものです。この真空断熱材は、厚さ数ミリ程度で数十倍の厚みのグラスウールと同等の断熱効果を実現できます。

このような優れた断熱性能は、多孔質の各孔部を大きな空間とすることで得られます。各孔部を大きくすればグラスウールよりなる部分の真空部分が増し、その分空気による熱伝導を抑えることが可能なためです。

そして、多孔質の各孔部を大きな空間とするために、芯材を加圧圧縮する手法がとられています。加圧圧縮すると、芯材を構成する繊維が層状に固定化され、その過程で繊維同士が点で接触する構造が形成され、芯材に大きな空間 (隙間) が形成されます。これにより、グラスウールよりなる部分の真空部分が増えるため、高い断熱性能が実現可能です。

なお、真空断熱材は、芯材をラミネートフィルム袋に入れて真空状態にして、開口端を熱圧着することで作製されています。この構造を応用し、1枚の真空断熱材をラミネートフィルムの熱圧着により複数のブロックに分け、それぞれのブロックごとに真空にした真空断熱材も開発されています。

参考文献
http://www.wa-con.co.jp/
https://www.afgc.co.jp/case/applied/vip-a.html
http://www.jpubb.com/press/13020/
https://www.nedo.go.jp/hyoukabu/articles/201003panasonic/index.html

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